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動詞名詞換言辞書の構築と敬語の常体への換言

nishi-k
March 14, 2016

 動詞名詞換言辞書の構築と敬語の常体への換言

nishi-k

March 14, 2016
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  1. 背景と目的 2 常体 ・ 聞く ・ 話す 敬語表現 ・ お聞きする

    ・ お話しする 敬意 ・ 丁寧さ 敬語を常体に 換言 • 日本語には待遇表現のひとつとして「敬語表現」が ある。 – 同一の事象を表すが、表記が異なっている。 • テキストマイニングや情報検索では表記の違いで 別の語と認識される。 – 同一の表現を1つにまとめる(正規化する)必要がある。 • 日本語学習者にとって敬語の扱いは一般的には 困難。 – 敬語表現を常体へと換言した文章に直して提示するこ とで理解の促進につながる。
  2. • 対象とする敬語表現を2つに分ける 1. 規則変化 - 何らかの敬語表現が付加されるもの ・ 話す ⇒ お話しになる

    2. 不規則変化 - 常体に換言すると全く異なる表現になるもの ・ 言う ⇒ おっしゃる 対象とする敬語表現 3
  3. 1. 規則変化 – 「~される」「~られる」は曖昧性解消が必要な語 e.g. ご参加される, 来られる – 接頭辞「お」 +

    名詞の形で接頭辞を取り除くと意味が 変化するもの(6種類) - お子さん, お産, お蔵入り, お辞儀, お吸い物, おしゃべり ⇒ 雪だるまの単語辞書に登録し「単語化」することで対応 2.不規則変化 – 「いらっしゃる」などの曖昧性解消が必要な語 – 敬体のみしか存在しない語 e.g. ごめんください, おしゃべり 対象外とする敬語表現 4
  4. 敬語を常体に換言する際の問題点 1. 「いらっしゃる」 ⇒ 「来る」 「居る」 「行く」 → 語が表す意味を特定しなければ換言できないため 今回は対象外とした

    2. 「お気に召す」 ⇒ 「気に入る」 → 不規則に変化する動詞は換言後の語と対応させた 辞書が必要 3.「お知り合いになる」 ⇒ 「知り合う」 → 名詞「知り合い」 が動詞「知り合う」と対応している ことを示す辞書が必要 5
  5. の作成 • 不規則に変化する敬語を 常体に換言するために辞書を作成 • 辞書は以下を参考に作成 ・ [菊池 康人, 敬語,

    株式会社講談社, (1997.2)] • 現在は10語が登録 6 敬語 常体 お気に召す 気に入る 拝見する 見る おっしゃる 言う
  6. の作成 • 名詞と動詞の対応付けが必要な敬語 に対して辞書を作成 • 日本語解析システム雪だるまの単語辞書 に含まれる動詞 : 26,945語 •

    簡単な規則によって抽出し、人手によって整備した 動詞名詞対応辞書内に含まれる動詞 : 2,700 語 7 動詞 名詞 動く 動き 考える 考え 送り出す 送り出し
  7. 敬語表現の換言規則 (1/2) • 1) 助動詞「ます」 – 「ます」を削除しても文意は保てると考え、 「ます」を削除 • 彼が来ました

    → 彼が来た • 2) 置き換え形式 ー に登録している語に対して換言 • ご覧になる → 見る • 3) 「接頭辞「お/ご」 + 動詞 + になる」形式 – 接頭辞「お/ご」 と 「になる」 を削除し、動詞を抽出 • お申し込みになる ⇒ 申し込む 8
  8. 敬語表現の換言規則 (2/2) • 4) 「お/ご + 名詞 + する/いたす」形式 –

    i. 接頭辞, 「する/いたす」を削除 – ii. に対応している語であれ ば動詞を名詞に置き換える • お知らせいたします ⇒ 知らせる • 5) 「接頭辞 + 名詞」 形式 – 接頭辞の「お/ ご」を削除する • お買い物 → 買い物 • ご指摘 → 指摘 9
  9. 換言精度の評価実験と結果 • 5つの換言規則がどの程度の精度で換言できるかを評価 • 【手法】 1.現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)から換言規則 が適応できる文を100文ずつ抜き出す. 2. 換言が適切かどうか人手で評価を行う. •

    【結果】 ⇒ 適応可能な換言対象は BCCWJ全体の 約 16[%] 10 規則 誤り 助動詞「~ます」 0 置き換え形式 6 「接頭辞「お/ご」 + 動詞 + になる」形式 3 「お/ご + 名詞 + する/いたす」形式 22 接頭辞 + 名詞 6
  10. 失敗例と考察 (1/2) • 「お連れする」 ⇒ 「連れる」 - に「案内する」を登録すること で対応 •

    「お伝えください」 ⇒ 「伝える ください」 → - “~してください”: - “~してくれ” に置き換え 11
  11. e.g. 「もしお望みでしたら ~」 ⇒「もし望みでしたら ~」 → 「もし望んでいるのであれば、 ~」 : e.g.

    「いいおさらいになる」 ⇒「いいさらいになる」 → 「おさらい」が単語辞書に登録されていなかったため 接頭辞の「お」と名詞の「さらい」に解析 - することで対応できる 12 失敗例と考察 (1/2)
  12. BCCWJ中のN-gram 統計量による比較 • 敬語表現の換言を行ったことで、 言語表現がどれほど集約されたかを確認 → 縮約率は 0.5[%]程度改善 14 N-gram

    異なり数 換言後の異なり数 縮約率[%] 1gram 296,986 295,103 99.4 2gram 7,353,271 7,324,711 99.6 3gram 30,683,400 30,597,200 99.7
  13. 動詞名詞対応辞書の作成 • 辞書は以下の規則で作成 • 著者一名(西山)の主観で全確認 【作成手順】 i. 雪だるまの単語辞書からサ変動詞 (「~する」で終わる動詞)を除く、和語動詞を取得 ii.

    2文字以上の動詞の場合は、2文字目のひらがなを「う」 の音から「い」の音へ変換 e.g. 「働く」 → 「働き」 iii. 3文字以上の動詞の場合は、最後の1文字の音を手順iiと同様 に変換、 あるいは最後の1文字を削除 e.g. 「生まれる」 → 「生まれ」 iv. 手順ii,iiiで生成した単語が雪だるまに名詞として存在していれば 採用
  14. 16 N-gram 異なり数 換言後の異なり数 差分 1gram 296,986 295,103 1,883 2gram

    7,353,271 7,324,711 28,560 3gram 30,683,400 30,597,200 86,200
  15. • 言い換えが必要なもの – お伝えくださいお願いいたします。 • 単語化するひつようのあるもの – おさらいする – おかわりする

    • 不規則変化辞書に追加 – お近づきになる ⇒ 知り合う – お見えになる ⇒ 来る – お出でになる ⇒ 来る
  16. • 不規則変化辞書だけでは対応不十分 – お答え申し上げます ⇒ 答え 言う ⇒ 答えを言う –

    お願い申し上げる ⇒ 願い 言う ⇒ 願いを言う • 動詞名詞対応辞書に追加 – お付き合いする ⇒ 付き合う – お通しする ⇒ 通す – お調べになる ⇒ 調べる – お笑いになる ⇒ 笑う
  17. • お気に召す 気に入る • 拝見する 見る • お目にかかる 会う •

    おっしゃる 言う • 申し上げる 言う • 教授する 受け取る • 思し召す 思う • 存ずる 知る • 拝借する 借りる • 拝聴する 聞く