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解釈性とローディングの密性を両立するリスクファクター抽出手法

s-noma
November 12, 2023

 解釈性とローディングの密性を両立するリスクファクター抽出手法

第31回 人工知能学会 金融情報学研究会(SIG-FIN)
報告資料
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaisigtwo/2023/FIN-031/2023_126/_article/-char/ja

s-noma

November 12, 2023
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  1. 解釈性と ローディングの密性を両立する リスクファクター抽出手法 2023年10月14日 野村アセットマネジメント株式会社 運用部 グローバルアクティブグループ 野間 修平 1

    本報告の内容は筆者に帰属し,所属する組織としての見解を示すものではない. また,本報告にある誤りは全て筆者の責に帰する. 第31回 人工知能学会 金融情報学研究会 報告資料
  2. 本研究の概要 本研究の概要 各資産の価格変動を横断的に説明する共通因子(リスクファクター)を 抽出する手法を提案 ・ 提案手法によって構成されるリスクファクターは ✔ 解釈が容易 ✔ ファクターローディングが密

    という2つの性質を満たす ・ マルチアセット市場データを用いた実験により,提案手法よって抽出された リスクファクターがマクロ経済的な概念と紐づけて解釈可能であることを確認 2 序論 提案手法 数値実験 結論 補論
  3. リスクファクター抽出手法の定式化 ・ 債券,株式,商品など,マルチアセット市場における様々な資産のリターンから リスクファクターを抽出する ・ すなわち,各時点における各資産のリターンを並べた行列 𝑅 が既知であるもとで ファクターリターン 𝑭

    及びファクターローディング 𝑽 のペアを推定する問題を考える 記法 行列表示 𝑅 = 𝐹𝑉⊤ + 𝐸 𝑟𝑡,𝑖 = ෍ 𝑘∈ 𝐾 𝑣𝑖,𝑘 ⋅ 𝑓𝑡,𝑘 + 𝜖𝑡,𝑖 問題設定と記法 3 𝑅 ∈ ℝ𝑇×𝑁 各資産のリターン 𝐹 ∈ ℝ𝑇×𝐾 ファクターリターン 𝑉 ∈ ℝ𝑁×𝐾 ファクターローディング (感応度,エクスポージャー) 𝐸 ∈ ℝ𝑇×𝑁 残差リターン 成分表示 𝑁 (59) 資産数 𝑇 (592) 観測数 𝐾 (3) 抽出する ファクターの数 括弧内の数値は本研究における実証分析の設定を表す. 序論 提案手法 数値実験 結論 補論
  4. 序論 本研究の背景 リスクベース・アプローチ ・ 近年,推定が困難である期待リターンを用いずに,推定リスクのみに基づいて ポートフォリオを構築する手法(リスクベース・アプローチ)が盛んに研究されている⋅1 ・ 中でも,各資産のリスク寄与度を等しくするリスクパリティ戦略は実務家を中心に注目を 集めている [Qian

    (2005)], [Maillard et al. (2010)] リスクパリティ戦略の問題点 ・ リスクパリティ戦略は意図せぬリスクの集中が生じ得る [Bhansali (2011)] ・ リスクファクターを制御対象とすることによってリスクの源泉を分散させる Factor Risk Budgeting戦略が提案されている [Roncalli and Weisang (2016)] リスクファクターの構成手法 ・ リスクファクターの構成手法としては主成分分析(PCA)が広く用いられている⋅2 5 1 Risk Parity [Qian (2005)], [Maillard et al. (2010)],Maximum Diversification [Choueifaty and Goignard (2008)], Equal-Weighted [DeMiguel et al. (2009)],Risk Budgeting [Bruder and Roncalli (2012)] 2 [Bhansali (2011)], [Bhansali et al. (2012)], [Roncalli and Weisang (2016)], [伊藤・中川 (2018)] 提案手法 数値実験 結論 補論
  5. 序論 Factor Risk Budgeting戦略 Factor Risk Budgeting戦略のアセットアロケーションへの活用 ・ マルチアセット市場において構成された上位のリスクファクターは,マクロ経済的な観点から 解釈が与えられることが多く⋅1

    ,マクロファクターとも呼ばれる e.g.) リスク資産に正,低リスク資産に負のローディング → 経済成長 [Bhansali et al. (2012)] 商品に正,国債に負のローディング → インフレ [伊藤・中川 (2018)] ・ ファンドマネージャーは市場見通しに基づいて各リスクファクターへのリスク配分を決定する 6 1 [Bhansali (2011)], [Bhansali et al. (2012)], [伊藤・中川 (2018)] 0% 2% −2% 通貨 国債 社債 株式 経済成長 流動性 インフレ 商品 景気拡大,インフレ減速を予想 流動性の影響はヘッジしたい リスク配分を決定 抽出・解釈された リスクファクター 資産 ファンド マネージャー 提案手法 数値実験 結論 補論
  6. PCAによって抽出されるリスクファクターの問題点 ・ 下位のリスクファクターを解釈することが困難 → PCAによって構成されたリスクファクターのうち,解釈可能なものは上位数本⋅1 ・ 解釈可能なリスクファクターをより多く抽出することができれば ファンドマネージャーは自身の経済・市場見通しをポートフォリオへより精緻に反映可能に 序論 PCAの問題点

    7 提案手法 数値実験 結論 補論 ? % 0% ? % 通貨 国債 社債 株式 経済成長 ? ? 商品 インフレ減速を予想するが インフレに対応するファクターが 得られていない... リスク配分に苦慮 抽出された リスクファクター 資産 ファンド マネージャー 解釈可能なリスクファクターが多ければ多い程 Factor Risk Budgeting戦略におけるブレスや転移係数は向上 1 [Bhansali (2011)], [Bhansali et al. (2012)], [伊藤・中川 (2018)]
  7. 序論 野間・中川・伊藤の手法 野間・中川・伊藤の手法 [野間・中川・伊藤 (2020)] ・ ファクターローディングにℓ𝟏 正則化を施すことにより ローディングをスパースとする(多くの0成分が持つようにする)リスクファクター抽出手法 ・

    ローディングがスパースであるため,各リスクファクターが説明に寄与する資産は限定される → リスクファクターの解釈が容易となる 8 提案手法 数値実験 結論 補論 経済成長 流動性 インフレ 通貨 国債 社債 株式 商品 BEI 株式に正,国債に負のローディング ↓ 「経済成長」と解釈 商品とBEIに正,国債に負のローディング ↓ 「インフレ」と解釈
  8. 序論 野間・中川・伊藤の手法の問題点① ・ スパース性の仮定が強い → マクロ経済的な概念に紐づくリスクファクターの影響を全く受けない資産の存在を仮定している 野間・中川・伊藤の手法の問題点 9 提案手法 数値実験

    結論 補論 マクロ経済的な概念を表象するリスクファクターが 一部資産の価格変動に一切寄与しないとするスパース性の仮定は 実際の市場と整合しない面も 流動性 インフレ 通貨 国債 社債 株式 商品 BEI 経済成長 成長期待が高まれば ディマンドプル型のインフレを 市場は想起しよう 経済成長 ファクター からの 寄与は0
  9. 序論 野間・中川・伊藤の手法の問題点② ・ 分散効果の低下 → Factor Risk Budgeting戦略はリスクファクターに対する感応度をコントロール → ローディングがスパース

    = 感応度のコントロールに活用することができる資産が少数 → 特定の資産に偏重したポートフォリオが出力されやすい 野間・中川・伊藤の手法の問題点 10 提案手法 数値実験 結論 補論 リスクの源泉をコントロールしながら 固有リスクを抑制するFactor Risk Budgeting戦略のコンセプトと矛盾 経済成長 流動性 インフレ 通貨 国債 社債 株式 商品 BEI 経済成長の加速を予想して リスク配分を決定 0% 3% 0% 国債と株式に 偏重した ポートが出力 ↓ 固有リスク:大
  10. 提案手法 提案手法 提案手法の概要 ・ 解釈性とファクターローディングの密性を両立するリスクファクター構成手法を提案 ・ 解釈性を高めるためには正則化,すなわち事前知識の追加的な入力が必要 ・ ファクターリターンやローディングが満たすべき特徴を分析者が自らの経験則からデザインし, これに基づいて正則化を施してもよいが,客観性に乏しく,知識発見の機能を失う

    ・ そこで,本研究では資産クラスという客観的な情報を追加的に入力することを考える 12 序論 数値実験 結論 補論 PCA 野間・中川・伊藤 提案手法 ローディングの 制約 互いに直交 𝑉⊤𝑉 = 𝐼𝐾 各列の 𝐿2 ノルムが1 𝑣𝑘 2 = 1 正則化 なし ローディング 𝑉 が スパース 資産クラスの 情報を活用 リスクファクターの 解釈性 × ◦ ◦ ローディングの 密性 ◦ × ◦
  11. 提案手法 関連研究 Obliclus法 Obliclus法 [Yamamoto and Jennrich (2013)] ・ ファクターの解釈性を高めるようなローディングの回転方法を導く手法

    ・ 観測変数がなすクラスター構造に関する情報を活用した正則化を施す ・ 同一のクラスターに属する観測変数のローディングの2乗が互いに近しいものとなるように正則化 13 序論 数値実験 結論 補論 現代文 英語 世界史 ファクター1 ファクター2 数学 物理 抽出された ファクター 試験の成績 人文科学クラスター 自然科学クラスター 同一クラスターに属する 観測変数のローディングの2乗を 互いに近しく ファクター3
  12. 提案手法 関連研究 Obliclus法 クラスター構造に関する情報 ・ クラスター構造に関する情報は クラスターパラメータ行列 で保持する ・ 当該行列

    𝐻 ∈ ℝ𝑁×𝐶 は観測変数 𝑖 ∈ 𝑁 が クラスター 𝑐 ∈ 𝐶 に属するときに ℎ𝑖𝑐 = 1 とし その他の成分を 0 とすることで定義されます 14 序論 数値実験 結論 補論 人文科学クラスター 自然科学クラスター 現代文 1 0 英語 1 0 世界史 1 0 数学 0 1 物理 0 1 クラスターパラメータ行列 𝐻
  13. 提案手法 提案手法 提案手法 ・ リスクファクターの解釈性を高めるべく,Obliclus法を応用することを考える ・ 提案手法では「観測変数」を「資産」に,「クラスター」を「資産クラス」にそれぞれ読み替える → 同一資産クラスに属する資産のローディングが互いに類似した傾向を示すように ・

    さらに,Obliclus法では「ローディングの2乗」が互いに近しいものとなるように正則化しているが, 提案手法ではローディングが符号も含めて互いに近しいものとなるように正則化する 15 序論 数値実験 結論 補論 通貨 国債 社債 株式 経済成長 流動性 インフレ 商品 資産 抽出された リスクファクター 同一資産クラスに属する 資産のローディングの2乗を 符号も含めて互いに近しく
  14. 提案手法 提案手法 最適化問題の定式化 最適化問題の定式化 ・ 以上を踏まえ,提案手法に対応する最適化問題を定式化する ・ 目的関数は次の2項から構成される 第1項: リスクファクターの説明力(の逆符号)

    第2項: 同一資産クラスに属する資産のローディング同士の類似性(の逆符号) 16 提案手法に対応する最適化問題 序論 数値実験 結論 補論 𝑅 − 𝐹𝑉⊤ Fro 2 + 𝜆 ⋅ 𝑉 − 𝐻 𝐻⊤𝐻 −1𝐻⊤𝑉 Fro 2 𝑓 𝑘 ⊤𝑓𝑘′ = 0 𝑣𝑘 2 = 1 minimizing 𝑈,𝐷,𝑉 subject to
  15. 数値実験 実験概要とセットアップ 概要 ・ 各国の通貨,債券,株式および商品を含むマルチアセット市場データに提案手法を適用 ・ 抽出されたリスクファクターをマクロ経済的な概念と紐づけて解釈する ・ 解釈は以下の3つ観点から行う ✓

    ローディングの形状から ✓ イベントに対する反応から ✓ ファンダメンタルズとの連動性から セットアップ 18 資産数 𝑁 59資産 (次頁に一覧表を記載) 観測数 𝑇 水曜引け週次リターン592週 (2012/01/04 – 2023/05/31) ファクター数 𝐾 3本 クラスター数 𝐶 15サブ資産クラス スパース性を調整する チューニングパラメータ 𝜆 𝜆 = 1 序論 提案手法 結論 補論
  16. 数値実験 リターンの定義 ・ 7の資産クラスに属する59の資産を分析対象とする ・ リターンの定義 ✓ 通貨,債券インデックス,株式,商品は4週変化率 ✓ 名目金利,期待インフレ率,スプレッドは4週変化

    ・ 符号の調整 ✓ 名目金利とスプレッドは当該資産が買われたときにプラスのリターンを示すよう 符号を反転させる ・ 前処理 ✓ ボラティリティを均一とすべく,各資産のリターンはL2ノルムが1となるよう尺度化する リターンの定義 19 アセットクラス 通貨 名目 金利 BEI 債券 Idx Spr 株式 商品 資産数 6 12 6 6 5 11 13 序論 提案手法 結論 補論
  17. ローディングの形状から グローバル経済に対する成長期待 ・ ファクターの上昇は株式の上昇,スプレッドのタイトニング,先進国国債の下落,米ドルと日本円の減価に寄与 ・ こうした低リスク資産からリスク資産への資金移動,すなわち,市場におけるリスク選好度の高まりは 経済成長に対する期待が高まった際にみられる ・ 従って,第1リスクファクターは「グローバル経済に対する成長期待」に対応すると解釈される ・

    一方,成長期待の高まりはディマンドプル型のインフレを伴う ・ これは,ファクターの上昇が期待インフレ率の上昇や商品の上昇に寄与することと整合的 数値実験 第1リスクファクターの解釈 21 序論 提案手法 結論 補論 ドル安 円安 金利上昇 新興国国債 社債 上昇 エネルギー 産業用金属 上昇 株式上昇 BEI 上昇 スプレッド タイトニング 金 下落
  18. ローディングの形状から グローバル金融市場における流動性拡大期待 ・ ファクターの上昇は国債,社債,株式,商品の上昇と米ドルの減価に寄与 ・ こうしたリスクの水準によらず広範な資産が買われる相場は,主要各国の中央銀行が緩和的な金融政策を通じて 市場に流動性を供給する際にみられやすい ・ 従って,第2リスクファクターは「グローバル金融市場における流動性拡大期待」に対応すると解釈される ・

    ファクターの下落が期待インフレ率の低下に寄与するのは,引き締め的な金融政策がインフレを減速させる ことに対応すると考えられる 数値実験 第2リスクファクターの解釈 22 序論 提案手法 結論 補論 ドル安 金利低下 新興国国債 社債 上昇 商品上昇 株式上昇 BEI 上昇 スプレッド タイトニング
  19. ローディングの形状から コストプッシュ型のインフレ期待 ・ ファクターの上昇は期待インフレ率の上昇,債券の下落,商品の上昇に寄与 ・ 従って,第3リスクファクターは「インフレ期待」に対応すると解釈される ・ 特に,ファクターの上昇が株式の下落やスプレッドのワイドニングに寄与することから 「コストプッシュ型のインフレ期待」に対応すると解釈される ・

    すなわち,コストプッシュ型のインフレは一般に需要の増大を伴わないため, 企業は仕入れ価格の上昇を販売価格に十分転嫁することができず,名目EPSの低下を通じて 株式の下落圧力となることと対応すると考えられる 数値実験 第3リスクファクターの解釈 23 序論 提案手法 結論 補論 円安 金利上昇 新興国国債 社債 下落 エネルギー 産業用金属 上昇 株式下落 BEI 上昇 スプレッド ワイドニング
  20. イベントに対する反応から ・ 20/01/31 : WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言 → リスクオフ / 成長減速懸念 ・

    22/03/16 : Fedが利上げを開始 → 流動性縮小へ ・ 22/02/24 : ロシア軍がウクライナへの侵攻を開始 → 供給懸念拡大 数値実験 リスクファクターの解釈 24 序論 提案手法 結論 補論
  21. ファンダメンタルズとの連動性から ・ 「コストプッシュ型のインフレ期待」を表象する指標を「PPI / CPI」で定義する ・ リスクファクターの6ヶ月変化率と指標の6ヶ月変化率をプロット → 正の関係 ・

    当該ファクターの上昇は,販売価格の上昇を上回るペースでの仕入れ価格の上昇に伴うことが確認された 数値実験 第3リスクファクターの解釈 27 序論 提案手法 結論 補論 相関係数:62.5%
  22. 結論 結論 本報告のまとめ ・ 次の性質を満たすリスクファクター抽出手法を提案した ✔ 解釈性を持つ ✔ ファクターローディングが密 ・

    その有効性をマルチアセット市場データを用いた実験により確認した 29 序論 提案手法 数値実験 補論
  23. 本報告のアウトライン ⚫ 序論 ⚫ 提案手法 ⚫ 数値実験 ⚫ 結論 ⚫

    補論 ✓ 最適化アルゴリズム ✓ リスクファクターによるリスク分解 ✓ PCAによって抽出されるリスクファクターの解釈困難性 30 序論 提案手法 数値実験 結論 補論
  24. 提案手法 最適化問題の定式化 最適化問題の定式化 ・ 提案手法に対応する最適化問題を再掲する ・ 目的関数は次の2項から構成される 第1項: リスクファクターの説明力(の逆符号) 第2項:

    同一資産クラスに属する資産のローディング同士の類似性(の逆符号) 31 提案手法に対応する最適化問題 (1) 序論 数値実験 結論 補論 𝑅 − 𝐹𝑉⊤ Fro 2 + 𝜆 ⋅ 𝑉 − 𝐻 𝐻⊤𝐻 −1𝐻⊤𝑉 Fro 2 𝑓 𝑘 ⊤𝑓𝑘′ = 0 𝑣𝑘 2 = 1 minimizing 𝑈,𝐷,𝑉 subject to
  25. 提案手法 最適化アルゴリズム 最適化アルゴリズム ・ 前頁の問題と等価である次の最適化問題を考える( 𝐹 = 𝑈𝐷 と分解 )

    ・ このとき,他の変数を固定したもとでは,𝑈, 𝐷 の大域的最適解は直ちに求まる ・ そこで,ブロック座標降下法のように変数 𝑈, 𝐷, 𝑉 の更新をサイクリックに行うことを提案 32 更新の対象 更新アルゴリズム 𝑈 直交Procrustes解析 [Grower et al. (2004)] 𝐷 解析解が求まる 𝑉 ノルム制約がない場合の解析解を求めた後 各列ベクトルを𝐿2 ノルムが1となるように尺度化 序論 数値実験 結論 補論 提案手法に対応する最適化問題(2) 𝑅 − 𝑈𝐷𝑉⊤ Fro 2 + 𝜆 ⋅ 𝑉 − 𝐻 𝐻⊤𝐻 −1𝐻⊤𝑉 Fro 2 𝑈⊤𝑈 = 𝐼𝐾 𝑣𝑘 2 = 1 𝐷 ∶ diagonal matrix minimizing 𝑈,𝐷,𝑉 subject to
  26. 提案手法 最適化アルゴリズム 𝑼 の更新 ・ 直交Procrustes解析 [Grower et al. (2004)]

    により大域的最適解を得る ✔ 特異値分解定理やLagrangeの未定乗数法などから導出される ✔ アルゴリズム ① 𝐵 ← 𝑅𝑉𝐷 ② 𝐵 SVD 𝑃Σ𝑄⊤ (𝐵 ∈ ℝ𝑇×𝐾 の特異値分解) ③ 𝑈∗ ← 𝑃𝑄⊤ (大域的最適解) 33 序論 数値実験 結論 補論 𝑈 に関する最適化問題 𝑅 − 𝑈𝐷𝑉⊤ Fro 2 𝑈⊤𝑈 = 𝐼𝐾 minimizing 𝑈 subject to
  27. 𝑫 の更新 ・ 𝑈⊤𝑈 = 𝐼𝐾 及び 𝑣𝑘 2 =

    1 より,目的関数の diag 𝐷 微分は次のように計算される 𝜕 𝜕 diag 𝐷 𝑅 − 𝑈𝐷𝑉⊤ F 2 = 2 ⋅ diag 𝐷 − diag 𝑈⊤𝑅𝑉 ・ 従って,目的関数は diag 𝐷 に関する凸二次関数 ・ 以上より,大域的最適解は次式 𝑑𝑘𝑘 ∗ = 𝑈⊤𝑅𝑉 𝑘𝑘 𝐷 に関する最適化問題 𝐷 ∶ diagonal matrix 提案手法 最適化アルゴリズム 34 𝐾 次の正方行列を引数にとる関数 diag ∶ ℝ𝐾×𝐾 → ℝ𝐾 を diag 𝐷 ≔ 𝑑11 ⋯ 𝑑𝐾𝐾 ⊤ で定義した. 序論 数値実験 結論 補論 𝑅 − 𝑈𝐷𝑉⊤ Fro 2 minimizing 𝐷 subject to
  28. 𝑽 の更新 ・ 𝐵 ≔ 𝐼𝑁 − 𝐻 𝐻⊤𝐻 −1𝐻⊤

    と定めれば,無制約最適化問題の解𝑉∗ は次式 𝑉∗ = 𝐼𝑁 + 𝜆 ⋅ 𝐵⊤𝐵 −1𝑅⊤𝑈𝐷 𝐷2 + 𝜆 ⋅ 𝐼𝐾 −1 ・ 提案アルゴリズムでは上記の手続きによって得られた 𝑉∗ の各列を 𝐿2 ノルムが1となるように尺度化することで𝑉 を更新する 𝑉 に関する最適化問題 提案手法 最適化アルゴリズム 35 序論 数値実験 結論 補論 𝑅 − 𝑈𝐷𝑉⊤ Fro 2 + 𝜆 ⋅ 𝑉 − 𝐻 𝐻⊤𝐻 −1𝐻⊤𝑉 Fro 2 𝑣𝑘 2 = 1 minimizing 𝑉 subject to
  29. 本報告のアウトライン ⚫ 序論 ⚫ 提案手法 ⚫ 数値実験 ⚫ 結論 ⚫

    補論 ✓ 最適化アルゴリズム ✓ リスクファクターによるリスク分解 ✓ PCAによって抽出されるリスクファクターの解釈困難性 36 序論 提案手法 数値実験 結論 補論
  30. 補論 数値実験 リスクファクターによるリスク分解 ・ ファクターローディング 𝑉 の第 𝑖 行ベクトルを 𝑣

    𝑖 ∈ ℝ𝐾 と表せば, 資産 𝒊 のリターンが並んだベクトル 𝑟𝑖 ∈ ℝ𝑇 は次式を満たす: 𝑟𝑖 = 𝐹𝑣 𝑖 + 𝜖𝑖 ・ 従って,ファクターリターンが互いに直交するもとでは,資産 𝑖 のリスク 𝜎𝑖 は 次式のように分解することが出来る: 𝑇 ⋅ 𝜎𝑖 2 ≔ 𝑟𝑖 ⊤𝑟𝑖 = 𝑣 𝑖 ⊤ 𝐹⊤𝐹𝑣 𝑖 + 𝜖𝑖 ⊤𝜖𝑖 + 2𝜖𝑖 ⊤𝐹𝑣 𝑖 = ෍ 𝑘 𝑓𝑘 2 2 ⋅ 𝑣𝑖,𝑘 2 + 𝜖𝑖 ⊤𝜖𝑖 + 2𝜖𝑖 ⊤𝐹𝑣 𝑖 ・ 資産 𝒊 のリスクの内,リスクファクター 𝒌 に由来するものの割合 𝒃𝒊 𝒌 を次式で定義: 𝑏𝑖 𝑘 ≔ 𝑓𝑘 2 ⋅ 𝑣𝑖,𝑘 σ 𝑙 𝑓𝑙 2 ⋅ 𝑣𝑖,𝑙 + max 0, 𝑟 𝑖 ⊤𝑟𝑖 − σ 𝑙 𝑓𝑙 2 2 ⋅ 𝑣 𝑖,𝑙 2 リスクファクターによるリスク分解 38 序論 提案手法 結論
  31. 補論 数値実験 リスクファクターによるリスク分解(PCA) ・ PCAによって抽出された上位3本のリスクファクターについて 資産 𝒊 のリスクの内,リスクファクター 𝒌 に由来するものの割合

    𝒃𝒊 𝒌 は下図の通り ・ 株式はPC1,国債はPC2からの寄与が支配的 → 各リスクファクターは単に資産クラスを表象? ・ 対照的にPC3は広範な資産の価格変動を説明しているが,いずれもその寄与は小さく, 残差を機械的に説明しているように思える リスクファクターによるリスク分解 39 序論 提案手法 結論
  32. 補論 数値実験 リスクファクターによるリスク分解(提案手法) ・ 提案手法によって抽出された上位3本のリスクファクターについて 資産 𝒊 のリスクの内,リスクファクター 𝒌 に由来するものの割合

    𝒃𝒊 𝒌 は下図の通り ・ 多くの資産の価格変動が3本のリスクファクターそれぞれから偏りなく説明されている リスクファクターによるリスク分解 40 序論 提案手法 結論
  33. 本報告のアウトライン ⚫ 序論 ⚫ 提案手法 ⚫ 数値実験 ⚫ 結論 ⚫

    補論 ✓ 最適化アルゴリズム ✓ リスクファクターによるリスク分解 ✓ PCAによって抽出されるリスクファクターの解釈困難性 41 序論 提案手法 数値実験 結論 補論
  34. PCAによって抽出されるリスクファクターの解釈困難性 ・ マルチアセット市場データにPCAを適用してリスクファクターを抽出する⋅1 ・ 分析対象は為替,債券,株,商品など,広範な資産クラスに属する59資産 ・ ファクターローディングから当該リスクファクターを解釈する ✓ ファクターの上昇は「ドル安」「米金利低下」「商品価格上昇」に寄与 ✓

    こうしたドルの減価やドル建て資産の上昇は,FRBによる緩和的な金融政策を想起させる ✓ しかし,そうであれば「株式の下落」は違和感 ・ 上位2本のリスクファクターが説明しきれなかった残差リターンを機械的に説明する リスクファクターか 序論 PCAの問題点 42 ドル安 提案手法 数値実験 結論 補論 米金利 低下 社債価格 下落 商品価格 上昇 株式 下落 スプレッド ワイドニング 1 実験セットアップは[数値実験]節のものと同様.
  35. 参考文献①:リスクベースポートフォリオ ・E. Qian : "Risk parity portfolios: Efficient portfolios through

    true diversification.“ Panagora Asset Management, (2005). ・S. Maillard, T. Roncalli and J. Teïletche : "The properties of equally weighted risk contribution portfolios.“ The Journal of Portfolio Management, 36(4), (2010), pp. 60—70. ・Y. Choueifaty and Y. Coignard : “Toward maximum diversification.” The Journal of Portfolio Management, 35(1), (2008), pp. 40—51. ・V. DeMiguel, L. Garlappi and R. Uppal : “Optimal versus naive diversification: How inefficient is the 1/N Portfolio Strategy?” The review of Financial studies, 22(5), (2009), pp. 1915—1953. ・B. Bruder and T. Roncalli : “Managing risk exposures using the risk budgeting approach.” Available at SSRN, 2009778, (2012). 44 序論 提案手法 数値実験 結論 補論
  36. 参考文献②:リスクファクター ・V. Bhansali : “Beyond risk parity.” The Journal of

    Investing, 20(1), (2011), pp. 137—147. ・T. Roncalli and G. Weisang : "Risk parity portfolios with risk factors.“ Quantitative Finance, 16(3), (2016), pp. 377—388. ・V. Bhansali, J. Davis, G. Rennison, J Hsu and F. Li : “The risk in risk parity: A factor-based analysis of asset-based risk parity.” The Journal of Investing, 21(3), (2012), pp. 102—110. ・伊藤彰朗・中川慧 “マクロファクターの定量化とリスク分析への活用” 証券アナリストジャーナル, 56(8), (2018), pp. 80—90. ・野間修平・中川慧・伊藤彰朗 “解釈性を持つマクロファクター構成手法” 第31回人工知能学会金融情報学研究会, 25, (2020), pp. 54—61. 45 序論 提案手法 数値実験 結論 補論
  37. 参考文献③:PCA・Obliclus法・最適化 ・H. Abdi and L. J. Williams : “Principal component

    analysis.” Wiley interdisciplinary reviews, 2(4), (2010), pp. 433—459. ・M. Yamamoto and R. I. Jennrich : “A cluster-based factor rotation.” British Journal of Mathematical and Statistical Psychology, 66(3), (2013), pp. 488—502. ・J. C. Gower : “Generalized Procrustes analysis.” Psychometrika, 40(1), (1975), pp. 33—51. 46 序論 提案手法 数値実験 結論 補論