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ブロックチェーンのインセンティブ設計とその上の様々なアセットと若者の心がけ@CryptoAge

 ブロックチェーンのインセンティブ設計とその上の様々なアセットと若者の心がけ@CryptoAge

Ryuya Nakamura

August 02, 2018
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  1. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 1 ブロックチェーンのインセンティブ設計と その上の様々なアセットと 若者の心がけ @veryNR 2018.8
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    reserved. 2 自己紹介 ▪ LayerX Inc. – エンジニア ▪ 経歴 – Gunosy Inc. データ分析部 • 動画配信ロジックの開発など • Python, Go, SQL – Coubic Inc. • 営業 – 日本ヒューマンビートボックス協会 • お手伝い – 東京大学工学部システム創成学科 • 休学中 中村龍矢 @veryNR
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    reserved. 3 LayerX ▪ ICO関連事業 – トークン設計・実装、コンサルティング – コード監査 ▪ マイニング事業 ▪ 研究開発 – Plasma, State Channel • VyperによるPlasmaの実装(comming soon!) – ブログ発信 • https://blockchain.gunosy.io/ ▪ BLOCKCHAIN.TOKYO
  4. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 4 アジェンダ ▪ ブロックチェーンの基本 – メカニズムデザイン – スマートコントラクト ▪ ブロックチェーン上の様々なアセット – 「トークン」さまざま ▪ ブロックチェーンを実際仕事としてやるってどんな感じ? – 難しいところ – 若者の心がけ
  5. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 5 ブロックチェーンの基本
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    reserved. 6 ブロックチェーンというステートマシン ▪ 冗長なステートマシン – 数千~数万ノードが一定間隔で同じ状態 遷移をする ▪ Bitcoinの「状態」 – bitcoinを使った過去の取引一覧 (誰が何BTC持っているか) ▪ Ethereumの「状態」 – 誰が何ether持っているか – ストレージ • 任意のデータ – コード • チューリング完全なプログラム • ether送金やストレージの変更が可 能 http://takenobu-hs.github.io/downloads/ethereum_evm_illustrated.pdf ※分散型データベースと異なり、状態遷移も自律的に行い、そのロジックも状態の一部と して誰でも登録できる
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    reserved. 7 コードとストレージの例 Cryptokitties: 猫を売買したり繁殖させるゲーム
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    reserved. 8 コードとストレージの例 Cryptokitties: 猫を売買したり繁殖させるゲーム 分散型アプリと言ってもブロックチェーン上に載せるのは一部のビジネスロジックだけ
  9. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 9 状態遷移のルール ▪ トランザクション: 状態遷移を依頼するチケット – 「Bobに5ETH送金」「transfer関数を実行して猫AをCarolに送る」 – 処理できる状態遷移にはキャパがある • 手数料高いチケットから順に選ばれる ▪ ブロック: 今回の状態遷移で実行するトランザクションが詰め込まれたもの – ブロック作成 = マイニング – どのマイガーがつくったブロックに従うのか? • このルールがコンセンサスアルゴリズム http://takenobu-hs.github.io/downloads/ethereum_evm_illustrated.pdf
  10. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 10 コンセンサスとメカニズムデザイン
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    reserved. 11 コンセンサスアルゴリズム http://takenobu-hs.github.io/downloads/ethereum_evm_illustrated.pdf ▪ Proof of Work(PoW): 一番早く計算ゲームを解 いたノードが勝ち – 計算自体に意味はない ▪ マイニング 1. トランザクションを選ぶ 2. 注文通りに状態遷移のためのコードを実 行、ブロックを作る 3. PoW用の計算をする 一番計算量多 い ▪ マイニング報酬というインセンティブ – 基本報酬 + トランザクション手数料  → 常にみんなが競争する  → 悪者が勝つのが難しい    勝つ力があるなら攻撃しない方が合理的
  12. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 12 ▪ メカニズムデザイン – 上手くルールを設計し、そのシステムが望ましい性質を満たすようにすること ▪ 「クリプトエコノミクス」とも言われる – 暗号と経済的インセンティブを用いて情報セキュリティ的要件を達成する ▪ Bitcoin/Ethereumの場合の望ましい性質(by Vitalik) – Convergence • 新しいブロックがチェーンに繋がれ、取り除かれたりしない – Validity • 正当なトランザクションのみがブロックに含まれる – Data availability • ブロックチェーンのデータをダウンロードできる – Non-censorship • 十分なtx手数料を払えばすぐにブロックに取り込まれる →これらは、「ある程度」の割合のノードがビザンチンな振る舞いをしても成り立つ メカニズムデザイン (パブリック)ブロックチェーンはメカニズムデザインの一つの形 参考: https://fc17.ifca.ai/wtsc/Vitalik%20Malta.pdf
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    reserved. 13 スマートコントラクト
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    reserved. 14 スマートコントラクトとは ▪ 「自動執行される契約」 – ブロックチェーンに限らない(ex: 自動販売機) ▪ ブロックチェーン式の自動執行契約の特徴 – 透明性 • 契約内容はオープンソースのプログラム – 非中央集権性 • 一度デプロイされたら半永久的にホストしてくれる ▪ 例: オンラインカジノ – イカサマの心配なし – 「胴元」の手数料はなしにできる ▪ 透明で非中央集権的なのはあくまでデータとロジック https://showcase.funfair.io/ ブロックチェーン上にどんな資産が乗ってくるのか?
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    reserved. 15 ブロックチェーンに乗るアセット
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    reserved. 16 ブロックチェーンに乗るアセット ▪ 通貨の素材としての必要条件を満たすモノの中では下記のような特徴 – 物理的な実体を持たない(実体がデータ) – 中央集権的な管理者なし(国家に依存しない) ▪ 送金手段として – 物理的制約のない「現金手渡し」 – 銀行をいくつも仲介しない海外送金 – 口座を持たない人に対するマイクロファイナンス ※ 日常の決済手段/マイクロペイメントで便利かは今後の技術発展次第 ▪ 資産の保管場所として – 法定通貨のリスクが大きい国のお金持ちがお金を逃がす場所 ▪ これらに加え、ブロックチェーンの利用料として唯一利用可能 ▪ 仮想通貨が他に勝る利用法がある(と期待される) → 値段がつく → ステートマシンを維持するインセンティブ設計が機能する 暗号通貨
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    reserved. 17 ブロックチェーンに乗るアセット ▪ ブロックチェーンとトークンを使って様々なサービスが展開 – Gnosis, Augur, OmiseGo, Steemit, etc. ▪ 様々なロジックでトークンエコノミクスを構成 – ユーティリティ系 • サービス利用に使える - 例: 分散型カジノの賭け金に使える – セキュリティ系 • サービスの手数料の配分 - 例: 分散型カジノの手数料が配当される → 複数種類のトークンで構成する方式も増えてきている Dappに紐づくトークン
  18. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 18 ブロックチェーンに乗るアセット ▪ 具体例: CrowdVilla – 不動産プラットフォーム – デュアルトークンモデル • CrowdVilla Token (CRV) - プラットフォームの不動産価値に紐づく - ICOで配布する • CrowdPoint Token (CROWD) - CrowdVillaプラットフォーム内の不動産を利用(宿泊など)する場合の支払 い手段 - CRV保有者に保有量に応じて定期的に発行される ▪ サービス主体に依存しているからと言って意味がないわけではない! – 例: 利用対象がDappじゃない/Dappだけど特定の事業者に強く依存 – 透明で改ざんされないデータとロジックを使う意味もある • 少なくとも資金調達に組み込むなら重要 特定のビジネスに紐づくトークン
  19. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 19 ICO ▪ 資金調達手法としての特徴 – 株式→契約は法律 • 配当や議決権 – ICO→契約はプログラム • 価値の持たせ方は自由! ▪ 利点 – グローバルオファリング • 現地の証券会社を介さず購入/配当の授受 – 株式では調達しにくい人からの調達 • 例: VTuberのICOにファンが投資 • 海外投資家 ▪ 資金調達のためだけに設計されるトークンエコノミクスも多い – が、それは悪いことではない(と個人的には思う) – 投資家・ユーザーがそれを選んでくれるかは別問題 トークンを用いた資金調達手法
  20. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 20 ブロックチェーンに乗るアセット ▪ 特定の不動産や自動車などの所有権や配当を受ける権利をトークン化 ▪ 具体例: BANKEX – 様々なアセットをトークン化するプラットフォーム – 事業者がアセットのトークン化サービスを提供 • 例: 「Instagramのアカウントをトークン化し、クラウドファンディング、広告収入を トークン保有者に配分」 ブロックチェーン外のアセットに紐づくトークン
  21. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 21 ブロックチェーンに乗るアセット 現実のアセットのトークン化の難しさ ▪ トークン化された権利を現実で行使する仕組みが必要 – 管理者に任せる • KYC, 紛争解決, 法規制 – メカ/IoTによる代替 • スマートロック • GMS社の例: 支払い滞納したら自動車のエンジンが止まる ▪ 実際にトークン化できる資産は限定的 – エコシステムが整ってくれば増えるかも • 規制、管理会社、ユーザー、周辺サービス – 株式や不動産も事件を繰り返して進んできた
  22. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 22 ブロックチェーンに乗るアセット ▪ 具体例: Decentraland – 仮想空間の中でユーザーはLAND(分割された空間)を所有できる • LAND一つ一つがERC721トークン ▪ アイテムに希少性を持たせるゲーム – 例: 遊戯王のようなカードゲームのカード 実体がデータなもののトークン化は比較的簡単
  23. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 23 金融がアセットからアセットを作る
  24. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 24 アセットが別のアセットを生む ▪ 具体例: Dharma Protocol – ERC20トークンを担保にトークンを借りる ▪ 貸し手には債権トークン(ERC721)が渡り、二次流通可能 ※ 担保にふさわしいトークンがまだあまりない(と思う) – ユーティリティトークンの担保って売却と変わるのか? – 現実のアセットのトークン化が進めばそれを担保にできる(かも) ブロックチェーン上のアセットを担保にしたP2Pレンディング メインネット動いている ←借り注文
  25. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 25 アセットが別のアセットを生む ▪ 具体例: Set Protocol – 担保型バスケットトークン発行のプロトコル ▪ EthereumX:2018年5月時点でのTOP10 ERC20トークンのセット – ETFのようなものが作れる – Vechain, 0x, ICON, Zilliwa, Aeternity, BAT, Augur, Status, Populous, Loom ▪ StableSet:ステーブルコインのセット – 価格変動リスクが抑えられる – TrueUSD、Dai ▪ DEXSet:主要なDEXのトークンのセット – ZRX(0x)、KNC(kyber)、AST(Airswap) アセットの組み合わせ
  26. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 26 アセットが別のアセットを生む ▪ 具体例: dYdX Protocol – 空売り・レバレッジ取引のため、トークンを借りられる – トレーダーは、dYdX上に出ている貸しオーダーと、0xなどのDEX上 のそのトークンの買いオーダーを組み合わせて送信 ▪ 空売り – 値段が下がりそうなトークンを借りてDEXで売る ▪ レバレッジ – 値段が上がりそうなトークンを、DEXで借りたトークンで買う ▪ 他にも、(将来的には)オプション取引など ブロックチェーン上に生まれる様々なデリバティブ
  27. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 27 アセットが別のアセットを生む ブロックチェーン金融が新たなアセットを生む
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    reserved. 28 まとめ ▪ トークンエコノミクスを構成するトークン ▪ 特定のビジネスと対応するアセット ▪ ブロックチェーン外のアセットの所有権 ▪ アセットとスマートコントラクトから生まれたアセット ブロックチェーン上に生まれる様々なアセット
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    reserved. 29 ブロックチェーンの仕事ってどんな感じ?
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    reserved. 30 苦しい/難しいことがたくさん ▪ トークン設計→「使い道がある」では不十分 – 発行/焼却のメカニズムは? – 保有させるの?使わせるの? – 投資家集まる?値上がりのロジックは? ▪ ビジネス面の設計→コードで完結することは少ない – どことパートナーシップ結べばいい? – 関連する(各国の)規制や認可は? ▪ 技術的な設計→Solidity書いただけでは終わらない – オフチェーン技術どう使う? – クライアントアプリ、サーバーは?UXは? • 鍵の管理は?バックアップは? • ブロックチェーン的アクションをどう伝える?
  31. CONFIDENTIAL : copyright © by 2018 LayerX Inc. all rights

    reserved. 31 若者の心がけ ▪ エンジニア/非エンジニアなんてない – 技術・経済がわからなければ、ブロックチェーンだからこそのプロダクトは設計できない – BizDevなしに解決できる課題なんてない • ユーザーを集める • パートナーを巻き込む ▪ 若手は技術力が一番勝負しやすい – 規制・業界知識・BizDevの経験は先輩方に勝てない – 若手はここで負けたら負け