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Slip partitioning along an idealized subduction plate boundary at deep slow slip conditions

Ryo
July 06, 2020

Slip partitioning along an idealized subduction plate boundary at deep slow slip conditions

Ryo

July 06, 2020
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  1. Slip partitioning along an idealized subduction plate boundary at deep

    slow slip conditions Melodie E. French, Cailey B. Condit(2019) 安藤研 M2 並⽊ 亮
  2. 要旨 • 本研究では、厚さ約520mの沈み込み界⾯であるArosa帯の最深部をケーススタ ディとして、SSEサイクルにおける岩相間のひずみの分布を評価した。 • 本研究では、変形速度の関数としてのせん断応⼒を表現するために、既存の5つの 岩相ユニットの構成関係をレビューし、合成した。 • これらの結果を⽤いて、以下の⼆つを予測した. •

    (1)すべり速度の関数としてのプレート境界⾯のせん断応⼒ • (2)SSEと地震時のクリープ速度に対する異なる岩⽯ユニット間の変形の分割 • 本研究では、間隙⽔圧を静⽔圧から準静⽔圧までの範囲で解析を⾏った。 • 間隙⽔圧が静⽔圧に近い状態では、プレート境界すべりは⽯灰質・⽯英質ユニッ トの粘性変形によって発⽣ • 間隙⽔圧が静⽔圧の80%以上のときプレート境界すべりは 地震時クリープでは⽯灰質岩や⽯英質岩から発⽣ スロースリップではタルク⽚岩の摩擦変形から発⽣ • この結果は、⼀般的に沈み込みプレート境界にも適⽤可能
  3. アウトライン • Arosa Zoneの地質概要 • ⼿法 • Arosa Zoneを構成する主要岩⽯ •

    結果 : Arosa zoneにおける滑り分割 • 結果 : Arosa zone以外へのモデルの適⽤ • 結論
  4. Arosa Zoneの地質概要 • ⽩亜紀前期から始新世(120〜50 Mya)までの間,オーストリアアルプス⼤陸 の岩盤の下に南ペニン海の海成岩盤が沈み込んだプレート境界界⾯(Ring et al., 1989; Bachmann

    et al., 2009) • アローザ帯とそれを覆う南アルプス領域は,東アルプスの地表に露出 • 変形条件 • 最北端の露出部では150℃と300MPa • 最南端の露出部では400℃と約900MPa(Bachmann et al., 2009; Jaeckel et al., 2018) これらの条件は,多くの近代的な沈み込み現象の発⽣帯を包含 • プレート境界⾯にシュードタキライト →古温度200〜300℃で地震が発⽣していた(Bachmann et al., 2009) • 本研究では,最深部の岩相分布を使⽤ • ピーク温度 約400℃ • 圧⼒ 約900MPa →古深度約30km・現代の地震帯の基底と同等の環境
  5. Arosa Zoneの地質概要 • スイス・サンモリッツ近郊の2つのサイトに 注⽬(AR1,AR2) • 異なる岩⽯学的ユニットが,少なくとも 100m以上にわたって表層から準平⾏な層を 形成(図1b) •

    炭素質物質温度計のラマン分光法により変形 温度を決定 • AR1 : 430±19 ℃ Jaeckel et al. (2018) • AR2 : 約350℃ Bachmann et al. (2009) • AR1 : スイス地質調査所,連邦地形局が発⾏ している地質図,地形図及び独⾃の地図か ら,アローザ帯の総厚さと個々の岩⽯単位の 厚さを測定 • AR2 : AR1と同じ岩相が存在し,その分布が 類似していることを確認 →両サイトからサンプルを採取して構造観察
  6. ⼿法 : Model Setting • プレート境界と各岩⽯層は⽔平に対して15°傾斜 • σ1 がプレート境界に対して45°の⽅向 (e.g.,

    Hardebeck (2015)) • 鉛直応⼒σV ~900MPa (at 30km depth, 3,000 kg/m3) • プレート境界速度=各層の速度の総和 VPL =ΣVU →strain refractionモデルと同質 (Treagus and Sokoutis, 1992) • 剪断速度 = 歪み速度 x 岩⽯層の厚み VU =γU tU • プレート境界に平⾏なせん断応⼒はモデル全体を通して⼀定である(Rice, 1992) • σ1とσ3の向きは⼀定 • 地震時クリープ(3×10-10 - 3×10-9 m/s) • スロースリップ(10-8 - 5×10-7 m/s) について,プレート境界速度に対応するせん断応⼒の範囲を評価(e.g., Poirier (1985)) • Pf (間隙⽔圧)/σV ≡λ=0.4(hydrostatic) ‒ 0.999(near-lithostatic) をパラメタスタディ
  7. ⼿法 : 摩擦変形則 • 摩擦変形の定常せん断応⼒は • 速度依存性の摩擦係数は次式(⼀般に⼀定温度で測定) • 今回の平⾏層モデルの剪断応⼒は次式で求まる(Bletery et

    al. , 2017) τ 剪断応⼒ μ 摩擦係数 σn normal stress Pf 間隙圧⼒ μ0 温度Tでの摩擦係数 V 滑り速度 V0 温度Tでの滑り速度 δ dip angle ψ 鉛直⽅向とσ1 のなす⾓
  8. ⼿法 : 粘性変形則 • 転移クリープ,拡散クリープ,圧⼒溶解クリープを考慮 • 軸⽅向の歪み速度 • 差応⼒→等価なせん断応⼒(Paterson and

    Olgaard, 2000) • 軸⽅向のひずみ速度→等価なせん断歪み速度(Paterson and Olgaard, 2000) ̇ 歪み速度 A 物性に応じた定数 μ 摩擦係数 σd 差応⼒ Q 活性化エネルギー
  9. 室内実験に基づく構成関係の限界 (摩擦変形) • 室内実験による摩擦係数の推定 • 温度 400℃付近の観測結果あり • 圧⼒ 多くが300MPa以下

    →実際の圧⼒(300-900MPa)は外挿して推定 • 外挿の問題点 • 圧⼒依存性は圧⼒の増加に伴って⾮線形になることが多い →線形外挿だと圧⼒を過⼤評価 • 圧⼒と温度が上昇すると,間隙流体の剪断応⼒に与える効果は⼩さくな るHirth and Beeler (2015) →⾼圧⼒下では摩擦強度を過⼩評価
  10. アウトライン • Arosa Zoneの地質概要 • ⼿法 • Arosa Zoneを構成する主要岩⽯ •

    結果 : Arosa zoneにおける滑り分割 • 結果 : Arosa zone以外へのモデルの適⽤ • 結論
  11. Arosa帯を構成する主要岩⽯ • AR1 の総厚 約520m • ⽯英⽚岩(Quartz schist) 約 40

    m • ⽯灰質⽚岩(Calcareous schist) 約 60 m • 蛇紋岩(Serpentinite) 約235m • Metabasalt and chlorite schist 約185m • タルク⽚岩(Talc schist) 約 10 m
  12. 顕微鏡写真 • PPL :平⾯偏光,XPL: 交差偏光,WPL:波板 • (a)と(b)はAR2の⽯英⽚岩 • (c)はAR1の⽯灰⽚岩 •

    (d)はAR2の蛇紋岩 • (e)はメタバサルト • (f)はクロライト⽚岩 • (g)と(h)はタルク⽚岩 Qtz ⽯英,Mic ⽩雲⺟,Act アクチノライト,Cal カルサイト,Srp アンチゴライト・サーペンタイン, Ox 酸化物,Ep エピドート,Chl クロライト
  13. ⽯英⽚岩(Quartz schist) • 4つの論⽂の構成関係を統合 • 静⽔圧下では,ひずみ速度が2×10-9 s-1以上で摩擦変形すると予測(せん 断応⼒は100-200MPa) • これより低い速度では粘性変形が発⽣し、変形速度の低下に伴ってせん断

    応⼒が急激に減少 • 転位クリープはせん断速度1nm/s,せん断応⼒約40MPaまで強度を制御 • これより低い速度では圧⼒溶液クリープが⽀配的 • 間隙⽔圧が⾼くなると、有効な法線応⼒が減少して摩擦強度が低下 • 間隙⽔圧が⾼くなると、⽯英の⽔の固溶性と溶解度が上昇し、転位クリー プと圧⼒溶液クリープの強度は低下. →間隙⽔圧が⾼くなると、粘性変形から摩擦変形へと移⾏し,変形速度が 低下する
  14. 蛇紋岩(Serpentinite) • プレート境界の約 45%を占める • 摩擦変形は2つのパラメタを使⽤ μ0 = 0.3, V0

    = 0.01 μm/s, (dμss /dlnV)T0 = 0.022 Takahashi et al. (2011) μ0 = 0.56, V0 = 10-8 μm/s, (dμss /dlnV)T0 = 0.018 Moore and Lockner(2013) 間隙圧⼒が⾼い場合
  15. タルク⽚岩(Talc schist) • タルクの粘性レオロジーは知られていない • Moore and Lockner (2008)の結果を使⽤ μ0

    = 0.14, V0 = 1 μm/s, (dμss /dlnV)T0 = 0.007 • 間隙流体圧を上げると,剪断応⼒が⼤きく減少
  16. アウトライン • Arosa Zoneの地質概要 • ⼿法 • Arosa Zoneを構成する主要岩⽯ •

    結果 : Arosa zoneにおける滑り分割 • 結果 : Arosa zone以外へのモデルの適⽤ • 結論
  17. λに応じた 主要岩⽯の構成関係 • 縦軸 剪断応⼒(MPa) • 横軸 剪断速度(m/s) • 粘性機構の速度はひずみ速度γ

    × 層の厚さtu • 間隙流体圧係数λ = P f /σV に応じた構成関係 • 地震クリープ : ⻘の領域 • スロースリップ: 緑の領域
  18. • 静⽔圧下での強度:⽯灰質岩(b)が最も弱い • 地震時クリープ(4 -10MPa) :拡散クリープ • スロースリップ(20 -30 MPa)

    :転位クリープ • 第⼆の弱点は⽯英⽚岩(a) • 地震時クリープ(約30 - 70MPa) :転位クリープと拡散ク リープ • スロースリップ(100 - 300MPa) : 転位クリープと摩擦変形 • これらの岩相がプレート境界での⼤変形に対応して いる可能性 • 間隙⽔圧の増加に伴い,最弱相は粘性変形する炭酸 塩から摩擦変形するタルク⽚岩へと変化 • すべりの遅い場所では,λ>0.8 のときにタルク⽚ 岩(e)が最も弱い岩相 λに応じた 主要岩⽯の構成関係
  19. プレート境界速度VPL の関数 としての剪断応⼒τ • 各岩⽯ユニットの速度を合計しプレート境界速度を 決定 • 低速度では粘性変形機構が強度を制御 • ⾼速度では摩擦変形が⽀配的

    • 粘性変形→摩擦変形の遷移 • 静⽔圧 : 10-5 m/s (3 × 105 mm/yr) • near-lithostatic : 10-12 m/s (0.03 mm/yr) →流体圧⼒の上昇に伴って摩擦強度が低下する • 静⽔圧下のせん断応⼒ • 地震時クリープ速度 : 7±3MPa • スロースリップ速度 : 20±4MPa
  20. • 岩⽯ユニットの変形速度の総和(=プレート境界速度) • 地震型クリープ : 3×10-10 〜 3×10-9m/s(10〜100mm/yr) • SSE

    : 10-8〜5×10-7m/s(300〜1500mm/yr) • ⾼速度で変形する岩相→プレート境界の総変形に最も貢献 • ⽯灰質岩が最も⾼速度で変形(2 番⽬に速い⽯英⽚岩の変形 速度よりも 2 桁近く速い) • 地震時クリープ下での変形メカニズム : ⽯灰質岩の拡散ク リープと⽯英⽚岩の圧⼒溶液クリープ • スロースリップ下での変形メカニズム :⽯灰質岩の拡散クリー プと転位クリープ,⽯英⽚岩の転位クリープと圧解クリープ • 静⽔圧下での蛇紋岩,クロライト,タルク⽚岩の変形速度は 無視できる(10-20 m/s未満 ~ 10-10 mm/yr未満) λに応じた岩⽯ユニットの変形速度 10-20 m/s以上の変形のみ図⽰
  21. • 蛇紋岩,クロライト,タルク • 流体圧の増加(〜岩⽯の摩擦⼒が低下)に伴って寄与が増加 • SSE(λ=0.8,τ=19±5MPa) • タルクと⽯灰質⽚岩は同程度の速度で変形 • プレート境界変形の⼤部分に対応

    • SSE(λ = 0.999,τ= 0.12 ± 0.1 MPa) • プレート境界の⼤部分の変形がタルク • タルクの摩擦強度が流体圧に強く依存しているため • λ≦0.9の地震時クリープの変形は⽯灰質が⼤部分 • せん断応⼒も7±3MPaのまま • λ>0.9ではタルクの変形が顕著 • 流体圧⼒の増加に伴ってせん断応⼒が減少する λに応じた岩⽯ユニットの変形速度
  22. アウトライン • Arosa Zoneの地質概要 • ⼿法 • Arosa Zoneを構成する主要岩⽯ •

    結果 : Arosa zoneにおける滑り分割 • 結果 : Arosa zone以外へのモデルの適⽤ • 結論
  23. Arosa zone以外へのモデルの適⽤ • アローザ帯に存在する岩相は,海洋岩⽯圏と沈み込んだ堆積 物の変成・変成作⽤によって形成 →沈み込み帯の表層岩⽯に共通する岩相 • 現代と過去の沈み込み帯では堆積物の投⼊量が異なる(Plank, 2014) →そのために深部に存在する岩相やその量が異なる可能性

    • 深度の深いSSEを⽰す現代の沈み込み帯(Plank, 2014; Obara and Kato, 2016)のに対応するモデルを検証 • (1)厚さ500mの⽯灰質層と⽯英質層 〜 Costa Rican margin • (2)厚さ1000mの⽯英質層 〜 Alaska and Nankai margins • (3)厚さ1000mの⽯灰質層 〜 southern Hikurangi margin
  24. • ケース 1とケース 3では,主に炭酸塩岩が歪みを受け⼊れている • 粘性変形機構がひずみ速度に及ぼす影響が⼤きい →Arosa帯よりせん断応⼒が低い • また,⽯英質堆積物の厚さが厚い場合(ケース2)は,⽯灰質が存在 する場合には,このような状態で強度を制御しているため,せん断応

    ⼒の増加は緩やかなものとなる(13±11MPa)。 • near-lithostatic(λ=0.999)での変形はタルクの摩擦変形に依存,層の 厚さは関係ない →3つのケースとも,せん断応⼒と滑り分割がアロサ帯と変わらない → near-lithostaticではタルクが⼤きな変形をもたらしている • せん断応⼒がkPaオーダーの場合,タルクの摩擦変形によってSSEが 発⽣することを⽰す(Beeler et al. ,2013)(Gao and Wang, 2017) モデルのArosa zone以外への適⽤
  25. 結論 • 実験的に導出された構成関係を⽤いて,地震時クリープと沈み込み帯底部でのスロー スリップにおける滑り分割を評価 • プレート境界変形のモデルは,特定のユニットが存在しない場合を除いて,変形の分 割が流体圧に強く依存し,岩⽯ユニットの厚さにはあまり依存しないことを⽰す. • 地震時クリープでは,⽯灰質岩が最も弱く,変形の⼤部分を受け⼊れる(極端な流体 圧の場合を除く)

    • スロースリップでは,λ≦0.8 ののとき,⽯灰質岩が最も変形を受け⼊れる(⽯灰質 岩が存在しない場合,変形は⽯英⽚岩に移⾏し,せん断応⼒が増加) • タルク⽚岩は摩擦強度の間隙⽔圧への強い依存性がある →λ>0.8(スロースリップ) λ>0.95(地震時クリープ) で摩擦変形 → 0.8 ≤ λ ≤ 0.95でスロースリップの変形主体は⽯灰質岩とタルク⽚岩の間を移動す ると予想される