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医師がスタッフに AI を教えるとき、どんな内容を話しているか

医師がスタッフに AI を教えるとき、どんな内容を話しているか

2026年5月に横浜ホームクリニック院内で行った Claude Code 入門勉強会のスライド全文。非エンジニアの医療スタッフ向けに、AI とは何か・実際の業務自動化事例・主要用語の整理を扱った内容です。詳細記事は note (https://note.com/motoi_osawa) で順次公開。

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May 17, 2026

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Transcript

  1. 自己紹介 大澤 基(おおさわ もとい)  横浜ホームクリニック 院長 学歴 湘南工科大学 情報工学部 中退

    昭和大学 医学部 卒業 資格 内科専門医 職歴 昭和大学横浜市北部病院 内科 山梨赤十字病院 内科 シティクリニック 院長 2023 年 横浜ホームクリニック開院 情報工学のバックグラウンドを、医療現場の業務効率化に活かしています。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 2
  2. 第四次産業革命 年代 代表技術 働き方の変化 第一次 1760s〜 蒸気機関 手工業職人 → 工場労働者

    第二次 1870s〜 電力・大量生産 流れ作業、ホワイトカラー登場 第三次 1960s〜 IT・インターネット 知識労働者の台頭 第四次 2010s〜 AI・IoT・ロボティクス 知識労働の自動化、AI を使う者(AI オーケストレーター)の出現 第四次で何が起きるか 既存職の消失・代替 9,200 万(WEF 2025、2025-2030 年) 先進国の職の 60% が AI の影響下、半数はマイナス影響(IMF 2024) 二極化が進む。 AI を「使う側」に回れるかで、個人・組織の運命が分かれる。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 4
  3. 目次 1. 用語クイズ ─ Claude Code を使うための用語を学びましょう 2. AI への指示の出し方

    ─ AIに任せるコツ 3. 実例デモ ─ 院内業務をどう自動化しているか 4. Advanced 編 ─ 触り続ける人向けの一歩先 (補足)repo / commit / push の用語解説(git に詳しくない人向け) 完璧に使いこなす必要はありません。 触り続けることが、唯一の上達法です。 → 是非今回のクルズスの内容を持ち帰り、AI を使う者(AI オーケストレーター) となって ください! 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 5
  4. 質問1 外部システムやAI連携に用いる APIキー は、 クラウド上に保存しておくことが望ましい。 ◦ か × か? →

    5秒考えてください。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 7
  5. 質問1 の解説 ── APIキーの危険性 実例: マネーフォワード が 2026 年 5

    月 に GitHub 不正アクセス事案を公表。 ソースコードに ハードコードされたAPIキー が流出し、金融機関 API 連携を一時停止。 (出典: マネーフォワード公式リリース 2026-05-01) リスク 対策 情報漏洩 / 従量課金の不正利用 ローカルの環境変数や秘密ファイル に保存 クラウド経由の流出 クラウド・チャット・コードに 直接書かない 放置による継続リスク 不要時は 速やかに削除・無効化 オススメ: 慣れるまで API キーは使わない。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 9
  6. API キー流出は他人事ではない(2025 年実態) ※ 以下はすべて「公開 GitHub リポジトリ」のみを対象とした集計 2025 年の年間流出件数 約

    2,900 万件(公式: 28.65M、+34% YoY) AI サービス系 secret は 127 万件(+81%) ≒ 1 秒あたり約 0.9 件 が流出(編者試算: 28.65M ÷ 1 年) AI コーディングが押し上げている secret 漏洩率 全 commit 平均 1.5% AI 支援 commit 3.2%(約 2 倍) → AI が「動くサンプル」に実値 API key を書きやすい構造 出典: GitGuardian "State of Secrets Sprawl 2026"(プライベート repo / Docker image / Slack / Jira は別集計) 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 10
  7. 質問2 この画面の Claude Code の入力欄に文章 を入力すると、 subagent が応答する。 ◦ か

    × か? → 5秒考えてください。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 11
  8. subagent と main agent の違い main agent subagent 誰が話しかける? あなたが直接

    main agent が内部で呼び出す 画面に出る? 出る 出ない 役割 全体の指揮 調査・専門タスクを肩代わり あなたが呼び出す main agent は、MEMORY.md に蓄積されることで、セッションをまたい で賢くなっていきます。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 13
  9. MEMORY.md ── Claude の記憶ファイル Claude Code は 使い続けるほど学習が蓄積 されます。 MEMORY.md

    に 過去のセッションで判明した事実 ユーザーの好み・運用ルール 繰り返し答えた内容 が 自動で記録 されます。 Claude は 記憶していくため賢くなっていく。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 14
  10. 質問3 の解説 ① ── なぜ劣化するのか コンテキストウィンドウ(机)に積まれていくもの: 会話履歴(過去のやり取りすべて) 読み込ませた ファイル(README /

    コード / PDF / Excel) Web検索 の結果 ツール実行の出力(コマンド結果・ログ) 超えると古いものが無くなり、情報が劣化。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 17
  11. 質問3 の解説 ② ── 推奨運用 1. 業務ごとにセッションを分ける レセプト確認 ≠ HP修正、別セッションで

    2. 永続させたい情報は CLAUDE.md / MEMORY.md に書き出す セッションを跨いでも引き継ぎたいルール・判断基準はこちらへ 机の上を綺麗に保つこと が、質の高い業務を依頼するコツ。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 18
  12. CLAUDE.md と MEMORY.md の違い CLAUDE.md MEMORY.md 役割 repo / project

    の ルール 過去セッションの 記憶 書き方 人間が手動で書く Claude が 自動で記録 中身 「これは守れ」 「こう振る舞え」 「過去判明した事実」 「ユーザーの好み」 性質 心がけ メモ(参照されるが守るルールではない) CLAUDE.md = ルール(守るべき方針) MEMORY.md = カルテ的記録(過去の経過) 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 19
  13. 質問4 の解説 ── CLAUDE.md と hooks の違い 項目 CLAUDE.md hooks

    性質 AIが読むテキスト 自動実行されるコマンド 強制力 弱(記憶に依存) 強(AI判断と独立に自動実行) 抜ける可能 性 有(取りこぼし・解釈違い) 無(スクリプトのバグ以外は起きない) 例 「秘密ファイルは触らない」と書 く 「秘密ファイル」を触ろうとした瞬間 物理ブロッ ク 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 22
  14. 大澤が使用している主要 hooks ① pre_check_sensitive_paths ─ 機密ファイルを物理ブロック ツール実行直前にファイルパスを検査。 .ssh/ .aws/ secrets/

    .env 等のパターンに合致したら 強制停止。 守られるもの: 認証情報・秘密鍵・APIキー・パスワード 例: Claudeが「 .ssh/config を読みます」と言っても発火、Read自体が走らない ② pre_check_obsidian_context ─ 過去判断を自動ロード CLAUDE.md 等の重要ファイル編集前に Obsidian から、関連 Daily / SOP / Project を コンテキストに自動注入。 防ぐ事故: 過去に決めた方針と矛盾する結論を出さないようにする 例: 編集前に過去7日分の関連メモを自動取得(手動で「Obsidian 確認して」と言わなくても発火) 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 24
  15. 良いプロンプトの作り方 ① プロンプトの悪い例 「訪問看護指示書の下書きを作成して。 」 何が悪いか どこからデータを取ってくればいい かが分からない どのように記載すればいい かが分からない

    結果: AI が推測で書いてしまう / 必要な情報を都度聞き返してくる 困ったら AI に「プロンプトの書き方」を聞いて OK 「この依頼内容で、AI に渡す良いプロンプトを書いて」と頼めば、Claude が叩き台を作り ます。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 26
  16. 良いプロンプトの作り方 ② やりたいこと(曖昧な状態): 「訪問看護指示書の 下書き作成 をAIに頼みたい」 Claude にこう聞く: 私は訪問診療所の医師です。訪問看護指示書の下書き作成を Claude

    Codeに任せたい。具体的には: 1) Movacal にログインして対象患者の診療録・サマリーを抽出 2) 抽出内容に抜け漏れ・不整合がないかAIにチェックさせる 3) チェック済み情報をもとに訪問看護指示書の下書きを生成 この一連の流れを動かすためのプロンプトを書いてください。 Claude が返してくる: 3 ブロック(背景・依頼・形式)が整ったプロンプト雛形 + ログイン手順・抽出範囲・チェック観点・出力フォーマット まで具体化 → 内容を読んで 追記・修正(例: 「サマリーは直近3ヶ月分」 「チェックは ADL 変化と褥瘡記載」 ) 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 27
  17. 実例① receipt-check(レセプトチェック skill) 月次レセプトの算定漏れを Claude Code が自動チェック。 3段階判定: 1. ルール判定

    ─ 確実な算定漏れ(プログラムで機械判定) 2. AI判定 ─ 文脈が必要な疑い項目(Claude が推論) 3. 人間判定 ─ 最終確認は必ず医師 具体的に確認できる項目: インフル / コロナ検査・TPN・NPPV・在医総管(難病月2) ・ CPAP・麻薬 人間が時間をかけて実施する確認作業を、機械→AI→人間の3層で削減する設計。 最も時間のかかる単純作業をプログラムで自動化。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 29
  18. 実例② chat-check(Google Chat 自動化) スタッフからの未読 Chat を Claude Code が処理。

    やっていること: 1. 未読メッセージを取得、PDFがあれば内容を確認する 2. 医療判断が必要な場合は Movacal で患者文脈を取得 3. セッションに戻り、AI が返信案を作成 4. 承認・修正後に送信 Chat の取りこぼしゼロを、AI に肩代わりさせる。 送信権限は人間に残す ことで安全性を担保。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 30
  19. 実例③ mail-check(メール対応自動化) [email protected] および 他 2 つのメールアドレス宛のメールを Claude Code が処理。

    やっていること: 1. 未読メールを取得、添付ファイルの確認 2. AIメモを確認して関連する情報を取得 3. セッションに戻り、AIがメールの下書き・ラベル付けを作成、実施内容を報告。その他 の対応が必要なものは 対応内容を提案 4. 人間の承認・修正後にメール返信、対応を実施 Chat と同じく、送信権限は人間に残す ことで安全性を担保。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 31
  20. アプリ作成時に気を付けていること ① なるべく AI の API を使用しない 情報を集めさせて、セッション上の会話形式で AI に対応させる。

    web アプリ形式にもできるが、API キーが必要になる API キーは流出すると 無制限の不正課金・情報流出のリスク ② 人間の工数を減らす モバカルから情報をコピペするなど 手間が増えるとミスが入り込む余地が増える 「人間の手作業を減らす」ことを優先で設計 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 32
  21. 用語① repo(リポジトリ) =「プロジェクトの保管庫」 1つのプロジェクトのファイル群+編集履歴(git)をまとめた箱。 大澤の repo 例: clinic-slides (このスライドの作成・共有に使用) chat-check

    系(Google Chat 自動化) repo を作る = 「プロジェクトとして履歴を残す宣言」 ─ 後から「あの時何したっけ」が辿れる GitHub = repo をクラウドで共有・保管するサービス。 git 履歴ごと別 PC や他人と同期できる。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 34
  22. 用語② commit / push commit =「保存する」 / push =「クラウドに送る」 git

    commit ─ ローカルで変更を確定(編集の節目に明示実行) git push ─ GitHub などのクラウドに送って 他のPC・他人と共有 運用例: 自宅PC と訪問用PC の両方で同じrepoを触る どちらかで commit + push → もう一方で pull して同期 複数人で同一プロジェクトを実行(GitHub 経由で共有・編集) 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 35
  23. セキュリティ設定のお願い Claude.ai でデフォルトで学習が有効な場合があるので確認: ブラウザ版 Claude.ai での操作 1. 左下 にあるアカウント名・アバターをクリック 2.

    開いたメニューから 「設定」 (Settings) 3. 「プライバシー」 (Privacy)タブを開く 4. 「Claudeの改善に協力する」 (Help improve Claude)のトグルを OFF 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 36
  24. Advanced ① ── なぜコンテキストが大事か(実例) コンテキスト(AI の作業記憶)が膨らみすぎると、判断品質が落ちて事故が起きます。 実際に大澤が経験した事例: 状況 何が起きたか 古いデータで集計

    古い CSV をそのまま使って4月レセプト集計→難病月2 算定漏れ 2 件が後日発覚(5/8) 原因: 机が散らかって、最新の情報が古い情報に埋もれた 対策: 業務ごとにセッションを分ける / subagent に確認させる 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 38
  25. Advanced ② ── 失敗を事前に防ぐ仕組み:Subagent 失敗パターン オススメの指示の出し方 バグのあるプログラムを書いてしまう 複数の subagent でクロスレビューしてください

    古い情報・間違った情報を出す 複数の subagent で情報を調べてください ポイント 1. 1 つの AI に任せきりにせず、複数の AI にダブルチェックさせることで品質が上がる 2. main agent には、調べ事やコーディングをさせない(指示と統合に専念させる) 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 39
  26. Advanced ③ ── オススメの claude.md の設定 毎回 subagents での実施を指示するのは大変なので、claude.md(ルール)の設定をおすすめします。 このファイルが何者か

    main agent に「いつ自分でやり、いつ誰に振るか」を 毎セッション教え直さなくて済むようにする 常駐ファイル。 直処理 vs 委譲の判断 直処理してよいのは 単一ファイル 2-3 行・専門判断不要 のみ (typo 修正、.gitignore に 1 行追加、環境変数名変更 等) それ以外は 必ず subagent に振る 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 40
  27. Advanced ③ (続き) ── なぜ必要か 人間と main agent と subagent

    の違い 人間 main agent subagent 学習方法 経験で覚える CLAUDE.md + MEMORY.md 経由のみ 毎回 白紙 暗黙知 蓄積される 存在しない 存在しない → subagent は 毎回白紙からスタート するため、毎回明示が必要 md に書く必須項目 目的 / 入力(対象ファイル)/ 制約 / 出力形式 / 完了基準 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 41
  28. Advanced ④ ── Obsidian(その1) =「Claude Code の外部脳・知識庫」 repo の外に置く、横断的な知識・運用ルールの保管所。 何が保管されるか:

    クリニック運営の事実関係(議事録・広告戦略・人事戦略) SOP(標準業務手順) 過去の意思決定ログ Daily(時系列の作業ログ) Obsidian は Claude Code の 「憲法」 (共通ルール)であり、同時に 「過去の症例集」 (個別 事案)でもある。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 42
  29. Advanced ⑤ ── MEMORY.md と Obsidian の使い分け MEMORY.md Obsidian 規模

    軽量メモ(repo 単位) 大規模知識庫(全 repo 横断) 中身 過去セッションの判明事実・ユーザー好み SOP / Daily / Project index / 意思決定ログ 参照タイミング セッション開始時に 自動ロード 必要な時だけ subagent / hook が 読む 机が散らからない仕組み MEMORY.md が多すぎると机が散らかる(毎回自動ロードされるため) Obsidian は必要時にのみ読み込まれる → 机が散らからない 将来必要になるかもしれない情報はとりあえず Obsidian に保存 「とりあえず情報を保存して、使うときだけ机に出す」仕組みができる。 横浜ホームクリニック 情報戦略部カンファレンス / 2026-06 43