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量子コンピュータの基礎から応用まで/quantum summit 2019

量子コンピュータの基礎から応用まで/quantum summit 2019

本資料は2019年3月12日〜13日に開催されたQuantum Summitの1日目の講演をもとに、QunaSysがまとめたものです。量子コンピュータの歴史・動作原理から有望なアルゴリズムとその応用先・量子コンピュータ業界の現在までをまとめました。

QunaSys

May 08, 2019
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Transcript

  1. Outline I. 量子コンピュータの歴史 i. はじまり ii. 近年の急速な発展 Ⅱ. 量子コンピュータとは i.

    動作原理 ii. なぜ速いのか? iii. 量子アルゴリズムまとめ iv. 量子アルゴリズムの応用展望 Ⅲ. この数年の量子コンピュータ i. NISQとは ii. NISQアルゴリズムまとめ iii. NISQアルゴリズムの応用展望 Ⅳ. 世界の動き i. 各国の投資 ii. 民間の投資 iii. エコシステム形成 iv. 各企業の取り組み 2
  2. 本資料での用語定義 4 誤り訂正あり (FTQC) 誤り訂正なし (NISQ) 量子 古典 Microsoft Google・IBM・Rigetti・Quantum

    Circuits Alibaba・Yale・東大中村研究室など 超電導 イオン 光 トポロジカル IonQ・Honeywell Xanadu・東大古澤研究室 D-wave・NEC・産総研・Google 日立・富士通・NTT・東芝 量子 コンピュータ アニーリング マシン 方式 取り組み企業
  3. 本資料での用語定義 7 量子回路シミュ レーション 量子化学計算 機械学習 流体・構造解析 金融計算 最適化 暗号解読

    量子コンピュータのパワーイメージ図 現在のコンピュータ 量子コンピュータ 徐々に発展 急速に発展 一部の問題で 3年後? 計 算 パ ワ | Quantum Supremacy(量子超越) 量子回路を古典計算機でシミュレーションできなくなること。 Quantum Speedup(量子加速) 実用的な問題で量子コンピュータが優位になること。 2019年? Supremacy Speedup
  4. 量子コンピュータ前史 1981年 Feynmanのアイディアからはじまる 1985年 Deutschが量子チューリング機械として定式化 提唱と定式化 「自然は古典力学では動かない。 もし、自然をシミュレーションしたければ、 量子力学に基づいた計算機を作るべきだ。」 Richard

    Feynman 「計算量理論は万能計算機が行う計算の複雑性 を分類したものであるが、これは誤った 近似(例えば:古典力学)を含んでいる。」 David Deutsch https://www.newyorker.com/magazine/2011/05/02/dream-machine Simulating Physics with Computers, Int. J. Theor. Phys. 21, 467 (1982) 9 https://www.nobelprize.org/prizes/physics/1965/feynman/biographical/
  5. 量子コンピュータの発展 ただし、量子コンピュータの実現は不可能だと言われた 量子ビットは壊れやすく、エラー訂正方法が不明だった ⇒ 途中でエラーが発生しても、気づかずにデタラメな計算結果になる 古典コンピュータの誤り訂正の一例 量子コンピュータはこの方法で誤り訂正できない なぜなら、量子状態をコピーできないから(no-cloning theorem) 1995年

    誤り訂正符号の登場 ⇒ 誤り訂正が一部可能に その後全てのエラーを訂正する理論が確立される。 誤り訂正理論の登場 000 010 000 エラーが発生 多数決で正しい 状態に戻す ※ 他のビットも同時にエラーを起こす 確率が十分小さいければ 11
  6. 量子コンピュータの発展 1999年 当時NECにいた中村・蔡らが 世界初の量子ビットを超電導物質で実現。 量子コンピュータの実現に大きく貢献したのは日本 2014年 John Martinisがエラー訂正可能な精度で 5qubit量子コンピュータを実現。 ⇒

    第2次量子コンピュータブームに 量子ビットの実現 Y. Nakamura et al (NEC), Nature 1999 R. Barends et al., Nature 2014 高忠実度の実現 1量子ゲート操作精度: 99.92% 2量子ゲート操作精度: 99.4% 測定精度: 99% IUUQTQFDUSVNJFFFPSHUFDI UBMLDPNQVUJOHIBSEXBSFHPPHMFIJSFTRVBOUVN DPNQVUJOHFYQFSUKPIONBSUJOJTUPCVJMEOFX IBSEXBSF GoogleがMartinis研究室を買収し、 量子コンピュータ開発に乗り出す 中村 泰信 現東京大学教授 蔡 兆申 現東京理科大学教授 12
  7. 量子コンピュータの発展 量子コンピュータを作る時にコヒーレンス時間(T1,T2)が重要になる T1: 量子ビットが初期化されてしまう時間 T2: 量子ビットの量子的な重ね合わせが崩れる時間 量子ビットの量子性を保つ時間(コヒーレンス時間)の伸び 中村らが1999年に実現した時は 数nsだったコヒーレンス時間が、 エラー訂正に必要な100µsを超す

    (この100µsはエラーを検出して、訂正の制御をかける までに必要な時間の大まかな見積もり) 左図から分かるように、歴史的に量子 ビット製作で強いのは中村らのチーム とYale大学のチーム (IBM・Rigetti・Quantum Circuitsのメンバーも Yale大学の流れを汲む) http://francis.naukas.com/2017/11/16/la-ley-de-schoelkopf-el-tiempo-de-decoherencia-se-multiplica-por-10-cada-3-anos/ 3年でコヒーレンス時間が10倍になるシェルコフの法則 13
  8. 量子コンピュータの発展 Qubit数の推移 量子コンピュータのサイズ(qubit数)も重要な指標になる。 暗号を破るのには1億qubit以上必要だと信じられている。 現在IBMが50qubit、 Googleが72qubitチップを製作中 企業 Qubit数 現状 Google

    22 qubit 実現した 最大qubit数 IBM 20 qubit 安定して クラウド 利用可能 IonQ 79 qubit 1qubitゲート操作 を実現した 最大qubit数 量子超越 NISQ era Noisy Intermediate Scale Quantum Technology 1 10 102 103 104 2  2 2 2 2  2 105 106  2 2 2 2 2 Google IBM IonQ Rigetti 誤り訂正量子コンピュータ 108 107 14
  9. ハードウェアの種類 量子コンピュータを実現する物理系: 量子的な振る舞いをする物質ならなんでも良い。 ただし、パワフルな計算をするのに有利・不利な量子系があり、 実現に必要な基準が提唱されている。 DiVicenzo Criteria 量子コンピュータを実現する物理系 DiVincenzo, D.

    P. The physical implementation of quantum computation. Fortschr. Phys. 48, 771–783 (2000) εέʔϥϏϦςΟ Ϣχόʔαϧͳԋࢉ గਖ਼Մೳੑ qubit数を増やす時に配線・サイズが指数的に増大してはならない。 制御演算のリソースが指数的に増大してはならない。 初期化と測定を効率的に行い、エラーを訂正可能でなければならない。 25
  10. ハードウェアの種類 量子コンピュータを実現する物理系 l 超電導物質で構成 l 磁束, 電荷, 位相を量子ビットとし て利用 Nakamura

    et al., Nature 398, 786 (1999) ௒ిಋྔࢠϏοτ ΠΦϯτϥοϓ ΩϟϏςΟ2&% 26 l レーザーによって真空中でイオン を冷却・捕捉したものを量子ビッ トとして利用 l イオンの量子状態をレーザーで制 御する l 共振器に閉じ込められた光と原子 の相互作用を利用 ֓ཁ ௕ॴ ୹ॴ औ૊Έ اۀ l IC の製造と同様の技術で集積化で きる/量子ビット間の相互作用が 強く、高速に量子ゲートを作用さ せることができる l 隣の量子ビット間でしか2量子 ビット操作が出来ない /デコヒーレンスの排除が困難 l コヒーレンス時間が長い/離れた 量子ビット間で2量子ビット操作が できる/ゲート忠実度が高い l アーキテクチャへ大規模化への課 題が多い l 光子を介して長距離の量子ドット 間交換相互作用を実現する事がで きる/量子通信との自然な連携が できる l 原子・光子を一つの粒子レベルで 操作する必要があり技術的に複雑 である/光子の生成・観測の効率 が低い 他 R. Blatt & D. Wineland, Nature 453, 1008 (2008) S. Deléglise et al., Nature 455, 510 (2008)
  11. ハードウェアの種類 量子コンピュータを実現する物理系 l 単一光子(空間モード,偏光モー ド)を量子ビットとして利用 ޫྔࢠϏοτ ྔࢠυοτ τϙϩδΧϧྔࢠϏοτ l 固体中(半導体量子井戸)に電子

    を捕獲し、その電子が作るエネル ギー準位を利用 l マヨラナゼロモード (半導体ナノワイヤ+超電導)を 量子ビットとして利用 ֓ཁ ௕ॴ ୹ॴ औ૊Έ اۀ l コヒーレンス時間が格段に長い/室 温で動作できる/量子通信へ技術を 応用できる l 光子損失によるエラー率が高い / 2量子ゲート精度が低い/集積化・ スケールアップが比較的困難 l 半導体技術を大いに利用すること ができる l 2量子ビットゲートの高精度化に課 題がある l エラー耐性が強いコヒーレンス状 態を長時間保持できる l 具体的な操作方法などが不明 J. Carolan et al., Science 349, 711 (2015) T.D. Ladd et al., Nature 464, 45 (2010) S. M. Albrecht et al., Nature 531, 206 (2016) 27
  12. 超電導量子コンピュータの作り方 東京大学中村研究室が製作予定の 64qubitチップのイメージ図 希釈冷凍機の先端にこのチップがあり、 外にある制御装置からこのチップ上の 量子ビットを制御し、読み出し装置か ら計算結果を読み出す。 量子ビットが 8x8 で並んでおり、

    外辺以外の量子ビットは、 他の4つのビットと相互作用する。 4qubit毎に1つ読み出し共振器がある。 チップ 29 http://www.mext.go.jp/b_menu/boshu/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/09/19/1409113_2_1.pdf 量子ビット 読み出し共振器
  13. 光量子コンピュータの作り方 基礎原理 光の最小単位=光子 01 量子ビット 0・1の重ね合わせ 01 01 01 01

    01 01 01 01 制御NOT 回転 波長板 3次の非線形 光学効果 縦・横偏光の重ね合わせ 非線形の 操作は難しい 東京大学武田特任講師提供資料を元に、QunaSysが作成 30
  14. 光量子コンピュータの作り方 展望1:確率的な演算を克服する 光の波動性 全演算を確率1に! 光の粒子性 CNOTが確率的になる。 θ1 θ2 θ3 θ4

    光源 光源 光源 光源 確率1の基本演算ブロック 基本回路開発済 Nature 500, 315 (2013) Phys. Rev. Lett. 114, 110501 (2015) 振幅・位相の制御素子 粒子性(光子の粒子数固 有状態)を利用した CNOTゲートは、確率1で 実行することが困難。 波動性(光の振幅や位 相)を利用した量子論理 ゲートでは、確率1での CNOTが実現可能。 東京大学武田特任講師提供資料を元に、QunaSysが作成 31
  15. 光量子コンピュータの作り方 展望2:光回路の拡張性を高める 光導波路チップ 光学テーブル ミラー・レンズ・変調器・ 検出器など計500個以上 1つの素子を作るた めに、1つのテーブ ルが必要だと スケールしない。

    小型するために 光導波路チップ化さ れた。 26mm Nat. Photon. 11, 447 (2017) 4.2m 1.5m θ1 θ2 θ3 θ4 光源 光源 光源 光源 東京大学武田特任講師提供資料を元に、QunaSysが作成 32
  16. 光量子コンピュータの作り方 展望2:光回路の拡張性を高める ループ構造にし て、1つの演算回 路を繰り返し利用 する。 またループを大き くするとメモリの 役割になる。 θ

    g 光源 提案: Phys. Rev. Lett. 119, 120504 (2017) 実験: arXiv:1811.10704 拡張可能性 汎用性 低開発コスト 東京大学武田特任講師提供資料を元に、QunaSysが作成 33
  17. 量子コンピュータはなぜ速いのか 指数のパワー x 300個 1つの量子ビット (qubit) = 2300 全宇宙の原子の数 1080

    > 2300は全宇宙の原子(星ではなく!)より多い。 量子コンピュータは膨大な通りを同時に計算できる。 35
  18. 量子コンピュータはなぜ速いのか 0000000000 1111111111 0000000001 0000000010 1101011101 1101101010 " 9 入力

    ౴͑ 量子状態 ɾɾɾ ɾɾɾ 指数的に小さい ೾ͷׯব # $ % & ' ɾ ɾ ɾ 波を干渉させて欲しい状態が 出る確率を上げる操作をする (全てのパターンの 重ね合わせ状態 =並列計算) 38
  19. 量子コンピュータはなぜ速いのか 0000000000 1111111111 0000000001 0000000010 1101011101 1101101010 " 9 入力

    ౴͑ 量子状態 ɾɾɾ ɾɾɾ 指数的に小さい ೾ͷׯব # $ % & ' ɾ ɾ ɾ 特定の問題では正しい答えの 確率を集めることができる グローバー探索、素因数分解、 量子化学計算、半正定値計画 etc (60種類程度) (全てのパターンの 重ね合わせ状態 =並列計算) 39
  20. 量子コンピュータはなぜ速いのか 例:Nを問題サイズとして、 計算量が 古典 2N ⇒ 量子 N3 になるアルゴリズム 正確な説明

    量子コンピュータは重ね合わせを上手く利用することで 計算量を減らせる場合があるから 量子コンピュータ 答えを出すまで N3回操作で済む (N=300でも高々数千万) スーパーコンピュータ 答えを出すまで 2N回操作が必要 (N=300になると全宇宙の 原子の数すら超える… 計算不可能) 40
  21. 量子アルゴリズム:位相とは アダマールテスト ʹ 1 2 + 1 2 &' Ґ૬

    H &' H |0⟩ ֬཰ アダマールテスト: 位相θを測定確率と して読み出せる 44
  22. 量子アルゴリズム:位相推定 H H |0⟩ &' ɾɾɾ ɾɾɾ ࢦ਺తʹେ͖ͳϢχλϦʔߦྻ ֬཰ 0

    or 1 ݻ༗஋В 1ビット contol-U操作によって、 Uの固有値eiθを 1ビット精度で読み出す 45
  23. 量子アルゴリズム:位相推定 Phase Estimation アルゴリズム(PEA) ࢦ਺తʹେ͖ͳϢχλϦʔߦྻ H |0⟩ &' ɾɾɾ ɾɾɾ

    H |0⟩ H |0⟩ ɾɾ ྔࢠ ϑʔϦΤ ม׵ ɾɾɾ ݻ༗஋В kビット contol-U操作と量子 フーリエ変換によって、 Uの固有値eiθをkビット 精度で読み出す 46
  24. 量子アルゴリズム:量子化学計算 Phase Estimationアルゴリズム(PEA) ݻ༗஋В ˠ෼ࢠͷΤωϧΪʔ ਖ਼֬ͳΤωϧΪʔΛ஌Δ͜ͱ ͕ࡐྉɾༀͷ։ൃʹඞཁɻ H |0⟩ &'

    ɾɾ H |0⟩ H |0⟩ ɾ ɾ ɾ ྔࢠ ϑʔϦΤ ม׵ ɾɾ ɾ kビット ෼ࢠͷ ௿ΤωϧΪʔ ঢ়ଶ ෼ࢠͷμΠφϛΫε6FJ)U 48
  25. 量子アルゴリズム:逆行列計算 HHLアルゴリズム H |0⟩ &' ɾɾ ɾɾ H |0⟩ H

    |0⟩ ɾ ɾ ɾ ྔࢠ ϑʔϦ Τ ม׵ ϕΫτϧ b ˠ ݻ༗஋ ͷٯ਺ Λ࡞༻ ٯߦྻܭࢉ ݻ༗஋ ࡞༻͍ͤͨ͞ٯߦྻ" "C |⟩ 連立一次方程式 Ax=b (AはN×N行列、 bはN成分ベクトル) → Aの固有値を位相推定 しつつその逆数を作用 させる回路を用いる 49
  26. 振幅増幅アルゴリズム Groverのアルゴリズム データ数Nの整理されていない データベースを で検索 全ての未整理データNを検索する時は 古典コンピュータでは総当たり 量子コンピュータでは、全てのデータ Nが等振幅で重ね合わせている状態を 作ると振幅はそれぞれ1/

    特定の状態が出る確率を上げる振幅 増幅(Amplitude Amplification)操作を /4 回行うと、振幅が1に近くな る(=高確率で欲しい状態が出る) 量子コンピュータでは で計算可 50 : ; > ? > 2 振幅 増幅 振幅増幅 /4 回
  27. long-term アルゴリズムの応用展開 1. Shor の素因数分解 2. 量子シミュレーション 3. HHL の行列積計算

    4. Grover のアルゴリズム RSA 暗号解読 分子・物質の性質解析 物理現象・機械学習・金融 最適化問題 52
  28. 暗号解読:RSA暗号解読 Shorのアルゴリズムの応用 RSA 暗号解読 = 素因数分解 古典コンピュータによる解読世界記録 = RSA 786

    bit 解読 = 素因数分解の難しさ bit 数 指数的増大 量子コンピュータ (Shor のアルゴリズム) 古典コンピュータでは Shor のアルゴリズム を実際に動かすには 2048 bit の素因数分解 10 日 >1億 physical qubit 1億physical qubitが必要 とは言え 量子コンピュータに優位性がある N. Cody Jones et. al. Phys. Rev. X, 2, 031007 (2012) 計 算 時 間 53
  29. 暗号解読:ブロックチェーン Shorのアルゴリズムの応用 Bitcoin の暗号解読 Bitcoin の暗号 = 楕円曲線暗号 → 素因数分解と類似のアルゴリズムで解読可能

    D. Aggarwal et. al. arXiv:1710.10377 (2017) 10 分以内の解読は? 非常に楽観的な試算でも、10分 以内の解読が可能となるのは、 2027年以降。 10分 2027年 54
  30. 分子・物質の性質解明(PEA) 量子シミュレーションの必要性と難しさ ほとんどの物質の性質は、 電子の動きで決まる 電子=量子 の動きをシミュレー トできれば、物質の性質を解き 明かすことができる 量子アルゴリズム の活用余地

    画像: Oriental J. Chem. 32, 253 (2016) M 個の原子に N 個の電子を配置す るやり方は M CN 通り。全ての場合 の重ね合わせを考える。 電子数 シミュレーション時間 指数的増大 量子コンピュータ 古典コンピュータでは 量子コンピュータに優位性がある 計 算 時 間 55
  31. 分子・物質の性質解明(PEA) 量子シミュレーションを実際に動かすには R. Babbush et. al. Phys. Rev. X 8,

    041015 (2018) (現在の)古典コンピュータで不可能 100万 physical qubit が必要 56
  32. 物理現象解析(HHL) 物理現象のシミュレーション 物理現象も、計算量は 莫大になりうる l 電磁界シミュレーション =微分方程式 を解く l 構造力学シミュレーション

    =微分方程式 を解く 量子アルゴリズム の活用余地 微分方程式を解く ≒ 有限要素法 微分方程式 離散化 線形連立方程式 = HHL アルゴリズムの適用 メッシュ数 N シミュレーション時間 量子コンピュータ log(N) 古典コンピュータでは 多項式的に増大 57
  33. 物理現象解析(HHL) 電磁界シミュレーションを実際に動かすには A. Scherer, et. al., Quantum Inf Process, 16:

    60 (2017) Based on the technique in B. D. Clader, et. al., Phys. Rev. Lett., 110, 250504, (2013) 二次元の電磁界シミュレーションにおける試算 メッシュ数 3×108 必要なゲート数 ~ 1025 計算時間 ~ 1011 yr (1ゲート1μs) 一方で、アルゴリズムの改良も続いている。 アルゴリズムの誤差 ε に対する計算時間のスケーリング 2009年 1/ε A.W. Harrow, et. al., Phys. Rev. Lett. 103, 150502 (2009) A. Childs, et. al., SIAM Journal on Computing 46, 1920-1950 (2017) 2017年 log(1/ε) 58
  34. 機械学習(HHL) HHLアルゴリズムの応用 機械学習の アルゴリズム 量子アルゴリズム の活用余地 l 線形回帰 l サポートベクターマシン

    l ニューラルネットワーク l Quantum linear regression l Quantum support vector machine などなど… データ数 N に対して log(N) の時間 で動作? 量子コンピュータにデータを効率的 に転送できる装置 = Quantum Random Access Memory (QRAM) が必要。 G. Wang, Phys. Rev. A. 96, 012335 (2017) P. Rebentrost, Phys. Rev. Lett. 113, 130503 (2017) 59
  35. Long-termアルゴリズムの展望 応用先と課題 1. Shor の素因数分解 2. 量子シミュレーション 3. HHL の行列積計算

    4. Grover のアルゴリズム RSA 暗号解読 分子・固体の物性解析 物理現象解析 機械学習・金融計算 最適化問題 1億 physical qubit必要 100万 physical qubit必要 アルゴリズム改良待ち QRAM 待ち 試算待ち 62
  36. Long term アルゴリズムの展望 l 今後は、アルゴリズムの更なる改良が見込まれる Ø 1994年にShorのアルゴリズムが出てから一部の研究者によって 25年研究された程度。 Ø 実際HHLアルゴリズムの改良などが行われて来た

    l ただし、Groverのアルゴリズムは より速くならないことが 証明されている。膨大なデータでないとデータベース検索・最適化 の優位性は低い。 今後の展望 63
  37. qubit数 NISQ量子コンピュータ NISQは数年以内の実用化が期待されている 66 数年以内の実用が期待されている量子コンピュータ ノイズがあり 中規模(50~1000qubit) サイズの 量子デバイス Noisy

    Intermediate Scale Quantum device 出典:Google Googleの開発計画 1. 量子スプレマシーの実証 2. NISQアプリ探索 3. エラー訂正の実証 4. 大規模エラー訂正の実現 https://www.qmedia.jp/nisq-era-john-preskill/
  38. NISQアルゴリズム 量子ゲート数が少なくても動作 するアルゴリズムが急速に 増えている。 全て変分法を用いたHeuristicアル ゴリズムなため、有用性は数学的 証明が難しい。 本当に早いかは試さないと分から ない⇒ Quantum

    Supremacyの 実証後に本格的探索が始まる。 誤り訂正がなくても、実用的な使い方の探索が始まる。 https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00419/083100004/ ※ 注) VQFは素因数分解を最適化問題として扱いQAOA を行った提案だが、暗号解読に必要な素因数分解を行う のは非現実的だと考えられている。 68
  39. 物性解析 VQEの弱み 精度が悪い U1 U2 U3 エネルギーはサンプリングによって測定 U4 A. Kandala

    et al., Nature 549, 242 (2017). 必要なサンプル数 > O(1/(必要な精度)2) 化学精度に必要なサンプル数 > 106 (H2のような小分子) エネルギーを測定するだけで ~ 1時間 かかる。 (1 sample/ms として) 70
  40. 物性解析 VQEの応用可能性 電子数 ∝ 原子数 精度 分子軌道法 Hartree-Fock MP2 CCSD,

    CCSD(T) Full-CI DFT VQE 古典コンピュータ手法 通常の基底状態解析ではアルゴリズムが大幅に 改良されなければ優位性は低い。 71
  41. 最適化問題 NISQ向けアルゴリズム Quantum Approximate Optimization Algorithm NISQ によって最適化問題を解くためのアルゴリズム Rigetti によって実験が行われている。

    QAOA の応用可能性 理論的に高速であるという証明は無い。 人工的な例で、QAOA には解きやすく QA/SA(アニーリング) には 解きにくい問題は得られている。 M. Streif and M. Lieb, arxiv: 1901.01903 73 https://arxiv.org/abs/1712.05771
  42. 機械学習 NISQ向けアルゴリズム Quantum Circuit Learning NISQ で教師あり機械学習を行うためのアルゴリズム x f :教師データ

    U1 U2 U3 U4 U(x) 学習 強み 元の特徴量を指数的に高い次元の特 徴量空間へ写せる。 古典コンピュータではとらえられな かった特徴を見つけられるかも。 弱み 特徴量をそんなに多く使う利点? 実問題に応用可能かどうか不明。 74
  43. 量子-inspiredアルゴリズム 量子コンピュータで速くなるアルゴリズムは、解くために制約がある。 同じ制約を設ければ古典コンピュータでも同じくらい速くなるのでは? 0qubit量子コンピュータアプリケーションとも言われる。 量子アルゴリズムを古典計算機で動かす?! 解説はEwin Tangブログを参考 https://ewintang.com/blog/2019/01/28/an-overview-of-quantum-inspired-sampling/ Ewin Tang

    量子推薦アルゴリズム 顧客の嗜好に合った商品を推薦するためのアルゴリズム 産業応用可能な量子加速アルゴリズム (Amazon, Netflix, ...) ユーザー数を N として O(poly(N)) → O(poly(log N)) 量子-inspired 推薦アルゴリズム E. Tang, arXiv:1807.04271 (2018) その問題設定なら … 古典コンピュータでもO(poly(log N))! 使えるかどうかは未知数。 英語解説記事 https://www.quantamagazine.org/teenager-finds-classical-alternative-to-quantum-recommendation-algorithm-20180731/ 76
  44. 量子技術を取り巻く諸外国の動向 ◦ 米欧中を中心に海外では、「量子技術」はこれまでの常識を凌駕し、社会に変革をもたらす重要な技術 と位置づけ、政府主導で研究開発戦略を策定し、研究開発投資額を増加。 ◦ 各国の大手IT企業も積極的な投資を進めており、ベンチャー企業の設立・資金調達も進んでいる。 ✓ 2018年9月、国家科 学技術会議が「量子 情報科学の国家戦

    略概要」を策定 ✓ 毎年2億ドル(約218億円)オー ダーの投資を現在実施。2018 年12月、2019年より5年間で 13億ドル(約1,400億円)規模の 投資に関する法律が成立 ✓2017年6月、欧州委 員会の有識者会議 が「量子技術 フラッグシップ最終報告書」をとりま とめ ✓2018年から10年間で、10億ユー ロ(約1250億円)規模のプロジェク ト「Quantum Technology Flagship 」を開始 ✓量子技術に関する大 型プロジェクトを2014 年より総額 2.7億ポンド(約456億円)で実施 (5年計画) ✓「科学技術イノベーショ ン第13次五カ年計画 (2016年)」において、 量子通信と量子コンピュータを重大 科学技術プロジェクトとして位置づけ ている ✓「量子情報科学国家実験室」を 安徽省合肥市に約70億元(約1,200 億円)かけて建設中 (2020年完成予定) ✓2018年9月、「量子技 術の基本計画」を閣 議決定 ✓2021年までに、量子技術の研究 開発のために6.5億ユーロ(約845 億円)を投資 ◦政府の取組 世界的な競争が激化する中、 量子技術をどのように推進 するか岐路に立たされている 文部科学省提供資料を元に、QunaSysが作成 78
  45. ハードウェアの開発 注目ベンチャー Yale大学 Robert Schoelkopf研究室発のベンチャー。 20億円以上調達。基礎技術開発に力を入れる。 IBMからスピンアウトし、YCombinatorを卒業したベンチャー。 累計100億円以上を調達。Quantum Colud Serviceを開始。

    Maryland大学Chris Monroeが率いるベンチャー。 22億円以上調達。イオントラップ方式で高精度11qubit実現。 光量子コンピュータの開発を行うベンチャー。 7億円以上調達。機械学習の論文多数。 83
  46. JSRの取り組み 新たな成長戦略の柱としてのデジタル化推進 中期経営計画「JSR 20i9」より JSRが将来を見据えた成長戦略の柱と してデジタル化を一段と進めている。 (中略)従来にない新機能を備える部材 や薬剤の開発には量子コンピューティン グが必須とみて、量子コンピューターの 開発で先行する米IBMと数年前から協

    業している。 (2019/01/22 化学工業日報) なぜ量子コンピュータをやっているのか、と よく聞かれるが、量子コンピュータが一番最 初に使われる分野は化学の計算と株ですよ、 と。われわれとしては、ある意味でデジタル ツインを作りたい。フィジカル世界の化学の 開発と同じものを、デジタルでシミュレー ションなどを使って作る。それによって、研 究開発のスピードは恐らく10倍、100倍 に上がる。 (2019/04/25 化学工業日報 小柴社長インタビュー) デジタル化推進の一環として、 量子コンピュータを活用した新 材料開発を目論む 85
  47. 新技術の社会実装に必要な取り組み 革新的な新技術の社会実装に向けては、 エコシステム形成=関連プレイヤーが一丸となって事業推進 を進める必要がある 近年のイノベーションの潮流踏まえ Innovation 3.0 エコシステムの再定義 顧客 自社

    競合 パートナー サプライヤ 行政・自治体 Innovation 2.0 顧客の悩み起点 顧客 自社 顧客 自社 顧客 自社 Innovation 1.0 技術性能 自社中心 顧客 自社 競合 パートナー + + イノベーションは、性能追求型からエコシステム型へ 多くの日系製造業 Arthur. D. Little提供資料を元に、QunaSysが作成 86
  48. エコシステム形成に向けた動き 産官学連携コンソーシアムの立ち上げ Primary R&D goals of QuTech: developing scalable prototypes

    of quantum computers and quantum internet. In addition, QuTech has a fourth roadmap, Shared Technology Development (STD), led by TNO. These businesses, academic institutions, startups and research organizations are part of the IBM Q Network and putting quantum to use. Quantum Economic Development Consortium (QED-C) aims to support enabling technology R&D: e.g. quantum device components, instrumentation, and performance standards NIST: https://www.nist.gov/news-events/news/2018/09/nist-launches-consortium-support-development-quantum-industry QuTech: https://qutech.nl/roadmaps/ IBM Q: https://www.research.ibm.com/ibm-q/network/ ※ 日本のみ記載 87
  49. 素材エコシステム形成の重要性 素材のイノベーションがもたらす波及効果 Arthur. D. Little提供資料を元に、QunaSysが作成 サービス・システム ハードウェア 部品 素材 通常の

    イノベーションの対象 ≒ 既存素材を前提 とした戦略 ૉࡐͷ Πϊϕʔγϣϯ͸ ࢈ۀͦͷ΋ͷΛ ࠶ߏஙͤ͞Δ ೾ ٴ ޮ Ռ େ 素材のイノベーションは、素材企業だけでなく サービス・システム企業にとってもインパクトをもたらすため、 バリューチェーン横断でのエコシステム形成が求められる 89
  50. 量子の時代に備える方法 l 量子コンピュータは何でも できると思われがちだが、 産業ごとに立ち上がりの 時期とインパクトは大きく 異なる l また、アルゴリズムの改良 によって時期やインパクト

    が大きく変わる可能性も l まずは、技術を正しく理解 し、オープンに可能性を議 論する取り組みが必要 正しい知識に基づいた、可能性の見極め BCG作成レポートより、引用 (https://www.bcg.com/ja-jp/publications/2018/next-decade-quantum-computing-how-play.aspx) 化学(特にスペシャ リティケミカル)は 最も実現性が高いと される 90
  51. 会社紹介 株式会社QunaSys(キュナシス) 設立 2018年2月 事業内容 ・万能量子コンピュータの アルゴリズム・ソフト開発 ・共同研究 正社員 4名

    92 概要 https://jp.techcrunch.com/2018/04/25/qunasys-fundraising/ http://www.nikkei-science.com/?p=56535 メディア掲載
  52. Our Focus 93 量子コンピュータは、 量子力学のシミュレーションが 得意 ⇒ 最初のアプリケーションの 量子化学計算にフォーカス N

    qubit量子コンピュータは 2Nの空間(ヒルベルト空間) の表現力 ⇒ 量子的なデータ(VQEが作 り出す波動関数等)の学習が 応用先? 機械学習 エラー訂正のプロトコルの改善 ⇒ 誤り訂正の実現が近づく NISQではエラーの軽減が重要になる エラー訂正 量子化学計算
  53. アルゴリズムの開発 Quantum Circuit Learning (MiNKiF derivatives) 教師あり学習を行うために、 勾配の計算が必須。 量子回路の勾配計算を可能にした論文。 95

    機械学習 各社ライブラリへ搭載 Qiskit Aqua (IBM) Grove (Rigetti) PENNY LANE (Xanadu) VQNet(本源量子) https://journals.aps.org/pra/abstract/10.1103/PhysRevA.98.032309 QCLを元にした実験論文 V. Havlicek et al., Nature 567, 209 (2019) IBM Watson Groupに よる二値分類実験
  54. アルゴリズムの開発 Subspace-search VQE 励起状態の計算は古典計算機では難しい問題 NISQデバイスで効率よく励起状態を求める手法 を新規開発 ⇒ アメリカ物理学会で発表 96 量子化学計算

    4spin 横磁場イジングモデルの 基底〜第3励起状態を同時に計算 https://arxiv.org/pdf/1810.09434.pdf https://arxiv.org/pdf/1810.04482.pdf 水素分子の原子間距離6点の エネルギーを求めて汎化 Generalization of VQE VQEでは原子間距離毎に量子回路の最適化が必要 ⇒ 波動関数を学習することにより 最適化の回数を減らせる
  55. Qulacs Plus 量子コンピュータのアルゴリズムは急速に 増えている ◯ 様々なアルゴリズムを試して、得たい物性 値に応じた量子コンピュータ利用ノウハウ 構築を補助するツール ⇒ 量子コンピュータをいち早く活用する準備

    ⇒ 社内の量子コンピュータ使いの育成に 今夏β版リリース予定 ツール利用のために量子コンピュータ 勉強会からスタートする企業募集。 97 化学メーカー向け量子アルゴリズムパッケージ 顧問の藤井教授が開発した高速量子回路 エミュレータQulacsをベースにしている。
  56. Quantum Native Dojo 98 量子コンピュータ勉強教材 目次 ===== 第1部:基礎編 ===== 0.

    そもそも量子コンピュータとは? 1. 量子情報の基礎 2. 量子アルゴリズム入門 3. 量子アルゴリズムの実行環境 ===== 第2部:NISQ編 ===== 4. 量子ダイナミクスシミュレーション 5. 変分量子回路に基づくアルゴリズム 6. 量子化学計算 ===== 第3部:Long-term編 ===== 7. 位相推定に基づくアルゴリズム 8. オラクルアルゴリズム 9. 量子誤り訂正入門 量子コンピュータに関する前提知識不要な 勉強教材。 Near termからLong termアルゴリズムまでを 広くカバーし無料! Google Colabを使ってプログラミング環境がなくても 実装コードを動かしながら学べる。 https://dojo.qulacs.org https://github.com/qulacs/quantum-native-dojo
  57. Qmedia 99 量子関連情報を正しく伝えるメディア 量子コンピュータ・量子技術 を正しく伝えるメディアを 運営。 オススメ記事: 「量子コンピューターの “よ くある誤解”

    Top10」 https://www.qmedia.jp/misunderstandin g-of-qc/ 「量子コンピュータの挑戦: スーパーコンピュータに勝て るだろうか?」 https://www.qmedia.jp/quantum- beat-super-computer/
  58. 推薦資料 ◯日本語 (戦略プロポーザル)みんなの量子コンピューター https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2018/SP/CRDS-FY2018-SP-04.pdf ◯ English Focus on Quantum Science

    and Technology Initiatives Around the World https://iopscience.iop.org/journal/2058- 9565/page/Focus_on_quantum_science_and_technology_initiatives_around_the_world The Coming Quantum Leap in Computing https://www.bcg.com/ja-jp/publications/2018/coming-quantum-leap-computing.aspx The Next Decade in Quantum Computing—and How to Play https://www.bcg.com/ja-jp/publications/2018/next-decade-quantum-computing-how-play.aspx 103