2023年8月6日(日) 全国中学校理科教育研究会東京大会 「若手教員による実践発表会&交流会~理科教育を盛り上げよう(通称)若手の会」 発表M
生徒の考えを大切にした科学的に探究する理科授業~生徒が考える電流・電圧・抵抗を例に~発表者 筑波大学附属中学校 佐久間 直也ファシリテーター 工学院大学・武蔵野大学 高城 英子2023年8月6日若手教員による実践発表会&交流会~理科教育を盛り上げよう~江東区立有明西学園第4理科室全28 枚+補8枚全中理東京大会「(通称)若手の会」発表M
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自己紹介 佐久間 直也(Naoya SAKUMA)■ 専門科学教育,理科教育■ 経歴2012-2016 東京学芸大学 A類理科選修2016-2020 東京都公立中学校 教諭(理科・多摩市)2020-2021 (情緒障害・巡回拠点・北区)2021-現在 筑波大学附属中学校 教諭■ 所属学会• 日本理科教育学会• 日本科学教育学会• 日本環境教育学会# E-mail[email protected]# twitter@sakunao_rika2
授業観3◼ 電気回路の学習内容は難しいのか特定の授業で活用する「驚くべき事象」ではない、抜本的な改革が求められるのではないか。➣ 公式で整理された世界からの脱却(e.g., オームの法則・授業中の生徒の発言)
授業観4◼ 事象の提示の仕方授業の主語が、「生徒」になっているか。➣ 教師から提示された事象は、生徒の中では「点と点」でしかない。
授業観5生徒の考え 学習集団授業づくり生徒の考えを大切にして、学習集団で科学的に探究する理科授業が大切である。➣ 学習内容の理解が深まる。➣ 副次的な効果がたくさんある。◼ 学習集団で探究する空間
生徒の考えを大切にする科学的に探究する理科授業6⚫ 自分なりの説明(仮説)をもっている➣ 自分なりの説明(仮説)を検証するために、実験する。◼ 中学校第2学年 単元「電流とその利用」電流の大きさの関係性は?前 ? mA後 ? mA豆電球を通る前後の電流の大きさ……………減少説 保存説
生徒の考えを大切にする科学的に探究する理科授業7⚫ 「なぜそうなるのか」を教えてくれない➣ 「なぜそうなるのか(仮説)」を表現して、科学的に探究する理科授業をつくる。◼ 中学校第2学年 単元「電流とその利用」電流の大きさは同じ前 267 mA後 265 mA豆電球を通る前後の電流の大きさ…………減少説 保存説…
生徒の考えを大切にする科学的に探究する理科授業8⚫ 授業で扱う情報量が急激に増える。➣ ICTの強みを理解して、活用する。◼ 中学校第2学年 単元「電流とその利用」減少説 保存説黒板での共有は難しい…限られた授業時間…友達の考えは…… 説… 説… 説… 説
情報収集9最適な組み合わせ◼ アナログとデジタルの併用ICT活用➢ 情報共有⚫ ワークシートに手書きする活動は残し、ICTを活用する。これまでの実践➢ ワークシートへの記入
情報収集◼ 自分なりの考え(仮説)をICT活用で共有する
情報共有11最適な組み合わせ◼ アナログとデジタルの併用ICT活用➢ 情報共有⚫ 学級としての生徒の考えの傾向(立場や表現方法)を把握する。これまでの実践➢ 机間指導・発表活動
情報共有12◼ 保存説の考え(仮説)
情報共有13◼ 減少説の考え(仮説)
情報共有14◼ 減少説の考え(仮説)
情報共有15◼ 減少説の考え(仮説)
情報整理16◼ 学習集団の探究の「伴走者」
情報整理17◼ 学習集団の探究の「伴走者」
生徒の考えを大切にする科学的に探究する理科授業18⚫ 自分なりの説明(仮説)と一致しない結果こそ、学びが深まる。➣ 「実験の結果」はあくまで一つの根拠でしかない。ただし、実証する必要がある。授業動画◼ 班実験の結果を学級で共有する電流の大きさは同じ前 267 mA後 265 mA豆電球を通る前後の電流の大きさ電線では電気が消費される。豆電球はなぜ光る?……減少説 保存説なぜ電池はなくなる?
生徒のふり返り◼ 「導線を長くすれば…」を終えて
授業観20◼ 事象の提示の仕方授業の主語が、「生徒」になっているか。➣ 教師から提示された事象は、生徒の中では「点と点」でしかない。
授業観21自分自身の「仮説」の確信度を上げたくて、様々な事象に自身の「仮説」を適用したくなる。➣ 生徒の考えは簡単に変わらない。繰り返し適用して修正する経験が重要。
生徒のふり返り◼ 揺れる子どもの概念
生徒のふり返り◼ 生まれる疑問
生徒のふり返り◼ 既知から未知を推測する
説明の限界から新たな事象へ◼ 消費説の考え(仮説)
科学的に探究する理科授業26⚫ 「1単元1仮説」とすることで、複数回の観察・実験を踏まえて仮説を修正する機会が得られる。➣ 現時点では「分からない」ことが当たり前である空間を形成できる(≒科学の暫定性)。◼ 学習内容の理解にグラデーションを生み出す。全く説明できない…真理はあるのだろうか…この部分は説明できるようになった!理解している理解していないNO YES
授業観27◼ 電気回路の学習内容は難しいのかこの単純な回路に、電気回路における学習内容が盛り込まれている。➣ 電流・電圧・抵抗・電力・エネルギーについて、自分が納得できる形で整理する。
発表の要点28生徒の考え 学習集団授業づくり生徒の考えを大切にして、学習集団で科学的に探究する理科授業が大切である。➣ 学習内容の理解が深まる。➣ 副次的な効果(e.g., ウェルビーイング≒人間性の涵養、科学観の育成)がたくさんある。
モノが物を言う授業づくり⚫ 実験による実証や文献を通して、「仮説」を修正する機会をデザインする。➣ モノが物を言えない事象については、曖昧さを残す決断も求められる。◼ 保存説と減少説の決着はいかに!?
科学的に探究する理科授業31⚫ 「1課題1仮説」 → 「1単元1仮説」 への転換で、単元の学習に有機的なつながりが生まれる。➣ 一方向ではない、発展的に繰り返される探究の過程(≒探究のスパイラル)を実現する。◼ 科学的に探究する理科授業のイメージ(≒衛星モデル)仮説→ なぜだろう単元の導入時→ 教師の働きかけよりよい説明を目指す→ 探究のスパイラル課題→ なぜですか計画予想観察・実験結果考察仮説授業1授業2
これまでの問題解決学習との違い32⚫ 絶対的な真理が存在する印象を与えることにより、様々な弊害が現れる。➣ 探究の過程が一方向になる。発展的にならない。分からないことへの恐怖。➣ 西洋科学の科学観の変化に伴い、理科で学習する科学観も変化させたい。◼ 予想の場面で生徒の考えを書かせていました仮説→ こうじゃないかな?課題→ なぜですか絶対的な解の存在する問題事象仮説→ このときはどうなるかな?課題→ ではやってみましょう自分の仮説を洗練させるための問題事象
課題の設定から全て自分の力でできた予想と実験の実施は自分の力でできた!先生の支援のもと探究することができた!科学的に「探究」する理科授業33⚫ 探究的な学習活動を行っているかどうかは、生徒-教師の主体の割合で語られると良い。➣ 探究の過程は、「フルコース」ではなく「アラカルト」形式で。重点項目を意識して。◼ 主体にグラデーションを生み出す生徒が主体教師が主体NO YES全てが探究的な学習活動である
何のための理科授業なのか34◼ 変革を起こすコンピテンシー・新たな価値を創造する力・対立するジレンマを乗り越える力・責任をもって行動する力➣生徒が価値を創造する授業生徒が変えることができる授業◼ 発揮されるエージェンシー・個人エージェンシー・共同エージェンシー➣学級みんなでつくる授業◼ ウェルビーイングの実現(≒人間性の涵養)
何のための理科授業なのか35
何のための理科授業なのか36◼ 生徒の考えを大切にした理科授業で見えてきたこと⚫ 生徒の考え・言葉が板書される、生徒の考え(≒仮説)で単元計画が修正される。➢ 自分たちが授業を創るという意識(エージェンシーを発揮して、変革を起こすコンピテンシーを育成する機会)➢ 人格の完成(≒ウェルビーイング)につながる理科授業
ChatGPTの登場による学校の学びの変化⚫ 理科の授業では、生徒の「やってみたい(≒実証性)」が無くなることはない。➣ 「科学的」に探究する学習活動を重視している、教科「理科」は心配ない。➣ 科学的に正しい知識は教えられるが、知識が創造される営みは体験できない。◼ 理科の授業は必要なくなるのか