2018年4月13日の新ラボ生向けチュートリアルで使用した資料です.
横浜国立大学 環境情報学府情報メディア環境学専攻 情報メディア学コース白川研究室 修士2年斉藤 翔汰2018年4月13日新人研修文献調査(サーベイ)の仕方
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本研修の目的2「文献」の性質や種類を把握し,その入手方法・探し方・読み方を理解する
文献/文献調査とは3
文献とは4• 研究資料となる筆録または印刷された文書・書物 [広辞苑第六版「文献」②より]• 現在ではWeb経由での配布が主流• 書籍,学術論文,学位論文など(後述)
文献調査(サーベイ; Survey)の意義5何がどこまで実現されているのかを明確にし,自分の研究の新規性を見出すため「車輪の再発明」をしないために「巨人の肩の上に立つ」研究テーマの関連分野や興味のある領域の動向を把握し,貢献できる部分を探すため
文献の種類6• 一般的には査読がある文献のほうが高信頼• 信頼のおける文献を調べ,適切に引用することで自身の研究における土台を構築学会誌・論文誌(査読あり)国際会議予稿集(査読あり/なし)国内全国大会・研究会技術(研究)報告(査読なしが多い)信頼度低高
査読 (Peer Review) とは7• 論文を公表する際に行う事前審査のこと• 誤りの訂正や質の向上が目的• 同じ分野の研究者が評価• 論文誌・国際会議ごとに査読の厳しさは異なる• 特に論文誌は査読が2回以上行われるため,一般的に高信頼な文献として扱われる• 国際会議の予稿はたいてい1回
論文誌 (Journal, Transaction)8• テーマに沿った論文が中心• 信頼のおけるサーベイ論文なども掲載• ページ数制限が緩い• 学会や出版社が出版元となる
国際会議予稿集 (Proceedings)9• 国際会議ごとの予稿をまとめたもの• レベルの高いものから低いものまで様々• ページ数制限がある(大半は8ページ程度)• 基本的には査読ありだが,形態は様々
国内全国大会・研究会技術(研究)報告10• 全国大会・研究会ごとに研究内容をまとめたもの• 研究報告の例:• 情報処理学会研究報告• 電子情報通信学会研究報告
テクニカルレポート/学会誌11• 学会誌:• 学会が発行する雑誌・解説記事などが主体• Communications of the ACM, 情報処理学会誌など• テクニカルレポート:• 組織や個人がまとめたレポート• 通常は査読なし
arXiv(プレプリントサーバ)について12• 査読前や出版前の論文を公開するのが目的• 研究動向を知るのには有益• 有名国際会議(ICMLやNIPSなど)に投稿中の論文も数多く登録される• その後採択されたかはチェックする必要あり• arXivのコメント欄を確認(Accepted to ICMLなどと書かれていたりする)• 筆者の個人サイトや学会のサイトを確認
arXiv(プレプリントサーバ)について13• 査読なしで登録• 信頼性が低い論文も存在するということ• arXivの文献をなかったことにはできない• 必要があれば適切に引用する必要がある
文献の探し方14
文献探しのフローチャート15文献の詳細がわかる 研究室にあるorインターネットで手に入る 文献GET!!図書館で取り寄せる購入してもらう先輩・教員に聞いてみるキーワード検索関連しそうな学会・論文誌を調べる英語文献も調べるyesnoyes分からない見つかった見つからないno
まずはインターネットで検索16• Google Scholar,Elsevier ScienceDirect,Springer Link,IEEE Xplore,ACM Digital Library,CiteseerX,CiNii,J-STAGE,…• 基本はGoogle Scholar,国内ならJ-STAGE• 学会員でないとダウンロードできない場合も
他の探し方17• 研究室で探す• 書棚(学位論文,専門書など)• 図書館で借りる・コピーする• OPAC(蔵書検索)を使って調べる• ILLによる文献の取り寄せ
主要な論文誌・国際会議から探す18• 論文誌の指標:インパクトファクター(ImpactFactor; IF)• IFはその論文誌に乗った論文が平均的にどの程度引用されているかの指標• 国際会議の指標:CORE Conference ranking• IFや会議のランクが高いからといって,論文のレベル・完成度が必ず高いとは限らない• あくまでレベル・完成度の高い論文の「割合」が高くなるイメージ
継続的な文献調査の勧め19• 人工知能をはじめとする情報処理技術分野は,研究スピードが年々加速• 継続的に文献調査をする癖を付けておく• 主要な国際会議(自分の研究に関連する国際会議)の予稿集が出たら,網羅的にチェック• 国際会議は年に1回などで追いやすい• 論文誌のサイトをRSSリーダに登録しておく
文献の読み方20
一般的な(工学系)論文の構成211. 要約,概要,アブストラクト (Abstract)2. 導入,はじめに (Introduction)• 研究背景や研究目的,モチベーションを記述3. 関連研究 (Related Works)• これまでに行われてきた様々な研究を記述4. 提案手法 ,提案システム (Proposed Method)• 自身の研究によって得られた新しい手法,アプローチ,その新規性を記述
一般的な(工学系)論文の構成225. 評価実験,考察 (Experimental Results)• 提案手法の性能評価,従来手法との比較,統計的有意性の検証および考察を記述6. まとめ,今後の課題 (Conclusion)7. 参考文献8. 付録 要点をつかむだけなら全て精読する必要はない
サーベイ時の論文の読み方23• アブストラクト・結論で新規性・実用性・貢献は概ね把握できる• ここまで読んでまったく関係ないと思えば,読むのをやめて次の論文へ• 実験結果は,図表とキャプション → 文章の順で読むと把握しやすいアブスト評価実験提案手法導入関連研究まとめ
関連が深い論文の読み方24• 使用したアルゴリズムや理論を把握できるまで深く読む• 提案手法の前提条件,問題点を考察• 提案手法の対象は? 改良できる点はどこ?• 重要な参考文献,関連研究を調査• 特に理論に関する参考文献は重要• 参考文献の参考文献まで見れるとよい• 同じ著者,著者と同じ研究室の人まで掘り下げる
読んだ論文は整理しておくこと25• 基本的に読んだ論文は全て保存しておく• 紙媒体あるいはPDFファイル等で• 文献管理ソフト(Mendeleyなど)を活用• Mendeley Web Importer(ブラウザアドオン)を使うとすぐにダウンロード&登録ができる• 良く見る(=コア技術)は紙媒体,それ以外はPDFで保存しておくのが高効率
卒業研究に向けて26• 自分のやりたい研究テーマの論文を探す• 検索キーワードがわからないときは,先輩・教員にオススメの論文を聞いてみる• 数本読んだらまとめ・考察をしてみる:• そのテーマで今まで行われてきたことは?(その分野が解こうとしている問題はなに?)• 従来手法における問題点はなに?• 自分だったらどういうアプローチで解決する?
参考文献27• 工学系大学4年生のための論文の読み方,https://www.slideshare.net/ychtanaka/4-89034938 (2018/04/12 アクセス),田中雄一(東京農工大学)• 研究分野をサーベイする,https://www.slideshare.net/iTooooooooooooT/itolab-how-to-survey-2017(2018/4/12 アクセス),伊藤研究室(お茶の水女子大学)