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生成AI時代における人間の情熱とプロダクト志向 / 20250517 Takuya Oikawa
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SHIFT EVOLVE
PRO
May 21, 2025
Technology
2
1.5k
生成AI時代における人間の情熱とプロダクト志向 / 20250517 Takuya Oikawa
2025/5/17 SHIFT Agile FES
https://contents.shiftinc.jp/shift-agile-fes/
Tably株式会社
代表取締役
及川 卓也
SHIFT EVOLVE
PRO
May 21, 2025
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Transcript
生成AI時代における 人間の情熱とプロダクト志向 情熱と逸脱が価値を創る 及川 卓也 Tably株式会社 ©Tably Inc. All Rights
Reserved
Tably (テーブリー) 株式会社 代表取締役 及川卓也 外資系IT企業3社でソフトウェアエンジニア、 プロダクトマネージャー、エンジニアリング マネージャーとしてキャリアを積む。スター トアップを経て独立後、2019年1月にTably株式 式会社を設立。テクノロジーを活用した企業
・社会変革を支援している 著書に『ソフトウェア・ファースト~あらゆ るビジネスを一変させる最強戦略~』(日経 BP)、『プロダクトマネジメントのすべて』 (翔泳社)がある ©Tably Inc. All Rights Reserved
本日のお話 開発しているプロダクトが 誰(個人・組織) を どんな状態 にするか説明できますか? ©Tably Inc. All Rights
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本日のお話 そのプロダクト開発に 人 を 引き込めますか? ©Tably Inc. All Rights Reserved
本日のお話 急激な進化を遂げる AI をどう取り入れるか 考えられていますか?
AIについて(及川の)過去の認識 2019年発売 悩み1:今後エンジニアの価値が下がるのではないか? 今日は人が担当している実装の仕事も、やがて陳腐化し、機械によ って置き換えられるのではないか? という話をよく聞きます。例 えば「AIがこのまま進化すれば、ソフトウェアのプログラムはA Iが自動生成するようになるだろう」「であれば自社にエンジニア を抱える必要がないのではないか」という懸念です。 A:今は人間にしかできない複雑な要件定義が求められる。
AIによってプログラムが自動生成されるという未来はいつかは来 るでしょう。筆者が社会人になったばかりの80年代にもそんな話は はありました。ただ、それから30年近く経つのに、そんな未来はま まだ来ていません。いつ来るかも分からない未来に期待して、今何 もせずにいては、デジタル化の流れに乗り遅れて会社が潰れてしま うでしょう。 予想は完全に外れた ©Tably Inc. All Rights Reserved
AIについての現在の状況 ソフトウェアファ ースト 第2版( 2024年9月発売)で は生成AIを含むAI 活用について大幅 に追記 ©Tably Inc.
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©Tably Inc. All Rights Reserved 一緒に考えていきましょう 生成AIの活用が不可欠となる中で、 人が情熱を持って開発を進めるには?
©Tably Inc. All Rights Reserved 生成AIの進化が凄まじい 前例のない速度で進化し続ける生成AI技術は、私たちの常識を次々と塗り替えている
副操縦士からパートナーへ Before: 副操縦士としてのAI 人間の指示に従い、単純な作業を自動化するツールの役割 • コード補完 • 単純なバグ検出 • 定型処理の自動化
After: パートナーとしてのAI 問題解決や創造的な提案を行う対等なパートナーへと進化 • アーキテクチャ設計の提案 • 複雑なアルゴリズムの実装 • テスト自動生成と実行 ©Tably Inc. All Rights Reserved
AI搭載型開発ツール GitHub Copilot コード補完・生成に 特化したAIツール。 開発者の意図を予測 し、コードを提案 Cursor AIを活用したコード エディタで、自然言
語からコードを生成 Cline テキスト入力からコ ードを生成する Devin 自律型AIソフトウェ アエンジニアとして 機能するツール ©Tably Inc. All Rights Reserved
©Tably Inc. All Rights Reserved 自然言語でプログラミング?
プログラミングとは何か? ©Tably Inc. All Rights Reserved
歴史から見るプログラミングの進化と今後 プログラミング言語の流れには2つの潮流がある 抽象化の流れ ビジネス用途への最適化 ©Tably Inc. All Rights Reserved
プログラミングの抽象化 機械語 コンピューターが直接理解できる二進数による命令セット 人間にとって理解が非常に困難 アセンブリ言語 機械語を人間が読めるような記号で表現 ハードウェアに依存する言語 高級言語 人間の自然言語に近い形で記述できる言語 複雑な処理も簡潔に表現できる
©Tably Inc. All Rights Reserved
コンピューターは計算機で、 プログラミングも計算だった 筆算・算盤 人間の手による計算の時代。数字を操 作し答えを導き出す 電卓 電子化された計算機の登場。ボタン一 つで計算が可能に 初期コンピューター 大型計算機として誕生。複雑な計算処
理を自動化 ©Tably Inc. All Rights Reserved
ビジネス用途の プログラミングの進化 ビジネス処理の最適化 1950年代後半から、科学計算 だけでなくビジネスデータ処 理に特化したプログラミング 言語が登場。業務処理の効率 化が進んだ 抽象化への第一歩 英語に近い文法を採用し、非
技術者でも理解しやすい言語 設計により、プログラミング の裾野が広がり、ビジネス応 用が加速 ©Tably Inc. All Rights Reserved
生成AIによる開発は 抽象化と最適化の必然的帰結 抽象化とビジネス用途最適化という進化の流れから、生成AIでのプログラミ ングは必然である ©Tably Inc. All Rights Reserved
プログラミングは手段に過ぎない 本質的な目的はコードを書くことではなく、ユーザーの課題を解決し、社会に価値を提供することにある ソフトウェア開発 機能を実装する手段 ソフトウェア開発とコーディングは価値を 実現するための単なる手段であり、目的そ のものではない プロダクト開発 ユーザーの課題を解決する プロダクトはユーザーの具体的な問題を解
決するための手段であり、その実現方法よ りも解決すべき課題の理解が重要となる 価値創造 人間社会への真の貢献 AIが台頭する時代において、真に重要なのは 社会に対してどのような価値を生み出すか という視点である AIが単純なコーディングを担う時代、プログラミングそのものよりも、何を作るかという目的と、それがもたらす価値に焦点を当てるべき である。これが私たちエンジニアの真の役割である ©Tably Inc. All Rights Reserved
抽象化の先にあるもの ビジネス戦略 市場ニーズの分析と事業価値の創出 要求定義 ビジネス要件の明確化と優先順位付け 要件定義 技術的な実現方法の検討と設計 AIが開発プロセスを担う中で、人間はより上流工程に集中することになる。ビジネス価値の創出や要件の明確化など、AIが 代替困難な領域が人間の担当となる ©Tably
Inc. All Rights Reserved
価値創造という目的は変わらない 目的の普遍性 技術が進化しても、価値を生み出すという根本的な目的は変わらない 手段の進化 AIは新たな道具に過ぎず、目的達成のための選択肢が増えただけである 本質への回帰 技術の変化に惑わされず、価値創造という原点に立ち返ることが重要である ©Tably Inc. All
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少し脱線します ©Tably Inc. All Rights Reserved
従来のソフトウェアエンジニアの苦悩 アイデンティティの喪失 プログラミング言語でなく自然言語で 開発することは「プログラミング」な のか? 技術的価値の再定義 コーディングスキルの価値が変化し、 新たな専門性の確立が必要 役割の変容 技術者から「AIの監督者」へと役割が
変わりつつある ©Tably Inc. All Rights Reserved
ソフトウェアエンジニアの2極化 高度専門エンジニア AIの限界を超える技術的課題に取り組む • AIが未対応・AIに任せられない領域を担当 • 上記の領域を担当できるようなAIを開発 • AIの出力を検証・修正 AI活用型エンジニア
AIに適切な指示を出し、効率的に開発を進める • 自然言語でのプログラミング • 上流工程への注力 • 非エンジニアの開発進出 ©Tably Inc. All Rights Reserved
エンジニア人材戦略の企業的課題 ジュニアレベルのエンジニアは生成AIの台頭により危機的状況に直面している。単純な実装タスクほどAIによる代替が進みやすい 領域だからである ジュニア層の仕事消失 基本的なコーディング作業はAIが効率的 にこなすようになった 成長機会の減少 実践経験を積む場が少なくなり、スキル 向上の道筋が不明確に 育成の必要性
高度専門エンジニアは10年以上の経験か ら生まれる存在である 企業の舵取り 長期的視野に立った育成戦略と採用判断が必要になっている ©Tably Inc. All Rights Reserved
復帰します・閑話休題 ©Tably Inc. All Rights Reserved
価値創造を目指すものの… 現場の声 「アジャイルを導入しま した」 形だけの導入に終わっている 「生成AIを使い始めまし た」 ツールだけで変化は起きない 結果 何も変わらない現実
©Tably Inc. All Rights Reserved
価値創造の本質 事業 事業継続のための収益 ビジョン 世界を変える 顧客 課題の解決 ©Tably Inc. All
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技術やプロセス導入が目的化 する ツールやプロセスを導入 手段が目的化 成果の曖昧さ 何を達成したいのか不明確 形骸化 意味のない作業の繰り返し ©Tably Inc.
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©Tably Inc. All Rights Reserved 価値がないものをいくら迅速に作っても意味が ない ゴミを量産されても迷惑
生成AIを使って迅速に 価値創造する ©Tably Inc. All Rights Reserved
生成AI活用はすでに常識 使うだけでは差別 化できない ツールの普及により平準 化 凡庸なプロダクト が量産される 似たような成果物の氾濫 本当の価値はどこに? 差別化の新たな源泉を探る必要性
©Tably Inc. All Rights Reserved
人間の役割 生成AIがプロダクトオーナーもスクラムマスターもやってくれる時代におけ る人間の役割は? ©Tably Inc. All Rights Reserved
©Tably Inc. All Rights Reserved 美しい鰭 スピッツによる映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の主題歌。Aメロに8分の7拍子が入る変拍子の曲
AIと人間の違い パブロ・ピカソは常識からの逸脱により、美の定義を書き換えた 青の時代からキュビズムへ。彼は複数の視点を一つのキャンバスに 統合した 初めは理解されなかった彼の表現方法も、その後評価されている 時代が追いつく ©Tably Inc. All Rights
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生成AIにできるだろうか? 逸脱を選ぶ意思 正解とされるものからの意図的な逸脱 文脈を壊す勇気 既存の枠組みを超える決断 ©Tably Inc. All Rights Reserved
過去のデータと一般的な考えに基づくAI • 生成AIは「目的関数」という評価基準に従って動く • 目的関数は、正解とするものに近づいたかを判断するもの • 生成AIは学習したデータと目的関数の範囲内でしか動かない。このシステムはデータから見つけたパターンを基に「もっともらしい」結果を作り出す のである AIの創造性の限界 AIは過去のデータから学んだパターンの範囲内でしか動けない
決められた枠内での動作 AIは設計された目標に向かって最適化され、その枠を超えることができない ©Tably Inc. All Rights Reserved
©Tably Inc. All Rights Reserved 創造性とは?
創造性は逸脱すること? 常識や慣習から外れた行動が、新たな視点や価値を生み出す源泉となるが … ©Tably Inc. All Rights Reserved
ズレ≠創造性 単なる変わり者 目的のない逸脱 創造的な人 目的を持った逸脱 成功の要素は実現力と社会的価値 ©Tably Inc. All Rights
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©Tably Inc. All Rights Reserved 生存者バイアスを超えて 変わり者で成功した人が創造性のある人と言われているだけでは?
創造性の構成要素 発散的思考 多様なアイデアを生み出す 形にする力(実現力) 具体的な成果物に変換 認めさせる力(影響力) 他者を納得させる / 社会的需要・受容の獲得 変化を起こす力
実際の影響を生み出す ©Tably Inc. All Rights Reserved
創造性の構成要素 発散的思考 多様なアイデアを生み出す ズレはここだけ 形にする力(実現力) 具体的な成果物に変換 認めさせる力(影響力) 他者を納得させる / 社会的需要・受容の獲得
変化を起こす力 実際の影響を生み出す ©Tably Inc. All Rights Reserved
©Tably Inc. All Rights Reserved 創造性が発揮された例: フラットデザイン ズレを生み出す 形にする力 影響力を持つ
変化を起こす
創造性とは価値創造への探求心 価値創造への執着 創造性は価値創造への執念 から生まれる。妥協なき姿 勢が新たな価値を生み出す 商才の発揮 市場と顧客ニーズを価値に 変換する能力。実用性にこ だわり理論を実践へ 仲間との共創
多様な視点を取り入れるこ とで創造性が高まる。個人 の才能より創造的なチーム 強い動機 強い目的意識と情熱が創造 的行動の原動力。正解のな い問いに向き合う勇気 ©Tably Inc. All Rights Reserved
仲間との共創=他者に認められる 古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、説得の技術(レトリック)において、人を納得させるための3つの要素を提唱 エトス(信頼) 人格や実績による説得力 ロゴス(論理) 理論的な筋道の明確さ パトス(共感) 感情に訴える力 ©Tably Inc.
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©Tably Inc. All Rights Reserved 他者に認められ、変化を起こす ゴッホは生前に評価されなかった 彼の表現手法は当時の穏当で写実的な主流スタイルと大 きく異なっていた(社会の目的関数との相違) ビジネスの世界では、ゴッホとは異なり、短期間で他者
に認められ、ビジネスとして成立させる必要がある
アマビールの理論 テレサ・アマビールの創造性構成要素モデル 創造的思考 柔軟な発想と新たな視点で問題解決に挑む能力。 専門知識 深い領域知識と技術的スキルが創造的思考の土台となる。 内発的動機 仕事自体に対する情熱と興味が創造性を高める原動力となる 。 ©Tably
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2つの種類の動機 - 情熱の源泉は内発的 アマビールの理論でも、内発的動機は創造性において最も重要な要素とされている 内発的動機 • 好奇心から生まれる • 活動自体が報酬 •
長期的な持続力 • 創造性の本質的な源泉 外発的動機 • 報酬や評価が目的 • 外部からの圧力 • 一時的な効果 • 創造性を阻害する可能性 ©Tably Inc. All Rights Reserved
2つの種類の動機 - 情熱の源泉は内発的 外発的動機から内発的動機を生むこともできる ©Tably Inc. All Rights Reserved 内発的動機
外発的動機
©Tably Inc. All Rights Reserved 情熱駆動開発のすゝめ Passion Driven Development
情熱駆動開発 いま、日本に必要なのは「情熱」 • 人間の情熱やエネルギー、目的意識を開発プロセスの中心に据えよ う • 技術的な正確さや効率、ビジネスとしての成功だけでなく、「なぜ 選択するのか」「なぜ実現するのか」「なぜ作るのか」「何を作る のか」「誰のために作るのか」といった人間らしい動機やビジョン に焦点を当てよう
• プロダクトの成功には幾多の苦難があるが、苦難を乗り越えられる のは情熱 ©Tably Inc. All Rights Reserved
情熱のベクトル 技術 可能性の探求 顧客 ニーズの理解 未来 先見性の発揮 ビジネス 価値の実現 情熱とは本質に
向き合うこと 価値創造を考えると、「 技術」は手段となり、顧 客価値と事業価値(ビジ ネスゴール)の最大化と 未来志向(ビジョンの実 現)が目的となる ©Tably Inc. All Rights Reserved
©Tably Inc. All Rights Reserved 情熱駆動開発の例 Google Newsの誕生 Googleニュースは、Googleの20%プロジェクトとして始まった、情熱駆動開発の一例
AIが支援するのは意志あ る人間 意志の明確化 何を実現したいのかの定義 AIによる支援 明確な指示に基づく協働 人間による判断 最終的な選択と責任 意志なき人はAIに飲み込まれる 主体性の喪失と依存
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AI活用と人間の役割 人間の能力 AIは人間の能力を拡張する技術である。人間の思考 や判断を補強し、限界を超える。 拡張の方向性 AIによる能力拡張は様々な方向に進む可能性がある 。進路は無限に広がっている。 人間の意志と情熱 どの方向に進むかを決めるのは人間の意志である。 情熱が進むべき道を照らす。
©Tably Inc. All Rights Reserved
©Tably Inc. All Rights Reserved 生成AIに模範にされるくらいの 創造性を発揮しよう AIは模倣者: 生成AIは過去のデータから学習し、成功 パターンを模倣する技術
模倣されるくらいの成功 を目指す: 模倣されるほどの価値を創造する・AIが 参考にしたくなるような革新的成功を目 指そう