Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
技術的負債との戦い! PR TIMESエンジニアチームの オブザーバビリティ改善ジャーニー #...
Search
shinyasakurai
February 18, 2024
Programming
1
1.9k
技術的負債との戦い! PR TIMESエンジニアチームの オブザーバビリティ改善ジャーニー #devsumi
Developers Summit 2024で登壇したときの資料です。
https://event.shoeisha.jp/devsumi/20240215/session/4837
shinyasakurai
February 18, 2024
Tweet
Share
More Decks by shinyasakurai
See All by shinyasakurai
月間7500万PVのサービスのCDNをFastlyに移行してみた
shinyasakurai
0
300
Other Decks in Programming
See All in Programming
Snowflake x dbtで作るセキュアでアジャイルなデータ基盤
tsoshiro
2
430
Macとオーディオ再生 2024/11/02
yusukeito
0
150
アジャイルを支えるテストアーキテクチャ設計/Test Architecting for Agile
goyoki
7
2.8k
/←このスケジュール表に立ち向かう フロントエンド開発戦略 / A front-end development strategy to tackle a single-slash schedule.
nrslib
1
590
OpenTelemetryでRailsのパフォーマンス分析を始めてみよう(KoR2024)
ymtdzzz
4
1.5k
外部システム連携先が10を超えるシステムでのアーキテクチャ設計・実装事例
kiwasaki
1
220
ECS Service Connectのこれまでのアップデートと今後のRoadmapを見てみる
tkikuc
2
210
開発効率向上のためのリファクタリングの一歩目の選択肢 ~コード分割~ / JJUG CCC 2024 Fall
ryounasso
0
360
Universal Linksの実装方法と陥りがちな罠
kaitokudou
1
220
破壊せよ!データ破壊駆動で考えるドメインモデリング / data-destroy-driven
minodriven
16
4k
PHP でアセンブリ言語のように書く技術
memory1994
PRO
1
150
[PyCon Korea 2024 Keynote] 커뮤니티와 파이썬, 그리고 우리
beomi
0
110
Featured
See All Featured
Designing for humans not robots
tammielis
249
25k
How to train your dragon (web standard)
notwaldorf
88
5.7k
The Cost Of JavaScript in 2023
addyosmani
45
6.6k
Measuring & Analyzing Core Web Vitals
bluesmoon
1
39
Unsuck your backbone
ammeep
668
57k
Practical Orchestrator
shlominoach
186
10k
The Language of Interfaces
destraynor
154
24k
YesSQL, Process and Tooling at Scale
rocio
167
14k
The Illustrated Children's Guide to Kubernetes
chrisshort
48
48k
Teambox: Starting and Learning
jrom
132
8.7k
Thoughts on Productivity
jonyablonski
67
4.3k
A Tale of Four Properties
chriscoyier
156
23k
Transcript
技術的負債との戦い! PR TIMESエンジニアチームの オブザーバビリティ改善ジャーニー 株式会社PR TIMES 開発本部 インフラチーム テックリード 櫻井
慎也
自己紹介
櫻井 慎也 - PR TIMESの主催するハッカソンインターンで 最優秀賞を獲得し、2018年にPR TIMESに 新卒入社 - サーバーサイドエンジニアを経て
インフラチームのテックリードに就任 - New Relicを使った監視基盤の構築や PR TIMESのAWS移行PJのリーダー等を務め る
会社紹介
Product|基幹事業 プレスリリース配信サービスを運営 企業の一次情報が日本で最も集まるプラットフォームとして、国内トップシェア • 利用企業社数 • 国内上場企業利用率 • プレスリリース数 •
メディアユーザー数 • パートナーメディア • サイト閲覧数 • SNSアカウント • 個人ユーザー数 91,115社 56.7% 34,092件 / 月 26,395名 251媒体 8,984万PV / 月 Facebook 129,700 Twitter 457,921 189,902名 ※2023年11月末時点
Product|事業ポートフォリオ プレスリリース配信サービス 「PR TIMES」 ストーリー配信サービス 「PR TIMES STORY」 広報・PRの効果測定サービス 「PR
TIMES Webクリッピング」 動画PRサービス 「PR TIMES LIVE」「PR TIMES TV」 クライアントとメディアのパートナーとして広報・PR支援の実施 「PRパートナー事業」
Product|事業ポートフォリオ タスク・プロジェクト管理ツール 「Jooto」 カスタマーサポートツール 「Tayori」 アート特化型オンライン PRプラットフォーム 「MARPH」 トレンドニュースメディア 「ストレートプレス」
Z世代向けWebメディア 「isuta」 若手ビジネスパーソン向け Webメディア 「U-NOTE」 PR・広告・プロモーション事例メディア 「PR EDGE」 スタートアップメディア 「THE BRIDGE」
入社当初のPR TIMES について
コード行数が非常に多く、複雑である • サービス開始から10年以上が経過 • コピペで増殖した自社製PHPフレームワーク • ドキュメントやテストコードはほとんどない • call_user_func関数を使った動的な関数呼び出し →
静的解析が効かないのでIDEの機能が活かせない → どこかを変更すると予期せぬ箇所で不具合が発生する
問い合わせがあるまでエラーやバグを検知できない • バグやエラーはお客様からのお問い合わせがあって初めて検 知できる状態 • New Relicは導入されていたがアラートの設定がされていな かったため、突発的に発生したエラーに対応できない
レスポンスが遅くデータベースの負荷も高い • N+1問題やスロークエリなどによってレスポンスが悪化 している箇所がいくつもある • データベースの負荷が常時高く、多いときには毎週 フェイルオーバーが発生するような状態 • オンプレの物理サーバーなのでスケールアップするのも難しい
サーバーに入らないとログを見られない • ログファイルの転送や集約がされていないので、 ログを見るためにはサーバーにSSH接続する必要がある • 複数台のサーバーが並列で動いているので、それぞれのサー バーのログを確認する必要がある
New Relicを使って 改善できたこと
エラー監視(APM Errors)
エラー監視(APM Errors)
エラー監視(APM Errors + Alerts) APMエージェントからNew Relicにエラー送信 New RelicのAlert機能を 使ってSlackに通知
エラー監視(APM Errors + Alerts) Slackのメンション機能を 使って通知する Errorsタブへ ワンクリックで 飛べるようにする
パフォーマンス改善 (APM Transactions) パフォーマンスを改善するときは 実行回数 × 平均実行時間 = 総実行時間 が大きいものから優先的に対応する!
パフォーマンス改善 (APM Transactions)
パフォーマンス改善 (APM Transactions) N+1問題が発生していると推測できる データベースの 呼び出し回数
ログ監視 (Logs + Alerts) Fluentdを使ってNew Relic Logsにログを転送し、エラーをSlackに通知
cron監視 (horenso + Logs + Alerts) horensoというコマンドラッパーツールを使ってcronの 実行結果をログに出力し、そのログをNew Relicで監視する。 出力される内容
• 実行コマンド • 終了コード • 標準出力 • 標準エラー出力 • 開始日時 • 終了日時 など
NRQL SQLのようなクエリ言語でNew Relicに保存されている データを取得することができ、アラートやダッシュボード化すること も可能 NRQLで データを取得 アラートを設定 ダッシュボードに 追加
グラフを描画 JSONで出力 CSVで出力 URLを共有
NRQL NRQLの構文例 • SELECT, FROM, WHERE : SQLと同じ • FACET
: 指定した項目でグループ化 • SINCE, UNTIL : 時間範囲を指定 • TIMESERIES : 時系列データをグラフ化 など 詳しくは NRQLリファレンス を参照
NRQL 例 : prtimes.jp のユーザーエージェントごとのアクセス数
NRQL 生成AIを使ってNRQLを生成することもできる
NRQL 生成AIを使ってNRQLを生成することもできる
デプロイスクリプト の改善
改善前のデプロイスクリプトの問題点 • Git上で削除されたファイルがサーバーから削除されない • サーバーごとにフロントエンドのビルドが走るため デプロイに時間がかかる • ソースコードを稼働中のディレクトリにrsyncするため、 変更量が多いとダウンタイムが発生してしまう •
処理が色んなファイルにバラバラに記述されていて 読みにくい
1からデプロイスクリプトを作り直すことを決定 • 複雑な処理は必要ないのでシェルスクリプトで実装 • 処理の流れを分かりやすくするために関数を使わずに コメント+コマンドの羅列で記述 • 以下のオプションをsetコマンドで設定 • set
-x : 実行するコマンドを出力 • set -e : エラーが発生したら途中で終了する • set -u : 未定義の変数があればエラーにする
ビルドを1回にまとめる サーバーごとにフロントエンドのビルドが走るため デプロイに時間がかかる (ビルド→デプロイ→ビルド→デプロイ→...) ↓ 最初にビルドしてから全てのサーバーにデプロイするように変更す る
シンボリックリンクを使った無停止デプロイ ソースコードを稼働中のディレクトリに直接rsyncするため、 デプロイされる順番次第でエラーが発生する可能性がある。 ファイルA ファイルB 呼び出す デプロイサーバー ファイルA 呼び出せない Webサーバー
デプロイ リクエスト
シンボリックリンクを使った無停止デプロイ → 待機状態の別のディレクトリにrsyncしたあとで シンボリックリンクの向き先を変更することで ダウンタイムなしでデプロイできる。
シンボリックリンクを使った無停止デプロイ /var/www/app リクエスト デプロイ 変更前の構成
シンボリックリンクを使った無停止デプロイ /var/www/app1 リクエスト /var/www/app シンボリックリンク /var/www/app2 変更後の構成 コピー
シンボリックリンクを使った無停止デプロイ /var/www/app1 リクエスト デプロイ /var/www/app シンボリックリンク /var/www/app2 変更後の構成
シンボリックリンクを使った無停止デプロイ /var/www/app1 リクエスト /var/www/app シンボリックリンク /var/www/app2 変更後の構成
Git上で削除したファイルをサーバー上で削除する • Git上で削除されたファイルがサーバーから削除されない • rsync でデプロイするときに --delete オプションが ついていないのが原因 •
削除時にダウンタイムが発生する可能性があるため(?) • rsync に --delete をつけて実行できるようにしたい
Git上で削除したファイルをサーバー上で削除する 1. とりあえず --dry-run と--delete オプションをつけて rsyncコマンドを実行して削除予定のファイルを調べてみる 2. 消してはいけないファイルがあれば --exclude
オプションを使っ て除外リストに入れていく • ログファイル • キャッシュファイル • アップロードされたファイル など 3. 消してはいけないファイルがなくなったら --dry-run オプションを消して完了!
改善後のデプロイスクリプト • デプロイ時間は約6分30秒から約2分0秒に大幅改善 • シンボリックリンクを使ってダウンタイムなしで デプロイできるようになった • Git上で削除されたファイルがサーバーから削除されるのでリファ クタリングがしやすくなった
マルチステージング環境の 構築
改善前のステージング環境の問題点 ステージング環境が1つしかないため、使用時にアナウンスした り、他の人が使い終わるのを待つ必要があった。 ステージング Webサーバー ステージング 使います まだかな... まだかな...
マルチステージングを実現するための方法 ApacheのVirtualDocumentRoot機能を活用した。 使用例 VirtualDocumentRoot "/var/www/%0" のとき、 hoge.example.com でこのサーバーにアクセスすると /var/www/hoge.example.com が
実際のドキュメントルートになる。
マルチステージング環境の構成 これにより1台のサーバーで複数のステージング環境を動かすこと ができ、他の人が終わるのを待つ必要がなくなった。 /var/www/alice.example.com *.example.com /var/www/bob.example.com /var/www/charlie.example.com alice.example.com bob.example.com charlie.example.com
オンプレから AWSへの移行
当時のオンプレ環境の抱えていた課題 • インフラエンジニアしかサーバーを立ち上げられない • データベースが物理サーバーで動いており、 スケールアップやストレージの拡張ができない • インフラがコード管理されていないため同じ構成の サーバーを立ち上げることができない •
オンプレについて詳しいメンバーがおらず 問題が発生しても解決するのが難しい
データベースのストレージが枯渇しそう • 既にデータベースのストレージの90%近くを使っており、 一年以内にストレージが枯渇すると予想されていた • 物理サーバーのスロットが空いていないため、 これ以上ストレージを拡張することが不可能 不要なデータ を削減 移行時のミス
でWALが急増 約10GB/月の ペースで漸増
RDSへの移行で発生した問題 • 当時利用していたPostgreSQLのバージョン(9.6)が RDSのサポート対象外 • バックアップファイルから復元しようとすると数時間 かかる • ストレージが枯渇しかけているため、オンプレ環境で バージョンアップをしている余裕はない
→ 移行時のダウンタイムを最小限に抑えるために AWS DMSを使ったロジカルレプリケーションを構築し、 バージョンアップとAWSへの移行を同時に行う。
Webサーバーやストレージなども同時に移行する データベースのみAWSに移行してしまうと AWS-オンプレ間の専用線がボトルネックになり レスポンスの低下などが発生すると予想されたため、 WebサーバーやBatchサーバー、共有ストレージなども 同時にAWSへ移行する必要があった。
AWS移行先の構成図(当時)
AWSに移行してみて感じたメリット • データベースが爆速になった
AWSに移行してみて感じたメリット • バックアップの取得が爆速になった PostgreSQL NetApp ONTAP AWS移行前 1~2時間 バックアップなし AWS移行後
10分以内 10分以内
AWSに移行してみて感じたメリット • IAM管理が楽になった • EC2インスタンスに直接IAMロールをアタッチできるため、 IAMユーザーのアクセスキーをサーバーに保存するよりも 安全かつ管理が楽
AWSに移行してみて感じたメリット • 踏み台サーバーが不要になった • AWS Session Managerを使ってサーバーに接続する ので踏み台サーバーを廃止 • Oneloginを使ってAWSの権限を管理しているので
新入社員や退職者の公開鍵の管理が不要に
AWSに移行してみて感じたメリット • インフラのコード化がしやすくなった • AWS移行のタイミングでTerraformやAnsibleを使った構 成管理を導入 • インフラ構成がGitHubでバージョン管理できる
AWSに移行してみて感じたメリット • New Relicでインフラの監視がしやすくなった • Cloudwatch Metric Streamsを使ってAWSのほぼ全て のリソースのメトリクスをNew Relicに転送できる
• RDSやLambdaの出力するログもCloudWatch Logs 経由でNew Relicに転送できる • 転送したデータのクエリやアラートなどが AWSに比べて使いやすい!(個人的感想)
AWSに移行してみて感じたメリット • AWSのマネージドサービスを導入しやすくなった • LambdaやS3, OpenSearchなどとの連携がしやすい • IAMロールを使った権限管理が楽 • VPC内で通信できるので高速
オブザーバビリティが どう変わったか
© 2024 New Relic, Inc. All rights reserved. オブザーバビリティの成熟度とは •
レジリエンスのある運用 • 高品質なコードのデリバリ • 複雑さと技術的負債の管理 • 予測可能な間隔でリリース • ユーザーへの洞察 https://info.honeycomb.io/observability-maturity-model-tw/ オブザーバビリティの質が影響する組織の機能
オブザーバビリティの成熟度について • レジリエンスのある運用 • 障害が発生してもすぐに検知し対応できるようになった • 高品質なコードのデリバリ • New Relicを使ってエラーの原因やボトルネックの
特定がしやすくなり順調に改善が進んでいる • 予測可能な間隔でリリース • マルチステージングの構築やデプロイスクリプトと リリースフローの改善により高速にリリースサイクルを回す ことができるようになった
今後の課題
セキュリティの強化 • プレスリリース配信サービスとして社会インフラを担うためにセ キュリティの強化は必要不可欠 • 直近で実施した施策 • Flatt Security社によるセキュリティ診断 •
PHPのバージョンアップ • 今後予定している施策 • Fastly WAFの導入 • New Relic IASTの導入
フロントエンドを含めたエンドツーエンドの監視 • サーバーサイドの監視はできるようになってきたが フロントエンドの監視がまだあまりできていない • New RelicのBrowserやSynthetic Monitoringを使って エンドツーエンドの監視を実現したい
コード品質の改善 • 最近は良くなってきたもののまだまだレガシーコードは残って いるので、より良いコードに変えていきたい • 監視に必要なログの出力やエラーハンドリングなど オブザーバービリティ向上のための改善もしていきたい
We are hiring!!
PR TIMES HACKATHON 2024 25卒向け選考直結ハッカソンやります!
PR TIMES エンジニア 採用 中途入社も絶賛募集中です! - VPoE - テックリード -
QA - フロントエンド - バックエンド - インフラ - PdM など...