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シリーズAの教科書(検定外)

Yoshiki
March 08, 2022

 シリーズAの教科書(検定外)

相談されることが多いシリーズAのファイナンスについて、まとめてみました
・シリーズAでどれくらいの資金調達額が必要?
・シリーズAのバリュエーションってどれくらいなの?
・投資家との交渉にあたって事前準備しておくことは?
あたりを、できるだけ公開されたデータを使って説明しています
なお、シリーズAの定義は、ベンチャーキャピタルなどの投資家が優先株(種類株)で最初に入るラウンドと位置付けています

Yoshiki

March 08, 2022
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Transcript

  1. 投資家と交渉して、シリーズAで決めること ①必要な資⾦調達額 ②実現したいバリュエーション(プレ) ③希薄化率(①と②で決まる希薄化の許容度) ⽩⽯由⼰「シリーズAの教科書(検定外)」 ①資⾦調達額 (シリーズA発⾏株式数 ✖ 株価) ②プレバリュエーション

    (発⾏済株式数* ✖ 株価) ポストバリュエーション (資⾦調達後の時価総額*) ③希薄化率 (シリーズA発⾏株式数÷発⾏済株式数) *新株予約権(ストックオプション) を発⾏している場合には株数に含めて 計算をすることが多い 3
  2. シリーズAに求められるマイルストンとは(例) • Product Market Fit(PMF) • プロダクトが「特定ユーザ」に刺さっていること - B to

    B︓ペインポイントを解決するプロダクト(レーザーフォーカスしている) - B to C︓購買(利⽤)頻度の⾼いロイヤルカスタマーの存在 • Ready to Scale • 「特定ユーザ」から事業を広げる戦略を合理的に⽰せること • スケールする戦略(仮説) ⽩⽯由⼰「シリーズAの教科書(検定外)」 4
  3. 18〜24ヶ⽉のランウェイを確保する⾦額とは • 資⾦調達活動を6ヶ⽉で⾒積もる(準備→⾯談→条件交渉→払込⼿続) • マイナス6ヶ⽉が成果を出す期間。その期間を最低1年間は確保する⾦額 12 18ヶ⽉ 18 6 6

    24ヶ⽉ シリーズA 払込⽇ シリーズB 払込期⽇ シリーズBに向けて 成果を出す期間 資⾦調達活動 ⽩⽯由⼰「シリーズAの教科書(検定外)」 6
  4. シリーズBのマイルストンを達成できる⾦額とは • シリーズBのマイルストンは、グロースを数値で⽰すこと(Metrics) • スケールの仮説を、数値として実現できたか • “Remember, investors have a

    radar for proven records. This aspect is the most significant difference between Series A and Series B.”* • 投資家とシリーズBのマイルストンを握り、その数値を達成できる⾦額 ⽩⽯由⼰「シリーズAの教科書(検定外)」 7 *When Should You Raise Series B Funding? | Founder Shield https://foundershield.com/blog/when-should-you-raise-series-b-funding/
  5. コンバーティブルエクイティ(CE)の論点 • CEのバリュエーションキャップ • 「5億円」のキャップが⼀つの⽬安* • キャップ転換時のディスカウント率は50%程度** • 低いキャップの条件には注意 •

    シリーズAまでの時間確保と将来の希薄化を天秤に • CEでどこまで調達するか︖(⽬安は1-1.5億円) • 1回だけではなく、2回のCEでつなぐ事例もある • キャップをアップ︓5億円 → 8億円(例) ⽩⽯由⼰「シリーズAの教科書(検定外)」 Cap 5億円 調達 1億円 CE (数値は例) *2019年通期でみるとキャップ10億円以下が合計約7割を占める https://coralcap.co/2020/09/deal-terms-2020summer/ **コンバーティブル・エクイティが⽇本のスタートアップを変える https://www.businesslawyers.jp/index.php/articles/236 13
  6. 優先株の条件とバリュエーション • 投資家から提⽰されたタームシートで優先株(種類株)の設計を確認 • バリュエーションが良くても、条件が起業家に不利な場合がある* • 残余財産優先分配権の設定︓1倍、1.5倍、2倍?、階段式に設定? • 優先参加権︓あり? なし?

    • ダウンラウンドの希薄化防⽌︓ブロード? ナロー? フルラチェット? • 売却の合意形成︓種類株主総会の3分2以上? 過半数? ⽩⽯由⼰「シリーズAの教科書(検定外)」 *「投資家」はバリュエーションが⾼いと判断すれば、優先株の条件を投資家有利にする 15
  7. 交渉に備えて、類似企業のシリーズAを事前に調査 • シリーズAを完了したスタートアップの登記簿謄本を購⼊ • 同じ業界、類似のビジネスモデル • 直近に同規模の額を調達(ただし、登記完了には⼀定時間が必要なため取得時期に注意) • ⽬安10社の登記簿謄本を⼊⼿(費⽤は330円×10社=3,300円程度*) •

    類似企業のシリーズAについて、謄本から分析する • 資⾦調達額 / 時価総額(プレ・ポスト) / 持株⽐率 / CE調達額(A-1種) • 種類株式の設計(残余財産優先分配権ほか) • 新株予約権の設計(発⾏数、⽐率/新株予約権を⼊れた時価総額) • シリーズAの成功要因と値頃感を分析して、投資家との交渉に臨む ⽩⽯由⼰「シリーズAの教科書(検定外)」 16 *「バフェットコード」で購⼊した場合 https://www.buffett-code.com/registries
  8. 登記簿謄本からの計算⽅法 謄本の項⽬ X社 事例 計算⽅法 発⾏済株式の総数 並びに種類及び数 発⾏済株式の総数 10万株 各種の株式の数

    普通株式 7万株 A種優先株式 2万株 A-1種優先株式 1万株 [持株⽐率] 普通株︓7万株÷10万株=70%(経営陣、エンジェルほか) A種 ︓2万株÷10万株=20% 発⾏可能種類株式 総数及び発⾏する 各種類の株主の内容 普通株主×××××株 A種優先株式×××株 A-1種優先株式××株 I. 優先配当 ・・・A種優先株式1株につき、 20,000円に・・・A-1種優先株式1 株につき、10,000円に・・・ [シリーズA資⾦調達額] A種 株価20,000円 ×2万株=4億円 [CE調達額] A-1種 株価10,000円×1万株=1億円 [プレ] A種 株価20,000円×(7万株+1万株)=16億円 [ポスト] A種 株価20,000円×10万株=20億円 *新株予約権の個数(↓)を反映するとポストは22億円 新株予約権 第1回新株予約権 新株予約権の数 10,000個 ・・・本新株予約権1個当たりの⽬ 的たる株式の数は1株・・・ [新株予約権の割合] 10,000株÷(100,000株+10,000株)=9% ⽩⽯由⼰「シリーズAの教科書(検定外)」 17 累計5億円調達している (普通株除く)
  9. 投資家と共有する書類(=準備しておく書類) • 秘密保持契約(NDA)を締結後、もしくは差⼊⽅式のNDAを受領後に共有 • 主に下記3つの書類(他に、登記簿謄本・定款・決算書・試算表などの書類も共有する) ①事業説明のスライド(NDA版) -会社概要・マネジメントチーム -何を解決しようとしているのか︖(ペインポイント) -サービスの概要 -サービスの導⼊実績

    -競争優位性(サービスの強み、競合情報) -市場規模(TAM/SAM)・市場成⻑性 -事業計画(収益/損益)数値のサマリー -シリーズAの概要・資⾦使途 などが⼊ったもの ②事業計画の詳細数値 -どのようなロジックで数値が積み上がっていくか、を説明するもの ③資本政策(Cap Table) -過去のラウンドの株主、株価、発⾏株式数、資⾦調達額、今回ラウンド ⽩⽯由⼰「シリーズAの教科書(検定外)」 18 共有後、投資家から 質問リストが⼭ほど くるので、回答する
  10. おわりに︓優先株(種類株)の特性を理解しておく • 「残余財産優先分配権+優先参加権」がつく優先株(種類株)の特性 • 優先株の資⾦調達額が⼤きくなれば、売却(M&A)時のリターンが下がるリスク 19 優先株 買収額 M&A 普通株主(経営陣)の

    リターン 時価総額 優先株 ⽇本企業の買収額には⼀定の 天井がある(諸説あるが) IPO ラウンドを重ねれば、IPOの可能性が⾼ま るが、M&A時のリターンが下がるリスク 普通株 普通株 調達額⼩ 調達額⼤ 優先株 普通株 ⽩⽯由⼰「シリーズAの教科書(検定外)」