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知能とはなにか -ヒトとAIのあいだ-

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November 08, 2025

 知能とはなにか -ヒトとAIのあいだ-

https://www.chuo-u-pej.org/
中大技術士会
2025年11月8日
中央大学理工学部5333教室

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Y-h. Taguchi

November 08, 2025
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  1. 中大技術士会第21回定時総会と同時開催の特別講演会 20 フィニアス・P. ゲージ(Phineas P. Gage 、1823 – 1860 )は、米国の鉄道建

    築技術者の職長である。今日では、大き な鉄の棒が頭を完全に突き抜けて彼の左 前頭葉の大部分を破損するという事故に 見舞われながらも生還したこと、またそ の損傷が彼の友人たちをして「もはや ゲージではない」と言わしめるほどの人 格と行動の根本的な変化を及ぼしたこと によって知られている。 (かなり誇張は入っているらしい)
  2. 中大技術士会第21回定時総会と同時開催の特別講演会 29 モラベックのパラドックス: 「古典的記号処理パラダイム」では「常識」の学習が難しかった。 「人間にとって簡単なことはAI にとって難しく、逆に人間にとって 難しいことはAI にとって簡単」 1. 将棋やチェス

    vs. 歩くこと AI に得意なこと:チェスや将棋のような複雑な論理計算。コン ピュータは膨大な手を高速に計算できるため、人間トップを凌駕。 AI に苦手なこと:歩行やバランス保持。赤ん坊でも自然に学べる が、ロボットが滑らかに歩き、転ばずに段差を登るのは極めて難し い。
  3. 中大技術士会第21回定時総会と同時開催の特別講演会 30 2. 数学の問題 vs. 視覚認識 AI に得意なこと:高度な数式の計算や方程式の解法。人間は時間 がかかるが、AI は一瞬で処理。

    AI に苦手なこと:犬と猫の写真を見分けること。人間の子供なら 直感的にできるが、AI には膨大な学習データが必要。 3. 論理推論 vs. 家事 AI に得意なこと:論理パズルやルールベースの問題解決。 AI に苦手なこと:洗濯物をたたむ、卵を割って料理するなど日常 的な家事。物理的環境の不確定性や微妙な操作は非常に難しい。 (今の生成AI 、ロボットは相当程度これができる)
  4. 中大技術士会第21回定時総会と同時開催の特別講演会 31 2つの新しい潮流 身体性AI :AI に体を持たせれば「常識」を理解できる→ 今の 今のPhysical AI Physical

    AI に繋がる流れ に繋がる流れ→成果を残せずに頓挫(高 度な知能獲得に至らず) ニューラルネットワーク: 多層化によるパーセプトロンの復権→「局所解」の問題 を越えられず衰退→今の深層学習に繋がる 今の深層学習に繋がる →人工知能研究冬の時代へ→生成AI の成功!
  5. 中大技術士会第21回定時総会と同時開催の特別講演会 39 Sora (OpenAI) vs Veo (Google) 10秒以上のクリップにおける人物合流や後方接近など“難 タスク”では、両アプリが先行(実は冒頭に見せた「画面外 から人物がやってきて後ろから話しかける」はとても難しい

    タスク)だが発展の歴史はかなり違う Sora: 言語ベースのトランスフォーマー ⇒ 拡散モデル(Diffusion Transformer:動画) Veo: 画像の拡散モデル(Imagen) ⇒ 拡散モデル(動画:Veo)
  6. 中大技術士会第21回定時総会と同時開催の特別講演会 42 この画像には、室内の学習スペースあるいは会議室のよう な場所が写っています。以下の特徴が見られます:室内の 様子 テーブルと椅子:金属フレームの長方形テーブルが 複数並べられており、その周囲には赤い立方体のスツール (椅子)が配置されています。可動式のテーブルのよう で、配置を自由に変えられる構造です。床:カーペット敷 きになっており、落ち着いた雰囲気を出しています。壁と 照明:コンクリート打ちっぱなしの壁と、シンプルな照明

    が見えます。モダンなデザインの部屋です。人物と持ち物 画像奥には、黒い服を着た人物が1 人座っており、ノート PC で作業をしています。テーブルの上にはバッグやノー ト、筆記具などが置かれています。ホワイトボード 奥にホ ワイトボードがあり、うっすらと文字が書かれています。 上の行:「物理基礎 期末テスト」下の行:「本日スケ ジュール」と読めるため、授業か試験対策の場である可能 性が高いです GPT-5 による 画像要約
  7. 中大技術士会第21回定時総会と同時開催の特別講演会 44 $5900(参考価格(発表時)/構成により異なる)でとんぼ 返り、逆立ち可能な2足歩行ロボットが発売 https://www.youtube.com/watch?v=v1Q4Su54iho (本動画個体は把持器なし) 動画では、移動とカスタマイズを目的としたヒューマノイドロボット 「Unitree R1」が紹介されています。動画では、ロボットが屋外と屋 内のさまざまな環境で手立ちや側転などのアクロバティックな動作

    を披露し、26の関節による機敏さと柔軟性を強調しています。ま た、軽量設計(約25kg)や、音声と画像に対応した大規模なマルチ モーダルモデルとの統合についても説明されています。最後に、ロ ボットのカスタマイズ可能性について触れ、さまざまな部品の色や デザインオプションを示し、最終的な出荷時の外観が変更される 可能性があると説明しています。動画は、ブランドロゴと、過酷なテ スト、機能の差異、安全ガイドライン、ヒューマノイドロボット開発の 初期段階に関する免責事項で締めくくられています。
  8. 中大技術士会第21回定時総会と同時開催の特別講演会 57 • 白いスクリーンに黒い文字が映る、というのも錯覚であ る。白いスクリーンに光を当てて黒くなるわけがない。 • 光が当たって「より明るくなった」部分に比べて相対的に 暗いので「ここは黒い色が塗ってあるので暗くなってい る」と脳が誤認しているだけである。 •

    我々の知能だって、不完全な外界認知をしているが「不完 全さ」の方向が違うので生成AI の粗が見えやすいだけ • そもそも網膜には2次元画像(平面)しか移らないのだか ら3次元(立体)空間を一意的に再現できるわけがない。
  9. 中大技術士会第21回定時総会と同時開催の特別講演会 58 生成AI の誤認 人間の錯視 • 動画生成でセリフがおかしい • 「消火栓があるから廊下だ」 までは気付けない

    • 立方体と誤認 ・影で色が変わって見える ・奥行きの大きさ誤認 ・白いスクリーンに黒い字 が見える 比較まとめ 👓 誤認=生成の過程での推測ミス/錯視=知覚の系統的偏り
  10. 中大技術士会第21回定時総会と同時開催の特別講演会 65 現実をリバースエンジニアリングして真実と違うものになって しまった例:古典力学 古典力学 F=ma と書いた時のF やa は量子では一級の演算子ではなく、 Ehrenfest

    の定理により〈x 〉, 〈p 〉の時間発展は条件付きで古 典と整合するが完全ではない。 F: 量子力学ではポテンシャル力しか導入できない。 a: ハイゼンベルグ表示を使えば定義はできるが、ポテンシャル 未知では計算できないので運動論的な加速度は存在しない。
  11. 中大技術士会第21回定時総会と同時開催の特別講演会 66 知能とは現実のシミュレーターだと いう立場に立てば、人間の脳と生成 AI は現実を異なった方法で認識して いるが同じようなアウトプットを出 すことができる別種のシミュレー ターと思えばいい。生成AI は知能を

    持っているか、という問いは往々に して「(人間と同じ)知能を持って いるか」という問いに無意識のうち に変換されているが、知能が人間の それと同じあり方で無くてはならな いとは限らない。 現実 解釈
  12. 中大技術士会第21回定時総会と同時開催の特別講演会 71 本講演は「知能とはなにか」という問いへ の学術的なレビューを欠いています。それを 話してもつまらないからです。そこの部分を 補うためにGemini 2.5 Pro Deep Research

    に 概要を調べてもらいました。 https://note.com/tagtag/n/n4cb64f2c9100 また10分の解説音声も作ってくれたので 本格的な知能研究の歴史の概観はこちらを どうぞ。 https://youtu.be/RwhNBcyQQ50