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WBS 2022年2月2日講義 深圳のマスイノベーション環境紹介 -日本とまったく違う製造業...

TAKASU Masakazu
February 02, 2022

WBS 2022年2月2日講義 深圳のマスイノベーション環境紹介 -日本とまったく違う製造業エコシステム

第1回
深圳のマスイノベーション環境紹介 -日本とまったく違う製造業エコシステム

第2回:日本のイノベーションと深圳の連携
深圳のプロトタイピングツールと日本企業

TAKASU Masakazu

February 02, 2022
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Transcript

  1. 中華人民共和国の成立-共産主義経済(1949-1978) 世界との政治経済バランス:このころの中国は世界最貧水準、アフリカとあんまり変わらな い感じ(内戦はないけど) 戦略は「外国ぜんぶ敵 特に資本主義の先進国ぜんぶ敵 二度と植民地にならないぞ」 国内政治経済体制:資本主義をぶっこわして、新しい世の中を作ろう 最初からぜんぶ計画して分配すれば効率的で貧富さもなくなるのでは? 徹底的にやろう、古いインテリは農村で学び直させて新しい連中でやろう やってみたら、教育などはいきわたったけど世界最貧水準になって国内で餓死がでた

    清朝末期~中華人民共和国成立(1949)まで 世界との政治経済バランス: 欧州が産業革命でブースト世界中を帝国主義しまくる 「中国から紅茶を買うだけだと不利だから、同量のアヘンを輸出してチャラにしましょう」 「中国人を奴隷として世界中に売る」などなど 国内政治経済体制:中国版明治維新みたいなものに失敗して、うまく中央集権体制が作れ ない 各地の実力者が勝手に外国と戦争して負けて植民地化されたり、外国と結託 そのたびに不平等条約を結ばされまくる 清朝後半 19世紀以前 1800年ぐらい 世界との政治経済バランス: 世界最大の経済大国 ヨーロッパ人の来訪時に「ウチの国はなんでもあるからいらんけど、欲しい物があれば売っ てあげるよ」と言った(乾隆帝 1750年頃) 国内政治経済体制: 世界最大国家/大国だったのであまり軍事に力を入れない 日本の江戸時代的な感じの地方分権
  2. お手本がなくなったなかで(2014-) 世界との政治経済バランス:2011年、中国のGDPが世界2位に(一人あたりでは今も日本 の3-4割ぐらい) マネする相手がアメリカぐらいになった 国内政治経済体制:それまでは国営企業が引っ張る形だった経済を、アメリカ型マスイノ ベーションに 最後の砦だった起業と投資を規制緩和「大衆創業 万衆創新」(誰でも起業でき、全員でイ ノベーションする) 新興国として国際社会に参加(2001-2014年ぐらいまで)

    世界との政治経済バランス: 引き続き世界の工場だが、中国発のコピー製品なども 2001年WTO参加、マトモな輸出入ができるように中国が市場としても魅力に そのぶん国際的なルールを守ることも期待されるように 国内政治経済体制:さすがに餓死はなくなったので、国内制度を段々と整備 例:トウ小平時代「軍隊の維持費が出ないから、地方の軍隊は自力で稼ぐように」(軍用ト ラックで配送とかを始めたけど、汚職や民業圧迫の温床にもなった) 江沢民時代「軍が商売するの禁止」 改革開放以後、世界の労働工場に(1978-2001年ぐらいまで) 世界との政治経済バランス:世界の工場 労働力(教育された人)がいくらでもある/政治的に安定していて内戦とかがなさそう 世界中の低レベル製造業がどんどん中国に集まる:ひたすら労働する 国内政治経済体制: 共産主義を骨抜きにして資本主義をつくりあげる 営業努力とワイロの区別がつかない 消費者保護みたいな概念がない 「とりあえず細かいことは後で考えよう」というトウ小平の大胆な改革
  3. 今現在も続く変化 深圳の人口構成: (縦軸は合わせたけど、横軸は人口が違うので単位が違う、割合をみてください) 高齢者率2% 20代が大半、30代と合計して65%を占める 深圳2010: (出所)日本総研大泉啓一郎氏提供 (原出所)『広東省2010年人口普査資料』 0 500,000

    1,000,000 1,500,000 0-4 5-9 10-14 15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 75-79 80-84 85-89 90-94 95-99 100+ 男性 (千人) (歳) 0 500,000 1,000,000 1,500,000 女性 (千人) 深圳男 深圳女 東京男 東京女 60歳ライン 20歳ライン 東京2015: 統計メモ帳 https://ecitizen.jp/Population/PrefPyramid/13
  4. 会社組織の新陳代謝 ・1部署は20人単位 ・ミーティングは週1,月1など ・新入社員は入社後先輩について仕事 をおぼえる ・社内の仕事はすべて社内でやる ・仕事ごとに部署がある。100人の部署も10人 の部署もある ・仕事のために必要ならミーティングをやる ・入社したらまず企画をたてる

    ・コアのビジネス以外は外注や派遣で賄う 20世紀の会社組織 21世紀の会社組織 -業態による違いはあるが、会社組織ほかあらゆる組織も、情報処 理技術ほか、テクノロジーの影響を大きく受ける -同じ会社が組織変化をするのは難しく、潰れて別の会社が台頭す るケースが多い -深圳はその新陳代謝がほかより早く進んでいる
  5. 投資モデルの進化 イノベーションを支える 「スタートアップアクセラレータ」の誕生 ・企画書ベース ・数千万~数億円で始める ・リーダーはゼネラリスト ・数年単位の投資計画 ・⾧期にわたる計画 ・マーケットの見込みがあることをやる ・先に動くプロトタイプがある

    ・数百万円で始める ・リーダーはエンジニア ・大規模化(スケーリング)はあとから ・⾧期計画でなく、Agile(機敏) ・成功する見込みはわからない 既存の投資モデル スタートアップの投資モデル -多数決/合議制(数字ベース) -ヒット商品の後追い -今あるマーケットの開拓 -直感ベース -いま無いもの -多産多死 -人間の好き嫌いが相手
  6. 代表的なアクセラレータ 「Yコンビネータ」 ・先に動くプロトタイプがある ・数百万円で始める ・リーダーはエンジニア ・大規模化(スケーリング)はあとか ら ・⾧期計画でなく、Agile(機敏) ・成功する見込みはわからない スタートアップの投資モデル

    プロトタイプあるものにしか投資しない 投資金額は数百万(後にもう少し増えた) 創業者は伝説的なプログラマ 大規模化はあとから 起業前の会社に多く投資し、つぶれても気に しない Yコンビネータなどのやりかた 10年間で940社に出資、300社はすでに廃業 卒業生の合計時価総額は6500億USドル うち8社は10億ドル以上、40社は1億ドル以上 著名な卒業生 Dropbox,Airbnb, Heroku, Docker, Stripe,Twitchなど Yコンビネータ成績(2015年当時) Yコンビネータについての数字は https://venturebeat.com/2015/08/27/y-combinator-startups-have-raised-7b-with-a-65b-total-valuation-8-are-1b-unicorns/
  7. Yコンビネータの創業者たち ロバート T モリス 世界で最初にインターネット上で増殖するウィルス(ワーム)を作り、アメリカ最初のサイ バー法逮捕者 その後グレアムと一緒にViawebを設立 ポール グレアム 伝説的なプログラマ

    作家としても有名で、著書に「ハッカーと画家」 世界で最初のサーバサイドサービスであるViawebを設立 (後にYahooに売却しYahoo Shoppingとなる) エンジニアのアイデア/プロトタイプにエンジニアが 投資する 「Yコンビネータ」は型無しラムダ計算で使われる不 動点コンビネータの名前 (そのプログラミング用語がわかる人たちの場所)
  8. 2012年~ハードウェアイノベーションの民主化 アイデアのみで製造0のドリーマーは、Web のチュートリアルやキットが入手できる クオリティの足らないモノしか作れない プロトタイプメーカーに、 3Dプリンタなどのデジタル工作機械 発明はできるが量産できない大学教授 などに、量産請負サービスが 1000個単位での製造に必要なコストと マーケティングが、クラウドファンディン

    グで 宣伝・販売などのサプライチェーンが、 オンラインとSNSベースに -Seeedstudio 製 品 製 造 ロ ッ ト ソフトウェアに比べると設備も初期投資も必要なため、20世紀スタイルの研究開発(専門 家=大メーカー中心)だったハードウェアのイノベーションが民主化されつつある
  9. Source:[Guerilla Production Tactics] by ‘bunnie’ Huang 1社がすべての技術開発をし、 下請けに大量生産させる時代から どの製品も複数の発明・製造を 統合して製品にする時代へ

    現代は「下請け」という概念がなくなった世界 半導体製造のTSMCやバッテリのBYDを「下請け」と呼ぶ人はいない 川上・川下といった概念から、それぞれ強みのある会社のopenな協業へ かつての深圳と 21世紀の深圳 深圳には小規模でも独自性のある製品をつくりあげるstartupが多く 存在する
  10. • GoogleやFacebookは川上?川下? • テックベンチャーで川上川下はありえる? 考えてみよう1 考えてみよう1 • ITで川上川下がはっきりある構造は? • それはイケてる?

    イケてない? 考えてみよう2 考えてみよう2 • これらのハードウェア企業には川上?川下? • INTEL/TESLA/FOXCONN/TSMC/SAMSUN/SONY/RaspberryPi 考えてみよう3 考えてみよう3 ここまででグループディスカッション 質問 or 自分たちはどうやってハードウェアを作っていけば良いのか
  11. 開発ボードという製品 マイコンチップ、無線機能、I/O端子などをひとまとめにしたもの 用途や価格に応じて多様なボードが存在する 利用者はソリューションを開発するエンジニア、IoTシステム開発を学ぶ学生など 代表的な開発ボード RaspberryPi(英国)などを使って開発 ・適合するセンサを選ぶ ・センサーを処理するソフトをつくる ・動作確認の画面をつける ・ケースを3Dプリンタなどでつくる

    M5Stack シリーズを 使って開発 完成までまだまだ、 本質(ドアセンサー) 以外の時間がかかる.. 完成。 アイデアの検証が できる! (Proof of Concept) M5Stackシリーズは 「アイデア→実際に作ってみて試す」までの時間を最小化する 例:入退室を記録するシステムを開発する
  12. M5Stack(2018年日本発売開始) ・社長ジミー・ライは、もと中国南方電網のエンジニア ・しょっちゅうスマートメーターを開発している間に、 「多くのメーターに共通する機能を製品にしよう」と思 いついて起業 ・社長室に専用の部品ボックスと作業台を起き、プロト タイプを自分で作る。いつも身の回りには試作品が転 がっている ・Arduino IDEが利用可能で、IoT開発に必要なwifi/BTをあらかじめ備えたESP32シリーズの

    CPUを採用した開発ボード。日本でもArduinoを置き換える勢いで普及が進んでいる ・画面、バッテリ、ボタン、Grove,GPIOなどを備え、安価(1500-5000円程度) ・毎週1つ以上の新ハードウェア/センサー類を発表し、拡張性が高い オープンソースハードウェア(部品リスト,ピン番号などの 開発に必要な情報があらかじめ公開されているハードウェア) 買ってくれば使える。ソリューションを開発する上でM5Stack社の取引開始稟 議書、審査や許可が要らない。必要な情報はオンラインで公開されている
  13. 弊社/僕が得たメリット ▪時間や工数のメリット -多くの中国企業(中国以外の企業も含む)から、協業検討の依頼が届く ▪事業面でのメリット 深圳のイケイケのスタートアップに成長した M5 から頼りにされる 後述する 関連する企業からビジネスが広がっていく ▪財務/収益でのメリット

    -販売開始後、世界でも日本市場でも年間100%規模で成長する製品 「成功した会社と付き合いたい」と、多くの人が勘違いしている。 成功した会社には、あらゆる会社が(アリババもappleもamazonも)群がる。 スモールプレーヤーは、「小さいものを大きくするチーム」となるべき 一緒に大きくした経験は、簡単には代替できないし、そこから別の可能性 が開ける
  14. c 日本の個人発明家は、技術でもアイデアでも世 界一 M5Stackを利用して、 スマートメーターじゃなくて 「かわいいロボット」を作った ししかわ @meganetaan さん 2021.8.12公開

    オープンソース スイッチサイエンス/M5Stack 主催コンテスト受賞 アメリカHackaday.ioで金賞 2021.9.4 ドイツ国営Tvの 国際放送(スペイン語版, アラビア語版など) で紹介 2021.11.12 c 他のユーザも続々と派生プロジェクトを ついに公式も開発開始
  15. キーワード「手を動かす」「興味本位で動く」 「オープンイノベーション」 深圳人のように動く) 趣味と仕事の中間から、がっちり仕事へ 最初は「やりたい」から始まる。 儲かるところはすでに競争になっていて面白くない。 流行ってるものはパワーゲームと正攻法の勝負になる。僕らの場所じゃない 手を動かせる、複数の専門分野の融合 「その場」で「具体的」に決定できる人間が強い ・ニコ技深圳では会議を行ったことがない。目的別に主担当のいるWechat

    等のグループ があり、決定はすべて個人が行う。 ・情報をシェアすると助けてもらえる可能性が高まる ・もともと個人判断で動ける、経営者やフリーランスエンジニアが多い 極秘案件が少なく、お金に関係のないプロジェクトも多い ・気軽に情報がシェアでき、試しに一緒に手を動かしてみることがやりやすい。 (たとえばワークショップの運営とかイベントや、一部の翻訳など ・深圳のメイカースペースにいたエンジニアと日本のエンジニアが共同で プロジェクトを行った例も
  16. オープンソースと産業,深圳について研究していく 書籍の出版 深圳市主催 Next Shenzhenイベントにて、 Huawei Japanの王会長と共 に講演 テーマが2人とも 「オープン」だった

    北京にて垂中国大使に、 中国のオープンソースや 深圳の近況について情報提供 JPNIC(日本のインターネットを管理している)の インターネットガバナンスフォーラムに登壇
  17. サイエンスがなぜ重要なのか? 競合がいない 自社にしかできない 競合がいない 自社にしかできない 利益をゴールにする 組織で利益を挙げる 属人化しない 利益をゴールにする 組織で利益を挙げる

    属人化しない ・僕の属人的な活動が、組織としての利益に繋がる=事業 ・ブルーオーシャンでも利益が出るところは? ・競合が参入できず、自分たちはできるものは? ・弊社は中小企業なので、短期で大きな利益にならなくてもよい ・僕個人の人件費や経費は空振りしてもかまわない=多産多死前提 ブルーオーシャン なかなか利益が出 ない 資本力で決まらな い 利益が出るけど 競合も増え 規模とディテールの勝負 に レッドオーシャン化 資本力で勝負が決まる 事業とそのジレンマ 有名で利益が上がるところほどレッドオーシャンになっていく 僕が関心あるのはこちら 今は仕事になっていないのに、すごい人がすごい労力を注い でいるところ=可能性ある
  18. ギークと科学者は未知を既知に変える ブルーオーシャンの宝庫 ・仕事じゃないのにすごいスカラーがあるところ ・自分以外面白がってないことを見つけ、面白さをシェアする ・コミュニティができれば事業になる(かもしれない) 自分しか わからない 自分しか わからない 一部の人は面

    白がる 一部の人は面 白がる 世の中みんなが知っ ている(お金にもなって いる) 世の中みんなが知っ ている(お金にもなって いる) ここのキャズムをどう越えていくか ググったら出てくる, 有名Youtuberが解説している, Amazonで本が何冊も出ている →コミュニティ,集合知
  19. ベクトル(方向性を持った力)を大きくしていこう コミュニティに なりえること 自分ができ ること 事業として できること スカラー(純粋な力の量)は何より大事、 スカラーに方向性が伴うとベクトルになる この方向にビジネスを

    大きくしていく さらに、多産多死なので、 ベクトルは1本ではダメ 僕が気にしている長期的なトレンド ・技術の民主化 ・コンピュータサイエンス ・オープンソース
  20. 米MIT ML Research at Scale から影響されていること (高須は 2019 年にメンターとして参加) ・「今ないこと」をするために、「今あること」をすべて体験するこ

    とが大事 ・複数の異なる専門分野の集まり ・Deploy or Die ・お互いの分野を体験することでマッチングが生まれる ・卒業生が次の分野の先生になる
  21. 10月24日 今日は日本のStack-Chan プロジェクトが 撮影会をしてくれた! 11月6日 日本ではいつも学びをシェア する技術交流会が 開かれている。 中国もそうなるべきだ! 彼ら深圳のスタートアップに

    僕ら日本人はどう見えているか? M5Stack CEO Jimmyのwechat 朋友圈より 10月23日 M5が日本の多くの工場に入ってい る!テレビで放映された!