Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

熊本地震の地上の変化をSAR衛星からAI処理して確認した

 熊本地震の地上の変化をSAR衛星からAI処理して確認した

Avatar for takeofuture

takeofuture

August 31, 2026

More Decks by takeofuture

Other Decks in Technology

Transcript

  1. ▪ 愛知県名古屋市生まれ豊田市育ち ▪ 大学,大学院では地球物理専攻 ▪ 本業ロサンゼルス商社のデータサイエンティスト 個人でAI関連含むプロジェクト多数実践 ▪ 愛知県豊田市の空家に年数回滞在(日米2拠点生活) 興味のある仕事

    ▪ ▪ ▪ ▪ 先端技術と情報技術の融合と応用 データサイエンス AI(生成AI,分析AI,識別AI), 統計や機械学習 ロボット、AI支援型CADや部品設計製造 ▪ ▪ ▪ ▪ キャンプやハイキング 自転車旅行 青春18切符でのんびり列車旅行 食べること 趣味 @takeofuture zenn.dev/takeofuture www.linkedin.com/in/takeofuture/
  2. 目次 ▪ ▪ ▪ ▪ ▪ ▪ ▪ ▪ ▪

    ▪ SAR衛星とは なぜSAR衛星? 今回着目するInSARデータとは? 使用したモデル構造 使用データ MAE+ViTでの結果 LOS変位(衛星視線方向の地表変位)でも十分できた 場所別LOS変位 通常の機械学習での異常度判定では? まとめ
  3. 今回着目するInSARデータとは? InSAR(干渉SAR) 同じ場所を2時期に観測したSARの位相差を利用して、地表までの距離変化を捉える手法。 今回着目する3つの情報 ① Wrapped Phase(位相差) 2時期のSAR信号の位相差を −π~π に折り返して表現。

    地表変位があると、干渉縞として現れる。 ② Coherence(コヒーレンス) 2時期のSAR信号がどの程度対応しているかを表す指標。 1に近いほど安定、0に近いほど変化・ノイズが大きい。 ③ LOS Displacement(衛星視線方向変位) 位相差をアンラップし、衛星から見た地表の変位量に変換したもの。 出典:安井秀輔・佐藤功一・藤原寛朗『SAR衛星データ解析入門』講談社,2026年,第1章 1.5 図1.5.1,1.5.2,1.5.7,1.5.27
  4. 使用したモデル構造 地震変化への応用 地震前(PRE)のInSAR特徴をMAEで学習 → ViTのlatent空間に正常パターンを形成 → 地震をまたぐCOSEISMICがPRE分布から外れるかを異常度として評価 MAE + Vision

    Transformer • 比較的小型でシンプルな Transformerモデル • InSAR画像を 16×16画素のpatch に分割 • patchの 75%を ランダムに隠す • MAEで隠したpatchを復元 正解ラベル不要の 自己教師あり学習 • Encoderには Vision Transformer(ViT)を 使用 Attentionでpatch間の 関係を学習 • 学習後は ViTのlatent表現 で異常度を評価
  5. 使用データ 出典:ESA / Copernicus Sentinel-1 IW SLC(ASF DAAC, Alaska Satellite

    Facility より取得)。InSAR処理:ASF HyP3 InSAR GAMMA。 https://urs.earthdata.nasa.gov/documentation/for_users/how_to_register https://urs.earthdata.nasa.gov/documentation/for_users/how_to_preauth_app
  6. LOS変位(衛星視線方向の地表変位)でも十分できた p95 =「上位5%の観測画像内でのピクセルがこれを超える境界値をみせた」 p99 =「上位1%の漢族画像内でのピクセルがこれを超える境界値」 結果の解釈 地震前7期間(PRE01~07)のp95は約1.2~3.1 cmの範囲だったのに対し、 地震をまたぐCOSEISMICでは13.67 cmまで急増。

    POSTでは約3.11 cmまで低下した。 地震をまたぐ期間のみ、通常の地震前変動を大きく超える 衛星視線方向の地表変位が確認された。 数値の見方 縦軸:Median-centered |LOS| displacement(cm) 各期間について、Coherence ≥ 0.5 の画素だけを使用し、 LOS変位からその期間の中央値を引いて基準を0にした後、変位の絶対値を評価。 地震をまたぐ期間では、変位の大きい上位ピクセル群が、平常時よりはるかに大きなLOS変位を示した ただしこの手法は信頼度によてフィルターをかけているためフィルターは統計を取る母集団を変える懸念はある
  7. 通常の機械学習での異常度判定では? PRE正常時から決めた異常閾値を 超えた224×224 windowの割合(%) 数値の見方 • PRE正常時の異常スコア分布から p95を異常判定閾値として設定 • 各224×224

    windowについて、Isolation Forest + One-Class SVMで異常度を算出 • 縦軸 = 異常閾値を超えたwindowの割合 • COSEISMIC:100% → 全評価windowがPRE正常時の基準を超えた • POST:約32% → 地震後にも一部異常が残存 地震をまたぐ期間では、通常の機械学習でも全領域的に強い異常として検出された 。
  8. 通常の機械学習での異常度判定では? 数値の見方 縦軸:Robust anomaly z-score → 平常時(PRE)の特徴からどれだけ外れているかを表す異常度 → 0付近=PREに近い/大きいほどPREと異なる •

    Isolation Forest PREデータの分布から孤立しているほど異常度が高い • One-Class SVM PREで形成した「正常領域」から離れるほど異常度が高い • Ensemble 2モデルの異常度をPRE基準で正規化し、平均した最終異常スコア • --- PRE OOF p95 threshold ≈ 3.0 地震前データを1期間ずつ除外して評価し、正常時スコアの上位5%境界を異常閾値とした 結果の解釈 • PRE01〜07:ほぼ0付近 • COSEISMIC:Ensemble ≈ 9.86 • POST01:Ensemble ≈ 2.68 • 異常閾値:約 3.0 計算手順概要 224×224領域ごとに 位相 + Coherence + LOS変位 → 特徴量化 → Isolation Forest / One-Class SVM → 各スコアをPREの中央値・MADで正規化 → 2つを平均してEnsemble z-score。
  9. まとめ モデルよりも「何を観測するか」が重要だった • MAE+ViTにより、地震をまたぐ期間を異常として検出できた ラベルなしの自己教師あり学習でも、InSARの変化を捉えられた。 • 一方、LOS変位の統計解析や通常の教師なし機械学習でも、地震期間は明瞭に検出できた 今回は、MAE+ViTに明確な性能上の優位性は確認できなかった。 • 最も大きかったのは、観測量を反射強度(VV/VH)から

    InSARの位相・coherence・LOS変位へ変えたこと 複雑なモデルよりも、現象を直接捉えるセンサー情報・物理量の選択が結果を大きく左右した。 • ただしMAE+ViTは、LOS変位を直接入力せずに異常を検出できる sin(phase)・cos(phase)・coherenceだけから平常時と異なる空間特徴を学習でき、 変位量や異常の物理指標を事前に定義しにくい現象への応用可能性がある。 • 今後は、複数地震・複数地域で汎化性能を検証する 「熊本だけで見える特徴」ではなく、未知の地震でも検出できるかを評価する。 地震波解析から推定した断層・震源情報と、AIが検出する異常領域の空間的一致/ずれを調べる