Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
熊本地震の地上の変化をSAR衛星からAI処理して確認した
Search
takeofuture
August 31, 2026
Technology
28
0
Share
Embed
Copy iframe code
Copy JS code
Copy link
Start on current slide
熊本地震の地上の変化をSAR衛星からAI処理して確認した
takeofuture
August 31, 2026
More Decks by takeofuture
See All by takeofuture
MarineGym 水中シミュレータ
takeofuture
0
80
BLUVIC(SportへのAI活用)ハッカソン発表資料
takeofuture
0
33
Forklift Goal Condition Reinforcement Learning by Gazebo + ROS2 topic
takeofuture
0
110
ROSAというLLM使ったROSエージェントをおもちゃに実装してみた話
takeofuture
0
290
2025/11/14 ロボセミでの発表資料
takeofuture
0
140
20240827_LLM発表
takeofuture
0
320
Other Decks in Technology
See All in Technology
Bet AI Day 2026丨Production-Ready AI Agents — エンタープライズの実務を任せるための設計と運用
layerx
PRO
1
820
Data Hubグループ 紹介資料
sansan33
PRO
0
3.2k
1000⼈規模のClaude Enterprise運⽤を「Oktaのグループ」と「Slack」に集約する
sansantech
PRO
1
550
人気商品が「ちゃんと買える」をつくる ー ECの負荷改善
ykagano
1
170
AI時代のキョウソウ戦略
ystk
2
110
KAEN Company Deck
kaen
PRO
0
170
AI時代の「OAuth認証」にどう物申すか?(OAuth/OIDC Numa (Immersion) Workshop 2026)
oidfj
PRO
0
410
Bet AI Day 2026丨Agentは、「金融」という巨大産業の何を変えられるのか
layerx
PRO
0
250
EMの役割で 変わったこと・変わらなかったこと
sansantech
PRO
1
230
ブラウザで変わるID連携(OAuth/OIDC Numa (Immersion) Workshop 2026)
oidfj
PRO
0
430
Microsoft MVP プログラムを紹介するから目指す人増えてくれ
tsubakimoto_s
0
160
AIレビュー時代に必要なのは、SLOで引く撤退ライン
nobuoooo
0
160
Featured
See All Featured
How Fast Is Fast Enough? [PerfNow 2025]
tammyeverts
3
850
CoffeeScript is Beautiful & I Never Want to Write Plain JavaScript Again
sstephenson
162
16k
The Limits of Empathy - UXLibs8
cassininazir
1
620
Templates, Plugins, & Blocks: Oh My! Creating the theme that thinks of everything
marktimemedia
31
2.9k
A better future with KSS
kneath
240
18k
Fight the Zombie Pattern Library - RWD Summit 2016
marcelosomers
234
17k
New Earth Scene 8
popppiees
3
2.5k
Claude Code どこまでも/ Claude Code Everywhere
nwiizo
67
57k
The AI Revolution Will Not Be Monopolized: How open-source beats economies of scale, even for LLMs
inesmontani
PRO
3
3.7k
The Illustrated Children's Guide to Kubernetes
chrisshort
51
53k
Building the Perfect Custom Keyboard
takai
2
860
Save Time (by Creating Custom Rails Generators)
garrettdimon
PRO
32
4.6k
Transcript
熊本地震の地上の変化をSAR衛星からAI処理して確認した 宇宙からのレーダー反射とAIで見る地震後の地表変化 柴田たけお 0
▪ 愛知県名古屋市生まれ豊田市育ち ▪ 大学,大学院では地球物理専攻 ▪ 本業ロサンゼルス商社のデータサイエンティスト 個人でAI関連含むプロジェクト多数実践 ▪ 愛知県豊田市の空家に年数回滞在(日米2拠点生活) 興味のある仕事
▪ ▪ ▪ ▪ 先端技術と情報技術の融合と応用 データサイエンス AI(生成AI,分析AI,識別AI), 統計や機械学習 ロボット、AI支援型CADや部品設計製造 ▪ ▪ ▪ ▪ キャンプやハイキング 自転車旅行 青春18切符でのんびり列車旅行 食べること 趣味 @takeofuture zenn.dev/takeofuture www.linkedin.com/in/takeofuture/
目次 ▪ ▪ ▪ ▪ ▪ ▪ ▪ ▪ ▪
▪ SAR衛星とは なぜSAR衛星? 今回着目するInSARデータとは? 使用したモデル構造 使用データ MAE+ViTでの結果 LOS変位(衛星視線方向の地表変位)でも十分できた 場所別LOS変位 通常の機械学習での異常度判定では? まとめ
SAR衛星とは? 出典:安井秀輔・佐藤功一・藤原寛朗『SAR衛星データ解析入門』講談社,2026年,第1章 1.1 図1.1.5
なぜSAR衛星? 合成開口レーダー(SAR)を搭載 衛星自身が地表へマイクロ波を照射し、戻ってくる反射波(後方散乱)を観測 太陽光を必要としないため、昼夜を問わず観測可能 マイクロ波は雲の影響を受けにくく、曇天時でも地表を観測しやすい 建物、地表の粗さ、植生、水分などの変化によって反射の強さが変わる 写真の色を見るのではなく、地表から返ってくる電波の強さを測る衛星観測 地表の構造が大きく変化すると、それに伴って電波の反射パターンも大きく変化する。
今回着目するInSARデータとは? InSAR(干渉SAR) 同じ場所を2時期に観測したSARの位相差を利用して、地表までの距離変化を捉える手法。 今回着目する3つの情報 ① Wrapped Phase(位相差) 2時期のSAR信号の位相差を −π~π に折り返して表現。
地表変位があると、干渉縞として現れる。 ② Coherence(コヒーレンス) 2時期のSAR信号がどの程度対応しているかを表す指標。 1に近いほど安定、0に近いほど変化・ノイズが大きい。 ③ LOS Displacement(衛星視線方向変位) 位相差をアンラップし、衛星から見た地表の変位量に変換したもの。 出典:安井秀輔・佐藤功一・藤原寛朗『SAR衛星データ解析入門』講談社,2026年,第1章 1.5 図1.5.1,1.5.2,1.5.7,1.5.27
使用したモデル構造 地震変化への応用 地震前(PRE)のInSAR特徴をMAEで学習 → ViTのlatent空間に正常パターンを形成 → 地震をまたぐCOSEISMICがPRE分布から外れるかを異常度として評価 MAE + Vision
Transformer • 比較的小型でシンプルな Transformerモデル • InSAR画像を 16×16画素のpatch に分割 • patchの 75%を ランダムに隠す • MAEで隠したpatchを復元 正解ラベル不要の 自己教師あり学習 • Encoderには Vision Transformer(ViT)を 使用 Attentionでpatch間の 関係を学習 • 学習後は ViTのlatent表現 で異常度を評価
使用データ 出典:ESA / Copernicus Sentinel-1 IW SLC(ASF DAAC, Alaska Satellite
Facility より取得)。InSAR処理:ASF HyP3 InSAR GAMMA。 https://urs.earthdata.nasa.gov/documentation/for_users/how_to_register https://urs.earthdata.nasa.gov/documentation/for_users/how_to_preauth_app
使用データ 地震前後のInSARから位相変化・LOS変位・Coherenceを抽出し、MAE+ViTに用いた。 同時に比較として物理解析および機械学習にも使用している。 データ生成方法: https://zenn.dev/takeofuture/articles/06ef8ccd5064ad Unwrapped Phase:連続的な位相変化 LOS displacement:相対的な地表変位量(m) Coherence:信頼度指標
対象地域:osm地図
MAE+ViTでの結果 地震発生2026/07/28をまたいだペア 地震をまたぐペアでは、平常時に基づく異常閾値を超えるwindowの割合が約40%まで増加し、 ViT潜在表現上でも地震時の変化が明瞭に検出された。
LOS変位(衛星視線方向の地表変位)でも十分できた p95 =「上位5%の観測画像内でのピクセルがこれを超える境界値をみせた」 p99 =「上位1%の漢族画像内でのピクセルがこれを超える境界値」 結果の解釈 地震前7期間(PRE01~07)のp95は約1.2~3.1 cmの範囲だったのに対し、 地震をまたぐCOSEISMICでは13.67 cmまで急増。
POSTでは約3.11 cmまで低下した。 地震をまたぐ期間のみ、通常の地震前変動を大きく超える 衛星視線方向の地表変位が確認された。 数値の見方 縦軸:Median-centered |LOS| displacement(cm) 各期間について、Coherence ≥ 0.5 の画素だけを使用し、 LOS変位からその期間の中央値を引いて基準を0にした後、変位の絶対値を評価。 地震をまたぐ期間では、変位の大きい上位ピクセル群が、平常時よりはるかに大きなLOS変位を示した ただしこの手法は信頼度によてフィルターをかけているためフィルターは統計を取る母集団を変える懸念はある
場所別LOS変位 気象庁の地震波観測から 特定された地面変異が起きた線 定性的比較 LOS変動の大きい領域は、地震波解析から推定された 断層面候補の走向と概ね整合して集中した 信頼度 ≥ 0.5 の有効画素すべてについての変化度:∣LOS−median(LOS)∣
左の図でさらに変化の大きいTOP5% 出典: 気象庁(JMA), 初動発震機構解:2026/7/28 16:27 M7.1 https://www.data.jma.go.jp/eew/data/mech/fig/mc2026072816270000N323600E13042000100071.html
通常の機械学習での異常度判定では? PRE正常時から決めた異常閾値を 超えた224×224 windowの割合(%) 数値の見方 • PRE正常時の異常スコア分布から p95を異常判定閾値として設定 • 各224×224
windowについて、Isolation Forest + One-Class SVMで異常度を算出 • 縦軸 = 異常閾値を超えたwindowの割合 • COSEISMIC:100% → 全評価windowがPRE正常時の基準を超えた • POST:約32% → 地震後にも一部異常が残存 地震をまたぐ期間では、通常の機械学習でも全領域的に強い異常として検出された 。
通常の機械学習での異常度判定では? 数値の見方 縦軸:Robust anomaly z-score → 平常時(PRE)の特徴からどれだけ外れているかを表す異常度 → 0付近=PREに近い/大きいほどPREと異なる •
Isolation Forest PREデータの分布から孤立しているほど異常度が高い • One-Class SVM PREで形成した「正常領域」から離れるほど異常度が高い • Ensemble 2モデルの異常度をPRE基準で正規化し、平均した最終異常スコア • --- PRE OOF p95 threshold ≈ 3.0 地震前データを1期間ずつ除外して評価し、正常時スコアの上位5%境界を異常閾値とした 結果の解釈 • PRE01〜07:ほぼ0付近 • COSEISMIC:Ensemble ≈ 9.86 • POST01:Ensemble ≈ 2.68 • 異常閾値:約 3.0 計算手順概要 224×224領域ごとに 位相 + Coherence + LOS変位 → 特徴量化 → Isolation Forest / One-Class SVM → 各スコアをPREの中央値・MADで正規化 → 2つを平均してEnsemble z-score。
まとめ モデルよりも「何を観測するか」が重要だった • MAE+ViTにより、地震をまたぐ期間を異常として検出できた ラベルなしの自己教師あり学習でも、InSARの変化を捉えられた。 • 一方、LOS変位の統計解析や通常の教師なし機械学習でも、地震期間は明瞭に検出できた 今回は、MAE+ViTに明確な性能上の優位性は確認できなかった。 • 最も大きかったのは、観測量を反射強度(VV/VH)から
InSARの位相・coherence・LOS変位へ変えたこと 複雑なモデルよりも、現象を直接捉えるセンサー情報・物理量の選択が結果を大きく左右した。 • ただしMAE+ViTは、LOS変位を直接入力せずに異常を検出できる sin(phase)・cos(phase)・coherenceだけから平常時と異なる空間特徴を学習でき、 変位量や異常の物理指標を事前に定義しにくい現象への応用可能性がある。 • 今後は、複数地震・複数地域で汎化性能を検証する 「熊本だけで見える特徴」ではなく、未知の地震でも検出できるかを評価する。 地震波解析から推定した断層・震源情報と、AIが検出する異常領域の空間的一致/ずれを調べる
参考文献 安井秀輔・佐藤功一・藤原寛朗 『SAR衛星データ解析入門』講談社,2026年 気象庁 2026年07月28日16時27分頃 熊本県熊本地方 M 7.1: 初動発震機構解(詳細). https://www.data.jma.go.jp/eew/data/mech/fig/mc2026072816270000N323600E13042000100071.html