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HP (Hitto Point: 筆頭ポイント)

HP (Hitto Point: 筆頭ポイント)

HP (Hitto Point: 筆頭ポイント)
~若手研究者のためのモチベーションマネジメント数値指標~

谷口が10年以上前に発案して、個人的に使ってきりした指標です。
楽しい若手研究者ライフを過ごしましょう。

Tadahiro Taniguchi

April 20, 2024
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Transcript

  1. HPとは何か? HP = Hitto Point = 筆頭ポイント 筆頭=First (もしくはCorresponding) Author

    HP = 筆頭著者として投稿中で査読中の ジャーナル論文*の数  若手研究者の研究アクティビティを維持するため、そのモチベーションマネジメントに 配慮した数値指標。  研究者を「評価」するためではなく、自分で自分をモニタリングするために用いる。  *情報分野などだとトップ会議などをこれに含めてもよい。  その名前は古来からのRPG(「ドラゴンクエスト」など)である残生命力を表すHP (ヒットポイント)のオマージュである。
  2. 出版か死か (Publish or Perish) 論文の出版は大事 アクティビティの自己モニタリングは必要 だけど既存の数値指標(代表例「一年に論文を何報出 版したか?」)は「外部からの評価」には良いかもし れないが、どうにも自分のアクティビティ管理には向 かない。

    なぜ駄目か? ネガティブ:リジェクトの時に数値指標が下がり心的ダメー ジがでかく、辛い。 後での評価:努力が数値に反映されるまでに1年近くかかり、 遅い。 不確か:自分の努力に対して採録に確率的成分があるので、 外部要因にさらされる。
  3. PST分析 結果がどれほど自然にその行動を動機づけるか? 先行条件、行動、結果に関する便宜的な情報整理方法。 人が最も強くその行動を継続しようと思うのはPかつS かつT、つまりポジティブな結果が即、確かに得られる [石田 2007]。 石田 淳, 短期間で組織が変わる

    行動科学マネジメント , ダイヤモンド社, (2007) タイプ P: ポジティブ N: ネガティブ タイミング S: 即時 A: 後で 可能性 T: 確か F: 不確か ⇒この視点で見ると「年間論文採録数」は行動に繋がりにくい結果の見方
  4. HPのPST分析 ① P: ポジティブ 論文を投稿した時点で1ポイント上昇し、ポジティブなフィード バック を受ける。 リジェクト時には修正後別雑誌に再投稿次第回復するのでリジェ クトによるネガティブ効果が弱い。 ②

    S: 即時 論文を投稿次第上昇するので即時である。行動と数値の間の関係 が明確。 ③ T: 確か 投稿した時点で確か(確実)に上がる。行動と数値の間に査読者 等に起因する不確実性が挟まれる余地がない。 HP =筆頭著者として投稿中で査読中のジャーナル論文の数 若手研究者にとって自らの行動につなげやすい結果のフィードバックであり、 モチベーションマネジメントの良い条件を揃えた指標となっている。
  5. アクセセプトされたらHPが減る?? アクセプトはどっちにしろ嬉しい。 HP以外にも、私たちは様々な審査や評価の数値指標に囲まれて いる。HPの視点では論文のアクセプトはマイナスの評価とんあ るかもしれないが、総体的には私たちは当然ながらそれを喜ぶ。 私たちは論文をアクセプトされたいのだ。 リジェクトの痛みを緩和する。 リジェクトされるとHPは下がるが、改訂を行い別のジャーナル に速やかに投稿することで、比較的早くポイントは回復する。 逆説的だが、リジェクトされたほうが、アクセプトされた場合

    より、HPを維持しやすいということは、論文がリジェクトされ た際のメンタルダメージの緩和になる。 若手研究者がポジティブな研究活動を続けるためにリジェクト の精神的ダメージの緩和は重要な要素です。 行動およびモチベーションマネジメントのための数値指標は、その私たちの心や行動 への有効性に意味がある。私たちをどれだけモチベートし、心を癒せるかが重要だ。 「正当な評価」や「客観的な評価」はここではそれほど重要ではない。私たちは現実 的で便利、実効的で、自分たちの背中を押してくれる数値指標を求めているのだ。
  6. HPを意識した若手研究者ライフ • 標準的:HP1以上を維持しよう。 • 論文を投稿したら、その採択を待つ間に別の研究を始めよう。投稿済み の論文について心配することなく手放し、次の研究に集中しよう。(洗 濯機が回っている間に他の家事をするようなもの) • アクティブ:HP2以上を維持し走る。 •

    アクティブな研究者であると自認するなら、筆頭ポイントを2以上に保 とう。そのような活動は量が質に転化し、出会いや発見、成果をもたら す機会を増やす。これらの活動を通じて、次のポストやステップが見え てくる。”Publish or Perish”の原則を忘れず、朗らかにいこう • 危険状態:HP0が半年や一年以上継続する。 • HPが1以上なら、表示は白い文字となる。HPが0になると、表示が緑色や 黄色に変わり、危険な状態を示す。HPが一時的に0になることもあるが、 この状態が半年から1年続く場合は、研究活動が停滞している可能性が 高い。注意が必要である。
  7. 心を健康に保ち、研究活動を活発に維持しよう。 論文が採択されるかどうかに関わらず、HPが1以上であれ ば自分自身と周囲の若手研究者を褒め、 HPが0であること は危険と認識しよう。 皆さんがHPの機能を理解し、活用して充実した研究者ライ フを送られますことを! メールアドレス: [email protected] X

    (personal): @tanichu 【注意】学術分野がそれぞれ特有の尺度や活 動を持つと考えています。そのため、全分野 をカバーする統一された指標を設けることは 基本的に無理であり、健全でもありません。 したがって、このHP指標も主に私の分野に近 い人たちが自分たちのニーズに合わせて使用 することを想定しています。