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Evidence Based Policy Making (EBPM)

Evidence Based Policy Making (EBPM)

Tetsuro Shimada

February 09, 2023
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Transcript

  1. 10 ▪ 1999年3月にModernising Governmentが公表 ▪ 政府は、真に問題に対処する政策を生み出すためにその行動を常 に再評価しなくてはならない。そしてその政策は、短期的な圧力 への応答では無く、将来を見通したものであり、エビデンスによ って基礎づけられたものでなくてはならない ▪

    政府は政策立案者により多くのものを求める。それは、より多く の新しいアイデア、より積極的に従来のやり方を問い直す態度、 政策形成におけるエビデンスとリサーチのより良い活用、長期的 目標をもたらす政策へのより多くの集中である ブレア政権におけるEBPMの取り組み
  2. 12 ▪ 英国財務省の政府エコノミストを中心にThe Green Book が策定された(1991年第1版、2020年第6版) ▪ キャメロン政権の2011年に、事後評価の詳細を提供するThe Magenta Bookが公表

    EBPMのガイドライン The Green Book:https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1063330/Green_Book_2022.pdf The Magenta Book: https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/879437/Magenta_Book_supplementary_guide._Handling _Complexity_in_policy_evaluation.pdf
  3. 13

  4. 16 ▪ 期待される費用と効果を推計し、両者を比較する ▪ Social Cost Benefit Analysis:Social CBA ▪

    介入有無で、社会、経済、環境、財政へのインパクトを比較する ▪ 金銭化不可能な価値についても十分に考慮するべき 3. ショートリストの評価 The Green Book上は評価手法としてSocial CBAを採用しているが、RCTや準実験手法も選択肢に入る
  5. 17 ▪ 社会的価値を最大限に実現するオプションを特定する ▪ 以下の要素が考慮される ▪ Net Present Social Value(NPSV):割引された便益から費用を

    引いたもの。正であることが必要 ▪ Benefit Cost Ratio(BCR):便益を費用で除したもの。1以上で あることが必要 ▪ リスクとその他の考慮(金銭価値化できない費用と便益など) 4. 望ましいオプションの選択
  6. 24 ▪ 2014年4月から70歳になる者の70〜74歳の自己負担割合 が1割から2割へ引き上げ ▪ その時点で70〜74歳になっている者は自己負担割合が1割のまま で同質ながら負担額が違う集団ができた ▪ 医療サービス需要を引き下げたものの、健康状態の悪化は 起こらなかった

    医療費の自己負担と医療サービス需要の関係 患者負担が医療サービスの利用及び健康状態に中期的に及ぼす影響:https://www.kier.kyoto-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/DP1902.pdf 人口あたり外来患者数 人口あたり死亡者数
  7. 25 ▪ RCTなど実施プロセスへの関与のしやすさと、対象者数の 多さに加え、データ取得コストやSUTVAの考慮など影響 EBPMに適した政策領域 大企業支援 基礎研究の 大規模支援 安全保障 外交

    中小企業振興策 輸出促進策 イノベーション支援 農業振興施策 犯罪抑止 政府開発援助 インフラ整備 公害 法人向け税制 貿易協定 教育 児童福祉・子育て支援 医療・介護・健康 就労支援 税などの滞納予防 3R 福祉(生活保護など) 減税措置 CO2排出抑制 大気汚染抑制 個人向け税制 財政政策・金融政策 対象者数 少ない 中程度 多い 低 実施プロセスへの 関与可能性 中 高 容易
  8. 27 ▪ トップダウンで実行 ▪ ESSA法により補助金の支給要件に4段階のエビデンスレベルが設定 ▪ 現場への手厚い支援 ▪ 教育現場に対し、エビデンスレベルを満たす教育手法とエビデンス 提供可能な事業者をリスト化し、マッチングイベントを開催

    ▪ エビデンスの需要と供給を保つ ▪ 学校側から「御社の手法がうちの学校でも有効であることをどのよ うに評価する予定ですか?」と聞いてくるようになった ▪ このエビデンスの需要に対し、評価デザインや評価業務をアウトソ ースするエコシステムが形成された ネバダ州教育省の事例 Every Student Scceeds Act:ESSA法は社会的弱者にエビデンスに基づく教育を提供するための法律
  9. ▪ EBMではNGOのコクランがRCTのシステマティックレビュ ー(コクランレビュー)を策定している ▪ リサーチクエスチョンに対し、複数の 研究をメタ解析し、全体としての効果を 明らかにする 31 エビデンスのピラミッド RCTの

    システマティック レビュー RCT 他のコントロールされた 臨床試験 観察研究 (コホート、ケースコントロール研究) ケーススタディ、 体験談(anecdote)、個人的意見
  10. 32 ▪ 高血圧治療薬ディオバン関連の5つの臨床研究論文不正事件 ▪ うち1件は薬事法違反疑いで2017年東京地裁判決、2018年東京高 裁判決、2021年最高裁判決 ▪ 主要な循環器疾患の発生件数が水増し ▪ ディオバン群で1517人中83人、非ディオバン群で1514人中155人

    ▪ 実際には非ディオバン群は1514人中115人で薬事法の誇大広告違 反の疑い ▪ データ改ざんの不正行為は認めたが、誇大広告は無罪 ディオバン事件 https://www.m3.com/news/open/iryoishin/935178
  11. 33 ▪ 臨床研究で効果が無かった結果は医学雑誌に掲載されない 公刊バイアスが存在する ▪ コクランがインフルエンザ薬のタミフルについてシステマティッ クレビューを実施しようとした際に、製薬会社が全体の60%のデ ータを非公開にしていた ▪ システマティックレビューの結果、タミフルはインフルエ

    ンザらしき症状を1日未満減少させたものの、入院を減ら す効果は確認されず、肺炎のような合併症を減らすかにつ いては、肺炎の定義が不明で分からなかった ▪ 有害事象として、吐き気、嘔吐、精神的症状が見られた タミフルの公刊バイアス
  12. 35 ▪ 無誤謬性 ▪ 行政に間違いはあってはならないので、当該施策に効果があるように 見せるというインセンティブが働く ▪ 確証バイアス ▪ 健康診断は効果があるという共通認識に反したエビデンスを無視する

    ▪ リソース不足 ▪ 現状を維持しても大きな問題が生じない案件についての取り組みは劣 後し、現状が維持されることになる なぜエビデンスが尊重されないのか?