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トランスパーソナル心理学

 トランスパーソナル心理学

1.心理学の潮流
意識変容を扱う心理学/人間性心理学/つながり志向/般若心経 色即是空の 空の思想
2.ケン・ウィルバーの理論
自己進化する宇宙/根源的平等性/宇宙の自己進化と4象限
3.ライフサイクル論と自己変容論
人間の心の成長モデル/円環のサイクル/色即是空から 空即是色への転換
4.3ステップ
パーソナル 個の確立/トランスパーソナル 究極の真理/パーソナル あるがままの自己と世界の肯定
5.トランスパーソナルからパーソナルへの具体的方法論
ミンデルのプロセス指向心理学/フランクル『夜と霧』
6.社会変革とエコロジーとトランスパーソナル心理学

Tomohiro Kimura

February 22, 2019
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  1. アジェンダ • トランスパーソナル心理学とは ◦ 心理学の潮流 ◦ 意識変容を扱う心理学 ◦ 人間性心理学 ◦

    つながり志向 ◦ 般若心経 色即是空の 空の思想 • ケン・ウィルバーの理論 ◦ 自己進化する宇宙 ◦ 根源的平等性 ◦ 宇宙の自己進化と4象限 • ライフサイクル論と自己変容論 ◦ 人間の心の成長モデル ◦ 円環のサイクル ◦ 色即是空から 空即是色への転換 • 3ステップ ◦ パーソナル 個の確立 ◦ トランスパーソナル 究極の真理 ◦ パーソナル あるがままの自己と世界の肯 定 • トランスパーソナルからパーソナルへの 具体的方法論 ◦ ミンデルのプロセス指向心理学 ◦ フランクル『夜と霧』 • 社会変革とエコロジーとトランスパーソ ナル心理学
  2. 心理学の流れ • 第一の流れ ◦ 行動主義心理学、科学的心 理学 ◦ 内面の世界を考察対象から 除外 •

    第二の流れ ◦ フロイトの精神分析、夢や 無意識を扱う深層心理学 • 第三の流れ ◦ 人間性心理学(ヒューマニ スティック・サイコロジ ー) ▪ マズロー自己実現 ◦ 実存心理学
  3. 心理学 第四の潮流 • 第四の流れ ◦ ヒューマンポテンシャルム ーブメント エサリン研究 所 ◦

    変性意識状態=東洋宗教の 修行、瞑想、シャーマニズ ムの超成城な意識状態、覚 醒体験、神秘体験、宇宙意 識 ◦ マズロー 自己実現→自己 超越
  4. 個人としての自分 (パーソナル)を超 える(トランス) 自分中心から 意味と使命中心生き方 • 従来 ◦ 幸福追求 →自分の幸

    福への執着、とらわれ の発生 →幸福が逃げ ていく • トランスパーソナ ル心理学 ◦ 自分人生与えられた意 味使命実現していく生 き方
  5. 自分を 生きられない • 自分がない、自分をだせない、 自分がわからない ◦ まわりにあわせることを第一に考 え、自分をださないでいると、次 第に自分がなくなってしまう。あ wからなくあんってしまう

    • 自分の暗さを向き合えない ◦ 明るく元気で悩まずをふるまう • 他人を拒絶できない。自分を 肯定できない ◦ ついついまわりにあわせてしまう、 世間肯定の生き方 • ひとりになれない。安心でき るつながりがない ◦ 他者から拒絶されるのが怖い、孤 立するのが不安
  6. 土台は 人間性心理学 • 欲求の階層論 ◦ アブラハム・マズロー • カウンセリングの神様 ◦ カール・ロジャーズ

    • フォーカシングの創始者 ◦ ユージン・ジェンドリン • ゲシュタルト療法 ◦ フリッツ・パールズ • 夜と霧、ロゴセラピィ ◦ フランクル
  7. トランスパーソ ナル心理学 心の病の治療というより、 さらなる心の成長 人生における大切な何かへの気 づきを目指すもの • 壮大な思想家 ◦ ケン・ウィルバー

    • 呼吸法ホロトピックブレ スワーク創始者 ◦ スタニスラフ・グロフ • プロセス指向心理学 ◦ (人生を自然の流れと捉え て気づきを得ていく) ◦ アーノルド・ミンデル • 魂の声をきく ◦ ジェイムズ・ヒルマン ◦ トーマス・ムーア
  8. 個を超えたつな がり 水平、垂直の両次元での”つなが り”へと自分を開き、自らを超え ていくことをとく心理学 • 水平次元でのつながり ◦ 人種・性別・思想信条の違いなど を超えた人と人とのつながり

    ◦ 過去の世代や将来の世代とのつな がり ◦ 生きとし生けるもの、大自然との つながり • 垂直次元でのつながり ◦ 自己の深層無意識やそれを突き抜 けた真実の自己とのつながり ◦ 人間と人間を超えたものとのつな がり
  9. 色即是空の 空の思想 • 色 ◦ この世の形あるものの一 切は実は形なき「空」が とった仮の姿。逆に 「空」は「色」として世 界に姿を表している。

    • ケン・ウイルバー ◦ 曹洞宗の鈴木俊隆老師の もとで座禅を学ぶ ◦ 意識変容論で般若心経を 引用
  10. 複雑性の科学が 指し示す方向性 自己進化する宇宙 • 現代科学の潮流 ◦ ”混沌そのものが新しい秩序の先駆け となる”プリコジン ◦ ”自己組織化する宇宙”エーリッヒ・

    ヤンツ ◦ ”自己創出性(オートポイエーシ ス)”フランシスコ・ヴァレラ ◦ 個人の心も社会も、自己創出的なシ ステムでお互いにある世界を共同創 造しつつ共進化する ニクラス・ル ーマン
  11. 万物の根源的 平等性の説明 万物は根源的に等しい、だけで なく、分離不可能で一つ • ホログラフィ宇宙モデル ◦ 物理学者デビッド・ボームが素粒 子の不思議な動きを説明するモデ ル

    • 素粒子のレベルでは ◦ あらゆる物質は”どこにも存在して いない”とも、”あらゆるところに 存在している”とも言える。 ◦ 物質も精神もエネルギー ◦ 万物は根源的に等しい、だけでな く、分離不可能で一つ • つまり、色即是空 ◦ 色、つまりこの世の形あるものの 一切は実は、それ自体でいかなる 実体ももたず、あらゆる形を脱し た”空”である
  12. 人間の心の成長 モデル • プレパーソナル ◦ 個としての”自分”を確立する以前 の状態 • パーソナル ◦

    個としての”自分”を確立した状態 • トランスパーソナル ◦ 個を確立した後、さらにそれを超 えていく状態 ◦ そして、プレパーソナル(未分化 状態)とトランスパーソナル(無 境界の意識状態)は異なる
  13. 円環のサイクル 存在様式の変容論 • 存在論(存在様式の変容論) ◦ 誕生→人生→死→バルド(中間、 生、チベット仏教))→再生 ◦ 仏教の四有= ▪

    生有(誕生、母体から出 る) ▪ 本有(この世の人生) ▪ 死有(いのちが肉体から離 れる) ▪ 中有(生まれ変わるまでの 間) ◦ ウイルバーは「チベット死者の 書」を手がかりに論じる 生有 死有 本有 中有
  14. 円環のサイクル 葉っぱのフレディの死生観 たとえ自分は死んでも、 この”いのち”そのものは永遠に 続く。 • 葉っぱのフレディ ◦ 冬が来て、死を恐れる葉っぱのフ レディに親友のダニエルは言いま

    す。変化しないものは一つもない。 春が来て夏になり秋になる。葉っ ぱは緑から紅葉して散る。変化す るのは自然なこと。そして、その 変化の一つとして死もあるのだけ ど、ただ「いのち」だけは永遠に 生きている。
  15. 意識の変容論 自己変容論 • プレパーソナル→パーソナル →トランスパーソナル • トランスパーソナルの中には ◦ マインド(心)の段階 ◦

    ソウル(魂)の段階 ◦ スピリット(精神/霊)の段階 • 到達する地点 ◦ 東洋の宗教的伝統において、空、 無、神、ブラフマン、無限、永遠、 宇宙などと呼ばれてきた絶対者と の合一体験。さらにはそれらとの 境界さえ消え去る「無境界」の状 態。形のない空がそのまま形ある この世界と一つであるという心理 への覚醒。色即是空、色即是色の 世界。
  16. ほんとうの自分 とは何者かとい う問いの答え 一切の形を拒む”いのちの働き” そのものこそ私の正体であり、 自分の本当の姿 この180度の転回がトランスパ ーソナルな自己変容 その地点から見ればもはや、私が 生きている、のではない。

    私が生きている”私がいのちを持っ ている”のではない。 むしろ逆に、”いのちが、私してい る”。 一つの”いのちの働き”がまずあって、 それがあちらでは”花”という形、こ ちらでは”草木”という形、あそこで は”鳥”という形を撮っている。その 同じ”いのちの働き”の一部が今ここ では、”私”という形をとっている
  17. 色即是空から 空即是色への転 換 • 上昇の道の頂点 ◦ この世の一切の形あるもの(色) が実は空であることを知る ◦ 次に、その空は実は、その完全な

    姿で、このよの一切(色)に顕現 していること。つまり空即是色へ と転換し、下降への道をたどり始 める。 ◦ 完全なる空は、「すべての、そし てそれぞれの存在に平等に現れて いるから、万物は、その慈悲と思 いやりにおいてまったく平等に扱 われる。これは何か、上から下へ と見下ろすような意味において言 っているのではない。そうではな く、それぞれの存在はまったくあ るがままでスピリットの完全な顕 現だからである。(『進化の構造 2』)
  18. 3ステップ 0.プレパーソナル 生まれる (最初、乳児と母は一体) 1. パーソナル 個の確立 a. 個としての”自分”を確立する 2.

    トランスパーソナル 究極の真理 a. 自分を超えた”いのちの働き”に目覚める 3. パーソナル あるがままの自己と世界の肯定 a. 日常の中で、自分を超えた”向こうからの呼び声”をきく
  19. 人間の自己成長のサイクル 自己探求・自己成長の3つの段階 Ⅰ.パーソナル 個の確立 混沌 プレパーソナル Ⅱ.トランス・パーソナル 究極の真理 Ⅲ.パーソナル あるがままの自己と世

    界の肯定 Ⅰ.個としての”自 分”を確立する Ⅱ.自分を超えた”いの ちの働き”に目覚める Ⅲ.日常の中で、自 分を超えた”向こう からの呼び声”をき く ロジャーズらの人 間性心理学 ウイルバートランス パーソナル心理学 ヒルマン「魂の心 理学、ミンデルの プロセスワーク アサーショントレーニング、 ゲシュタルト療法 未完の行為、 マインドフルネス、プローブ からだの症状のワーク、人間関係 のトラブルのワーク、ワールドワ ーク フォーカシング
  20. Ⅰ.自分の人生 の”主人公”とな る プレパーソナルからパーソナル へ 個としての”自分”の確立 • アサーショントレーニング ◦ 相手の権利を認めながら自分の主張を

    する。ノーというべきときに伝わる仕 方で自分の言い分を伝える姿勢とスキ ル ◦ 「私は~できない」から「私は~しな い」へ。私は自分の人生の主人公であ る主体性の感覚を強める • ゲシュタルト療法 未完の行為 ◦ トラウマの物語を発見し、向き合い、 過去へのとらわれから抜け出す。そし て、その物語性を自覚し、主観的な解 釈ないし意味付けと認識する。 • マインドフルネス ◦ 心身のちょっとした変化に注意を向け、 それを自己発見に生かす • ハコミセラピィ プローブ ◦ いたわりの言葉がけ ◦ 自分の心の傷を探っていく
  21. Ⅱ.自分を超え た”いのちの働 き”に目覚める パーソナルからトランスパーソ ナル 自分とは何かについての感覚の 変容 • 自分を離れたところから自分 を見る”眼”を養う

    • フォーカシング ◦ うちなる自分の声を聞く ◦ 例)悲しみとの脱同一化と悲しみ とのつながり ▪ 私の内側で私の一部が悲し んでいる、と認める。そし て、私の内側のその分が何 を言いたがっているか、そ の”言い分”に耳を方向け、メ ッセージをうけとっていく ◦ カール・ロジャーズと弟子ユージ ン・ジェンドリン成功するカウン セリングにおいて、クライエント が自分の心の中でやっていること のエッセンスを取り出したもの
  22. Ⅲ.自分を超え た向こうから の”呼び声”を聴 く トランスパーソナルからパーソ ナルへ 再びこの日常世界へと降りてき て、毎日の出来事の一つ一つに 心を、魂を込めて生きていく •

    ヒルトン、ムーア”魂の心理学” ◦ 元型ユング心理学 ◦ ”~に狂った””~に取り憑かれた” というとき、本質的な何かがこの ように降りてきて人の心を捉えた と考える ◦ 運命の感覚 ◦ 自分の仕事を”たまたま与えられ た”仕事とみなすのではなく、たと え小さな仕事でも、その仕事と自 分の間に、目に見えない力やご縁 の力を感じることができれば、一 つ一つの仕事に慈しみを感じ、丁 寧に取り組むことができるように なる
  23. 運命論ではない。 運命の力が働い ていると考える • 「たまたま適性があったから この仕事についた」「たまた ま適齢期に条件があったから この人と結婚した」と”割り切 って”考える事によって、心を 込めて生きていくのに必要な

    何かを失ってしまう ◦ ”たまたま”の背後に動いている”割 り切れない力”の側から人生を捉え 直すと、様々な出会いが、何かと ても大切な”授かりもの”のように 思え、慈しみの気持ちが湧いてく るはずです
  24. ミンデルの プロセス指向心 理学 曖昧で微細な身体感覚を重要視 するロジャーズ派のカウセリン グやフォーカシング、また、 からだを動かすゲシュタルト療 法や心理劇にそれぞれに似てい る •

    入手可能なあらゆる手がかり を活かして、可能な限りの”気 づき(アウェアネス)”を獲得 し、人生のプロセスを自覚的 に生き抜いていくための総合 的なアート(技芸) • 気づきを伴い、今この瞬間瞬 間を完全に生きる • 身体症状への取り組み ◦ 症状で苦しめられている自分と、 その症状を作り出している何かも 実は自分の一部である ◦ そのため、症状の作りての側に立 ってみるとヒントが得られる
  25. 量子力学を背景 に据えた心理学 ミンデルはマサチューセッツ工 科大学(MIT)大学院で物理学 専攻 • 場の量子論、波動関数 • 量子波 ◦

    目に見えない次元の動き ◦ 物質化以前の動き ◦ それが私たちの心や身体に影響を 与えている • タオイズム(道教) • プロセスとは ◦ 宇宙の道(タオ)