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既存SaaSへの生成AI導入を振り返る~2年半の試行錯誤と実践知~ (PRODUCT HIST...

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September 19, 2025

既存SaaSへの生成AI導入を振り返る~2年半の試行錯誤と実践知~ (PRODUCT HISTORY CONFERENCE 2025)

PRODUCT HISTORY CONFERENCE 2025の発表資料です。
https://lp-prohis.youtrust.jp/

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Toshiaki Arai

September 19, 2025
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  1. 集める 問い合わせ ご要望 アンケート 営業CRM レビュー・口コミ SNS インタビュー 分類・構造化・可視化 活用

    製品企画・商品企画 ユーザーの心を掴む 製品開発を可能に CX・サービス企画 NPS・顧客満足度を 改善できる 品質管理・コールセンター 膨大な声から致命的 な課題を検知 マーケティング 収益につながる 顧客インサイトを発見 ポジティブ ポジティブ レビュー レビュー 顧客からの要望 顧客 顧客からの要望 顧客 失注理由 セールス 失注理由 セールス ネガティブ ネガティブ よくあるお問い合わせ CS よくあるお問い合わせ CS キーワード 0 50 100 150 200 250 並び替え 読み込み サーベイ 絞り込み セールス アプリ エラー 投稿 キーワード 0 50 100 150 200 250 並び替え 読み込み サーベイ 絞り込み セールス アプリ エラー 投稿 クリティカル ネガティブ 要望 ポジティブ ニュートラル 不明 4月 5月 6月 7月 8月 250 200 150 100 50 0 クリティカル ネガティブ 要望 ポジティブ ニュートラル 不明 4月 5月 6月 7月 8月 250 200 150 100 50 0 フィードバック ソリューション サーベイ 外部連携 フィードバック ソリューション サーベイ 外部連携 Flyle機能分類 デザイン 運用 フィードバック管理 ソリューション管理 タグ管理 分析・レポート テーマ管理 UI デザインシステム スターター プロフェッショナル エンタープライズ アップグレード ダウングレード 新規受注 要約分類 クリティカル 469 528 380 167 396 672 8 13 672 8 13 35 29 ネガティブ 20 2,019 760 380 110 396 1 28 121 22 1 3 28 ポジティブ 915 5 54 105 639 396 170 121 128 1 396 170 121 テキストデータを生成AIによって構造化 や 発見を支援する 「顧客ニーズ」 「課題」 Flyleについて ↑主にこのプロセスに生成AIを導入
  2. 創業以降のプロダクトの歴史 2020.2 コロナ禍で創業 2022.5 プレシリーズAラウ ンドで3億円を資金 調達 2021.5 シードラウンドで 8100万円資金調達

    2022.9 業務委託を含め、従 業員が20名に 2023.7 顧客ニーズプラットフォーム へ方向転換、DX EXPOなど の展示会に出展 現在 日本のエンタープライズ企 業への導入が拡大中 2021.6 製品版リリース 2022.3-10 顧客セグメンテーション、ロードマッ プ・スコアリング機能、Salesforce 連携機能をリリース 2022.12 サーベイβ版を リリース 2023.8 生成を活用した機能 をリリース 2024.4 レポート・ダッシュ ボード機能のリリース 2023.4-7 生成AIを活用した機 能のPOCを開始 現在 顧客ニーズプラットフォームと して必要な機能の拡充 プロダクトマネジメントSaaS 顧客ニーズプラットフォーム 2020.12 β版リリース ↑ここから生成AIへの取り組みが本格化
  3. 「業務の特性」と「生成AIにとっての代替可能性」を理解する 対象となる業務 業務の特性 生成AIにとって 医療現場での問診 ・高度な専門知識、倫理観、経験が必須 ・誤診が許されない高い責任
 ・有資格者による対面での対応が重要 ・支援は可能:情報提供、回答候補の提示 ・代替は困難:最終診断、信頼関係の構築

    広告コピーの草案作成 ・条件に基づくアイデアの迅速な大量生成
 ・創造性と定型業務の組み合わせ ・協業で効率化:多様な案を短時間で大量 生成 ・人間が最終判断と仕上げを行う 経営戦略の策定 ・複合情報に基づく高度な将来予測 ・不確実性が高く、経営層の経験や直感が重要 ・支援は有効:データ分析、シミュレー ション ・代替は困難:最終的な判断、責任の所在 ️顧客フィードバックの 分析・分類 ・大量のテキストデータを一定のルールに基づ き整理・分類 人による作業でも一定のブレが生じる ・代替可能性が高い:大量データの高速・ 正確な処理が得意 以前から問い合わせを受けていた「大量のフィードバックがあるんだけど、Flyleさんでなんとかできない?」というニーズにフィット
  4. これまでのSaaS開発と生成AI SaaSとの差分 これまでのSaaSプロダクトは、全顧客にとっての「最大公約数」を見極めた機能開発が重要視 生成AIプロダクトは、従来よりも個社最適な価値提供が可能になった 個社の 満足ライン これまでの
 プロダクト 生成AI
 プロダクト

    共通 共通 顧客の「最大公約数」を見極め、 なるべく汎用的な機能開発を行う 生成AIの出力をコントロールし、 個社ごとの期待を満たす ※ただし、生成AIの出力は
 「玉」にも「石」にもなり得ることに 十分に気をつける カスタム カスタム
  5. 生成AIツールの積極活用 普段からAIツールを触り続けることで、価値や体 験の良し悪しを考える機会を増やす プロダクトチームでは下記のAIツールを日常的に利用。 ChatGPT Gemini Claude Devin Cursor Claude

    Code また、試したいツールがある場合はカジュアルに試すこと ができるよう、軽量な申請フローを整備。
 4半期に1度AIツールの棚卸しを実施し、「本当に継続して 利用する価値があるか」をチーム内で判断。
  6. モデルの性能UP 【2年前】 OpenAIのGPT-3.5 Turboが主流。精度やトークン数 などの制限も多く、実務に耐えうる出力結果を得るた めには様々なプロンプトエンジニアリングのテクニッ クを駆使する必要があった 【現在】 OpenAIに加え、Google、Anthropicからも次々と新 しいモデルがリリースされ、オープンソースのモデル

    も利用可能に モデルの基本性能向上、トークン上限の向上、推論モ デルの登場などにより、複雑な業務に対しても精度の 高い回答を得られるようになった(ハルシネーション の問題も緩和) 性能が上がりつつも、以前よりも安価に利用可能に
  7. 1. 顧客価値 「生成AIを“どう使うか”よりも“何 の課題を解決するか”。顧客にとっ て本当に価値がある機能をどう見 極めるか。」 2. 実現可能性 「どのモデルを選び、どのように コストを抑え、サービスとして実

    際に動かせるか。ビジネスと技術 を両立させる現実解を探る。」 3. セキュリティ 「顧客が心配するのはデータ漏え い・学習利用・リージョン制限。 安心して使える環境をどう整える か。」 4. 運用 「リリース後が本番。モデルの アップデートやベンダーロックイ ンなど、変化に追随する体制が不 可欠。」 生成AIを活用したプロダクトを事業として成立させるための多くの要求 主要な観点を紹介 (※事業によって前提が異なるため参考程度に。ここでは特にBtoBを対象)
  8. 「実現可能性」に関するチェックリスト 目的:技術的な課題をクリアし、事業として成立するかどうかを見極める モデル選定: 解決したい課題に対して、最適なAIモデル(GPT-4, Claude, Geminiなど)を選定できている か?精度、速度、コストのバランスは取れているか? コスト・売上試算: 機能提供にかかるAPI利用料やインフラコストを試算し、事業として成立するか確認し たか?赤字リスクを把握しているか?

    安定稼働: APIのレート制限(Rate Limit)や可用性を考慮した設計になっているか?リトライ処理などの エラーハンドリングは実装されているか? プロンプトエンジニアリング: 期待通りの出力を得るためのプロンプトは十分に検証されているか?データ セットを用意し、試行錯誤できる体制があるか? パフォーマンス・UX: ユーザーが期待する時間内に応答を返せているか?ストリーミング表示など、体感 速度を向上させる工夫はしているか?