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日本の公共交通 が ICT を真に活かすには 【 前編 】JCoMaaS 2022年3月研究会 ゲスト講演

日本の公共交通 が ICT を真に活かすには 【 前編 】JCoMaaS 2022年3月研究会 ゲスト講演

Traffic Brain

April 08, 2022
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  1. 2 自己紹介 太田 恒平(おおた こうへい) 1983年11月06日生 38歳 Traffic Brain 代表取締役社長

    • 会社:交通データ分析・コンサルティング • 仕事:バスデータ(ダイヤ遅延対策、標準化・オープンデータ化) • 経歴:東京大学 交通研 卒、ナビタイム入社、2017年起業 • ナビタイムでは経路探索エンジン開発、交通コンサルティング事業
  2. 経歴をふりかえってみる 5 組織 所属 中学・高校 鉄道研究部 東京大学 社会基盤学科 交通研究室 社会文化環境学専攻

    空間情報科学研究センター オリエンテーリング ナビタイム ジャパン 経路探索の研究開発 交通コンサル事業 創設 ルートメディアPJ 創設 トラフィック ブレイン バスを中心に 交通コンサルティング 交通事業者はなぜ 復旧見込みを出し惜しむのか ヘンに略した略地図は迷う ナビゲーション・地図作り 道路経路探索・交通NW・予測 交通ビッグデータ 経路広告で行動変容・ 高速道路マーケティング バスデータ標準化・オープン化 バス遅延改善
  3. 7 経路探索の4大要素 経路探索 アルゴリズム 最適経路を 高速に算出する技術 コスト 計算 どこを通るのが 良いか判定する

    技術 ネットワーク データ 道路をリンク 交差点をノードで モデル化したデータ 交通 情報 VICS・プローブ等の 渋滞・規制情報 交通工学 情報工学 空間情報学 第54回土木計画学研究発表会「プローブ渋滞予測とカーナビによる所要時間短縮効果と経路転換の実態」
  4. 8 経路を決めるコストモデル 「時間・金銭・走りやすさ」 のコスト係数調整でニーズに応じた経路を複数算出 推奨ルート 時間(推定) 金銭(近似) 走りやすさ 時間 金銭

    走りやすさ 時間 金銭 走りやすさ 無料優先 高速優先 経路ごとのコスト係数(概念図) 時間価値 低↓ 時間価値 高↑ セオリー + データ + クレーム = ノウハウ 調整目的 調整方法 ニーズの充足 → 製品価値Up 幹線道路の優先、右左折の抑制、有料道乗り降りの抑制など 第53回土木計画学研究発表会「カーナビが経路選択を左右する」
  5. 10 カーナビが料金収入を左右する (C) NAVITIME JAPAN 8 路線名 週間表示額 全国 28.6億円

    1 東北 2.40億円 2 東名 1.87億円 3 山陽 1.87億円 4 中央 1.86億円 5 首都高速 1.73億円 6 関越 1.49億円 7 新東名 1.18億円 8 圏央道 1.13億円 9 北陸 1.11億円 10 常磐 1.09億円 年換算1491億円 対象期間:2015/11/02~08, 普通車ETC換算 同一条件の重複検索は除去済 経路検索数 料金収入 端末 件数 携帯電話 6244万回/年 PC 6536万回/年 合計 1.27億回/年 対象期間:2014年度,同一条件の重複検索は除去済 高速道路6社 の料金収入 2.6兆円の 約 6% (2014年度) 第53回土木計画学研究発表会「カーナビが経路選択を左右する」
  6. 11 経路選択 J-RAIL2016「乗換検索サービスの経路型ネイティブ広告「PR経路」によるプロモーション効果分析」 73% 16% 7% 4% 第1経路の選択率は73% 表示順別の経路選択率 メール送信・カレンダー登録

    により判定 3週間・16万件の経路選択データを基に多項ロジットモデルにて推定 ※経路表示順:1.時刻順(デフォルト)73%、2.運賃順 13%、3.乗換回数順 10% 第1経路に表示 運賃198円安相当 に選ばれ やすい
  7. 12 年間の表示運賃・料金 J-RAIL2016「乗換検索サービスの経路型ネイティブ広告「PR経路」によるプロモーション効果分析」 会社名 検索数 運賃 料金 総額 全国 1.77億回

    1062億円 366億円 1428億円 JR東日本 4885万回 372.3億円 117.3億円 489.6億円 JR東海 758万回 166.3億円 142.7億円 309.0億円 JR西日本 1440万回 181.7億円 71.8億円 253.5億円 JR九州 227万回 30.9億円 11.9億円 42.7億円 東京メトロ 1783万回 33.9億円 0億円 33.9億円 近鉄 472万回 23.7億円 6.9億円 30.7億円 東武 658万回 21.6億円 2.9億円 24.6億円 小田急 586万回 16.4億円 1.6億円 18.0億円 年換算 1.68兆円 乗換検索第1経路 月間表示額 (2016年1月)
  8. 14 混雑情報の経路選択への影響 第55回土木計画学研究発表会 電車混雑予測~混雑の可視化が社会にもたらすインパクト~ 16 説明変数 推定値 t値 所要時間 [10分]

    -0.99 -45.84 待ち時間 [10分] -0.96 -47.34 運賃 [100円] -0.44 -35.41 乗換回数 [回] -0.90 -50.37 混雑^2 x 時間 [10分 x 混雑^2] -0.0067 -13.71 第一経路ダミー 0.88 52.59 混雑表示ダミー 0.50 8.48 サンプル数 31934 調整済み尤度比 0.27 所要時間価値 [円/分] 22.4 乗換抵抗 [分/回] 9.09 1ヶ月、3万件のデータを元に多項ロジットモデルにて推定 1. 2. 3. 4. 5. 6. 0.6分 1.0分 1.4分 1.8分 2.2分 アイコン間の混雑不効用 混雑1段階が30分乗車の場合 0.6~2.2分差に相当
  9. 事故リスク回避ルート ~結果~ 16 細い街路 → 幹線道路 一般道路 → 高速道路 0.18%

    -0.62% -3.63% 1.94% 3.80% -5% 0% 5% に転換し事故リスク低減! 全国2週間で 第10回高速道路データ利用勉強会「事故回避ルート検索で事故リスク3%減少!?」
  10. 17 PRまでできてしまう 「 PR経路」は、ユーザーが『PC-NAVITIME』にて乗換検索を行った場合に、通常の 乗換案内結果とともに、広告主の指定した特定の路線(飛行機・特急・高速バス等) を使用した経路が表示されるものです。 ▪通常の乗換検索結果 バニラ エア様の掲載イメージになります 「PR経路」の乗換検索結果

    乗換検索上の経路型広告「PR経路」 日本初※!! ※2016年7月5日時点 ナビタイムジャパン調べ 特徴ある経路を新たに表示し潜在需要を喚起! 工学院大学オープンカレッジ鉄道講座「乗換検索サービスとビッグデータがもたらす公共交通の変革」
  11. 19 交差点分析 左折が特に 混雑(158秒) 交差点通過時間中央値 (t[s])別に色分け ➔:t ≦30 ➔:30<t ≦60

    ➔:60<t ≦90 ➔:90<t 通過数が多いほど 線幅が太い 広域(全国) 地域(東京) 交差点(西巣鴨) 混雑地域の把握 混雑交差点の把握 混雑方向の把握 カーナビアプリのGPSデータから 全国の信号待ち時間を分析 (警視庁も毎年購入) 第34回交通工学研究発表会「全国を対象とした携帯カーナビプローブデータを用いた右左折方向別の交差点分析」
  12. 22 第三者データの価値 データが明かす道路の不都合な真実 ちぐはぐ 有料道が閑散、無料幹線道が混雑 バイパスが大型店舗で渋滞 過剰な建設 ネックは交差点なのにもう1本建設 一般道が空いているのに高速建設 建前

    法定速度を誰も守っていない 暫定開通の終点が渋滞 点が雑 信号、高速JCT・出入口が渋滞 第三者データだから 網羅的にわかる → 管理者横断的な対策がしやすい 色がついていない → データ元への配慮が不要 誰でも見られる → 市民からの監査、業界外の参加 開かれた交通行政へ!
  13. 23 経路検索データで未来の移動を検出 0 500 1000 1500 2000 2500 5 6

    7 8 9 1011121314151617181920212223 累積経路検索数[件] 検索対象時刻 リアルタイム 10分前 2時間前 15時間前 4日前 定常検索数 輸送力調整、混雑回避の誘導、駅付近店舗の供給調整に活用可能。 2013年04月13日に西武球場前を到着指定した検索数 グッズ 販売前 開演前 4日前から 普段の8倍 経路検索の際には数時間~数日先の日時を指定されることが多いため、 近未来の移動需要を検出することができます。 CSIS DAYS 2014 経路検索実績データに基づく突発的移動需要の検出
  14. 検索データで見ても混んでいる 25 変動は明らかなのにダイヤは固定的! 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 11/1

    11/8 11/15 11/22 11/29 12/6 12/13 12/20 12/27 1/3 1/10 1/17 1/24 1/31 年末年始の日別終電検索数 金・土曜は 月~木曜の 1.9倍 年末に向けて増加 年始に減少 2014年← →2015年 第11回JCOMM「電車混雑予測」
  15. 情報提供の量的なインパクトを出せない 28 ◼ 1サービスでは全体へのインパクトが乏しい • 実交通量の0.x%~数% • 有償サービスが基本なので広げられない ◼ 自動車・鉄道はデータ=有償という業界で流通基盤が無い

    • 時刻表データ :JR子会社が販売 • 地図データ :DRMすら販売 • 交通情報 :JARTIC/VICSの専売 • プローブデータ:カーナビメーカーの囲い込み この辺を乗り越えてビッグデータを大判振る舞い・流通させる度量も無かった… オープンデータを流通させて 主要サービスと連携するしかない
  16. 改善の実施に手が届かない 29 ◼データで見えた改善策も実施されない • 警視庁が毎年プローブデータを買っているが、ほとんど使われなかった • 道路行政はETC2.0にしばられている • 都市行政はPT・センサス脳のまま •

    観光行政にデータを提供しても、やることはない • 何にしても年度単位のスローペース ◼交通業界ムラ社会 • 警察 – 信号機メーカー • 道路 – 建設コンサル • 鉄道 – 電機メーカー インサイダーとして意思決定に関わる? オープンデータで公開討議?
  17. 30 バズワードに踊らずITで意思決定を変える マスタデータ 台帳が無いと始まらない ↓ 調査データ 従来の調査統計でできることはやる ↓ ビッグデータ 長期・広範なデータから知見を得る

    ↓ IoT データ取得と制御を手広く迅速に ↓ AI ビッグデータ処理を自動化 改善意思 不都合な真実を受け止め、直す覚悟 ↓ 現状把握 正確な状況、新たな課題を把握 ↓ PDCA まずは1回改善サイクルを回す ↓ モニタリング 恒常的に行うツール・プロセスを整備 データへの過度な 期待 改善プロセス インサイダーで ないとできない 技術だけ高度化しても使う機会が無い
  18. 32 過去大会 ロンドン(2012) (参考文献)TRANSPORT FOR LONDON GET SET, GO! By

    Becky Hogge, Janualy, 2016 国土交通省「英国政府における交通分野のオープンデータの取り組みについて(海外現地調査報告)」 等 ◦ オープンデータ等の取り組みに加え、交通行動変容を促したことで、オリンピック期間中のピーク時にお ける通常の交通需要の20%削減を実現するとともに、全体として大規模な交通需要に対応した。 ◦ 94%の市民が、ロンドン交通局は大会の交通をうまく管理したと回答。 ロンドン交通局(TfL:鉄道、地下鉄、トラム、バス、ゴンドラ、旅客船、道 路網、レンタサイクル等を運営管理)の取り組み ▪2007年 運行情報、路線図、経路検索に関するウィジェットを公開。 ▪2009年 Webサイト上で、アプリ開発者向けに(主に静的な)データ提供を 開始。 ▪2010年 ロンドンデータストアを立ち上げ、リアルタイムデータを追加提供。 (登録アプリ開発者:数百) ▪2011年 ロンドン地下鉄車両の位置情報等を提供するためのAPIを公開。 (登録アプリ開発者:1000超) ▪2012年 ライブのバス到着情報等を提供するためのAPIを公開。オリンピッ ク専用交通データ統合サイトを公開。(登録アプリ開発者:4000超) 混雑予測情報等を提供するサイトGetAheadoftheGames.com.を開設。 ▪2013年 30以上のデータセットを公開。 (登録アプリ開発者:5000超、アプ リ:数百) ▪現在 地下鉄やバスの運行情報、道路のカメラ映像、レンタサイクル及び駐 輪場空き情報等のリアルタイムデータを含む62のデータセットを公開。 ※ データを活用する者に対し、登録を義務付け。 アプリ:Citymapper 地下鉄がストライキ等による運行 休止時でも、目的地まで、レンタ サイクルや、バス、鉄道と組合せた 回避手段を調べられる。 内閣官房 データ流通環境整備検討会 オープンデータWG https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/data_ryutsuseibi/opendata_wg_dai1/gijisidai.html ▪2014年に開設されたRioのデータポータルサイト。 ▪鉄道、地下鉄、BRT(Bus rapid transit, バス高速輸送シ ステム)等の公共交通機関などのリアルタイムデータを取得で きるAPIを公開。 ▪上記データを活用して、バリアフリーや交通・観光支援など 様々なアプリが提供されている。(リトアニア、オーストラ リア等、ブラジル国外の企業もアプリを提供) ▪オリンピックの交通に関するアプリコンテストを実施。 http://transportchallenge.rio/ アプリ: Rio Go 宿泊先と観戦予定イベン トを選択することで、最適 な移動手段等の情報が 提供される アプリ: Livrit 障害者向けに地図上に施 設や通行上の障害情報 等を提示。ユーザーからの 投稿を反映する機能あり。 2大会前から既にオープンデータを活用 リオデジャネイロ(2016)
  19. 2020年 東京もオープンデータで!!! 33 ◼一般向けはオープンデータ ⚫ 一般向けをオリパラ運営側は 面倒見切れない ⚫ 既存アプリにオープンデータを流して使ってもら うほかない

    ◼公共交通と道路両方 ⚫ スマホアプリは対応しやすい ⚫ 車載カーナビにも対応するには? ◼使えるものに ⚫ 既存のID体系と互換性が重要 • 交通新聞社、レスキューナウ、VICS… ⚫ 静的データと動的データ両方必要 ⚫ ファイル、APIを組み合わせる 情報配信プラットフォーム 輸送センター 大会公式 アプリ・サイト 一般公共交通サービス NAVI TIME Yahoo! (ヴァル研) Google (ジョルダン) … オリパラ 特別機能 通常 機能 オリパラ 特別機能 通常 機能 オリパラ 特別機能 通常 機能 交通系機能 大会情報 … オープンデータ アプリログ
  20. データがクローズド・有償 34 1990~2000年代から大きな変化無く 固定化してしまった 交通 静的 運行情報 ・規制 遅れ時間 ・渋滞

    道路 地図会社 DRM JARTIC/VICS JARTIC/VICS ナビメーカー 鉄道 交通新聞社 JTB JR東日本子会社 レスキューナウ 鉄道会社内 バス 乗換CP内 バス会社内 なし バス会社内
  21. 35 機能が貧弱 公共交通 リアルタイムが弱い 運行情報は所詮 テキスト 臨時(動的) ダイヤに非対応 Googleは 対応検討中

    とのこと PUSH配信は 手動予約 西日本豪雨の影響による 経路変更に非対応 道路(JARTIC/VICS) リアルタイムしかない 規制予定は 図表 渋滞予測も 図表 予防的に ダミー渋滞を 設定しない →渋滞を未然に防げない
  22. 37 日本の交通情報システムの栄光 公共交通 道路・通信 マルス 1960 1962 首都高速 新幹線 1964

    自動改札 1967 1969 交通管制 駅すぱあと 1988 1996 VICS 乗換案内 全国時刻表対応 1998 1999 i-mode Suica 2001 ETC EZナビウォーク 2003 2005 EZ助手席ナビ 私達は2020年に一体何をやっているのか?
  23. 利用する経路検索サービス(Webアンケート) 39 観光客も市民もGoogleマップが6割で一強 国内経路検索は 数%ずつ バス会社公式は1.4% my routeは0.1% クルマ系情報や 観光情報サイトから

    公共交通に誘導 する必要がある JR公式は2.5% 熊本市「第2回熊本版MaaS勉強会」配付資料、 伊藤昌毅「サービス化に向けて進化する公共交通と沖縄のポテンシャル」
  24. 41

  25. Googleに学ぶMaaSの連携規格 42 データ・APIをオープン規格化 しながら連携を進めており 利用数だけでなく規格面でも無視できない もはやMaaSのキープレーヤー 鉄道 JR子会社 GTFS /

    GTFS Realtime GBFS GOFS 制定中 GTFS- Ticketing Reserve with Google ジョルダン ? ? バスの経路検索・遅延情報 @熊本 ドコモバイクシェア @東京 Uber / Lyft @サンフランシスコ DiDi / GO @東京 ドイツ鉄道 @ドイツ 居酒屋予約 @熊本 チケット販売 シェアサイクル 施設予約 タクシー 交通系IC Google Pay クレジット・ デビッド 交通 データ /API Google 画面 タッチ レス 決済 オープン 規格 オープン 規格 オープン 規格 オープン 規格 デマンド交通 バス 地域内どころか国内の情報産業保護が必要な気配……