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「GTFSエコシステム構想」を肴に6年の歩みを振り返る@公共交通オープンデータ最前線2025

 「GTFSエコシステム構想」を肴に6年の歩みを振り返る@公共交通オープンデータ最前線2025

Traffic Brain

March 01, 2025
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  1. 2 自己紹介 太田 恒平(おおた こうへい) 41歳 (株) トラフィックブレイン 代表取締役 交通データ分析・コンサルティングの会社

    東京大学修士卒 → ナビタイムジャパン → 2017年起業 • 国交省GTFS-JP改定、GTFSデータリポジトリ、 GTFS-GO、バスの遅延改善などに関わる • 2021年秋より熊本市に滞在して 「車1割削減、渋滞半減、公共交通2倍」をめざす研究実施中
  2. 最近の仕事①両備グループ 5 両備グループとバスデータ・オープンイノベーション 1 2 3 4 5 6 7

    8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 8:00 8:10 8:20 8:30 8:40 8:50 9:00 西大寺 自動車 学校入口 東山 天満屋 岡山駅 時間調整 降車専用 旧ダイヤ 新ダイヤ 実績(2018年1~3月) 新旧ダイヤとバスロケ運行実績 (両備バス 平日8:00西大寺発 岡山駅行) 時間調整 時間調整 実績に合わせて 便ごとにダイヤを 自動修正 路線 行先 年 朝(7-10) 昼(10-16) 夜(16-19) 2017 10.7 7.0 10.3 2018 4.6 4.5 4.9 2017 8.3 10.2 13.9 2018 5.2 5.7 5.1 2017 9.3 6.8 7.9 2018 5.4 3.7 4.4 2017 3.4 9.1 11.3 2018 2.4 5.5 3.7 2017 9.9 8.5 13.4 2018 6.2 4.7 4.5 2017 9.8 9.3 11.1 2018 5.4 4.5 5.1 2017 7.8 8.8 2018 5.3 5.1 2017 4.2 7.4 10.8 2018 4.9 6.8 5.0 2017 22.0 10.1 12.8 2018 9.9 5.4 8.1 2017 13.7 11.6 16.0 2018 6.5 6.2 6.0 2017 25.8 11.9 17.5 2018 9.8 5.4 8.1 2017 10.3 11.0 17.6 2018 4.4 5.3 8.9 西大寺線 (天満屋 経由) 岡山駅 西大寺 西大寺線 (千日前 経由) 岡山駅 西大寺 倉敷駅 倉敷 循環線 右回り 左回り 小溝線 倉敷 芸科大線 吉岡線 霞橋車庫 倉敷駅 霞橋車庫 倉敷駅 倉敷芸科大 バスロケを基に自動ダイヤ改正 バスの遅延が半減! その後、京王バス、富山県2社、熊本県4社に展開
  3. 6 最近の仕事②神戸市 Urban Innovation KOBE 神戸市バス(交通局) 現システムが機能不足で標準化不可 市内民間バス 標準化中、来年度の実証実験に協力 全国

    バスオープンデータがブームに 国交省 年度内にバスロケデータ標準化 乱立する神戸市内のバスロケを GTFS-RTで標準化する算段をつける 結果は灯台もと暗し…… だけど神戸市交通局も改善検討中! 神戸市内はその後も進まず 全国は進んだ (半ば想定通り)
  4. バスオープンデータ・エコシステム インフラ システム 標準的オープンデータを介して各分野の優良技術が連携 バスロケ車載器 案内/運賃/運行 車載器 ダイヤ編成システム GTFS-JP (路線/時刻/運賃)

    -要定義- (バスロケ蓄積) レジストリ 印刷システム 勝手サービス 経路検索 サイネージ バスロケシステム 標準 形式 管理 システム 車載器 情報 提供 地域交通改善 遅延対策 交通 改善 データ オーサリング GTFS-RT (バスロケ配信) 既存のバス事業者サイ トに加えて、Google, Yahoo!等の経路検索、 その他媒体にて多様に 活用。 標準化により共通ツー ルが利用可能、地域で 俯瞰可能。オープン化 により市民目線で交通 を改善できる。 各社別に配信、または 共有レジストリを利用。 情報提供はGTFSベー ス。分析用蓄積データ については配信と要件 が異なるため要定義。 データをどのシステム から出すかは構成次第 経路検索のためには、 時刻表、運賃との紐づ けが望ましい。 APIサーバ バリデータ 今日の国交省「内山ビジョン」のスコープと近い 8
  5. ライセンスについても規定した 10 ◼ 座長 • 伊藤 昌毅 東京大学生産技術研究所 ◼ 経路検索コンテンツプロバイダ

    • 井上 佳国 ジョルダン株式会社 • 篠原 雄大 株式会社ナビタイムジャパン • 櫻井 浩司 株式会社駅探 • 山本 直樹 株式会社ヴァル研究所 ◼ ダイヤ編成システムメーカー • 高野 孝一 宇野自動車株式会社 • 丹賀浩太郎 株式会社工房 • 中村 嘉明 株式会社構造計画研究所 ◼ バスロケメーカー • 塩路 久人 国際興業株式会社 • 玉山 敏明 株式会社ユニ・トランド • 藤井 俊宏 NECネクサソリューションズ株式会社 ◼ データ整備ツール開発 • 西沢 明 東京大学空間情報科学研究センター • 伊藤 浩之 公共交通利用促進ネットワーク ◼ 業界団体 • 田崎 聰 日本バス協会 IT情報化推進特別委員会 • 別所 正博 公共交通オープンデータ協議会 ◼ 国土交通省 • 三浦 良平 総合政策局公共交通政策部 交通計画課 地域振興室長 • 谷口 礼史 自動車局総務課 企画室長 • 清水 純 総合政策局総務課(併) 政策統括官付 政策企画官 • 田宮 庸裕 総合政策局情報政策課 IT戦略企画調整官 • 寺内 博昭 自動車局旅客課 課長補佐 「オープンデータ」と名乗るには制約の強いライセンスが 乱立していたのを整理するため規定され、特に反論も無かった。 CCライセンス故の「野良アプリ」による問題発生は8年間報告されていない。 データ更新の必要性は情報源に限らず重要で、GTFSだけ締めつけても旧来方式に戻る。 定めるとしたら個々のライセンスではなく、公共交通情報サービスのルールでは?
  6. 情報提供のこれまで 13 NAVITIME 駅すぱあと 駅探 乗換案内 ジョルダン 乗換案内 Yahoo!乗換案内 Google

    Maps Apple Maps データ 提供 データ提供(一部のみ) データ+ エンジン提供 鉄道中心 バス事業者サイト 経路検索CP / プラットフォーマー 2010年風味なUI 他社線検索できず 20年変わらぬCP4社体制 安定感の一方でイノベーションは…? スマホに閉じこもっている 有料課金のジレンマ 大勢は変わっていない
  7. オープンデータがあれば 14 パーソナライズ リアルタイム&予測 メディアミックス サイネージ 紙 CPの弱点 全戸にチラシ配ろうぜ 2019年はGTFSサイネージ

    元年くるよ! 地元 毎日乗るバス情報をPUSH 60-70代 経路検索使ってくれない… ボタン大きく! サポート・口コミ大事 リアルタイム=有償縛り GTFS-RT取込実績なし 乗車中の機能が弱い データ分析屋がいない 先読み バスの到着を予測せよ! 人の行動を読め! コンテストでもやる? サイネージは各社から登場、紙も少々
  8. 16 2012年 ロンドンからオープンデータ! (参考文献)TRANSPORT FOR LONDON GET SET, GO! By

    Becky Hogge, Janualy, 2016 国土交通省「英国政府における交通分野のオープンデータの取り組みについて(海外現地調査報告)」 等 ◦ オープンデータ等の取り組みに加え、交通行動変容を促したことで、オリンピック期間中のピーク時にお ける通常の交通需要の20%削減を実現するとともに、全体として大規模な交通需要に対応した。 ◦ 94%の市民が、ロンドン交通局は大会の交通をうまく管理したと回答。 ロンドン交通局(TfL:鉄道、地下鉄、トラム、バス、ゴンドラ、旅客船、道 路網、レンタサイクル等を運営管理)の取り組み ▪2007年 運行情報、路線図、経路検索に関するウィジェットを公開。 ▪2009年 Webサイト上で、アプリ開発者向けに(主に静的な)データ提供を 開始。 ▪2010年 ロンドンデータストアを立ち上げ、リアルタイムデータを追加提供。 (登録アプリ開発者:数百) ▪2011年 ロンドン地下鉄車両の位置情報等を提供するためのAPIを公開。 (登録アプリ開発者:1000超) ▪2012年 ライブのバス到着情報等を提供するためのAPIを公開。オリンピッ ク専用交通データ統合サイトを公開。(登録アプリ開発者:4000超) 混雑予測情報等を提供するサイトGetAheadoftheGames.com.を開設。 ▪2013年 30以上のデータセットを公開。 (登録アプリ開発者:5000超、アプ リ:数百) ▪現在 地下鉄やバスの運行情報、道路のカメラ映像、レンタサイクル及び駐 輪場空き情報等のリアルタイムデータを含む62のデータセットを公開。 ※ データを活用する者に対し、登録を義務付け。 アプリ:Citymapper 地下鉄がストライキ等による運行 休止時でも、目的地まで、レンタ サイクルや、バス、鉄道と組合せた 回避手段を調べられる。 内閣官房 データ流通環境整備検討会 オープンデータWG https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/data_ryutsuseibi/opendata_wg_dai1/gijisidai.html 東京2020を期に日本でも…とはいかなかった
  9. 交通改善は誰がやるの? 18 バス屋の仕事でしょ? 専門家の仕事でしょ? 自治体が主体的に計画するように 2007年に法律が変わった 427地域で計画が作られている http://www.mlit.go.jp/common/001255689.pdf データとツールがあれば 一般人も参加できるのでは?

    コンサル • セオリー、計算、資料作りは得意。 • クライアントワークで主体的にはなれ ない。ITもあまり強くない。 • 土地の当事者ではない 自治体職員 • 異動ばかりで実は詳しくない。 バス屋: • 自社利益追求、そもそも専門人材不在
  10. 大都市大手事業者がやらない理由の解消 37 1. 自社サービスで満足 • 実態あまり使われてない。神戸市バスロケの利用率は6.5% 2. 乗換検索に掲載され満足 • 大枚はたいたバスロケは載ってないけど

    3. システム改修が高額 • 今年度、大手SIerも国交省検討会に参画 • 部分的な相見積、共同調達なら安いはず 4. データだけで採算を取ろうとする • 増収効果は確かに不透明 5. 黒字サラリーマン企業の真っ当な論理で消極的 • 地方の行政は「公共性」で積極的 • 地方中小は、担当者や、オーナーの「心意気」で積極的 経済効果が不明なのが 一番ネックでは? 大手ダイヤテム・バスロケの GTFS対応はやや進捗
  11. 昭和十七年 鉄道省令第三号 鉄道運輸規程 第八条 鉄道ハ停車場ニ当該停車場ヨリノ旅客運賃表及当該停車場ニ於ケル旅客列車 ノ出発時刻表ノ摘要ヲ掲示スベシ …第九条 鉄道ハ旅客列車ガ著シク遅延シテ発著シ又ハ其ノ運転ヲ中断シ若ハ休止シ タルトキハ遅滞ナク其ノ旨ヲ関係停車場ニ掲示スベシ 鉄道の情報提供規定

    38 掲示/紙だけでなくデータも 昭和六十二年 運輸省令第八号 鉄道事故等報告規則 第五条4 鉄道事業者は、鉄道運転事故、輸送障害(列車の運転を休止したもの (略)又は旅客列車にあっては三十分以上(略)の遅延を生じたものに限る。) (略)が発生した場合には、発生の翌月二十日までに、発生した月の当該事故等の発 生の日時及び場所、当該事故等の概要及び原因、被害の状況並びに発生後の対応をと りまとめて記載した鉄道運転事故等届出書を地方運輸局長に提出(略) ITS研究フォーラム発表資料より https://speakerdeck.com/trafficbrain/20200124-its-forum 紙と現場だけでなく、データも対象とすべき時代では?
  12. 40 観光路線における効果@中津川市 外国人が多い観光路線はGoogleの効果が高い 外国人利用者へのアンケート このバスをどのように知ったか? Kitaena Bus Magome Line in

    Nakatsugawa City 外国人利用者の 22%がGoogle Mapsでバスを知る ITS研究フォーラム発表資料より https://speakerdeck.com/trafficbrain/20200124-its-forum 中津川市アンケート調査: http://www.city.nakatsugawa.gifu.jp/page/081195.html
  13. 42 都市圏における効果@ロンドン 公共交通オープンデータの年間経済効果 対 乗客 待ち時間削減 £70-90m 100-130億円 経路最適化による時間削減 £20m

    29億円 対 交通事業者 問い合わせ窓口のコスト削減 £1m 1.4億円 対 都市 企業活動による総付加価値 £12-15m 17-22億円 http://content.tfl.gov.uk/deloitte-report-tfl-open-data.pdf Assessing the value of TfL’s open data and digital partnerships Deloitte, 2017 データ整備や規制改革の実施にあたり 根拠となる効果を推計する必要がある ITS研究フォーラム発表資料より https://speakerdeck.com/trafficbrain/20200124-its-forum
  14. 43 ナビタイムの年間 経路検索額 J-RAIL2016「乗換検索サービスの経路型ネイティブ広告「PR経路」によるプロモーション効果分析」 会社名 検索数 運賃 料金 総額 全国

    1.77億回 1062億円 366億円 1428億円 JR東日本 4885万回 372.3億円 117.3億円 489.6億円 JR東海 758万回 166.3億円 142.7億円 309.0億円 JR西日本 1440万回 181.7億円 71.8億円 253.5億円 JR九州 227万回 30.9億円 11.9億円 42.7億円 東京メトロ 1783万回 33.9億円 0億円 33.9億円 近鉄 472万回 23.7億円 6.9億円 30.7億円 東武 658万回 21.6億円 2.9億円 24.6億円 小田急 586万回 16.4億円 1.6億円 18.0億円 年換算 1.68兆円 乗換検索第1経路 月間表示額 (2016年1月)
  15. 44 利用する経路検索サービス(熊本市Webアンケート) 観光客も市民もGoogleマップが6割で一強 国内経路検索は 数%ずつ バス会社公式は1.4% my routeは0.1% クルマ系情報や 観光情報サイトから

    公共交通に誘導 する必要がある JR公式は2.5% 熊本市「第2回熊本版MaaS勉強会」配付資料、 伊藤昌毅「サービス化に向けて進化する公共交通と沖縄のポテンシャル」
  16. 全国年間のバス利用統計から皮算用 46 ◼時間節約効果(for 利用者) • バスロケ情報により1分ずつ待ち時間節約できたとする • 1分の時間価値は40円とする • →43億人

    × 1分 × 40円 = 1,720億円! ◼増収効果(for 事業者) • 利便性向上により3%利用が増えたとする(新規利用、利用回数増) • → 9664億円 × 0.03 = 290億円!
  17. 公共事業への期待 49 ◼行政への期待 •電子申請 •制度化 •効果測定 •バス事業の近代化 •バス事業者統合 ◼公共事業的な投資 •標準化、ノウハウ確立

    •研究 •システム開発 •コンテスト ※誰負担? 公共交通課・旅客課・情報政策課の連携が必要 国交省だけでなく自治体・業界団体・学・スポンサーも巻き込む 「内山ビジョン」に昇華し実行できるか?
  18. 6年間の歩み 52 ◼データ整備 ✓ バスの静的データは7.7倍(全体の約1/3)、リアルタイムも一部あり、大半はCC ✘ 相変わらず地方バスが中心。乗客の多い鉄道は置き去り ✘ 「やりたい人がやる」ままでは静的GTFSすら網羅は望めない(いわんやロケ、利用実績) ◼データ活用

    ✓ Google・乗換検索での利用は定着。案内の網羅性・正確性が向上。 ✘ サイネージ、紙媒体、交通計画での利用は始まっているが、まだ限定的 ◼国家的事業化 ✓ 国交DPFに連携するGTFSデータリポジトリに約半数のGTFSオープンデータが集約 ✘ MaaSブームの一方で、データのオープン化・標準化も、公共交通政策自体も国策は足踏み ✘ 数%利用が増えれば充分回収可能な投資だが、その効果は不明確なまま ! 2019年当時の目論見を「内山ビジョン」に昇華し実行できるか? ◼国際標準化 ✓ MobilityDataが活発化。国内でも仕様、Validatorに関して協調しつつある。 ✘ 国際標準への課題解決提案はほぼできていない。Google審査に泣き寝入り。