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開発チームみんなで取り組むアクセシビリティ

ymrl
February 17, 2022

 開発チームみんなで取り組むアクセシビリティ

ymrl

February 17, 2022
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  1. 自己紹介 • ymrl(やまある) • freee株式会社 プロダクトデザイン部 デザインリード • 元エンジニア、いまデザイナー •

    freeeの社内向けデザインシステムを作る(デザイン・実装・運用)傍ら、 Webアクセシビリティの向上施策や社内教育をしています
  2. ユーザビリティとアクセシビリティ ユーザビリティ: • ユーザーや利用状況を特定した 上での、使いやすさの度合い • 特定の条件で目標を達成する 効果・効率・満足度の高さ • 狭く深い

    • 頂点を極める アクセシビリティ: • ユーザーや利用状況を特定せず、 あらゆる条件で使える度合い • 等しく目標を達成できる ユーザーや利用状況の多さ • 浅く広い • 裾野を広げる
  3. 障害ってなんだろう • 「障害者」ではなくても、困ること・不便を感じることはいろいろある • 一時的に障害を負うことがある ◦ 眼鏡が壊れた、両手を怪我した、体調が悪い…… ◦ マウスの電池が切れた、イヤホンが無い…… •

    「障害者」として括られなくても、生活に困ることのある人たちもいる ◦ 妊娠している、幼い子供がいる、持病がある、年を取った…… • アクセシビリティによって助かるのは、必ずしも「障害者」だけではない
  4. 障害者を取り巻く状況にも目を向けると • 法定雇用率: ある程度以上の規模の事業主は障害者を雇用する義務がある ◦ 従業員43.5人以上の事業主は、2.3% ◦ 「障害者が使えない」ことによって大口顧客を逃がすおそれがある • 障害者の周囲の人が、そういう製品を選んでくれるだろうか

    ◦ 障害者が使う必要があるときにサポートできると限らない ◦ 頻度の多いもの・プライベートな情報を扱うものは特に負担が大きい • 障害者の数が少ないとしても、それ以上の機会損失に繋がるおそれがある
  5. 今はまだ、法的なリスクは低いかもしれない • アメリカ合衆国ではWebアクセシビリティ関連の訴訟が数年前から増加 ◦ Americans with Disabilities Act(ADA: 障害を持つアメリカ人法) ◦

    欧州を中心に、各国でWebアクセシビリティ関連の法整備が進んでいる • 日本では障害者差別解消法の改正が2021年成立(2024年6月までに施行) ◦ 民間企業が「合理的配慮」を行うことが、「努力義務」から「義務」へ ◦ 東京都障害者差別解消条例では、実はもう「義務」になっている • 日本でも近いうちに、大きな法的リスクとなる可能性が高い
  6. ここまでのまとめ • 障害者ってそんなに数が多くないんでしょ? ◦ アクセシビリティの対象は、障害者だけではない ◦ 1人が製品を使えないことで、その周囲や所属組織も導入が難しくなる • 日本では訴訟にもならないし、法的なリスクもそんなにないよね? ◦

    近い将来に法的リスクが大きくなっている可能性が高い • そういうのは大きな会社になってからやればいいでしょ? ◦ 会社の大きさは、ユーザーにとってはの関係ないこと ◦ 製品の根幹部分の問題や各所に大量にバラ撒かれた問題は対処が難しい
  7. アクセシビリティを加点法で捉える • 減点法で捉えるアクセシビリティ ◦ やってないと怒られるもの ◦ 完璧にしておかないといけないもの ◦ 特別なターゲットに対して特別なことをするもの •

    加点法で捉えるアクセシビリティ ◦ みんなを幸せにするためのもの ◦ やればやるほど品質が上がるもの ◦ すべての人に対する普遍的なもの
  8. WCAG (Web Contents Accessibility Guidelines) • W3CによるWebアクセシビリティのガイドライン ◦ 原文 https://www.w3.org/TR/WCAG21/

    ◦ 日本語訳 https://waic.jp/docs/WCAG21/ • WCAGの内容がISOやJISの規格になっている • 今年の6月にはWCAG 2.2が勧告される予定(これ以上遅れなければ) ◦ What’s New in WCAG 2.2 Working Draft https://www.w3.org/WAI/standards-guidelines/wcag/new-in-22/
  9. WCAGの達成基準 • A、AA、AAAの3段階のレベル分け ◦ Aは必ず達成してほしい、AAAは達成が比較的難しい • Webアクセシビリティの4原則 ◦ 知覚可能 —

    個々の情報が「存在すること」を知覚できる ◦ 操作可能 — クリックや文字入力を受け付けるものを操作できる ◦ 理解可能 — 個々の情報が何を表現しているのか理解できる ◦ 堅牢 — 上記3つが、Webブラウザの種類や世代を超えて実現している
  10. 具体的な改善の例 • 画像に代替テキストをつける: 1.1.1(A) • Webサイトに埋め込まれている動画に字幕をつける: 1.2.2(A) • 文字の色をコントラスト比の高い配色に変更する: 1.4.3

    (AA), 1.4.6 (AAA) • レスポンシブレイアウトにする: 1.4.10 (AA) • ボタンなどをキーボードで操作できるようにする: 2.1.1(A), 2.1.3(AAA) • エラーメッセージの表示方法や内容を丁寧にする: 3.3.1(A), 3.3.3(AA)
  11. 優先的に対応するべき範囲を見定める • 全ての機能・全ての画面をいきなりアクセシブルにしていくのは難しい • freeeでは、個人事業主向け機能、法人の従業員向け機能を優先 ◦ 個人事業主向け: 帳簿付け、請求書、確定申告など ◦ 従業員向け:

    勤怠、給与明細、経費清算、年末調整など ◦ これらの機能を使う上で、『詰む』ようなところは最優先で直す • これらの機能が使えないと社内でも困るので、直さないわけにいかない