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気象データによる予測と気象データ活用の成功例・課題・可能性

Yoshiki Kato
September 07, 2023

 気象データによる予測と気象データ活用の成功例・課題・可能性

2022/10/25(火)
野村證券様主催の機関投資家向けセミナーにて、下記テーマで講演いたしました。

◆スピーカーシリーズ◆
気象データから何が予測できるのか?どのように活用出来るのか?
-成功例・課題・可能性-

Yoshiki Kato

September 07, 2023
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Transcript

  1. 1 © 2020  「気象予報士キャリア15年以上の気象予報士夫婦で、
 気象に左右されるビジネスをサポートしています!」 
 加藤 芳樹
 かとう よしき
 


    気象予報士登録番号 
 第3687号
 (2002年4月取得)
 ❖ ウェザーニューズ社で予報業務の実務経験 
 一般予報(短期・長期)をはじめ航空・航海等の交通気象など
 様々なコンテンツの予報業務や各種予測アルゴリズム開発
 ❖ エアラインでの航務業務
 ❖ DataMix社データサイエンティスト養成講座修了 
 ❖ 東京大学松尾研究室主催DeepLearning講座修了 
 共通キャリア
 • 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻 
 • ウェザーニューズ社内選抜でオクラホマ大学 
 National Weather Centerへ留学 
 • 世界の主要気象予測モデルを活用した独自の気象予報 ガイダンス開発等、気象技術開発多数 
 • エネルギーベンチャーで気象に係る業務の主導や電力 需要データ分析の他、太陽光発電アルゴリズム開発や太 陽光発電設備の故障検知アルゴリズムを開発 
 • 個人事業で太陽光発電量予測値を提供するサービスを 開業
 加藤 史葉
 かとう ふみよ
 
 気象予報士登録番号 
 第4321号
 (2003年10月取得)

  2. 2 © 2020 主な実績 【気象データを活用したデータ分析・AI開発】 • テレビ放送事業者へフェージングを予測するAIの開発 • 再エネ関連事業者へ太陽光・風力の発電量予測AIの開発 •

    コインランドリーの需要予測とダイナミックプライシング etc 【気象庁の人材育成プロジェクトへ参加】 • 気象データアナリスト育成講座のカリキュラム設計、教材作成 • 試験的に実施した育成講座の講師 ←(出典)気象庁「気象業務はいま 2021」 【『おかえりモネ』気象監修へ参加】 • 気象に関する助言・調査、台本考証、体験談・資料提供 etc ← (写真)おかえりモネ展 in 気仙沼
  3. 6 © 2020 ラニーニャについて • 太平洋東部の赤道付近の海面水温が、平年よりも低くなる現象 • 日本付近では冬型の気圧配置になりやすい傾向 • 気温は低め、降水量は太平洋側で少なめの傾向

    (ただし統計的に有意とまでは言えない) ラニーニャ現象発生時の海面水温の平年との差 (1998年12月) ※ 気象庁ウェブサイトより引用
  4. 7 © 2020 予想される社会・経済への影響 • スキー場は雪が多く、また営業期間が長い • 冬物衣料がよく売れたり、寒いと売れる食品(e.g. おでん)がよく売れる •

    エネルギー需要が増える、燃油が売れる、暖房機器が売れる • 大雪による人的被害、物的被害 • 大雪によるインフラへの影響(道路、物流、etc) • 電力需給逼迫、電力市場価格の高騰、光熱費の上昇 • 海運への影響(太平洋の主要航路が荒れやすい) • エアラインのシビアな冬季運航(欠航、遅延) • 路面凍結による車両事故増加(保険業界に影響) • 農業・漁業への影響(燃油代高騰) • etc...
  5. 9 © 2020 気象データ×AIで潜在的にどのようなことが可能なのか 実は気象とAIの関係は長い(40〜50年の歴史) ※ 気象庁数値予報課報告・別冊第64号より引用 気象観測 入力 人へ

    予報官が 予報発表 ここで統計学や 機械学習の技術 を活用 【天気予報ができるまでの流れ】 近い将来、降水ナウキャスト(※)にディープラーニングが使われる可能性も! (※ 天気予報アプリの雨雲レーダーで見られる、雨雲の動きの短時間予報)
  6. 11 © 2020 気象データ×AIで潜在的にどのようなことが可能なのか 近年、気象データ×AIをビジネスに活用する流れがある 【マーケティング】 •気象条件に応じて一人ひとりに最適な商品をリコメンド •天気に応じた広告の配信 【需要予測】 •気象条件の影響を受ける商品やサービスの需要予測

     e.g.) 来客数予測、商品販売数予測、稼働率予測 【電力需給】 •再生可能エネルギー(太陽光・風力)の発電量予測 •電力需要の予測、市場価格の予測 •VPP、蓄電池の最適制御 【保険】 •気象災害による損害発生の予測、損害額の見積もり
  7. 12 © 2020 気象データ×AIで潜在的にどのようなことが可能なのか 今後、気象データ×AIが広がりそうな(広げたい)分野 •農業・漁業などの一次産業 - 気象データに基づく営農の最適化 - 漁業ノウハウの技術継承(航海日誌のデジタル化)

    •気候変動 - 上場企業の気候リスク評価 •航空・海運・道路などの交通インフラ - 気象予報だけではない、気象データ×AIの利用促進 •その他 - 直接的にビジネス(利益)に繋がるものではないが、気象データが活用 できる社会課題の解決 e.g.) 電波のフェージング予測、橋梁の大気腐食モデリング •医療 - 気象病 •衛星データ
  8. 13 © 2020 気象データ×AIの成功例(WXBC気象データの利活用事例集より引用) 【老舗料理店での気象データを活用した来客予測システム】 有限会社ゑびや(株式会社EBILAB) ➢ 気象データを含めた400項目近いデータを収集し、1日の来客数・注文数を 予想するAI(来客予測システム)を開発 ➢

    データを根拠にして来客人数を予測し、最適な人員配置を行い、食材の廃棄 ロスを減らすなど、オペレーションを効率化 成果・効果 ➢ 翌日の来客数は的中率9割で予測可能 ➢ オペレーションの改善・サービス向上 ➢ 売上4倍・利益率10倍 ➢ 平均給与+5万円アップ ➢ 有給休暇消化率を80%に向上 ➢ 料理の提供時間1/3
  9. 14 © 2020 気象データ×AIの活用における、現実の困難・課題 実は気象データの活用はまだそれほど進んでいない 2020年の総務省の調査(←)によると 気象データを事業に活用する企業は… • 5年前に比べたらかなり増えた •

    それでも1割に届かない程度 別の気象庁の調査では… • 気象の影響を受ける企業は約7割 • そのうち気象への対策を行なっていない 企業は約5割 • 気象への対策を行なっている企業でも、 気象データを使っていない企業は約6割 (出典)気象庁「産業界における気象データの利活用状 況に関する調査(令和元年度)
  10. 15 © 2020 気象データ×AIの活用における、現実の困難・課題 • 気象データを扱う専門スキルを持った人材がいない → 気象データアナリスト育成講座の制度 • 効果があるのかわからない、成功事例が少ない → WXBCによる啓蒙活動、地道に成功事例を増やして共有

    • 気象データ以前に、社内データがない or 社内データを使う手続きが面倒 → 世のDX推進ガンバレ! なぜ気象データの活用が進まないのか? WXBC『気象データの利活用事例集』 • 事例はたくさん掲載されているが、成果・効果を定量的に記 載した事例はほとんどない ◦ 企業秘密? ◦ そもそも検証までされていない?  → 定量的な成果・効果まで記載した事例を増やしたい!
  11. 20 © 2020 【日本の気象業界の市場規模】 • 1993年気象業務法改正以来、300億円前後でほぼ横ばいだった • 近年、大手気象会社を中心に2018年頃から増加傾向(帝国データバンク) • 現在は推定約400億円規模

    (出典)気象庁「気象業務はいま 2012」 官庁やコンソーシアムの推進/サポート体制、諸外国の動向など今後の展望 👆 ただし上記には気象データ を活用したビジネスを行う 気象会社以外の企業の数値 は含まれない 実際にはもっと規模は大き いはず?(未知数)
  12. 21 © 2020 官庁やコンソーシアムの推進/サポート体制、諸外国の動向など今後の展望 【世界の気象業界の市場規模】 - 気象予測サービスの市場規模は、2021年の17億ドルから2026年には27億ドルへと増加 (リサーチステーション) - 気象予測システムの市場規模は、2021年の27億米ドルから2026年には35億米ドルへ成長

    (MarketsandMarkets) - 気象情報技術市場は、2019年に約94.1億米ドル、2020年〜2027年に8.5%を超える成長率 (REPORTOCEAN) → 順調に成長していくと予想されている → 日本に比べると海外のほうが規制が少ない(?)   気象予報士や気象データアナリストのような仕組みは(たぶん)ない 【ポイントはウェザーテック?】(参考ニュース) • AI・IoT機器・ビッグデータ • 衛星データ・気象モニタリング • 気候変動・異常気象 • 再生可能エネルギー