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シリーズAI入門:8.AIを巡るいくつかの問題

FSCjJh3NeB
February 03, 2021

 シリーズAI入門:8.AIを巡るいくつかの問題

AIに関連するいくつかの問題,記号接地やフレーム問題を眺めます。

FSCjJh3NeB

February 03, 2021
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Transcript

  1. n ここまでで流れを大まかに押さえた u これまでの人々は ”知能” をどう捉えてきたか u 計算機はどのようなものか? u ヒトは情報をどのように処理しているか?

    u 人工知能の分野では,どのように課題にトライして, どこで行き詰まってきたのか? n この取り組みの中で明らかになった,知能 の周りの いくつかの大きな課題をまとめて眺めてみる 2
  2. トイ・プロブレム n 初期のAI研究においては,迷路やハノイの塔など ごく単純化された条件下での問題を扱った n 単純化された問題 = トイ・プロブレム u いきなり複雑な条件は扱えないので,

    簡単な例から考えていくのは,問題を解く上での定石 u しかし,初期のAIはこの段階を超えることができず, “知能”の難しさ,複雑さが明らかとなった Toy:おもちゃ 3
  3. トイ・プロブレムの成功例 n トイ・プロブレム とはいえ,成果を上げたものも u STRIPS ( Stanford Research Institute

    Problem Solver ) p 前提,行動,結果 という3要素で 仮想ロボットの動作を実現 • ロボットが自動的に動作計画を立てることを“プランニング”という p 仮想ではあるが,いろいろな動作を実現できた u 積み木の世界 SHRDLU p 仮想空間上に配置された 積み木 を操作させることができた • 人「ブロックの上に,四角錐はおけるか?」,AI「Yes」 • 人「四角錐の上に,四角錐はおけるか?」,AI「No」 …といった対話形式で,積み木を操作させたり説明させられた = 対話的にAIにプランニングを実行させることができた 4
  4. 初期フレーム問題 n 状況の記述には膨大な知識と状態の記述が必要 u n種類の状態に,m種類の行為があるとするなら, n × m 個の記述が必要になる p

    手の位置が (0,1,3) の時,(0,1,4)の時…・ p 親指を0.1度曲げる,伸ばす,「あ」という声を出す… u ある行為を記述しようとしたとき,その行為によって 変化する事柄と,変化しない事柄を明示的に記述・推論 するならば,その量は指数関数的に増大する 10 記述の量と,計算の量 が爆発 (書き切れないし,計算しきれない)
  5. 後期フレーム問題:波及問題 n 行為の帰結の完全な予測は不可能 u ある行為によって生じる結果をどのように予測するか u ある環境下でロボットが特定方向に 1m 移動するとき… p

    普通に考えれば ロボの位置が1m 変わるだけ p 物体があると… • 十分に軽ければ ロボと物体が1m 動く,重いとロボは動かない, そこそこの重さだとロボと物体がそれぞれ少し動く p 落とし穴があると… • ロボが穴の手前で止まる,そのまま進んで落ち部品が飛び散る …などなど,無数にある 12
  6. フレーム問題と人間 n 人間もフレーム問題に陥ることはある u 全く知らない海外の街で… p この国で麺類をすすって食べるのはマナー違反? p この国で子供の頭をなでるのはマナー違反? p

    この国でチップを出さないのはマナー違反?いくらが妥当? p この国は普通にハグする文化圏?握手とかは? p 急に花を押しつけられたけどこれはもらって良いやつ? ハワイで空港降りたときにくれるやつと同じノリ? p … u 全く考えず・知らずに行動して大失敗(1号) u 急な出来事に戸惑う内に財布をすられるなど失敗(2号) u OK・NG行動をホテルで調べている内に帰国日(3号) 人間にも発生するタイプのものを “一般フレーム問題” とも 13
  7. われはロボット (I, Robot) n アイザック・アシモフの著したSF小説 u “ロボット三原則” はこの小説で示された概念 p 第一条:

    ロボットは人間に危害を加えてはならない。ま た、その危険を看過することによって、人間に危害を及 ぼしてはならない。 p 第二条: ロボットは人間にあたえられた命令に服従しな ければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条 に反する場合は、この限りでない。 p 第三条: ロボットは、前掲第一条および第二条に反する おそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。 フレーム問題そのものではないが, ロボットが上記の3原則を守ろうとして,結果変な行動を起こしたり, 3原則の内の一つが損なわれた結果,妙なことが起きたりする …という,いろいろなストーリーが描かれる 14
  8. チューリング・テスト n AI が できたか どうかを判定するためのテスト u イミテーション(模倣)・ゲーム とも n

    別の場所にいる人間が,コンピュータを通じて やりとりし,相手が人間か否か判別できなければ AI ができた(知能がある)…と,判定する u チューリングテスト合格を競う,ローブナーコンテスト も 毎年開催されている ? ※ アラン・チューリングは 1950年 にこのテストを論文にまとめている ENIAC は1946年ごろ,ダートマス会議は1956年 15
  9. アラン・チューリング(1912-1954) n イギリスの数学者 n 人工知能をはじめ情報工学の 基礎的な概念を多数生み出した n 情報系のノーベル賞 = チューリング賞

    u 数学ではフィールズ賞 • ドイツの暗号(Enigma)を解読する装置を開発し,戦争終結を2年早めたとも • ただし,暗号解読任務は極秘だった & 同性愛は当時 違法だった …ことなどから,長らく暗号解読の業績は伏されていた 2009年 イギリス政府は謝罪の声明を発表 2013年 エリザベス女王の死後恩赦により名誉が回復された 16 “機械は思考することができるか?” ─ 計算する機械と知性 (1950) ─
  10. 強いAI・弱いAI n 哲学者 ジョン・サールが提唱した概念 n 強いAI u 人間と同じ心や知能を持ったAI p コンピュータによって人間をエミュレート可能という立場を含意

    n 弱いAI u 心を模倣するだけの有用な道具 p 人間の心は持たないが,人間のような問題解決はできる • ← サール自身はこちらの立場をとった サールの思考実験 “中国語の部屋” 18
  11. 中国語の部屋 n 知的に見える=知的か? n 中国語の部屋 u 密室の中に,中国語を知らない人がいる u スゴイ辞書があって,中国語でこういう文字列が来たら, この文字列を返す…というのが一瞬で出てくる

    u 密室内の人はこの辞書を持っていて,外の人が中国語の お手紙を入れると,対応する文字列を返してくれる p 中の人はとにかく辞書で対応する文字列を探して返しているだけ で,お手紙の意味は何一つわかっていない u でも外から見たら,中の人は中国語を理解している 19
  12. 記号接地問題 n 抽象化された情報と,実体を対応づけること u シンボルグラウンディング問題 とも n 人間は様々な情報をうまく抽象化(記号化)し, 実体と対応付けて処理をしている u

    体を持たないAIにリンゴは理解できるか? p 概念(記号)としてのリンゴが理解できたとして, 目も耳もないAIは,真にリンゴを知っているといえるか 23
  13. 記号接地問題 n そもそも機械の中での扱い u 我々は Apple(リンゴ)を 単語 として認識 p リスゴ

    とか Bapple だと「?」ってなってしまう p Apple と Orange,Bapple があったとき,仲間は Orange u 機械の中で Apple はただの記号の羅列 p 1000001 1110000 1110000 1101100 1100101 • Bapple: 1000010 1110000 1110000 1101100 1100101 • Orange: 1001111 1110010 1100001 1101110 1100111 1100101 p Apple の仲間はデータがほとんど同じ Bapple! p Apple も精々「たまに出てくる記号の並びだね」くらい 我々が知らない言語の文字を見るのと同じ: 24
  14. 身体問題 n 知能には身体が必要なのでは?という考え u 身体があることで,さきほどの「甘酸っぱい」などの 感覚が理解できるのでは p まぁでも,味覚がないならないなりに知能は成り立つ可能性も • “潜水艦は泳げないのか?”

    人には人の,機械には機械の知能 u 身体があることで,物理制約が生じるため, これによって解空間を制限することができ,様々な問題 に対応できるのでは? ロボットなどハードウェアが絡むので、 おもしろいが,実装のハードルは上がる… 26
  15. 潜水艦 は 泳げるか? n 知能のあり方 は ひとつか? u ヒトは空を飛ぶことができるが,鳥のそれとは全く違う u

    器具の助けなく水中を泳ぐこともできるが,魚とは違う 27 コンピュータは考えることができるか? という問いは, 潜水艦は泳げるか? という問いと 同じようなものだ ─エドガー・ダイクストラ─ ヒトにはヒトの,機械には機械の 知能があるのでは? 身体がなくとも,記号接地できなくとも 知能は成立しうるかも
  16. 知能 を 補助する道具 n “人を支援する道具” の 分類 (※ 中小路久美代 博士

    の 分類による) u ダンベル型 p 使い続けることで,人間に知識やスキルがたまる道具 u ランニングシューズ型 p すでに行っていることを,より効果的にできる道具 u スキー型 p それがあることで,初めてできる道具 28
  17. 今は触れない,その他の問題 n 機械学習関連でよく聞く問題 u ただし,必ずしも“知能”に絡んだ課題ではない u 次元の呪い p 特徴量の種類を増やし過ぎるとうまく学習できなくなる u

    ノー・フリーランチ定理 p 事前知識なしに,よいアルゴリズムを見つけるのは困難 u みにくいアヒルの子定理 p バイアスなしには,何かと何かを分類することは困難 29
  18. 補足 n 強いAI・弱いAI ─研究者に聞く人工知能の実像─ u 鳥海 不二夫 (著) p 丸善出版

    (2017/10/26) p ISBN-10: 4621301799 p ISBN-13: 978-4621301791 参考書「知能の物語」に追加して, 以下の書籍なども,読みやすくて楽しいと思います 30