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シリーズAI入門:7. 第3次AIブーム パタン認識

FSCjJh3NeB
February 03, 2021

シリーズAI入門:7. 第3次AIブーム パタン認識

第3次AIブーム,特にパタン認識について眺めます。

FSCjJh3NeB

February 03, 2021
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  1. 分類・整理の仕組み n 分類するとは… u 似たもの同士でグループを作るようなこと u 似ているをどう判断するか? p 機械 は

    記号(信号) を扱うので,そのパタンが似てる… というのを扱うのが,まずは簡単そう n 実は初期から パタン認識 という分野も存在 u 機械学習 や 深層学習 もこの系譜に位置づけられる 3
  2. ニューラルネットワークの台頭 n パタン認識 に対する注目の高まり u パタン認識は推論や探索と並んで初期からの分野の一つ u 推論や知識表現の行き詰まりにより注目を取り戻す p 誤差逆伝搬法が実用化されて以降,狭義のパタン認識から,

    言語や記号処理などにも適用領域が拡大 • 現在の深層学習(ディープラーニング)につながるルート u パタン認識から記号処理の間の環境認識部分にこそ 知能の本質があるのだという主張が出現 4
  3. ニューラルネットワークの台頭 n Neural Network : NN u 神経細胞(neuron)を模して設計された学習手法 p 神経細胞

    が どんなモノだったかは 認知科学の回 を参照 p 言葉としては似ているが,無関係なものも多いので注意 • NN は Nearest Neighbor の略称としても用いられる • “神経言語プログラミング” Neural Language Programming という, 自己啓発セミナー的なものもあるが,NN はじめ AI とは無関係 5
  4. NN の変遷 p 単純パーセプトロンからスタート • その後,線形分離可能な問題などしか解けなさそうなことも判明 • 進化させた3層のものもできたが,それ以上多層にしても精度でず p 誤差逆伝搬法で線形分離の課題を解決

    p 自己符号化などの手法で,多層化した場合の学習精度問題を解決 パーセプトロン (順伝搬型NN) パーセプトロンの 性能と限界に関する論文 誤差逆伝搬法 (バックプロパゲーション) 自己符号化器 (オートエンコーダ) AlphaGo が プロ棋士に勝つ ILSVRC で SuperVision 優勝 1958 1969 1986 2006 2012 2017 ディープラーニング 将来補足 6
  5. 記号 再考 u なんらかの基準により,世界を同値類に分けた結果 n 同値かどうか,同一性の判定が主問題 u 同じかどうか,の 2値分類 になるので,本来

    距離はない p 距離:近い,遠い (軸を逆にすると,類似の度合い) u もちろん,距離を定義することは可能 n 記号は単体で用いられることはなく, 組み合わせて構造を作ることが多い u こちらも,距離を定義することは可能 p 組み合わせの構造的な類似度を用いるなど 何にせよ,記号は本質的に距離を有しない 8
  6. パタン n 本質的に 類似性 の概念のみが定義された世界 u 記号とは本質的に異なる存在 u 2つのパタンの間には自然な距離が定義可能 u

    重み付きで加算するなど,合成や変形が可能 u この性質を用い パタン を 記号 に分類する操作 p パタンと言う連続値を,記号という離散値にする操作 ともいえる p この操作を実現する便利な道具が NN パタン認識 9
  7. パタン と 記号 n 人間(≒知能)は,パタン認識をどう活用するか? u 必ずしも,パタン を 記号 に変換するだけではなさそう

    p 見知らぬ空間で目を覚ましたとき,その場の観察に加えて, “ここは部屋のようなので天井や床,扉がありそう” など 知識に基づく予測も行うはず u だが,古典的AIでは,環境を認識し,記号化した後, 記号のみを操作して演算を行うとしていた u この矛盾に対して2つの議論 10
  8. 環境認識 n 主張A u 実世界を認識し,記号に落とすことが知能の本質 p 記号から実世界に戻る 記号接地 も含める n

    主張B u 記号の操作は推論の一部,実世界との相互作用が大事 p ロボットのように,センサとアクチュエータを含める必要 環境 記号 1. 記号化して 2. 演算して 3. 対応づける 環境 記号 環境とのやりとりで 演算する・できる 主張Aの知能観 主張Bの知能観 ※ この問題に対しても特に答えは出ていません。 どっちが正しいのか,どっちも正しいのかも不明。 11
  9. 自分と他者の境界線 n 自分というのはどこまでが自分? u 自分は自分でしょ。意味わからん。 …と言う気もするが p 髪の毛も自分だが,抜け落ちた髪は自分じゃない p メガネとかは体の一部じゃないけど,自分の一部かも

    p 自分の体に接しているからといって,下着は自分じゃない p 車とかバイクとか運転してるときは,車ごと自分な気がする p 自分の考えは,家族や友達の影響を受けてできている • そう言う意味では,家族や友達なども自分の一部? “環境まで含めて知能を構成するのだ” というのも,そんなに不思議な発想ではない 鏡に映った 自分は自分? 12
  10. 名付け・ラベル の 重要性 n イセポ を 知らない人に イセポ は見えない? u

    目の前に イセポ がいても,それが イセポ だと知らなけ れば イセポ として見ることはできない p イセポ を 知っているヒトには イセポ p 同じモノを知覚しているはずなのに,違うモノを知覚している 15 ※1 イセポ は アイヌ語 で ウサギ 左の絵は,意味を知っていると 非常に恐ろしい場面なのだが, 知らなければ謎の落書き 同じ絵を見ていても, 全く違う意味を読み取っている ※2 明らかに デーモンコア事件 を 再現している
  11. 記号に関する先行研究 n 言語哲学 u そもそも “言語哲学” が何を指すかについても, いろいろと議論はあるようですが… u とりあえず,“言葉に関する哲学”

    であるとすると, ギリシャ時代くらいからいろいろと研究はある u 近代では ソシュール による言葉と記号の関係性, 現代では チョムスキー の 生成文法,などが有名? 記号に興味を持った人は,調べてみると面白いかもしれません 16
  12. 環境との相互作用 n ユクスキュルの環世界 u 環世界:生物が自己を投影した形での世界 p 例:ヤドカリとイソギンチャクの関係性 • ヤドカリの家である貝殻にイソギンチャクがついていなければ… •

    カモフラージュのために,イソギンチャクを殻につける • イソギンチャクがついていたら… • 餌としてイソギンチャクを食べる • ヤドカリが家である貝殻を持っていなければ… • 家の代わりにイソギンチャクを使う ヤドカリの視野にある円筒形の物体の持つ意味が, そのときのヤドカリの状態によって変わる! 17
  13. 環境との相互作用 n 服属・包摂アーキテクチャ:subsumption architecture u ロボット工学に端を発する概念の一つ u 知識表現を用いずに,環境との相互作用だけで そこそこ知的な行動を生成できるという考え方 セ

    ン サ ー 障害物・危険回避 動き回る 部屋の探索 ア ク チ ュ エ ー タ より単純かつ重要なものから,行動の優先順位を決めて行動させる 昆虫レベルの知能であると,このモデルで十分に模倣できる 18
  14. 柔軟な知能へ n 昆虫などの生物もなかなか知的 u あらかじめ決められた動きしかできないが, 一定範囲の環境内ではうまく生きていける u 主体と,他の個体を含む環境との相互作用を無視して, 主体の構造や性質だけを調べても本質にたどり着けない p

    “音楽” を理解するのに,要素に分解していって,音符だけを 一生懸命眺めてみても,音楽は理解できない 過去の,トイプロブレムへの批判がそのまま通用 過去分になかった観点として, 困難さが 知識 ではなく 環境の複雑さ にある点 19
  15. 柔軟な知能へ n 昆虫と人との違いは…? u 昆虫は “決まった環境では” うまくやれる p 以前見た ハエの閉じ込め

    のように環境によってはダメ n 高度な知能の要件 u 突発的な・想定外の状況が起きたり,環境そのものが 大きく変わっても,臨機応変に対応できる能力? u でも,人間だってバリエーションがちょっと多いだけで 機械的に反応しているだけかも? p 特に,決定論的立場であると,そういう理解も成り立つ 20
  16. 自由意志? n ヒトの意志は本当に自由か? n 「今日はこの服を着よう」 u そもそも,所有している服から選ぶ p その際に,今日,どこに行くか,誰に会うかも考慮する •

    恋人のご家族に初めて会う時だったら,当然気合いを入れる u そもそも,嫌いな服は基本買わないはず p 好きであっても,お金がないと基本的には入手できない u 好き嫌いは,過去の経験から成立しているはず p 何を見て,何を聞き,何をしたか,etc. 21 「自由だ」と感じているだけで, 本当は行動は環境で規定されているのでは? 決定論
  17. 認知科学の命題 n 心はタブラ・ラサ(白紙のノート)か? u ヒトの心は経験によって形成されるのか? u それとも先天的に与えられるのか? n 唯物論と随伴現象 u

    脳も物理的機構で,心もその機構の出力のひとつ u したがって,心も物理的な運動のひとつ …という見解 22
  18. 柔軟な知能へ n アリの軌跡 u アリの作る隊列・移動軌跡は実に複雑 u だがアリの行動原理は極めて単純 p 高低差や,障害物を避けて,歩きやすいところを歩く u

    軌跡の複雑さはむしろ,地面の複雑さの反映 p アリの内部構造を調べてみても,複雑さの理由はわからない 行動原理と,その結果(環境を含めて)を セットで考える必要 24
  19. 個の知能から集団の知能へ n 集団・動的な知能 u 他者を含む,環境との相互作用などを背景に1980年代に p スタートは分散人工知能:複数のセンサ情報を一つに統合 p 徐々に複数の知能の相互作用を扱う研究分野に u

    例えば… p 向こうから歩いてきたヒトとぶつからずにすれ違うには, 双方が動きを予期して動く必要 p バスケやサッカー,ラグビーなど様々なスポーツでは 敵の動きに注意しつつ,味方ともうまく連携して動く必要 • 自分の都合だけでは完結しない • 複数の知能が連携してひとつの知能・システムを構築する マルチエージェント 25
  20. 参考 n 自分 と 他者 の境界線 などについては, 東京大学 野矢茂樹 先生の

    著書が面白く オススメ u 心身二元論 などについても,平易な言葉で, 身近な例を元に取り上げるため,高校生でも読める 27