Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

大学新入生を対象としたプログラミング入門科目 におけるオンライン授業の実践と評価

大学新入生を対象としたプログラミング入門科目 におけるオンライン授業の実践と評価

2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会での北陸大学 鈴木大助先生の発表資料。

More Decks by アシアル情報教育研究所

Other Decks in Education

Transcript

  1. はじめに • 今年度前期,コロナ禍下の対応で多くの大学がオンライン授業実施 • 北陸大学(石川県金沢市) • 4月22日前期授業開始~6月2日「特例期間」として全学オンライン授業 • 6月3日以降「助走期間」,7月1日以降「第2段階」,8月1日以降「第3段階」として 教室授業の割合を段階的に増加,一部授業はオンライン授業を継続

    • 筆者は新入生を対象としたプログラミング入門科目を担当 • 昨年度は教室授業,今年度は15回中13回がオンライン(ハイブリッド含む) • 蓋を開けてみると,オンライン授業に対する受講生の反応は良好 • 第4回授業(5月14日)で選好調査を実施したところ,教室授業選好 25.0%に対し,オンライン授業選好は45.6%と大きく上回る • 理由:講義動画を見直せる,自分のペースで取り組める,スライドが見やすい,周 囲の目が気にならないので集中できる,等々 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 2 鈴木(2020): 新入生を対象としたプログラミング入門科目におけるオンライン授業と教 室授業の選好調査, 情報処理学会研究報告CE, Vol.155, No.8, pp.1-6. https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=pages_view_main&active_action=repository_ view_main_item_detail&item_id=204865&item_no=1&page_id=13&block_id=8
  2. 研究目的 • 学習者の感じるオンライン授業の利点は学修の促進および学 修成果の向上に寄与するのではないか • 2019年度教室授業と2020年度オンライン授業における中間 アンケートおよび小テストの結果を比較 • 学習の促進および学修成果向上の観点からオンライン授業 が教室授業に比肩しうるか検討する

    2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 3 鈴木(2020): 新入生を対象としたプログラミング入門科目におけるオンライン授 業と教室授業の実践比較, 情報処理学会研究報告CE, Vol.156, No.6, pp.1-6. https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/index.php?active_action=repository_view_main _item_detail&page_id=13&block_id=8&item_id=206393&item_no=1 Monacaを活用した新入生対象「プログラミング入門」 https://ict-enews.net/2020/09/monaca-3/
  3. 「プログラミング入門」科目概要 • 北陸大学 経済経営学部 1年次配当選択科目 • Monacaを利用したスマホアプリ開発を通じてプログラミング に親しむ • Monaca:

    • HTML, CSS, JavaScriptを用いたアプリ開発のためのクラウド開発環境 • Google Chrome等のWebブラウザさえあれば開発が可能 • 開発したアプリは自分のスマートフォンでただちに動作確認できる • アシアル株式会社:Monaca Education,https://edu.monaca.io/ 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 5
  4. 2020年度「プログラミング入門」授業スケジュール No. 授業内容 No. 授業内容 1 Monaca準備・開発環境確認 9 フォームの練習 2

    HTML 10 BMI計算アプリ(様々な演算子) 3 CSS 11 心理テストアプリ(配列) 4 JavaScript入門/選好調査アンケート 12 繰り返し 5 条件分岐 13 小テスト・アンケート/おみくじアプリ 6 関数 14 地図アプリ(APIとGPS機能利用) 7 イベント 15 まとめ/理解度確認テスト 8 あいさつアプリ(DOM) 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 7 • 90分授業×15回 • 毎回のプログラム作成課題50%,理解度確認テスト50%で評価
  5. 本学の教育情報システム環境 • 教育情報システム環境 • 2015年度 学習管理システム(LMS) manabaを全学導入 • 2019年4月 経済経営学部でPC必携開始

    • 2020年3月 Office 365 および G Suite を全学導入 • 2020年3月 Zoomをテスト導入,5月全学導入 • 本年度の学生への利用指導 • 4月上旬に教室にて対面で情報ガイダンスを実施 • 利活用スキル養成は「情報リテラシー」「基礎ゼミナール」で継続 • 学生は前期授業開始までにノートPCを購入・保有 • 自宅からWi-Fi等を通じてインターネット接続しこれらシステムを利用 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 8
  6. プログラミング入門オンライン(2020)の授業方法 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 9 1. 授業3日前公開 2. 授業3日前公開 全員自宅で視聴 3.

    自宅で予習・ 教室/自宅で時間内演習 4.教室/自宅からTeams グループで質問・相談 5. 次回まで 時間内 時間外 • SA二人もTeamsで質疑対応 • 第6回まではこのほかZoom でライブ講義を行っていた
  7. Teamsグループを利用して受講生同士が相談で きる場を提供 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 11 • 7~9人で1グループとして全9グ ループを編成 • 同じ基礎ゼミに所属する受講生

    は同じグループになるよう編成 • アプリを完成させた受講生が他 の受講生の質問に答える場面も 見られた ※後日談 • Teamsグループのおかげで質問 がしやすかった • 課題に協同で取り組む過程を通 じて大学の友人ができた
  8. プログラミング入門(2019)の授業方法 • 今年度と同じ点 • 同じ授業内容をほぼ同じ授業スケジュールで実施 • アプリ開発環境Monaca • 授業資料配布や課題提出・コメントはmanaba •

    SA2人 • 今年度と異なる点 • 教室で対面講義・教室で質疑応答を行っていた • 授業の録画配信はしていなかった • Teamsは使っていなかった 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 12
  9. 中間アンケート概要 • 調査方法: • 学習管理システムmanabaを用いたアンケート(記名式) • 調査内容: • 本授業受講以前のプログラミング経験の有無 •

    高校時代および大学入学以降のPC使用頻度(5段階) • 学習内容に対して感じる難易度(5段階),面白さ(5段階) • 興味を持った点,疑問に思った点,自由意見・感想(記述) • 調査日: • 今年度: 2020年7月16日第13回授業時間中 • 昨年度: 2019年7月10日第12回授業終了後 • 調査対象: • 今年度:受講登録者72人,回答者64人(回答率 88.9 %) • 昨年度:受講登録者83人,回答者74人(回答率 89.2 %) 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 14
  10. プログラミング経験 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 15 ある, 7 ない, 57 ある, 4

    ない, 70 2020 受講生 2020 受講生 2019 受講生 2019 受講生 両年度とも高校時代にプログラミングを経験している者の割合は低い 高校の授業 4人 親の影響 1人 大学サークル1人 再履修 1人 高校の授業 3人 大学サークル1人
  11. PC利用頻度 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 16 2 39 0 9 3 12

    11 1 48 3 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 大学 高校 月に1日未満 月に1~2日程度 週1~2日程度 週3~4日程度 ほぼ毎日 1 33 4 24 27 6 29 5 13 6 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 大学 高校 月に1日未満 月に1~2日程度 週1~2日程度 週3~4日程度 ほぼ毎日 2020 受講生 2020 受講生 2019 受講生 2019 受講生 高校時代11人(14.9%) 大学入学以降42人(56.8%) 高校時代 4人(6.3%) 大学入学以降59人(92.2%) • 両年度とも高校時代に高頻度で利用する者の割合は低い • 今年度は大学入学以降の高頻度利用者の割合が高くなっている 週3~4日程度以上利用者
  12. 学習内容に対する所感 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 17 03 20 24 17 0% 20%

    40% 60% 80% 100% まったく面白くない あまり面白くない 普通 まあまあ面白い とても面白い 0 1 7 34 22 0% 20% 40% 60% 80% 100% とても簡単 まあまあ簡単 普通 まあまあ難しい とても難しい 13 11 39 20 0% 20% 40% 60% 80% 100% とても簡単 まあまあ簡単 普通 まあまあ難しい とても難しい 03 27 32 12 0% 20% 40% 60% 80% 100% まったく面白くない あまり面白くない 普通 まあまあ面白い とても面白い 2020受講生 難易度 2020受講生 難易度 2019受講生 難易度 2019受講生 難易度 2020受講生 面白さ 2020受講生 面白さ 2019受講生 面白さ 2019受講生 面白さ • 受講生の感じる難易度および面白さの傾向は大差ない • 今年度の方が若干,難しい・面白いと感じている受講生の割合が高い 肯定的な回答が 41人(64.1%) 肯定的な回答が 44人(59.5%) 難しいと回答が 56人(87.5%) 難しいと回答が 59人(79.7%)
  13. 小テスト概要 • 実施内容: • HTML, CSS, JavaScriptの実習に関する内容 • 1問1点,10点満点 •

    選択式6問,穴埋め3問,マッチング問題1問 • 実施方法: • 学習管理システムmanabaを用いた小テスト • 成績評価の対象外であることを告知 • 何も見ないで解答するよう指示 • 実施日: • 今年度: 2020年7月16日第13回授業時間中 • 昨年度: 2019年7月10日第12回授業時間中 • 実施対象: • 今年度:受講者72人,回答者59人(81.9 %) • 昨年度:受講者83人,回答者76人(91.6 %) 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 18 (問題例) 以下は現在時刻に応じた挨拶を表示するコードである. 空欄に入るべき命令は何か.適切な命令を入力せよ. <!DOCTYPE html> <html> <head> <meta charset="UTF-8"> <script> function greet(){ var date = new Date(); var hour = date.getHours(); var aisatsu = ""; if(hour >=5 && hour <= 10){ aisatsu = "おはよう!"; } else if (hour >= 11 && hour <=18){ aisatsu = "こんにちは!"; } else { aisatsu = "こんばんは!"; } document.getElementById( ).innerHTML = aisatsu; } </script> </head> <body onload="greet()"> <p id="message"></p> </body> </html>
  14. 小テスト結果 0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 相対度数 得点 2019(教室) 2020(オンライン) 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 19 2019は低い得点にのみ ピークがある単峰性分布 2020は高い得点にもピー クがある二峰性分布 2020年度は日頃の学習を 通じて学習内容を習得して いる受講生の一群が存在
  15. 結論 • オンライン授業に対して学習者が感じている利点は学修の促進お よび学修成果の向上に寄与するのか • 2019年度教室授業と2020年度オンライン授業における中間アン ケートおよび小テストの結果を比較 • 受講前の経験(高校までのプログラミング経験・PC利用頻度)に両 年度で大きな差異はない

    • 受講後の小テスト得点分布 • 2020年度は高い得点にもピークがある二峰性分布 • 日頃の学習を通じて学習内容を習得している受講生の一群が存在 • オンライン授業は日々の地道な学修を促進し,学修成果の向上に 寄与しうる 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 21
  16. 課題 • 受講生のさらなる交流を促進するオンライングループ編成 • 今回は問題の共有や教えあいができるグループもあれば,チャット自体 が活発ではないグループもあった • グループでふりかえりの授業回を設けると交流が活発になる可能性 • オンライン反転授業

    • 予習はオンデマンド,議論・相談はリアルタイムを徹底 • 講義動画や予習資料を前倒しで用意し,受講生は授業時間までに視聴 • 正規の授業時間は受講生同士の教え合いやSA・教員による介入 2020/12/12 プログラミング教育実践事例研究会 22