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データコンペティション「女性就業率から考える待機児童問題」
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d-lab 北陸大学
September 01, 2020
Education
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データコンペティション「女性就業率から考える待機児童問題」
統計データ分析コンペティション
「女性就業率から考える待機児童問題」について
d-lab 北陸大学
September 01, 2020
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Transcript
1 女性就業率から考える待機児童問題 松井涼華*1 ・高田泰成*1 ・本保里矩*1 ・松井京介*1 *1: 北陸大学経済経営学部マネジメント学科 1.研究の目的と問題の背景 近年では保育園の入園を希望して申請しているにも関わらず、定員に達したことで入園できない待機児童
についてしばしばニュースで取り上げられているのを目にする。 待機児童とは厚生労働省の定義によると 「保 育の必要性の認定( 2号又は3号) がされ、特定教育・保育施設又は特定地域型保育事業の利用の申込がされ ているが、利用していないもの」のことである。鈴木(2018)(1) によればこの定義の意味は、①自治体に許可 保育の申し込みを行い、審査に落ちてしまった子どもの数のうち、②育休を延長して対処したり、③自治体の 独自事業の無許可保育園(東京都認証保育所)に入ったり、④(求職中に許可保育の申し込みをしたが)もは や入園をあきらめて求職活動を中止し、家で育てている子どもの数を除いたものということである。現在、 共 働きや女性の社会進出が叫ばれている一方で、入園できない子どもの母親達は仕事と育児の両立で大きな問 題を抱えている。待機児童問題は前田(2017) (2) によれば、人口が急激に減りだしている日本で、今後、若 い世代が希望を持ちながら、働き、結婚し、子育てをしていける社会になれるかどうかに関わる重要な課題で あるとしている。女性がより良い社会環境で働けるよう、 待機児童は解決すべき問題の一つである。そこで本 論文では女性の就業率から待機児童問題について分析していく。 2.研究の方法と手順 初めに、教育用標準データセット(3) (以下、SSDSE とする)から待機児童数の多い都道府県を調べる。次に 待機児童数に影響を与えるであろう変数を想定し、SSDSE-2020A と総務省統計局「国勢調査」から女性の就 業率を取り上げ、女性の就業率の上昇が待機児童数の増減に関係しているか分析する。なお、分析には BI (ビ ジネス・インテリジェンス)ツールの Tableau Desktop(Ver.2020.3.0)を用いてグラフを作成した。 3.データセットの加工 使用した変数を以下の表 1 にまとめた。待機児童数については SSDSE-2020B(教育標準用データセットの 都道府県別・時系列データ)に含まれる 2015 年度の保育所等利用待機児童数から Tableau を用いてグラフを作 成した。待機児童数の推移、利用児童増加数については厚生労働省の「保育所等関連状況取りまとめ」に含ま れる 2008~2019 年度の各年の待機児童数、利用児童増加数を元に算出した。女性の就業率については総務省 統計局の「国勢調査」に含まれる 2000 年、2005 年、2010 年、2015 年のデータから女性の就業率(15~64 歳)を 元に算出した。 表1 使用したデータ データセットの変数 出典 待機児童数(人) SSDSE(2015) 待機児童数の推移(人) 保育所等関連状況取りまとめ(2008~2019) 利用児童増加数(人) 保育所等関連状況取りまとめ(2008~2019) 性の就業率(%) 国勢調査(2000) (2005) (2010) (2015)
2 4.データ分析の結果 4.1 待機児童の分析 全国の待機児童数を把握するために、SSDSE から待機児童数の多い都道府県を調べた。2015 年の待機児童 総数は 23,167 人であった。その中で待機児童数の多い上位
10 都道府県を図 1 のように色付けをした。図 1,表 2 からわかるように東京圏の待機児童数が圧倒的に多いことが見て取れる。そのほかの大阪府・兵庫県では全 体の 10%、沖縄県では全体の 11%、宮城県は全体の 4%、福岡県・熊本県では全体の 6%を占めているがやは り東京圏の待機児童数が圧倒的であると言える。 図1 待機児童数 上位 10 位都道府県(2015 年) 表 2 待機児童数と割合 上位 10 位都道府県(2015 年) 人数 割合 宮城 926 人 4% 東京・千葉・埼玉・静岡 11,337 人 49% 大阪・兵庫 2,307 人 10% 福岡・熊本 1,418 人 6% 沖縄 2,591 人 11% 合計 17,930 人 80% 4.2 仮説と検証 仮説 待機児童が問題視されるようになったのは、女性の就業率の上昇が関係している 保育園の保育が必要な人は、 家庭で子どもの面倒を見ることができない人である。 昔は男性が家計を支え、 女性は家事や育児を行うことが一般的であった。 しかし、 近年では女性の社会進出や収入の減少で女性の労働 力が必要とされている。したがって共働き世帯の増加や女性の社会進出が原因となり育児に割く時間が無く、 保育園に子どもを預ける世帯が増えたと考えた。 そこで、 利用児童増加数の推移と女性の就業率の推移を比較
3 すると比例して増減するのではないかと予想した。 検証 図 2 の待機児童数の推移(4) から 2008 年~2016 年にかけて利用児童増加数が上昇している。それに伴い待機
児童数も微かであるが増減している。図 3 から女性の就業率(15~64 歳)の推移(5) も 2000 年~2015 年にかけ て上昇している。図 2、図 3 の関連性を検証すると、女性の就業率が上昇するとともに利用児童増加数も上昇 している。したがって、女性の就業の増加は図 2、図 3 から女性の就業率の増加と利用児童増加数の比例関係 は読み取れた。 しかしながら、 待機児童数の増減についてこの結果からは因果関係を証明する結果とはならな かった。その他の要因についても検証する必要性があると感じた。 図 2 待機児童数の推移 図 3 女性の就業率(15~64 歳)の推移
4 5.結果の解釈 我々は、女性の社会進出が待機児童の増加の一つの要因であると推測した。4.2 節の仮説と検証より、女性 の就業率と保育園の利用児童増加数には比例の関係性があった。 また、 待機児童が都市部に多いのは人口が集 中しており、保育施設の需要が高まっているのに新たに認可される保育施設が少ないからであると考える。 今後、待機児童問題をゼロにするために考えられる解決策を三つ挙げる。まず、保育園の数を増やすこと だ。
これによって受け入れられる母数が増えるので待機児童が生まれなくなると考えられる。 しかし保育園の 数を増やすとはいってもそのために解決しなければならない問題も出てくる。まず保育士の数を増やさなく てはならない。 そのために補助金によって賃金を上げ、 福利厚生を充実させ保育士の数を増やす必要がある。 次に、育児休暇数を増やすことだ。これは女性のみならず男性も育児に積極的に関わることが大切だ。最後 に、 育児休暇から仕事に復帰しやすい環境を作ることだ。 仕事に復帰しづらく、職場を辞めざるをえない女性 も多く存在する。 育児環境が良くなれば、 女性が活躍できる社会を作り上げていくことができるのではないだ ろうか。 この論文を振り返り、 女性の就業率と保育園の利用児童増加数の比例関係を読み取ることができた。 残され た課題として、待機児童数の増減に関わる要因として考えられる女性の就業率だけではなく他の要因につい ても調査しなければならない。 参考文献 (1)鈴木亘: “経済学者、待機児童ゼロに挑む” 、pp.30-31、株式会社新潮社(2018) . (2)前田正子: “保育園問題 待機児童、保育士不足、建設反対運動” 、p.11、中公新書 2429(2017) (3) 独立行政法人統計センター:SSDSE(教育用標準データセット:Standardized Statistical Data Set for Education) 、https://www.nstac.go.jp/SSDSE/index.html、 (2020 年 8 月 5 日アクセス) . (4) 厚生労働省子ども家庭局 : “保育所等関連状況取りまとめ(平成 31 年4月1日)及び 「子育て安心プラン」 集計結果を公表” 、https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000176137_00009.html、 (2020 年 8 月 5 日アクセ ス) . (5) 総務省統計局: “e-Stat 国勢調査” 、 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00200521、 (2020 年 8 月 5 日アクセス) .