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知識社会マネジメント(2022)第1回_ガイダンス:未来のシステムリーダー達へ.pdf

 知識社会マネジメント(2022)第1回_ガイダンス:未来のシステムリーダー達へ.pdf

東京大学大学院技術経営戦略学専攻 2022年度講義資料

Hajime Sasaki

April 08, 2022
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Transcript

  1. 知識社会マネジメント 4月8日 第1回:ガイダンス 「未来のシステムリーダー達へ」 佐々木一 Hajime Sasaki Ph.D. 東京大学 特任准教授

    未来ビジョン研究センター Innovation management in the knowledge society 2022夏学期講義金曜2限(10:25〜12:10) TMI(東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻) および STIG(東京大学大学院横断型教育プログラム科学技術イノベーション政策の科学) WINGS-GLAFS(東京大学国際卓越大学院教育プログラム高齢社会総合研究卓越大学院) 対象
  2. Financial depth とMRF(Money Reserve Fund) Source: https://shikiho.jp/news/0/194270 待機資⾦ Financial depth

    Financial depth ある点に達すると格差の増⼤と包摂的 成⻑の減少につながる。 Martin Čihák, Ratna Sahay, in collaboration with others, 2020, “Finance and Inequality,” IMF Staff Discussion Note, SDN/20/01.
  3. 化⽯燃料は座礁資産に、と⾔われて久しい。 CO2: 2兆8,000億 t 世界中の化石燃料を 使った場合に出るCO2 CO2: 8,000億 t パリ協定で合意された

    排出できるCO2 CO2: 2兆t 座礁資産 持っていても使えない化石燃料 産業革命以前に比べて 気温上昇2℃未満にする 市場環境や社会環境が激変することにより、価値が大きく毀損する資産 (減損対象) 2022以降︓ウクライナ危機による世界の地政学リスク 化⽯燃料への回帰 ドイツ︓⽯炭⽕⼒発電所の再稼働 ⽶国︓戦略⽯油備蓄(SPR)からの1億8000万バレルの原油の放出(3/31) →むしろ化⽯燃料がESG投資先に︖
  4. 知識社会の概念の誕⽣ ・『知識産業』(フリッツ・マハルプ, 1962) •5分野(教育、研究開発、コミュニケーションメディア、情 報機器、情報サービス) ・『脱工業化社会の到来』(ダニエル・ベル, 1973) •「理論的な知識が活用され社会の中心となる。」 •「財の生産からサービスの生産に比重が変わることで知 識生産に経済活動が意向する」

    ・『断絶の時代』(P.F.ドラッカー, 1968) •「知識の生産性が経済の生産性、競争力、経済発展の 鍵」となる知識経済が知識社会の前提となる。 •生産資源となるだけでなく、知識が社会の中心となる •同時に知識社会は熾烈な競争社会になる
  5. 知識の種別と意味づけの重要性 専門知識 それぞれの分野(ディシプリン)の論理に従う知識 (知識1.0) 学際知識 課題解決にむけて複数のレイヤー、主体で知識を生成する (知識2.0) メタ知識 知識を社会的に位置づけて活用する知識 (知識3.0)

    連携を阻害する壁(あるいはチャンス) • 知識間の⾕、専⾨家間の⾕。 • ⽂系、理系、各種専⾨分野、研究者や現場作業者、企業の所 属、地域、国境などに存在する様々な壁。 • 集団に特有の知識や慣習を「つなぐ」⼈間の活動や組織を強 化する。 • 知識、規範、課題の共有は、つながりの基盤(エピステミッ ク・コミュニティ)として重要。 • DXの本質は既存の業種/部署からの開放。縦割りから横割りへ。 専⾨化された知識は、社会や組織で位置づけ他の知識と連携させることで 役⽴つ(川⼭, 2019)
  6. イノベーションプロセスのパラダイム ▪第1フェイズ(1950-1980)︓科学技術イノベーション • リニアモデル、基礎研究への投資拡⼤にもとづくイノベーション • ⼤学への政策的投資の拡⼤ • 基礎研究への投資と経済成⻑の拡⼤ ▪第2フェイズ(1980-2010)︓ナショナルイノベーションシステム •

    リニアモデルへの疑問 • ⼤学を核としたイノベーションシステム • バイドール法による⼤学研究の特許か • TLO法による⼤学から産業界への技術移転 • ⼤学発ベンチャーの促進 • イノベーションの主体を企業、⼤学、政府等。主体間の相互作⽤関係を強化していく。 ▪第3フェイズ(2010-Now)︓トランスフォーマティブイノベーション←New • 世界規模の課題に取り組むイノベーション。 • ⼈間の⾏動様式を含む社会システムレベルの変⾰。 • 政府が政策的に直接コントロールできる領域が制約される。 • ⼀般の市⺠が重要な主体 • ⾃然科学の成果のみならず⼈⽂社会学の厚み。 上⼭, 第6期科学技術基本計画へ䛾提⾔: , 科学技術基本法䛾課題 NISTEPフォーサイトシンポジウム
  7. Society 5.0 “サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空 間)を⾼度に融合させたシステムにより、経済発展と 社会的課題の解決を両⽴する、⼈間中⼼の社会” (1)「⽣活」「産業」が変わる ⾃動化︓移動・物流⾰命による⼈⼿不⾜・移動弱者の解消。 遠隔・リアルタイム化 (2)経済活動の「糧」が変わる 安定的な「エネルギー」と「ファイナンス」の供給

    デジタル時代の新基盤︓良質な「リアルデータ」 (3)「⾏政」「インフラ」が変わる アナログ⾏政からの決別 インフラ管理コスト・質の劇的改善 (4)「地域」「コミュニティ」「中⼩企業」が変わる 地域の利便性・活⼒向上 町⼯場も世界とつながる 稼げる農林⽔産業 (5)「⼈材」が変わる 3K現場をAI・ロボットが肩代わり 柔軟で多様なワークスタイルを拡⼤ →第8回講義 →第4回講義
  8. 経営⼿法(マネジメント)の3要素 $SBGU 4DJFODF "SU H. ミンツバーグ「MBAが会社を滅ぼす 正しいマネージャーの育て⽅」 (⽇経BP), 「エッセンシャル版 ミンツバーグ

    マネージャー論」(⽇経BP) (主観・ビジョン) 内省とビジョンを通じた包括的な統合 (分析・体系的知識) 情報の取得と評価を通じた体系的な分析 (経験・実務) ⾏動と実験を通じたダイナミックな学習
  9. 現実・ 課題 問題に対する姿勢 状態1:傍観者(批評家) 自分には関係ないことにしている 状態2:課題解決型 状態3:主体者(私も起点) 問題を分析し、解決する ただし、外側から対処する 問題を作り出している

    可能性があるところに立つ 問題をシステムと捉え全体を俯瞰し、 自分もその問題に加担している(一部 を担っている)という所に立ち、自分の あり方(Being)からその問題自体に変 化を与えるセルフリーダーシップ。 問題を分析し解決する。ただし、問題 は絡み合って益々高度化し、次から 次へと新たな課題が発生する 飲み屋で会社の悪口を言ったり 、うちもトップが変わってたらいい のだけどね、と言う状態 ▪旨み: 責任を取らなくていい、安心、居心地が いい、傷つかなくていい ▪代償: ・現状は何も変わらない ・今の環境を生き続ける ・成長しない ▪旨み: 達成感、成長・能力が上がる、頼られる、 承認される、自己効力感、自己価値の証 明 ▪代償: ・分断が起こる可能性がある ・どこかむなしさを感じる ・孤軍奮闘、自分だけが頑張る ・責任ばかり上がる 現実・ 課題 現実・ 課題 これらを促す事のできる⼈材 システムリーダーシップ さらに
  10. 本講義完了時点における修了者の姿 →「激動の知識社会におけるシステムリーダーとしての 最低限の素養」が備わっている状態。 具体的には • ディシプリン(分野)の垣根を越える(Lieth)ことができる。 特定の分野の知を前提に、隣接分野や社会との接点にある課題に⽬を向ける。 • (「答え」⽅よりもむしろ)洗練された「問い」⽅を⾝につけている。 解くべき問題とその背後の本質を⾒出し、枠組みの中で解消する仕組みを提起する

    「問題解決者」=プロブレムソルバーから「課題設定者」=アジェンダシェイパーへ。 • 「あの⼈達」の問題から「僕、私」の問題への視点を有している。 ⾃分がシステムの中にいることはもとより、⾃らがシステムの起点となることを理解 している。と同時にそれを気づかせることができる。 • 主張と傾聴による対話を通じて問題の本質を特定できる。 本質的な解決には価値観の異なる者同⼠の視点が不可⽋であることを理解している。 • 内省を通じて⾃らのリーダーシップを更新し続ける。
  11. 評価基準 •貢献(出席含)︓レポート= 7 ︓ (3+1) •回によっては多くの時間をグループディスカッションに費 やす場合があるため、出席の評価を重視しています。 •貢献(出席含)とは講義に関するあらゆるインタラクティ ブなやりとりを含みます。 •回によってはレポートの提出を促します。

    •最終課題 •事業計画の提出。 •任意のシステムを変⾰もしくは構築するための事業構想を 提案してください。 •要件︓講義で取り扱ったコンテンツ/視点を理解しており、 それらを適切に盛りんでいること。
  12. 本講義の⼝頭⾔語について(About the verbal language in this Lec.) •限られた時間の中で、深い議論、グループワーク、発表が前提と なるため、この空間での⼝頭⾔語を統⼀します。 •本講義中の⼝頭⾔語は⽇本語(にほんご)とします。

    (英⽂原著などに触れることもあるので、⼝頭⾔語以外については⾔及しません) •個別課題レポートに限り⽇/英いずれも可です。なお、レポートか らも当⽇の講義内容の理解度を読み取ります。 (これらの理解不⾜により、残念な成績をつけなければいけなかった履修者もいます。 昨年は⾔語について⼗分に伝わっていなかったようで多めに⾒ましたが、今年はここで明確に説明しま したので成績をつけた後にエクスキューズはしないでもらえると助かる。。。) The common verbal language in this lecture is Japanese. It pains me to say this, If you cannot understand all of the above Japanese, I cannot recommend that you take this lecture. このこうぎはにほんごですすめます。
  13. 2021年度講義フィードバック 総合評価:4.8/5.0 ・自分のしている研究活動が社会との関係の中でどのような立ち位置にあるのかを知ること ができ、ためになる講義だった。 ・元々、非常に関心のあったテーマ(ナレッジマネジメント等)だったのですが、それがここまで 体系化されている講義があることに驚き、かつ、広い視野で自分の興味関心の領域を広げる ことができた。 ・総じて非常に学びの多い講義であり、社会人学生として仕事をしていた中で、最も有用で 実践的な講義だと感じた。このような講義を用意してくださった佐々木先生と大学側には心 より感謝申し上げます。

    ・予備知識のない中で様々な講義を受けてきましたが、この講義が一番わかりやすく(スライ ドも説明も)、それでいて一番考えを深めることができました。1つ1つ丁寧に楽しみながら取 り組めました。 ・私は来年から人間科学寄りの研究者として企業に就職する予定ですが、引き続きただ研究 するだけでなく、それをどのように社会課題の解決や持続的な社会の形成と融合できるの か考え、行動に移していければいいなと思います。
  14. 担当教員︓ 佐々⽊⼀ Hajime SASAKI, PhD. 興味の範囲: • イノベーションマネジメント • 技術経営

    • 知識工学 • 意思決定学 • 予測と社会 • 技術の社会実装 航空機産業にてエンジニア(制御、電気、ソフトウェア関連)。 東京⼯業⼤学⼤学院にて修⼠(技術経営)。東京⼤学⼤学院TMIにて博⼠ 号(⼯学)。 専⾨はイノベーションマネジメントやインテリジェンス(意思決定)。 社会と技術の接点にある課題や、科学技術の実装のありかたについて関 ⼼を持つ。2018年より東京⼤学政策ビジョン研究センター准教授。東京 ⼤学未来ビジョン研究センター准教授を経て、現在同特任准教授。 最近好きな⽇本酒 ︓あべ(阿部酒造, 新潟) 最近好きなウイスキー ︓イチローズモルト(秩⽗蒸留所, 埼⽟) 最⾼におすすめのキャンプ場 ︓秘密 近年の対象技術領域: • 情報技術(AI含) • 航空機(UAV含) • 次世代エネルギー • ナノ技術 • 生体計測技術 ほか なにかあればこちらまで sasaki[at]ifi.u-tokyo.ac.jp
  15. •最初に⼊った組織(学卒) • 三菱重⼯業 名古屋航空宇宙システム製作所 • ⾶⾏制御システム設計課 • 超⾳速輸送機実験機 慣性航法システム実験 •

    先進技術実証機 ⾶⾏制御系システム実験 • F2⽀援戦闘機 ⾶⾏制御システム運⽤設計 設計仕様変更やトラブルシュートなど •もともとの興味対象 • ⾶⾏機とかロケットとか⼈⼯衛星 • 「宇宙⾶⾏⼠になれたらいいなあ」とか • ふとした疑問 「技術⼒もお⾦も知識も⼈もいるのに、製品が採⽤されなかったり技術が⽇の⽬を⾒なかったりすることがあるのか。これ はなぜだろう︖」(技術経営への興味) 「組織内で技術的知識が共有/活⽤されてなくないか︖」(知識マネジメントへの興味) 「⼤学の先⽣に気軽に話を聞ければいいのに」(産学連携への興味) • 会社をやめて修⼠(技術経営)へ@東⼯⼤ • (東⼤TMI設⽴の功労者)松島 克守先⽣が⽴ち上げた東⼤発ベンチャーでコンサル • 技術経営と社会の接点に関する研究と教育@東⼤ ←今年で12年
  16. 科学レイヤー 技術レイヤー ビジネスレイヤー 時間 産業での発展 早期特定 知識の遷移 知識ノード(論文、特許、企業) 異種ネットワークにおけるイノベーションフローモデルの研究 R.Q.:

    産業に資する可能性の高い科学技術知の遷移はそうでない科学技術知の遷移と比べて、 産業で実を結ぶ以前の段階で構造上の特徴が現れうるのではないか 1. 産業に資する科学技術知識の成り立ちを、知識の異種ネットワークにおける構造的な位置づ けの遷移パターンから抽出、 2. ネットワーク構造に基づいたイノベーションフローモデルの構築 3. モデルの普遍性と対象分野に依存する予測限界の特定 40
  17. 企業との協業プロジェクト例 データに基づく意思決定⽂化醸成の取り組みを開始 l4部⾨合同PJとして19年度に発⾜。これまでに10以上のテーマを取り扱いながら⼿法の開発・検証及びツール化を実施 イノベーション戦略室 (当時) 知的財産センター コーポレート戦略本部 経営企画部 未来戦略室 (当時)

    ア ド バ イ ザ ー 東 京 ⼤ 学 未 来 ビ ジ ョ ン 研 究 セ ン タ ー 佐 々 ⽊ ⼀ 事業戦略・シナリオ運⽤活⽤ 技術戦略・インテリジェンス強化 新規テーマ創出・知財戦略活⽤ テクノロジー本部 デジタル・AI技術C アルゴリズム開発・技術検討 21年度より、広く社内で⼿法を展開できるよう、トレーニングプログラムを設計・実施 ▪ 経営判断の質とスピードの向上に向け、未来の変化を引き起こす”兆し”を察知することが重要 ▪ ⾃動的、かつ、客観的に(バイアスなく)、いち早く”兆し”を⾃動抽出できる仕組み構築に向けた開 発を推進 ▪分析ツールMIRAI-ETを開発し運⽤、トレーニングを開始。 将来ビジョン策定と意思決定⽂化⽀援(パナソニック社) 視線データによる思考パターン分析 (トビーテクノロジー社) AI技術と社会課題のマッチング(データアーティスト社)
  18. 次回頭出し •“A personal Computer for Children of All Ages” •Alan

    Kay (Xerox Palo Alto Research Center (PARC)) •通称︓ダイナブック構想 •翻訳版︓あらゆる年齢の「⼦供たち」のためのパーソナ ルコンピュータ •https://swikis.ddo.jp/abee/74
  19. 課題 •「A personal Computer for Children of All Ages」と「Moon Speech」を読み、両者に共通する特徴を抽出し、その特

    徴を有するもう⼀つの事例をあげよ。 •A4レポート1~2枚程度。 •提出期限︓4/14(⽊) 23:55 JSTまで •提出先︓ [email protected]