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オートモビリティ~自動車と移動の社会学~

hidehigo
February 02, 2017

 オートモビリティ~自動車と移動の社会学~

某所のゼミ形式の勉強会にて。レジュメ担当したもの。

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February 02, 2017
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Transcript

  1. 背景 • 『理論・文化・社会』の特集号(2005) ◦ その編集長のフェザーストンが書いたイントロダクション • 各章のサマリであり、自動車移動という問題設定全体の広がりを見せる • ジョン・アーリ ◦

    本書の編集者の1人だが、どうやらこの領域に置いて重要人物 ◦ 社会学の移動論的転回、という潮流を提唱・リード ▪ 田中先生の参考文献での「移動」
  2. 自動車のシステム(p1) • 自動車移動の視点はまず「システム」(アーリ) ◦ オートポイエティック:自己組織、自己継続 ◦ 非線形システム:鉄道=線形システム(19世紀)と対比 • 対抗になりうる視点 ◦

    自律性(自立操縦) →あとで ◦ コミュニケーションメディア、居住空間 →あとで ◦ 冒険と自由 →あとで • 違う ◦ ポスト自動車として、鉄とガソリンに夜自動車の終焉→最後で • システムが影響するもの ◦ 渋滞 ◦ 事故、死
  3. 交通事故(p4) • 公衆衛生の問題へ ◦ WHO:予測可能かつ、防止可能な人為的問題 • 現在の対策は利用者任せになっている(p5最後) ◦ 道路の利用者に「誤りのない」行動をとるように働きかけること ◦

    →これに対してWHOは、問題を個人から「システム」へ ▪ →筆者は懐疑的な見地なよう ▪ 多分、アーリの「システム」との対比。そんな簡単じゃねーよ • 反論 ◦ 人身事故は概して不可避なものとして受け入れられている ◦ 習慣化された(ハビトゥスの一部となるような)運転コードが存在する
  4. 自動車文化とモータースケイプの多様性(p8) • 多様です。 • 生活の一部であり、様々なことに影響している(ミラー) ◦ 自動車によって人間だと感じる。そのくらい不可欠である • ナショナルアイデンティティになってる(エデンサー) •

    歴史も担ってる(コーシャ) • サブカルの断片的系列の一部(ガードマン) ◦ あらゆる種類の新しい車。ニッチ向け=ポストモダン ◦ 個性→飛び地(引きこもり)→他人の身になって考えない→礼儀正しい態度の 衰退 • 生きられた空間を、植民地化する?!(イングリス) ◦ 「生きられた」 ▪ https://oshiete.goo.ne.jp/qa/2260275.html ▪ http://m.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/q12143096477 • ガラスとコンクリートのユートピア(コルビュジュ) • 「非場所」空間が平坦になり抽象化する?(オジェ) • 高速道路の地理は空虚な空間ではない(メリマン)
  5. マルチタスクのコミュニケーション環境(p14) • 運転者のコミュニケーションのライン ◦ 他の自動車との関わり ◦ ネットを通じて ◦ CDなどの記録媒体 •

    の3つ。これをして、マルチタスク環境 • モバイルオフィス(ロリエ) • 聴覚的刺激を必要とする。サウンドは運転という経験の一部(ブル) ◦ ラジオの音は、家庭的な温かさ。 • 両義性。居住の場であり、推進体(ボードリヤール) ◦ 家のライバル。動ける(形式的自由) ◦ コントロールを行っている感覚を提供してくれる
  6. 自動車-運転者-ソフトウェアの構成=集合体(p17) • 人間と機械の区別が曖昧な複合体に(スリフト) ◦ 機械からソフトウェア制御に ◦ 知性であり、人間的である ◦ ※確かに、100%HWだったものが、形を変えずにSW化していくものは意外と ないか。

    ▪ テレビはハナから電子。コンピュータも電子 ▪ →電話機。映画館。とか • 自動車が知的になると、次は道路が知的に ◦ =自動車制御システム。 ◦ 常に監視できる • すると、境目が薄れる=テクノロジーのうちに住まう ◦ =移動しているのではなく、事物や場所を運んでくる! ◦ =テレビを「静止した乗り物」(ヴィリリオ) • ※行く(乗り物)と来る(デジタルな表示装置)が、混同されて、区別しづらく。(P18末 あたり)
  7. 自動車-運転者-ソフトウェアの構成=集合体(p17)② • 自動操縦になると、 ◦ 自動車-運転者は、 ▪ 自動オフィスの中で、画面を見ながら働く労働者、ウェブサーファー、電話 ボックスでの電話と話者 ◦ と変わらなくなる。(ベックマン)

    • 運転を自動化すると(P20) ◦ 孤立に悩まされる=運転以外のマルチタスクが主役=他の自動車や社外の物 理的環境から孤立=事故にも結びつく ▪ これホント?? • 他の運転者への信頼から、自動操縦の設計者への信頼へ(P20) ◦ しかし、全員が乗っからない。別種の信頼(他の運転者)と不信のコード(運転 ルール、様式)を用いる人々が出てくる ◦ →これも事故の原因へ
  8. コミュニカティブな自動車と運転者の2つの体(p21) • 車の運転を、身体コミュニケーションの一形態として考える。 ◦ =表現方法であり、知覚方法 • とても制限のあるコミュニケーション ◦ 信号によるコミュニケーション ▪

    コードも分からないし、インフォーマルなものまで読み取る力。 ◦ 運転者と自動車の複合体は、どちらか一つでもなく、両者がなければ存在しえ ない、構成集合体。 ◦ 期待や興奮:広告で訴求されるような ◦ 自由を象徴する、期待に同一化させられる ◦ 快楽、趣味 ◦ 怒り
  9. スピードを出すこと(p26) • カーチェイスと衝突は、日常的 ◦ 映画でたくさん ◦ レースは自動車の歴史の初期から • 興奮を生み出す2種類を両方生み出せる ◦

    受動的なもの:着実な運転時の揺られるような ◦ 積極的なもの:向こう見ずなスピード。スリル ▪ これに対する反応は、さらに2つに分かれる ▪ 不安を感じるか ▪ 怖いもの知らず:事故と密接に結びついている • 事故は悲劇。人々を魅了する • この解決法は、非人間化。
  10. まとめ(p30) • 非人間化は、ソフトウェア制御による自動操縦の自動車 ◦ でも、それは、「自律性の終焉」であって ◦ 公共交通機関への代替による自動車自体の終焉ではない ◦ 「鉄とガソリン」の自動車の終焉でもない •

    が、そんなに簡単に行かない ◦ (ここまで見てきたような視点があり多様であって)公衆衛生じゃないし、 ◦ 政府が資金投じるでもない。 ▪ 警察的国家でも多くの障害がある • つまり、大半がアンスマートな自動車のままである世界。 • その理由が前半。 ◦ 和解しがたい緊張関係
  11. 要は?(蛇足) • 移動、の概念 ◦ 非常に深い。過去たくさん考察されている ◦ 近代「旅」〜現代「定住/移動が曖昧に」 • 自動車にまつわる ◦

    とても多様な視点 ◦ 溶け込んでいる ▪ それを整理してくれている • 簡単に変わらない ◦ ソフトウェア制御は進み、自律性はなくなっていく ◦ 全部置き換わらない ▪ 抵抗となるもの ←多様な視点 • こんなに議論の対象となるほど深いテーマなんだ • 要は、ってしちゃいけないんだろうな。。 • 社会学って、「見方」を知る • 移動とエレベータ