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偶然の科学
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February 02, 2017
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偶然の科学
某所のゼミ形式の勉強会にて。レジュメ担当したもの。
hidehigo
February 02, 2017
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Transcript
新ゼミ 偶然の科学 2016/4/11肥後
知識編
最初に、ざざっとレクチャーします 参考にした本
グラフ理論から複雑ネットワークへ 1736年 オイラー 一筆書きの問題を「頂点と枝」の問題へ 18世紀後半 彩色問題 国を頂点とし、隣接を線(枝)で表すとグラフ 4色問題は長らくの難問 (グラフ理論もここから200年ほどあまり進展がなかった) 1998年 ワッツ・ストロガッツモデル ここからの約20年で、複雑ネットワークとして盛り上がる 学問領域としては
・ネットワークの特徴 ・特徴を表現できるシミュレーションモデルの考案 ・現実の事象のシミュレーション 非常に学際的な分野になっている。 統計物理、応用数学、通信分野、社会学、生物学、、
https://ja.wikipedia.org/wiki/四色定理 http://hello-ayagawa.jugem.jp/?eid=128 参考:オイラー ケーニヒスベルグの橋 参考:彩色問題
用語・概念:平均距離 すべての頂点対の距離を平均する あらゆる人がだいたい何歩でつながれるか 映画の共演者のネットワークは2.95とか Eメールする人間関係のネットワークは5~7とか ※枝を引くのに、あるなし(on/off)と、程度があるものがある。 共演あるなし(on/offかつ累積する)と、月1回メールする関係(刻々と変わる) などネットワークは複数書ける(後述) http://www.slideshare.net/yukiogasawara16547/lab120150413
ダンカンワッツ スモールワールド実験 スモールワールド実験 1960年代ミルグラム(米心理学者)。 手紙を届ける。 6次の隔たり 現代版 電子メールにて スタートとゴールが同じ国だと、距離は5。違う国だと距離は7
用語・概念:クラスター性 3人、4人の閉じた輪=クラスター 人間関係のネットワークはクラスター性が高い(クラスターが多い) 友人関係における共通の友人の三角形 内輪付き合いするから クラスターは、頑強性(ロバストネス)に効く
用語・概念:スモールワールド性 スモールワールドネットワークとは ・小さい平均距離 ・高いクラスター性 という性質を持ったネットワークのこと ワッツ・ストロガッツモデル スモールワールド性をもったネットワークを形成できるモデル ※円環じゃなくてもよい。視覚的にわかりやすくしているだけ 少しのショートカット(1%程度)が平均距離を劇的に下げる http://www.itmedia.co.jp/im/articles/0507/28/news127.html
用語・概念:スケールフリー性 次数(各頂点が持つ枝の数)の分布が [ べき則 ] に従う 指数則や正規分布よりも減りが緩やか =大きい値を持った人は意外と多い http://pixy10.org/archives/630941.html
用語・概念:スケールフリー性② パレート:富の分布はべき則に従う 大きい値を持った人は意外と多い 大きい値を持った人が平均を引き上げている。 よって大半の人は平均より下に位置する 80:20のパレートの法則はここから。 ロングテールも似たような形(次数分布ではないが) なぜ「スケール」がフリーなのか 正規分布では、平均と分散がわかれば自分の位置が分かる。cf 偏差値
そういうスケールがない。 =分布の全体をみないと自分がどこに位置するのかわからない
用語・概念:スケールフリー性③ スケールフリーなネットワークの作り方(モデル) ・成長するネットワーク ・優先的選択:次数の大きいものが新しい枝を受け取りやすい バラバシ・アルバート(BA)モデル でも、優先的選択が強すぎるとダメ。1つに集約されてしまう
用語・概念:ハブ スケールフリーなネットワークの特徴 指数則、正規分布なネットワークにはハブはない ハブを狙われると、ネットワークは弱い
現実世界のネットワーク 実世界のネットワークは、スモールワールド性(小さい平均距離と高いクラスター性)を 持っている 一方で、スケールフリーはそれほど普遍的ではない 現代版スモールワールド実験では、メールはハブを流れなかった →電子メールを送るような関係のネットワークはスケールフリーではない 電力線のネットワークも違う スケールフリー性と、スモールワールド性は両立するのか →する。そういうネットワークを作るモデルもいくつも提唱されている
おまけ 人間関係のネットワークといっても1つじゃない。 facebookのつながりやtwのフォロー関係などのネットワークは分かりやすいが 友人関係のネットワークと、血縁関係のネットワークは別 さらに、メールで連絡を取るネットワークと、電話をかけるネットワークは別 月に1回メールをする人のネットワークなどと考えてもよい。 何でつなぐかが肝心。見えるもの、見るものが変わってくる
実社会への応用①:伝染病の解析、対策 伝染病の感染のネットワークは、スモールワールド性を持っている 物理的移動手段(飛行機)=ショートカット →対策としての検疫。水際対策。 →ネットワーク的には、ショートカットを減らせば 平均距離が大きくなる=沈静化しやすい クラスター性が小さい方が広まる →高いと経路がダブる。感染力=経路を辿る力と考える SIR(S健康I病気R免疫)モデルでは、免疫にぶつかるので沈静化が早い →ネットワーク的には、隔離、行動や交友範囲を狭める=沈静化
感染症のネットワークは、しばしばスケールフリー性を持つ スーパースプレッター(≒ハブ) 輪状接種(ハブ優先策):Aさんの友人に、その友人にと接種していく。 ハブの先にはハブがいやすい
実社会への応用②:マーケティング 伝染病と共通点多い。 インフルエンサーマーケティング でもうまく行かない →のちほど。嫌儲 ハブ優先策の応用として ハブ(インフルエンサー)に直接働きかけるのではなく、 バイラルがハブに届くように数次バイラルさせる、 案)「共通の友人」を数回たどればハブに届く確率が高まるはず ハブに一度届けば、ハブからハブを介して拡散する
炎上の沈静化 スケールフリーは、ハブを狙われると弱い。バラバラにしやすい。 ハブが拡散しないような手立ては?
実社会への応用③:組織論と 基本は木構造。 平均距離は情報伝達と考えられる スケールフリー性(ハブの作り方)、平均距離を小さく(ショートカットの作り方)を仕込む #「私たちは〜」も関係
番外編:一見ネットワークに見えないけど 代謝ネットワーク 物質が酵素によって変化する。それをネットワークと見る スケールフリー性を持つネットワーク。つまりハブがある。 ハブの物質はたくさんの反応に関わっていて大変重要な物質。 さらに、原始生物と共通していたりする(進化の中での優先的選択!) http://syodokukai.exblog.jp/20790224/
番外編:一見ネットワークに見えないけど さらに、タンパク質相互作用もスケールフリーネットワークであり、 遺伝子の発現との関係も最近の研究テーマとして盛り上がっている https://www.jstage.jst.go.jp/article/biophys/51/4/51_4_182/_pdf
番外編②:黒幕のネットワーク ホモフィリー 内輪付き合い、類は友を呼ぶ。同質が結びつきやすい性質 →クラスター性を高める効果 ホモフィリーが強すぎると、自分と異質の人とは会話しなくなる →ネットワークの平均距離が大きくなってしまう →現実とそぐわない=ヘテロフィリーとのバランス ヘテロフィリー 異質の人が結びつきやすい性質 好奇心がそのモチベーション。異業種交流会など。
→平均距離を下げるショートカットの役割。 =グラノベッターの弱い紐帯 現実は、ホモフィリーとヘテロフィリーのバランスが取れている 飛ばす
番外編②:黒幕のネットワーク ネットワーク構築力の個人差 それぞれの頂点(個人)は、ネットワーク構築力の強弱がある これを頂点に重み付けする(重みが大きい=ハブになりやすい) 閾値グラフ 2つの頂点の重みの合計が閾値を越えると枝を作る 閾値グラフはスケールフリー性を持ちやすい リッチクラブ現象 ハブが中心に ハブ同士は相互に
飛ばす
番外編②:黒幕のネットワーク 閾値グラフにホモフィリーを足す ・頂点の重みの合計が閾値以上 ・重みの差が閾値2以下(重みが近しいもの同士) VIPクラブ現象 エリート同士は緊密 層を超えた直接のつながりはなくなる この中央が黒幕 飛ばす
本題:偶然の科学
循環論法 モナ・リザが世界で一番有名なのは、ほかの何よりモナ・リザ的だから ・どれかの特質で一番ということはない ・すべての特質の組み合わせで優れている、という論法は可能 しかし、最高の絵から判断基準を導きださない限り、 優れている、にならない 同様に Xが起こったのは人々がXを望んだから 例) 成功を後付けで解釈する。
分析したがる、必然性を見出したくなる
ミクロ・マクロ問題 ミクロの選択・判断・行動→マクロの現象にどうつながるか 創発(emergent) 学問の階層構造 下の階層を支配する法則から、上の階層に当てはまる法則を引き出す のはまず不可能 ex)一般相対性理論→特殊相対性理論 複数の層(や系)の相互作用を一度に考える=複雑系 ex)前述の番外編の代謝、タンパク質、遺伝子
方法論的個人主義 方法論的個人主義 あくまでミクロの「個人」で説明できる&しなければならない しかし、創発の説明ができない 代表的個人 集団(マクロ側)の行動を代弁させる 相互作用の要素がなく、ナンセンス
累積的優位 累積的優位 方法論的個人主義、代表的個人にない相互作用を取り込む 人気になると、さらに人気になる(=ハブ) 同じ世界で繰り返したとしても、結果が変わりうる 複数の並行世界を作った実験 インターネット、コンピュータ、などにより可能になってきた →実験社会学
少数の特別な人々 独自の特質や条件から説明できそうにないとき、 (=循環論法での説明でも通用しない場合) 「少数の重要な人物や有力者がその結果をもたらしたのだ」 →4章へ
4章冒頭 スモールワールド ミルグラムの実験ではハブがいた ワッツのスモールワールド実験では、 6次の隔たりは確認できたが、ハブ(スケールフリー性)はなかった →複雑かつ平等 (時代により変化した?ネットワークが別?)
スーパースプレッター、インフルエンサー スーパースプレッター、インフルエンサー 少数者の法則=そう思いたがっている でもそれほど影響力ある?副次効果まで足してないか? 現に誰がインフルエンサーか区別できてないでしょ?
偶然の重要人物 偶然の重要人物 仮説 ・ほかの人より影響力がある人がいること ・感染の過程で大きく強められ、爆発的な社会的伝染を産む 発見 ・インフルエンサーの強さはせいぜい3倍 ・重要人物は、タイミングと偶然で決まる ツイートの分析 成功事例だけを分析するのは間違い
7400万本のうち1万リツイートは1〜2本 特質を測定できなかったわけではない 不確定性、個々の発生源が関与できない要因に大きく左右される これらは、少数者の法則を否定している(疑問を投げかける)
まとめ 結構、ぶんなげている? 複雑ネットワークを研究し、 偶然の重要人物を見出し、 歴史は繰り返さない(それほど制御できない要因が大きい)ことを見出し 結局偶然じゃん。不確定性じゃん。 でもそれを科学しようよ、対処しようよ、という主張
まとめ&論点 結構、ぶんなげている? 複雑ネットワークを研究し、 偶然の重要人物を見出し、 歴史は繰り返さない(それほど制御できない要因が大きい)ことを見出し 結局偶然じゃん。不確定性じゃん。 でもそれを科学しようよ、対処しようよ、という主張 論点 ・制御しようとする努力。それがハマった/裏目った事例をもとに話す ・ネガティブケースである炎上に対する心得
さらに学習を進めたい