科学界は、破壊的イノベーションの減少、研究開発コストの増大、研究の再現性の問題といった深刻な課題に直面している。これらの状況を背景に、既存の科学のあり方を見直し、その社会的構造自体を改革しようとする「メタサイエンス・ムーブメント」が台頭している。この動きは、インパクトを重視する民間財団や、金融・IT分野で成功した起業家による積極的な資金提供に支えられている。
このムーブメントの中から、重点研究組織(FRO)、民間型高等研究計画局(PARPA)、グラント系自律分散型組織(DAO)といった、新たな科学運営モデルが次々と生まれている。これらのモデルは、基礎研究の成果を商業化へつなぐ過程で生じる資金的・構造的な障壁、いわゆる「技術移転の死の谷」を克服するための、それぞれ独自のアプローチを提示している。
本報告書は、これらの新たな科学運営モデルを、政府による成功事例である米国の中小企業技術革新研究プログラム(SBIR/STTR)制度と比較し、「死の谷」の観点から各モデルの構造、利点、そして課題を体系的に整理・分析する。これにより、現代の科学エコシステムで起きている地殻変動の理解を深め、今後の研究開発支援のあり方を考察するための基盤を提供する。