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復号できなくなると怖いので、AWS KMSキーの削除を「面倒」にしてみた
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iwamot
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July 21, 2025
Technology
3
30
復号できなくなると怖いので、AWS KMSキーの削除を「面倒」にしてみた
Cloud Operator Days Tokyo 2025
https://cloudopsdays.com/
iwamot
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July 21, 2025
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Transcript
復号できなくなると怖いので、 AWS KMSキーの削除を「面倒」にしてみた Cloud Operator Days Tokyo 2025 https://cloudopsdays.com/ ENECHANGE株式会社
VPoT兼CTO室マネージャー 岩本隆史
自己紹介 岩本 隆史 (@iwamot) 勤務先:ENECHANGE株式会社 (2021/7~) 全社的な技術戦略の策定・推進 事業部への技術支援のリード AWS Community
Builder (2024/3~) カテゴリ:Cloud Operations
こんな話です AWS KMSキーの削除が怖くなった 削除を「面倒」にする案がひらめいた 実装してみた 安心できた
AWS KMSキーの削除が怖くなった
2025/2/3:不要となったAWS環境の削除を実施 1月末で提供終了したサービス 事業部からの削除依頼を受けた RDS DBインスタンスの最終スナップショットを念のため作成 RDS、ECS、KMSキーなどのリソースを terraform destroy
2025/2/14:このままだと復号不能になると気づく 最終スナップショットがKMSキーで暗号化されていることに気づいた 暗号化したDBインスタンスでは当然の挙動 KMSキーを削除すると、最終スナップショットが復号不能に KMSキーまで terraform destroy したのは浅はかだった ありがたいことに、KMSキーは30日間の削除待機期間に入っていた 危険な操作なので、デフォルトでそうなる
2025/2/17:KMSキーの削除をキャンセル マネジメントコンソールでキャンセルを実施 terraform import でステートを戻し、tfファイルを復活 リポジトリのREADMEに意図を記載 必要な場合にRDSのスナップショットを復元できるよう、KMSキーのみ残し ています。
「うっかり削除」を防ぐ仕組みがないと怖い 待機期間があるとはいえ、気づかずに削除してしまうリスクがある レビューで確実に防げるとも限らない
削除を「面倒」にする案がひらめいた
うっかり削除を防ぎたいなら「面倒」にすればよい 本当に不要なキーもあるので、一律に削除を禁ずるのはNG 防ぎたいのは「うっかり削除」 目指すべきは「ちゃんと考えれば削除できる」状態
特定のタグを付けると削除できる仕組みはどうか deletable = true タグが付いているキーのみ削除を許可 削除が拒否されたらSlackに通知 deletable = true タグが付いているか確認するよう促す
(権限不足による拒否かもしれないため「付けろ」とまでは言わない) 削除が待機されてもSlackに通知 復号できなくなっても問題ないか、削除予定日時までに確認するよう促す
タグでの制御はRCPで実装できそう RCP (Resource Control Policy) AWS Organizationsで使えるポリシーの一種 組織内のリソースへのアクセス条件を一元的に絞れる KMSもサポート対象 S3、STS、SQS、Secrets
Managerも(2025年6月現在)
削除拒否/待機の検知はEventBridgeで可能そう ScheduleKeyDeletion APIの呼び出しをEventBridgeルールで検知 エラーが含まれる = 拒否イベント エラーが含まれない = 待機イベント 前提:CloudTrailで証跡のログ記録が有効になっていること
EventBridge → SNS → Amazon Q Developer → Slackの流れで通知 Amazon Q Developer:旧称 AWS Chatbot
実装してみた
3つのTerraformモジュール Hubモジュール :メインリージョンの拒否・待機イベントを通知 Spokeモジュール:サブリージョンの拒否・待機イベントを通知 RCPモジュール :ポリシーの作成~アタッチ
Hubモジュール module "hub" { source = "..." sns_topic_arn = aws_sns_topic.this.arn
} 拒否・待機イベントを検知するEventBridgeルールを作成 ルールのターゲットとして、指定のSNSトピックを設定 ターゲットにイベントを送信するIAMロールを作成 「SNS → Amazon Q Developer → Slack」には既存モジュールを利用
Spokeモジュール module "spoke_us_east_1" { source = "..." providers = {
aws = aws.us_east_1 } # サブリージョン hub_event_bus_arn = module.hub.event_bus.arn hub_iam_role_arn = module.hub.iam_role.arn hub_region_name = module.hub.region.name # メインリージョン } 拒否・待機イベントを検知するEventBridgeルールを作成(Hubと同じ) ルールのターゲットとして、Hubのイベントバスを設定 (SNSトピックを変えたくなっても、Hub側を直すだけで済む) ターゲットにイベントを送信するIAMロールとして、Hubのロールを流用 hub_region_name は、Hubと同じリージョンへのデプロイ防止に利用
RCPモジュール module "rcp" { source = "..." target_ids = [
local.accounts.prod.id ] } deletable = true タグ未設定のキー削除を禁じるRCPを作成 指定のAWSアカウント(あるいはOU)にアタッチ
安心できた
2025/4/24:変更アナウンス
2025/4/24:全organizationで設定完了 ENECHANGEでは複数のorganizationを運用中 アカウントの追加はほぼないため、Terraformで普通に構築 追加が多ければ、CloudFormation StackSetsによる自動デプロイが楽そう
2025/4/28:初めての拒否通知
2025/4/28:初めての待機通知 → これで安心
️ まとめ
KMSキーの削除を「面倒」にしたら安心できた うっかり削除すると、復号できなくなるので怖い 削除を「面倒」にする案がひらめき、実装した 「うっかり」は防ぎつつ「ちゃんと考えれば削除できる」状態が実現できた 学び:危険な操作を「面倒」にする案、広く応用できそう 何かないか考えてみよう