Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
復号できなくなると怖いので、AWS KMSキーの削除を「面倒」にしてみた
Search
iwamot
PRO
July 21, 2025
Technology
3
81
復号できなくなると怖いので、AWS KMSキーの削除を「面倒」にしてみた
Cloud Operator Days Tokyo 2025
https://cloudopsdays.com/
iwamot
PRO
July 21, 2025
Tweet
Share
More Decks by iwamot
See All by iwamot
これがLambdaレス時代のChatOpsだ!実例で学ぶAmazon Q Developerカスタムアクション活用法
iwamot
PRO
8
1.3k
Developer Certificate of Origin、よさそう
iwamot
PRO
0
20
復号できなくなると怖いので、AWS KMSキーの削除を「面倒」にしてみた CODT 2025 クロージングイベント版
iwamot
PRO
1
97
IPA&AWSダブル全冠が明かす、人生を変えた勉強法のすべて
iwamot
PRO
14
11k
2年でここまで成長!AWSで育てたAI Slack botの軌跡
iwamot
PRO
4
1.1k
名単体テスト 禁断の傀儡(モック)
iwamot
PRO
1
560
クォータ監視、AWS Organizations環境でも楽勝です✌️
iwamot
PRO
2
570
Cline、めっちゃ便利、お金が飛ぶ💸
iwamot
PRO
22
22k
開発組織を進化させる!AWSで実践するチームトポロジー
iwamot
PRO
3
1.4k
Other Decks in Technology
See All in Technology
LINEヤフー バックエンド組織・体制の紹介
lycorptech_jp
PRO
0
830
AI エージェントを評価するための温故知新と Spec Driven Evaluation
icoxfog417
PRO
1
420
プロダクト負債と歩む持続可能なサービスを育てるための挑戦
sansantech
PRO
1
590
大規模プロダクトで実践するAI活用の仕組みづくり
k1tikurisu
4
1.7k
持続可能なアクセシビリティ開発
azukiazusa1
6
280
未回答質問の回答一覧 / 開発をリードする品質保証 QAエンジニアと開発者の未来を考える-Findy Online Conference -
findy_eventslides
0
340
JavaScript パーサーに using 対応をする過程で与えたエコシステムへの影響
baseballyama
1
110
重厚長大企業で、顧客価値をスケールさせるためのプロダクトづくりとプロダクト開発チームづくりの裏側 / Developers X Summit 2025
mongolyy
0
160
ある編集者のこれまでとこれから —— 開発者コミュニティと歩んだ四半世紀
inao
5
3.5k
PostgreSQL で列データ”ファイル”を利用する ~Arrow/Parquet を統合したデータベースの作成~
kaigai
0
140
ABEJA FIRST GUIDE for Software Engineers
abeja
0
3.2k
Building AI Applications with Java, LLMs, and Spring AI
thomasvitale
1
220
Featured
See All Featured
Making Projects Easy
brettharned
120
6.5k
Being A Developer After 40
akosma
91
590k
For a Future-Friendly Web
brad_frost
180
10k
Fireside Chat
paigeccino
41
3.7k
GraphQLとの向き合い方2022年版
quramy
49
14k
[RailsConf 2023 Opening Keynote] The Magic of Rails
eileencodes
31
9.7k
Raft: Consensus for Rubyists
vanstee
140
7.2k
The World Runs on Bad Software
bkeepers
PRO
72
12k
Chrome DevTools: State of the Union 2024 - Debugging React & Beyond
addyosmani
9
980
Understanding Cognitive Biases in Performance Measurement
bluesmoon
31
2.7k
Bootstrapping a Software Product
garrettdimon
PRO
307
110k
Building Applications with DynamoDB
mza
96
6.8k
Transcript
復号できなくなると怖いので、 AWS KMSキーの削除を「面倒」にしてみた Cloud Operator Days Tokyo 2025 https://cloudopsdays.com/ ENECHANGE株式会社
VPoT兼CTO室マネージャー 岩本隆史
自己紹介 岩本 隆史 (@iwamot) 勤務先:ENECHANGE株式会社 (2021/7~) 全社的な技術戦略の策定・推進 事業部への技術支援のリード AWS Community
Builder (2024/3~) カテゴリ:Cloud Operations
こんな話です AWS KMSキーの削除が怖くなった 削除を「面倒」にする案がひらめいた 実装してみた 安心できた
AWS KMSキーの削除が怖くなった
2025/2/3:不要となったAWS環境の削除を実施 1月末で提供終了したサービス 事業部からの削除依頼を受けた RDS DBインスタンスの最終スナップショットを念のため作成 RDS、ECS、KMSキーなどのリソースを terraform destroy
2025/2/14:このままだと復号不能になると気づく 最終スナップショットがKMSキーで暗号化されていることに気づいた 暗号化したDBインスタンスでは当然の挙動 KMSキーを削除すると、最終スナップショットが復号不能に KMSキーまで terraform destroy したのは浅はかだった ありがたいことに、KMSキーは30日間の削除待機期間に入っていた 危険な操作なので、デフォルトでそうなる
2025/2/17:KMSキーの削除をキャンセル マネジメントコンソールでキャンセルを実施 terraform import でステートを戻し、tfファイルを復活 リポジトリのREADMEに意図を記載 必要な場合にRDSのスナップショットを復元できるよう、KMSキーのみ残し ています。
「うっかり削除」を防ぐ仕組みがないと怖い 待機期間があるとはいえ、気づかずに削除してしまうリスクがある レビューで確実に防げるとも限らない
削除を「面倒」にする案がひらめいた
うっかり削除を防ぎたいなら「面倒」にすればよい 本当に不要なキーもあるので、一律に削除を禁ずるのはNG 防ぎたいのは「うっかり削除」 目指すべきは「ちゃんと考えれば削除できる」状態
特定のタグを付けると削除できる仕組みはどうか deletable = true タグが付いているキーのみ削除を許可 削除が拒否されたらSlackに通知 deletable = true タグが付いているか確認するよう促す
(権限不足による拒否かもしれないため「付けろ」とまでは言わない) 削除が待機されてもSlackに通知 復号できなくなっても問題ないか、削除予定日時までに確認するよう促す
タグでの制御はRCPで実装できそう RCP (Resource Control Policy) AWS Organizationsで使えるポリシーの一種 組織内のリソースへのアクセス条件を一元的に絞れる KMSもサポート対象 S3、STS、SQS、Secrets
Managerも(2025年6月現在)
削除拒否/待機の検知はEventBridgeで可能そう ScheduleKeyDeletion APIの呼び出しをEventBridgeルールで検知 エラーが含まれる = 拒否イベント エラーが含まれない = 待機イベント 前提:CloudTrailで証跡のログ記録が有効になっていること
EventBridge → SNS → Amazon Q Developer → Slackの流れで通知 Amazon Q Developer:旧称 AWS Chatbot
実装してみた
3つのTerraformモジュール Hubモジュール :メインリージョンの拒否・待機イベントを通知 Spokeモジュール:サブリージョンの拒否・待機イベントを通知 RCPモジュール :ポリシーの作成~アタッチ
Hubモジュール module "hub" { source = "..." sns_topic_arn = aws_sns_topic.this.arn
} 拒否・待機イベントを検知するEventBridgeルールを作成 ルールのターゲットとして、指定のSNSトピックを設定 ターゲットにイベントを送信するIAMロールを作成 「SNS → Amazon Q Developer → Slack」には既存モジュールを利用
Spokeモジュール module "spoke_us_east_1" { source = "..." providers = {
aws = aws.us_east_1 } # サブリージョン hub_event_bus_arn = module.hub.event_bus.arn hub_iam_role_arn = module.hub.iam_role.arn hub_region_name = module.hub.region.name # メインリージョン } 拒否・待機イベントを検知するEventBridgeルールを作成(Hubと同じ) ルールのターゲットとして、Hubのイベントバスを設定 (SNSトピックを変えたくなっても、Hub側を直すだけで済む) ターゲットにイベントを送信するIAMロールとして、Hubのロールを流用 hub_region_name は、Hubと同じリージョンへのデプロイ防止に利用
RCPモジュール module "rcp" { source = "..." target_ids = [
local.accounts.prod.id ] } deletable = true タグ未設定のキー削除を禁じるRCPを作成 指定のAWSアカウント(あるいはOU)にアタッチ
安心できた
2025/4/24:変更アナウンス
2025/4/24:全organizationで設定完了 ENECHANGEでは複数のorganizationを運用中 アカウントの追加はほぼないため、Terraformで普通に構築 追加が多ければ、CloudFormation StackSetsによる自動デプロイが楽そう
2025/4/28:初めての拒否通知
2025/4/28:初めての待機通知 → これで安心
️ まとめ
KMSキーの削除を「面倒」にしたら安心できた うっかり削除すると、復号できなくなるので怖い 削除を「面倒」にする案がひらめき、実装した 「うっかり」は防ぎつつ「ちゃんと考えれば削除できる」状態が実現できた 学び:危険な操作を「面倒」にする案、広く応用できそう 何かないか考えてみよう