Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
滑空スポーツ講習会2021 航空安全講習会 第1回 グライダー事故を読み解く(1) / jsa safety seminar 2021 accidentreview part1
Search
JSA seminar
December 12, 2021
Technology
0
460
滑空スポーツ講習会2021 航空安全講習会 第1回 グライダー事故を読み解く(1) / jsa safety seminar 2021 accidentreview part1
公益社団法人日本滑空協会
2021/12/11
講師 (公社)滝川スカイスポーツ振興協会 日口裕二
JSA seminar
December 12, 2021
Tweet
Share
More Decks by JSA seminar
See All by JSA seminar
滑空スポーツ講習会2023 航空安全講習会 第4回 日常整備に役立ちそうな雑情報 / JSA Safety Seminar 2023 glider maintenance
jsaseminar
0
100
滑空スポーツ講習会2023 航空安全講習会 第2回 離陸のクリティカルワンミニッツに備える / JSA Safety Seminar 2023 Critical 11 minutes
jsaseminar
0
390
滑空スポーツ講習会2023 航空安全講習会 第2回 離陸のクリティカルワンミニッツに備える」 滑空事故統計 / JSA Safety Seminar 2023 Critical 11 minutes accidents summary
jsaseminar
0
45
滑空スポーツ講習会2023 滑空記章試験員講習会 第1回 / JSA Badge Examiner Seminar 2023
jsaseminar
0
1.3k
滑空スポーツ講習会2023 航空安全講習会 第1回 日本滑空協会とは / JSA Seminar 2023 whoami
jsaseminar
0
690
滑空スポーツ講習会2023 航空安全講習会 第1回 最近の変更点ほか / JSA Safety Seminar 2023 Tokuteishinsa
jsaseminar
0
700
滑空スポーツ講習会2023 航空安全講習会 第1回 熟練者のエラーマネジメント(状況認識スキルからの考察)/ JSA Safety Seminar 2023 Error management for experts
jsaseminar
0
320
滑空スポーツ講習会2022(実技講習)EMFT学科講習資料/JSA EMFT 2022
jsaseminar
0
580
滑空スポーツ講習会2022(実技講習)EMFT講習 実施要領/JSA EMFT 2022 procedure
jsaseminar
0
430
Other Decks in Technology
See All in Technology
事業部を超えた 開発生産性向上に挑戦する
kentakozuka
2
110
OCI Data Science Service 製品概要
oracle4engineer
PRO
0
110
都政新報2024年3月1日号
govtechtokyo
0
150
fujiwara-ware OSSをひたすら紹介する/ya8-2024
fujiwara3
7
370
10年モノのレガシーPHPアプリケーションを移植しきるまでの泥臭くも長い軌跡 / legacy-php-app-migration
toshimaru
0
680
『LeanとDevOpsの科学』をきちんと解読する 〜Four Keys だけじゃ絶対もったいなくなる話〜
bonotake
27
6.5k
layerx-0-to-1-product-development-in-compound-startups
shnjtk
1
510
「わたしたちのコード」を安定させるためにフレームワークとの距離を保つ / phperkaigi2024
blue_goheimochi
5
790
イベント駆動コンテンツ (a.k.a Webアプリケーションの効率を再定義するBEAR.Sundayの分散キャッシングフレームワーク)
koriym
4
1.6k
Tohoku.Tech #1 「Cursorを使ったRaspberry Piの開発」by ねこまた
jun2882
0
130
SREのキャリア、 あるいは生態 / #ya8
cohalz
10
1k
AIエージェントが変えるソフトウェアのパラダイム
masahiro_nishimi
0
200
Featured
See All Featured
A designer walks into a library…
pauljervisheath
199
23k
Building Adaptive Systems
keathley
29
1.8k
[RailsConf 2023] Rails as a piece of cake
palkan
21
3.8k
How GitHub (no longer) Works
holman
301
140k
Documentation Writing (for coders)
carmenintech
59
3.7k
From Idea to $5000 a Month in 5 Months
shpigford
376
45k
Into the Great Unknown - MozCon
thekraken
10
810
Building Flexible Design Systems
yeseniaperezcruz
317
37k
Creating an realtime collaboration tool: Agile Flush - .NET Oxford
marcduiker
11
1.4k
Making Projects Easy
brettharned
106
5.4k
Building Your Own Lightsaber
phodgson
97
5.6k
Making the Leap to Tech Lead
cromwellryan
122
8.4k
Transcript
(公社)滝川スカイスポーツ振興協会 チーフインストラクター 日口 裕二 JSA航空安全講習会 2021年12月11日(土) 14:10~15:25
自己紹介 • 1980年 北大航空部でグライダーを始める • 1985年 教証取得 • 1987年 滝川で飛び始める
• 1989年 北海道滝川西高等学校に赴任 • 1993年 滝川市スカイスポーツ課に配属 以降、スカイスポーツのま ちづくりに邁進 運航主任、主任教官を歴任 • 2021年 滝川市役所を定年退職 現職に至る JSA常務理事として、クラブ間連携や講習会事業を担当 ※著書に、『雲と風』、ソアリングエンジンシリーズなど 2
多くの仲間を失った・・・ • 低空スピン • ウィンチ曳航中のストール/スピン • ハイポキシア&空中分解 • 空中衝突 •
その他、友人知人は数知れず(洋の東西を問わず) ※自動車事故で亡くなった友人は一人もいない・・・Bruno Gantenbrink 3
2回にわたってお話しすること ・なぜ、どのようにグライダー事故は起こるのか ・どのようにグライダー事故を防ぐのか <本日の聴講のルール> 質問があるようでしたら、チャットに書き込んで ください。 私が話している最中でも、進行役が適時紹介し、 それにお答えさせていただきます。 双方向にディスカッションできればと思っていま すので、よろしくお願いいたします。
4
事故解析の目的 結論を一つにまとめることではなく、そこから派生され る要因のえぐり出しと、そこから導き出される教訓を得、 自分たちの行動(再発防止のために何をしなければな らないのか)につなげること 5
一つの事故を振り返ると・・・ • Errorの繰り返しが事故につながっている (Errorを誘因するThreat) • 事故の連鎖に巻き込まれている 6
何が悪いのでしょう? https://www.youtube.com/watch?v=9SoUmWYRLhE (解説) https://www.youtube.com/watch?v=NpyqiAp2TFY 7
航空事故調査報告書等の解読 運輸安全委員会HP https://www.mlit.go.jp/jtsb/airmenu.html BGA Accident Summary https://members.gliding.co.uk/library/accident-and-incident- summaries/ 8
原因の背後にある『何か』を探る • 飛行経験(飛行時間、経験機種、エマージェンシートレーニング、など) • カレンシー • 飛行環境(ウェザー、不慣れな場所、初めてのO/Lなど) • パイロットのタイプ(慌てやすい、反射的、など) ※直接原因と間接原因
9
事例1. 2015年5月 北海道樺戸郡浦臼町 Discus bT墜落事故 <事故の概要> 個人所属シェンプ・ヒルト式ディスカスbT型JA20TDは、平成27年5 月 30日(土)、航法訓練のため、たきかわスカイパークから飛行機曳航により発航し、 西南西約13kmの高度約5,300ftで曳航機から離脱した。12時36分、同機は、
たき かわスカイパークの南西約11km、標高約85mの牧草地に墜落した。 同機には、機長 のみが搭乗していたが、死亡した。 同機は大破したが、火災は発生しなかった。 <原因> 本事故は、機長が牧草地に場外着陸を試みた際、直線の最終進入経路を確 保できな いまま、低高度において左旋回中に高度が大きく低下したため、墜落したもの と考えられる。 低高度において左旋回中に高度が大きく低下したのは、高度に余裕が なくなっていたため、機長が左旋回しつつ機首上げを行い対気速度が減少したこと、又 は、旋回中に操舵の調和が取れず左に滑り落ちたことによる可能性が考えられる。 https://www.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/rep-acci/AA2016-5-4-JA20TD.pdf 10
11
12
<背景> • 「Takikawa Glider Competition Meeting」開催中 • 当該パイロットはAUSでの経験は豊富だったが、ウェーブを 初め山岳エリアの飛行に不慣れだった •
オーストラリアでSL機に慣れていたが、Turbo機は今回が初 めての運用だった • 期間中、リーダー機やスタッフに比べて必ずしもうまく飛べ ていなかった • 当日は難しいウェーブ・ローカル・デーだった(当日、指定外 の場所にO/Lした機体もあった) • いわゆる、優柔不断なパイロットではない 13
事故が起こったら・・・情報の収集と解析 <報道から> ・状況写真 ・基本情報 <関係者から> ・目撃者情報 • ウェザー • 機材
• 飛行概要 • パイロット(飛行キャリア、ほか) (北海道新聞社ヘリから) 14
正しく恐れる・・・ベテラン/アマチュアは無関係 心の萎縮(漠然とした不安)をどのように抑えるか? →できるだけ早期にフライトする(”自信”の再積み上げ) →基本に立ち返る 15
外国における事故解析と対応 <NZで垣間見た事例> NZ Grand Prix中にGERの国内チャンピオンが墜落 ・CAA(NZの航空局)がGNZ(NZ滑空協会)の協力を得て事故調査 ・現地にいたGERの世界チャンピオンが事故の翌日、ヘリで現場に急行 ・その日のうちに、事故原因を究明 「山岳地帯の地面近く、数mの高さの凸地に水平状態で激突。おそらく スピンに入ったのだろう。かろうじて回復したものの、高度が足りなかっ
た…。」 ウェザーは競技向き、2機に追尾されていた。 16
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 最近20年間のグライダー事故 事故件数 死亡者数 17
事故対策(どのように事故を防ぐのか) <パイロットとして> TEMの実践 Threatの認識 Errorの連鎖を止める <組織として> FMS (Flight Management System)の構築、実践
(続く) 18