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滑空スポーツ講習会2023 航空安全講習会 第1回  熟練者のエラーマネジメント(状況認識スキ...

JSA seminar
December 25, 2023

滑空スポーツ講習会2023 航空安全講習会 第1回  熟練者のエラーマネジメント(状況認識スキルからの考察)/ JSA Safety Seminar 2023 Error management for experts

公益社団法人日本滑空協会
2023/12/24
講師 日本ヒューマンファクター研究所 松本茂治

JSA seminar

December 25, 2023
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Transcript

  1. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 1 2023 年度 航空安全講習会 ( 主 催 滑

    空 協 会 ) 熟練者のエラーマネジメント (状況認識スキルからの考察)
  2. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 2 松 本 茂 治 71歳 主 な

    経 歴 等 ・元 朝日航洋(株)にて操縦士及び CRM,AMRM,防災航空隊等のCRM 教官 ・元 JAPAにてTEM/CRMセミナーの作成・講師、航空安全講習会等の講師 ・元 VOICES(ATEC)において管制・運航(小型機)に関する分析担当者 ・元 日本ヒューマンファクター研究所所員としてHF関連講師等 ・現在 SRC研究所所員としてHF関連講師等 主なCRM・ヒューマンファクター訓練に関する受講経験 ・ANA CRM訓練(CPAC) ・ANAビジネスソリューション㈱ ヒューマンファクター対策研修 ・米国 University of Southern California Threat & Error Management Development Course ・米国 0regon Aero,Inc. CRM/AMRM Training ・中央労働災害防止協会 危険予知訓練 等 講 演 実 績 ・主は一般企業(電力,鉄鋼,石油,船舶),航空業界(会社,防災,ドクターヘリ)等
  3. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 8 ・苦労せずに実施できる ・巧みに実施できる ・不必要な仕事はやらない為 ・その仕事だけに興味がある為 ⇒ 割り込みに弱い ⇒

    驕りが生じる ⇒ 気配りが悪い ⇒ 視野狭窄になる ・慣れ親しんだ思考・行動を過信 ⇒ 故意の違反をする 熟練者の陥りやすい行動特性(2) 周囲の人達 ⇒ これらを心にとめて、疑問形・依頼形対応 熟練者本人 ⇒ 指摘に対し、先ず受け入れる意識、 感 謝 それは、熟練者のエラーの特徴からも言えます
  4. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 9 (スポラディック・エラー) えっ!!、あの人が ?! 熟練者が起こしやすいエラー 豊富な経験と知識 + 信頼感

    等 ⇒ 助言を受けられにくい環境 事故・インシデント発生の可能性 1人で防ぐ事は困難な場合あり 熟練者のエラーの特徴
  5. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 10 人的要素 機械的要素 原 因 % 年 代

    事故の歴史とヒューマンファクター 事故原因の推移を見ると・・・ 出典:ICAO事故防止マニュアル 技量不足→ 訓練の強化 ベテランの大事故多数 操縦の上手下手ではない→ ノンテクニカルスキルの要因が残る
  6. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 11 1-3.ヒューマンエラー 達成しようとした目標から、 意図とは異なって 逸脱することとなった 期待に反した人間の行動 * 自然な人間行動の一部

    * その原因は愛すべき人間の一面、 または能力の限界 * 完全になくすことはできない (人間の脳にエラーというモードはない) ヒューマンエラーとは
  7. 脳の情報処理に存在するヒューマンエラーの発生要因 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 12 作業記憶 選 択 的 注 意

    短期記憶 判断・決心 行 為 長期記憶 感 覚 貯 蔵 外 部 へ の 入 力 外 部 か ら の 入 力 無照合 思い出せない 誤った照合 やり忘れ やりそこない 習慣的行為 操作時間不足 やりすぎ 記憶なし 誤った記憶 忘却 偏見 先入観処理 選択間違い フィードバック ニュートラルネットワーク処理システム (無意識活動) 判断・決心しない 診断違い(賭け的決心) 決心遅れ 早すぎる決心 知覚なし(見落とし・聞き落 とし)知覚困難、錯誤(見間 違い・聞き間違い) 意識水準 (黒田モデル)
  8. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 13 • ヒューマンエラーは普遍的なものであり、避けら れないものでもある。 • エラーは本質的に善悪で評価されるものではない。 • 最良の人間でも最悪の過ちをすることがある。

    • 人間は意図せずに取った行動を簡単に避けること が出来ない。 • エラーは結果であり原因ではない。 • エラーの多くは繰り返し発生している。 • 安全上の重大なエラーは組織システムの全ての レベルで起こる可能性がある。 James Reason ヒューマンエラーの本質
  9. 2ー1状況認識のスキル 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 15 状況の把握 予 測 共 有 先入観を除いた客観的な

    把握とその評価に心がける 最悪の場合、どのような事 態に至るかも予測する習慣 づけが必要 現状の把握・将来予測を チーム内で伝えあい、警戒 心を同一レベルに保持 状況認識 周りの環境の認識 即ち自分のまわりで何が起 こっているかを知ること
  10. 状況認識とは、 自己が置かれた状況や、周囲の環境を正しく 認識することによって・ ・ ・ •私は‐---だと判っていなかった •私は‐---ことに気が付かなかった •私は‐---には意識が回らなかった •私は‐---が起こった時、非常に驚いた •私はそのとき‐---をしようとして忙しかった

    •私は‐---であると思い込んでいた 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 17 起こりがちなこと ・ 自分や他のメンバーによる誤った判断 行動を防ぐとともに ・ 機械系の誤作動などを 速やかに発見するためのスキル
  11. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 18 2-2 状況の把握 ・望ましい問題点把握の要領 理想な状態と現状のギャップ から把握 M-SHELモデル 中心のⅬと周辺の

    他の要素から把握 ・「思い込み」「だろう」が 多々発生することを意識 ・ あらゆる場面で、正しかった か確認する意識
  12. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 23 経験則で判断 ⇒ 認知バイアス ・アンカリング ・確証バイアス 先入観・思い込みに基づき、「自分に都合のいい情報」、「先 入観を裏付ける情報」だけ集め、反する情報は軽視、または探

    そうとせず、自己の先入観等を補強 ⇒ 振り返りに制約 ある事象の評価において、最初に注目した特定の情報を重視 してしまう いったんある決定をすると、その後に得た情報は、決心した内 容を有利にするように解釈をする ⇒ 振り返りに制約 ・追認バイアス 脳の精神的疲労を回避するため、多少の異常事態(問題点)が あっても、正常の範囲内としてとらえ、平静に保とうとする働き ・正常性(恒常性)バイアス
  13. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 25 2-4 状況の把握・予測は 常にエラーと共存 何かおかしい どうなってるんだ 悪くなり そうだ

    なんとか しなきゃ 「状況認識スキル」と「コミュニケーション スキル」での エラー発生が大 の段階のエラー;約80% ;約17% ;約3% 行動特性・ 能力と限界等 正常性バイアス
  14. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 27 ・情報の共有とは 送り手 受け手 情報の理解 → 納得(確認努力) だろう判断の対応

    伝達(説明責任;SBAR) 質問、提案、主張 相互に納得する ことが大切 警戒心を同一レベルに保持
  15. SBAR ステップ( 参 考 ) Ⅰ 状況(Situation) ⇒ 今何が起こっているのかを簡潔に伝える。 Ⅱ

    背景理解(Background) ⇒ 出来事に関する経過や事象・関係者の情報を伝える。 Ⅲ 評価(Assessment) ⇒ 何が問題か、自分の判断考えを伝える。 Ⅳ 提案(Recommendation) ⇒ どうしてほしいのか提案・依頼する。 また、どうしたらよいのか指示を受ける。 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 28
  16. 航空安全講習会(滑空協会) 36 【 OODA Loop(参考) 】 ・Observe (継続的な観察による状況認識) ・ Orient

    (評定 ⇒ 情勢判断) ・ Decide(決定) ・ Act(実行) 必要によっては、次の ループの観察段階で 評価・再調整 (ウーダ) 2023.12.24
  17. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 31 3.経験則に起因する 思い込みへの対応 豊富な経験等による自己主体の情報処理 熟練者の陥りやすい行動特性 ➢ 経験則で判断 ⇒

    認知バイアス ➢ 無意識下で 判断、行動 ➢ エラーは不可避 今までのマトメも兼ねて 熟練者は思い込みになりやすい環境下 3-1. 思い込みへの対応
  18. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 32 3-3. 思い込みへの対応(共有) コミュニケーションによる対応(HE発生の2大要因) ➢ おかしいと思ったら口に出す、意思表示 仲間がもっと積極的に口出していたら・・・ 自分のインテンションを口に出していれば・・・

    ⇒ 日頃から話しやすい(指摘しやすい)雰囲気 皆が適度な権威勾配だったら・・・ 意見を聞く意識と感謝の気持ちがあったら・・・ ➢ 気づき・気がかり・解消 活動( 3 K 活 動 ) お互いにエラーをモニターする意識の醸成 ➢ 確認会話 ⇒ 即、YES と言わない習慣 (美しき口答え) もう1つは「確認不良」 心 理 的 安 全 性 が 確 保 さ れ て い る
  19. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 33 ➢ CRM とは、 安全で効率的な業務を達成するため、 すべての利用可能な人的資源、 機器および情報を効果的に 活用することをいう

    3-4. 思い込みへの対応(チームづくり) ➢ CRM(TRM) 訓練でも 「安全で質の高いチームづくり」を重視 ➢ 心理的安全性の確保 質問・提案・主張が言いやすい組織づくり
  20. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 34 お互いに、質問・提案・主張が 言いにくい雰囲気がありませんか? ① 無知だと思われる不安 ② 無能だと思われる不安 ③

    邪魔をしていると思われる不安 ④ ネガティブだと思われる不安 心理的安全性 (エドモンドソン教授が提唱した「4つの不安」) 個人のモチベーションの向上 コミュニケーションの活発化 チーム活動の活発化 質問・提案・主張は大切なリソース!! 解消すれば… 感 謝
  21. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 35 CRM(TRM)の活用ー1 ・ 特にLとLに着目 ・利用可能な人的資源とは エラーが発生した場合、その場 にいる人の力(現場力)が大切 意識=積極性,協調性,遵法性,状況認識性

    能力=業務管理能力,危険管理能力 危機管理能力 装備・手順・人員等からの助け(援助)、 そこから得られる情報、手段、方策等 (NTS=ノン テクニカル スキル) (安全の維持) (現場力・チーム力の向上/チーム戦化)
  22. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 36 CRM(TRM)の活用ー2 ・ここでいうマネジメントとは ・ 効果的に活用するとは ヒューマンパフォーマンスを適切に 考慮し、人間と周辺の他の要素との 安全の調和を求める

    そして、ヒューマンファクターにお ける良い面(創造性、応用力、協調 性、連携、問題解決能力、学習能力 等)を効果的に活用 気づき・気がかり・解消活動(3K活動) 皆で行う相互作用の概念、良い状態を維持 (安全の維持) (現場力・チームの向上/チーム戦化)
  23. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 37 ① 平素から指摘しやすい環境を整えておく ② 遠慮することなく口に出す ③ エラーを指摘されたら、素直に受け入れ、修正する ④

    ありがとうの一言を付け加える ⑤ エラー回復のために、皆が協力する ⑥ 回復の評価を行う アサーション(Assertion)の勧め 保安・安全に関しては皆が 清き一票!! 気付き・気がかりなことを発見した場合・・・ 同僚のエラーを予知、発見した場合・・・・ (質問・提案・主張)
  24. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 38 1. 自分のエラーでチームに迷惑を掛けない 人間の能力と限界、行動特性等を理解する 2. 自分の行為で他者のエラーを誘発しない SBAR等を活用して伝達、早期対応、そして、 物言える雰囲気。良好なコミュニケーション

    3. 他者のエラーや不安全行為・行動を発見したら、 速やかに指摘する。 言うべき事は節度を持って、はっきりと言う 指摘事項は感情的にならず、 受けとめる雰囲気 3つのチームマナー
  25. 安 全 は • 安全とは、受け入れ不可能 なリスクが ないこと (ISO=国際標準化機構) • 安全とは、リスクが

    制御された状態 に あること (ICAO=国際民間航空機構) 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 42 ⇒ 結 果 で す リスクは必ず存在!!
  26. 2023.12.24 航空安全講習会(滑空協会) 44 注 意 !! NASAの研究成果 経験者ほど、人の意見を聞かない 傾向がある 1、コミュニケーションの欠如

    2、相手からの安全への主張欠如 3、リーダーシップの欠如 4、意思決定の失敗 だ か ら 安全の為のリソースを活用しましょう