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平均場近似の話 / Mean Field Approximation

kaityo256
August 24, 2022

平均場近似の話 / Mean Field Approximation

8月24日研究室ミーティング

kaityo256

August 24, 2022
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Transcript

  1. 5 27 拡散律速→ 1/3則 臨界半径 圧力 𝑅𝑐 ∼ 𝑡 1

    3 Δ𝑃 ∼ 𝑡 1 3 反応律速→1/2則 臨界半径 圧力 𝑅𝑐 ∼ 𝑡 1 2 Δ𝑃 ∼ 𝑡 1 2
  2. 6 27 液滴 液滴は好きに成長できる (周りが希薄な気体だから) 液滴同士の相互作用はほぼ無視できる (気体なので拡散で伝わる) 気泡 気泡は成長するのに仕事が必要 (周りが液体だから)

    気泡同士の相互作用は極めて強い (液体なので音速で伝わる) 気泡と液滴で同じ理論が適用できるか非自明 スパコンで力任せに確認しよう
  3. 11 27 • 各サイトにスピン𝜎𝑖 がいる • スピンは+1か-1の値を取る • 二つのスピンの間をボンドと呼ぶ •

    ボンドの両端のスピンをが同じ値なら-J、異なるならJのエ ネルギーを持つ • 全てのボンドについてのエネルギーの和を全系のエネル ギーとする • エネルギーを𝐸持つ状態の出現確率がボルツマン重み exp(−𝛽𝐸)に比例する 𝐻 = −𝐽 ෍ 𝑖,𝑗 𝜎𝑖 𝜎𝑗 ボルツマン定数 𝛽 = 1/𝑘𝐵 𝑇 逆温度 𝑘𝐵
  4. 13 27 |𝑚| 𝑇 相転移点 𝑚 = 1 𝑁 ෍

    𝑖 𝜎𝑖 磁化の期待値がある点(相転移点)で有限の値(強磁性相)から ゼロ(常磁性相)に変化する このふるまいを調べるために、磁化の期待値を計算したい 自発磁化 常磁性相 強磁性相
  5. 14 27 𝑚 の厳密な計算 1次元 2次元 Ernst Ising (1924) Lars

    Onsager (1944) 3次元 4次元 未解決 平均場近似による臨界指数が厳密に正しくなる
  6. 15 27 (1) あるスピンから見て周りのスピンはローカルな磁場を作る (2) ローカルな磁場を感じてスピンがひっくり返る (3) ひっくり返った影響が周りのスピンに伝播する = (4)

    影響された周りのスピンがひっくり返る (5) 最初のスピンが感じるローカルな磁場が変化する 自分の起こした変化が、まわりまわって帰ってくる効果が問題
  7. 16 27 我々が知りたいのは磁化の期待値 𝑚 = ෥ 𝑚 磁化の期待値 ෥ 𝑚が既に求まっているとする

    注目するスピンを、平均的な磁化 ෥ 𝑚で置き換える 〰 注目するスピンは、周りのスピンが作る平均的な磁場 4 ෥ 𝑚を感じる
  8. 17 27 𝐻 = −𝐽 ෍ 𝑖,𝑗 𝜎𝑖 𝜎𝑗 𝐻

    = −4 ෥ 𝑚𝐽𝜎 近似されたハミルトニアン(一体) もともとのハミルトニアン(多体) 平均場近似された分配関数 𝑍 = ෍ 𝜎 exp −𝛽𝐻 = exp −4𝐾 ෥ 𝑚 + exp 4𝐾 ෥ 𝑚
  9. 18 27 磁化の期待値 ෥ 𝑚 = 𝑍−1 ෍ 𝜎 𝜎

    exp −𝛽𝐻 = exp −4𝐾 ෥ 𝑚 − exp 4𝐾 ෥ 𝑚 exp −4𝐾 ෥ 𝑚 + exp 4𝐾 ෥ 𝑚 = tanh(4𝐾 ෥ 𝑚) 磁化の期待値が、磁化の期待値の関数で書けている ෥ 𝑚 = tanh(4𝐾 ෥ 𝑚) 自己無撞着(self-consistent)方程式
  10. 20 27 ෥ 𝑚 = tanh(4𝐾 ෥ 𝑚) 4𝐾 <

    1 4𝐾 > 1 ෥ 𝑚 tanh(4𝐾 ෥ 𝑚) (高温) (低温) ෥ 𝑚 = 0 の解しかない の解がある ෥ 𝑚 ≠ 0 →常磁性相 →強磁性相
  11. 24 27 時刻tにおいてn個の原子を含む液滴の数 𝑓(𝑛, 𝑡) 臨界サイズのベキ依存性を仮定 𝑛𝑐 ∼ 𝑡𝛼 分布関数のスケーリングを仮定

    𝑓 𝑛, 𝑡 ∼ 𝑡𝛽 ሚ 𝑓 𝑛/𝑛𝑐 液滴の数の時間発展 𝑆 = ∫ 𝑓 𝑛, 𝑡 𝑑𝑛 ∼ 𝑡−𝛼 𝑁 = ∫ 𝑛𝑓 𝑛, 𝑡 𝑑𝑛 原子数保存 𝛽 = −2𝛼
  12. 25 27 • 平均場近似により多体問題を一体問題に落とす • 系の一様性を仮定 • 液滴間相互作用を無視 • 臨界サイズが時間にベキ的に依存することを仮定

    • 臨界サイズによるスケーリングを仮定 仮定 帰結 • 系がただ一つの指数により支配される • その指数はダイナミクスで決まる • 1/3則、1/2則
  13. 26 27 気泡生成 液滴生成 液滴生成: 液滴間相互作用が非常に弱い 気泡生成: 気泡間相互作用が非常に強い 液滴・気泡成長速度 <<

    系の圧力緩和速度 相互作用が非常に強い→相互作用の時間が早い →一瞬で圧力が緩和する→平均場近似が正当化される
  14. 27 27 • 多体問題が難しいのは「自分の変化」がまわり まわってまた自分に返ってくる効果があるから • 平均場近似とは、多体効果を「注目する一体」 と「まわりの環境」に分けて一体問題に落とす 近似手法 •

    平均場近似は極めて粗い近似であるが、現象の 本質を捉え、かつ非自明な予言をする • 平均場近似が極めて良い結果を与えることがあ る(高次元の臨界指数や気泡生成)