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リンゴゲームと貧富の差 / Origin of the disparity of wealth
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kaityo256
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January 18, 2024
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リンゴゲームと貧富の差 / Origin of the disparity of wealth
リンゴゲームと貧富の差
kaityo256
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January 18, 2024
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Transcript
1 30 慶應義塾大学理工学部物理情報工学科 渡辺宙志 2024年1月18日 研究室ミーティング リンゴゲームと貧富の差
2 30 貧富の差とは? 世の中には金持ちと貧乏人がいる これは能力の差のせいだろうか? それとも単なる運だろうか?
3 30 リンゴゲーム (1) 一人一つずつリンゴを持つ (2) 提供者と受領者をランダムに選び、提供者か ら受領者にリンゴを一つ渡す (リンゴを持って いなければ何もしない)
「やりとり」を十分繰り返したらリンゴの数はどうなるか?
4 30 10人の場合 持 っ て い る リ ン
ゴ の 数 背番号 ※ 持っているリンゴの数が多い順に並べた
5 30 100人の場合 持 っ て い る リ ン
ゴ の 数 背番号 ※ 持っているリンゴの数が多い順に並べた
6 30 1000人の場合 持 っ て い る リ ン
ゴ の 数 背番号 ※ 持っているリンゴの数が多い順に並べた 半分以上の人がリンゴを持っていない リンゴを9個持っている人
7 30 貧富の差 最初は全員リンゴを一つずつ持っていたのに 「持てる者」「持たざる者」が生まれた
8 30 N=2の場合 1番の人 2番の人 確率1/2で1番から2番へ、確率1/2で2番から1番へリンゴを渡す
9 30 N=2の場合 状態は以下の3種類 1番が2つとも持っている 2人が1つずつ持っている 2番が2つとも持っている
10 30 マルコフ遷移図 1/2 1/2 1/2 1/2 1/2 1/2
11 30 マルコフ連鎖 𝑝1 𝑡 𝑝2 𝑡 𝑝3 𝑡 1番が2つとも持っている確率
2人が1つずつ持っている確率 2番が2つとも持っている確率 tステップ目に・・・
12 30 マルコフ連鎖 𝑝1 𝑡+1 = 1 2 𝑝1 𝑡
+ 1 2 𝑝2 𝑡 𝑝2 𝑡+1 = 1 2 𝑝1 𝑡 + 1 2 𝑝3 𝑡 𝑝3 𝑡+1 = 1 2 𝑝2 𝑡 + 1 2 𝑝3 𝑡 1/2 1/2 1/2 1/2 1/2 1/2
13 30 マルコフ遷移 Ԧ 𝑝𝑡+1 = 𝑀 Ԧ 𝑝𝑡 と表すと
𝑀 = 1/2 1/2 0 1/2 0 1/2 0 1/2 1/2 定常状態があるなら Ԧ 𝑝∞ = 𝑀 Ԧ 𝑝∞ Ԧ 𝑝∞ は𝑀の固有値1に対応する固有ベクトル Ԧ 𝑝∞ = 1/3 1/3 1/3
14 30 定常状態 = = Ԧ 𝑝∞ = 1/3 1/3
1/3 すべてのミクロな状態が等確率で実現する
15 30 N=3 誰かが3つ独占している状態 x 3 誰かが2つ、誰かが1つ持っている状態 x 6 全員が1つずつ持っている状態
x 1 状態が10個あり、10状態のマルコフ遷移になる →面倒くさい マルコフ行列全体を考えずに定常状態を調べたい
16 30 詳細つり合い 一般のマルコフ遷移図の、ある2つの状態間の遷移だけに注目する
17 30 詳細つり合い A B 𝑃(𝐴 → 𝐵) 𝑃(𝐵 →
𝐴) 𝜋(𝐴) 𝜋(𝐵) 𝜋(𝐴) 状態Aにいる確率 𝜋(𝐵) 状態Bにいる確率 𝑃(𝐴 → 𝐵) 状態AからBに遷移する確率 𝑃(𝐵 → 𝐴) 状態BからAに遷移する確率
18 30 詳細つり合い 𝑃(𝐴 → 𝐵) 𝑃(𝐵 → 𝐴) 𝜋(𝐴)
A国の人口 𝜋(𝐵) B国の人口 𝑃(𝐴 → 𝐵) 毎年、A国からB国に移住する割合 𝑃(𝐵 → 𝐴) 毎年、B国からA国に移住する割合
19 30 詳細つり合い 𝜋(𝐴)𝑃(𝐴 → 𝐵) 毎年、A国からB国に移住する人数 𝜋(𝐵)𝑃(𝐵 → 𝐴)
毎年、B国からA国に移住する人数 定常状態(人口が変わらない)なら 𝜋 𝐴 𝑃 𝐴 → 𝐵 = 𝜋 𝐵 𝑃 𝐵 → 𝐴
20 30 詳細つり合い A B 𝑃(𝐴 → 𝐵) 𝑃(𝐵 →
𝐴) 𝜋(𝐴) 𝜋(𝐵) 定常状態において以下が成り立つ 𝜋 𝐴 𝜋 𝐵 = 𝑃 𝐵 → 𝐴 𝑃 𝐴 → 𝐵 任意の2状態間の遷移確率がわかれば 定常状態の確率の比が求まる
21 30 N=3の場合 提供者に3番が選ばれ、受領者が1番である確率(1/6) 提供者に1番が選ばれ、受領者が3番である確率(1/6) リンゴゲームは、任意の遷移可能な2状態間の遷移確率は等しい 逆過程
22 30 一般のNの場合 𝜋 𝑖 𝜋 𝑗 = 𝑃 𝑗
→ 𝑖 𝑃 𝑗 → 𝑖 = 1 ある2状態𝑖, 𝑗について 𝑃 𝑗 → 𝑖 = 𝑃 𝑖 → 𝑗 定常状態は ∴ 𝜋 𝑖 = 𝜋 𝑗 任意の状態𝑖, 𝑗について成り立つので 𝜋 1 = 𝜋 2 = 𝜋 3 = ⋯ すべてのミクロな状態の実現確率は等しい 等重率の原理
23 30 N=3 すべてのミクロな状態が等しい確率で実現する =状態数に確率が比例する 誰かが3つ独占している状態 x 3 誰かが2つ、誰かが1つ持っている状態 x
6 全員が1つずつ持っている状態 x 1 ↑この状態が一番実現確率が高い
24 30 一般のNの場合 全員平等な世界(状態数1) ・・・ 富を誰かが全て独占(状態数N) ・・・ どこか中間に最も実現確率の高い世界
25 30 一般のNの場合 𝑓𝑘 リンゴをk個持っている人の数 𝑁 リンゴの総数と人数 総人口 𝑘
𝑁 𝑓𝑘 = 𝑁 リンゴの総数 𝑘 𝑁 𝑘𝑓𝑘 = 𝑁 上記の条件の元でエントロピーを最大化 𝑆 = 𝑘 𝑁 𝑓𝑘 log 𝑓𝑘
26 30 一般のNの場合 kに関して連続極限をとる 𝑓𝑘 → 𝑓(𝑥) න 𝑓𝑑𝑥 =
𝑁 𝑘 𝑁 𝑓𝑘 = 𝑁 𝑘 𝑁 𝑘𝑓𝑘 = 𝑁 න 𝑥𝑓𝑑𝑥 = 𝑁 制約条件
27 30 一般のNの場合 𝐹 = න 𝛽𝑥𝑓 + 𝑓log 𝑓
+ 𝜆𝑓 𝑑𝑥 ラグランジュの未定定数法 න 𝑓𝑑𝑥 = 𝑁 න 𝑥𝑓𝑑𝑥 = 𝑁 リンゴの総数に関する制限を記述する ラグランジュの未定定数 確率の保存を記述する ラグランジュの未定定数
28 30 変分原理 𝐹 = න 𝛽𝑥𝑓 + 𝑓log 𝑓
+ 𝜆𝑓 𝑑𝑥 𝛿𝐹 𝛿𝑓 = 0 𝑓 = 𝑍−1exp −𝛽𝑥 𝑍 ≡ exp 𝜆 + 1 = න exp(−𝛽𝑥) 𝑑𝑥 カノニカル分布が実現する ただし𝑍は分配関数 𝛽 = 1, 𝑍 = 1/𝑁 制約条件より
29 30 N=10の場合 𝑓 = 𝑁exp −𝑥 持っているリンゴの数 人 数
の 期 待 値
30 30 まとめ 現実のこの世界は・・・? • リンゴゲームはランダムに選んだ二人でリンゴ(財産)をやり とりするゲーム • ミクロにはすべての状態が等確率で出現する →等重率の原理
• マクロには、富の独占が起きる →貧富の差 • 全く公平なルールで平等な初期条件から開始したにも関わら ず、最終的には貧富の差が生まれる →誰が富むかはただの運? • リンゴをエネルギーとみなすと粒子がエネルギーを互いにや り取りする物理系と等価となり、カノニカル分布が実現する