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脳神経細胞の活動をどのように数学的に 解釈したら良いのか?〜1952年のHodgkin-Huxley式から学ぶ〜

kenyu
June 04, 2019

脳神経細胞の活動をどのように数学的に 解釈したら良いのか?〜1952年のHodgkin-Huxley式から学ぶ〜

kenyu

June 04, 2019
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  1. 脳神経細胞の活動をどのように数学的に
    解釈したら良いのか?
    〜1952年のHodgkin-Huxley式から学ぶ〜
    けんゆー @kenyu0501_
    (山口大学 博士課程, 学術研究員)

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  2. 脳神経細胞の電気的な振る舞いは数学で書けるのか?
    <ニューロンの活動電位について>
    ③軸索
     ・・・他のニューロンの樹状突起へ送電
    ②細胞体
     ・・・信号を処理する
    ①樹状突起
      ・・・周囲のニューロンから入力信号を受け細胞体に伝達
    ニューロン・・・情報処理素子
    シナプス・・・軸索と樹状突起の接合部分
    シナプス小胞
    シナプス下膜
    シナプス前抑制
    シナプス間隙
    150 - 200 Å
    電気信号が軸索先端に来ると
    化学伝達物質がシナプスに送られる
    シナプスと次の
    ニューロンの接触部分
    電気信号

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  3. 脳神経細胞の活動!!!!!!!!!!!!!!!!!
    1.ニューロン間はシナプスを介して繋がっている
    2.多ニューロンからのインパルスによって生じたシナプス電位は加重
    3.加重された電位がある大きさに達すると,ニューロンはパルス上の電位変化を示す
    神経インパルス
    このような神経回路の
         数学的モデルを構築するためには
    ・多数の加重入力と発火(出力インパルス)の閾値
    今でこそニューラルネットワークが主流であるが,,,
    ・1つのニューロンには数千個のシナプス結合がある
     それらが同時に入って来ることもあるし,入ってこ
     ない場合もある.
    ・神経細胞内外のイオンや物質に大きく依存されるが,
     それらを上手く説明できるのであろうか.
    かつて,脳神経細胞の電気的活動を数学的に記述した人がいた

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  4. 脳神経細胞の電気的な振る舞いは数学で書けるのか?
    1952年,Hodgkin氏とHuxley氏
    が出した論文
    ”A QUANTITATIVE DESCRIPTION OF
    MEMBRANE CURRENT AND ITS
    APPLICATION TO CONDUCTION AND
    EXCITATION IN NERVE”
    この論文で脳神経細胞の
    方程式が詳しく紹介されています
    (ググればすぐ読めます)
    wikipediaより
    1963年
    ノーベル医学・生理学賞
    を獲得する

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  5. ヤリイカの神経系の特徴を少し書いておく!
    Hodgkin氏と,Huxlay氏はヤリイカの巨大軸索を実験的に研究して,
    あの高尚な数学的モデルを構築したのだ!!
    脳神経節
    (ヤリイカの脳にあたる)
    ニューラルシステムにおけるカオス,合原一幸編著,東京電機大学出版局
    体の最も遠くまで伸びている神経繊維!!
    直径が0.4~0.7 mm
    軸索外部
    ヤリイカ巨大軸索
    軸索膜内外のイオン濃度差と軸索膜にある電圧依存性イオンチャネルに基づく
    Na+ K+
    Ca+
    軸索内部
    K+ Na+ Ca+
    自然生理的環境下では,
    細胞外にNaイオンやCaイオンが多く,
    細胞内にKイオンが多い非平衡環境
    イオンチャネルは,膜電位に依存してイオンの通過を
    制御するのと同時に通過するチャネルの選択を行う
    主なイオンチャネルは,
    Naチャネル と Kチャネル
    イオン濃度差がこの状態で恒常しているので,
    負の直流電位(-50 ~ -60mV)に保たれている
    静止電位
    ここが研究対象!!!!

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  6. Hodgkin - Huxleyモデル!!!!!!!!!!!!!!!
    <やったこと>
     ヤリイカの神経線維を用いた実験より,細胞膜の電気的性質について解析した
    <発見>
     ニューロンの活動電位がナトリウム(Na+)とカリウム(K+)イオンに対する細胞膜透過性の一
    過性変化によって生じることを示した
    <応用>
     その電流がナトリウムとカリウムそれぞれに対する固有のチャネルを通って流れることを予
    測して,Hodgkin-Huxley方程式を提案した.
    Im
    = Cm
    dV
    dt
    + gNa
    (V − ENa
    ) + gK
    (V − EK
    ) + ¯
    gl
    (V − El
    )
    V
    Cm
    1/gl
    ENa
    El
    EK
    Im
    1/gK
    1/gNa
    細胞外 細胞内
    膜電流
    膜容量
    Naの平衡電位
    Kの平衡電位
    その他の平衡電位
    コンダクタンス
    Naに対する固有のチャネル
    Kに対する
    固有のチャネル
    その他の
    固有のチャネル
    コンダクタンス

    は電気の通りやすさ
    <Hodgkin-Huxley方程式>
    Naコンダクタンス と Kコンダクタンス は時間的に変化する
    (次のページで詳しくやります)
    Im
    = Cm
    dV
    dt
    + ¯
    gNa
    m3h(V − ENa
    ) + ¯
    gK
    n4(V − EK
    ) + ¯
    gl
    (V − El
    )
    4変数 (V, m, h, n) からなる非線形ダイナミカルモデル

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  7. Na+コンダクタンス(チャネル) と K+コンダクタンス(チャネル)を詳しく!
    全て V の関数で表される
    Im
    = Cm
    dV
    dt
    + gNa
    (V − ENa
    ) + gK
    (V − EK
    ) + gl
    (V − El
    )
    gNa
    = ¯
    gNa
    m3h
    dm
    dt
    = αm
    (1 − m) − βm
    m
    dh
    dt
    = αh
    (1 − h) − βh
    h
    αm
    =
    0.1(V + 25)
    exp( V + 25
    10
    ) − 1
    βm
    = 4exp(
    V
    18
    )
    αh
    = 0.07exp(
    V
    20
    )
    βh
    =
    1
    exp( V + 30
    10
    ) + 1
    gK
    = ¯
    gK
    n4
    dn
    dt
    = αn
    (1 − n) − βn
    n
    αn
    =
    0.01(V + 10)
    exp( V + 10
    10
    ) − 1
    βn
    = 0.125exp(
    V
    80
    )
    Im
    = Cm
    dV
    dt
    + ¯
    gNa
    m3h(V − ENa
    ) + ¯
    gK
    n4(V − EK
    ) + ¯
    gl
    (V − El
    )
    Na+チャネルは3つの活性化ゲートm
    と不活性ゲートhによって開閉
    K+チャネルは
    4つの活性化ゲートn
    増加関数
    増加関数
    増加関数
    減少関数
    減少関数
    減少関数
    ニューラルシステムにおけるカオス,合原一幸編著,東京電機大学出版局

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  8. Im
    = Cm
    dV
    dt
    + gNa
    (V − ENa
    ) + gK
    (V − EK
    ) + gl
    (V − El
    )
    膜電位は急に立ち上がり,ピークに達して

    負の方向へ!その後,静止電圧よりも過分極する
    電位のはじめの急激な増加&減少は

    ナトリウム透過性の増加&減少によるもの
    その後の過分極は
    カリウム透過性の変化によるもの
    Hodgkin - Huxleyモデルの振る舞いは!?!?!?!?
    膜電位
    静止電位









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  9. Hodgkin - Huxleyモデル まとめ と 今後 !!!!!!
    ◯Hodgkin-Huxleyモデルは,4変数(V, m, h, n)からなる非線形ダイナミカルシステム
    ◯今もなお,数多くの学術論文で取り上げられている素晴らしいモデル!!
    ◯構造的な解析は結構難しい!!そのためいろんな解決策も出ている
    ◯例えば,Bonhoeffer-van der Pol (BVP)モデルなど! 次回取り上げます!
    Im
    = Cm
    dV
    dt
    + ¯
    gNa
    m3h(V − ENa
    ) + ¯
    gK
    n4(V − EK
    ) + ¯
    gl
    (V − El
    )

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  10. 閾値
    -60 mV
    0 mV
    50 mV
    15 mV
    膜電位
    活動電位
    刺激電流インパルス
    0 ms 4 ms
    2 ms
    Hodgkin - Huxleyモデル 補足

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