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脳神経細胞の活動をどのように数学的に 解釈したら良いのか?〜1952年のHodgkin-Huxley式から学ぶ〜

kenyu
June 04, 2019

脳神経細胞の活動をどのように数学的に 解釈したら良いのか?〜1952年のHodgkin-Huxley式から学ぶ〜

kenyu

June 04, 2019
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  1. 脳神経細胞の電気的な振る舞いは数学で書けるのか? 1952年,Hodgkin氏とHuxley氏 が出した論文 ”A QUANTITATIVE DESCRIPTION OF MEMBRANE CURRENT AND

    ITS APPLICATION TO CONDUCTION AND EXCITATION IN NERVE” この論文で脳神経細胞の 方程式が詳しく紹介されています (ググればすぐ読めます) wikipediaより 1963年 ノーベル医学・生理学賞 を獲得する
  2. ヤリイカの神経系の特徴を少し書いておく! Hodgkin氏と,Huxlay氏はヤリイカの巨大軸索を実験的に研究して, あの高尚な数学的モデルを構築したのだ!! 脳神経節 (ヤリイカの脳にあたる) ニューラルシステムにおけるカオス,合原一幸編著,東京電機大学出版局 体の最も遠くまで伸びている神経繊維!! 直径が0.4~0.7 mm 軸索外部

    ヤリイカ巨大軸索 軸索膜内外のイオン濃度差と軸索膜にある電圧依存性イオンチャネルに基づく Na+ K+ Ca+ 軸索内部 K+ Na+ Ca+ 自然生理的環境下では, 細胞外にNaイオンやCaイオンが多く, 細胞内にKイオンが多い非平衡環境 イオンチャネルは,膜電位に依存してイオンの通過を 制御するのと同時に通過するチャネルの選択を行う 主なイオンチャネルは, Naチャネル と Kチャネル イオン濃度差がこの状態で恒常しているので, 負の直流電位(-50 ~ -60mV)に保たれている 静止電位 ここが研究対象!!!!
  3. Hodgkin - Huxleyモデル!!!!!!!!!!!!!!! <やったこと>  ヤリイカの神経線維を用いた実験より,細胞膜の電気的性質について解析した <発見>  ニューロンの活動電位がナトリウム(Na+)とカリウム(K+)イオンに対する細胞膜透過性の一 過性変化によって生じることを示した <応用>  その電流がナトリウムとカリウムそれぞれに対する固有のチャネルを通って流れることを予

    測して,Hodgkin-Huxley方程式を提案した. Im = Cm dV dt + gNa (V − ENa ) + gK (V − EK ) + ¯ gl (V − El ) V Cm 1/gl ENa El EK Im 1/gK 1/gNa 細胞外 細胞内 膜電流 膜容量 Naの平衡電位 Kの平衡電位 その他の平衡電位 コンダクタンス Naに対する固有のチャネル Kに対する 固有のチャネル その他の 固有のチャネル コンダクタンス
 は電気の通りやすさ <Hodgkin-Huxley方程式> Naコンダクタンス と Kコンダクタンス は時間的に変化する (次のページで詳しくやります) Im = Cm dV dt + ¯ gNa m3h(V − ENa ) + ¯ gK n4(V − EK ) + ¯ gl (V − El ) 4変数 (V, m, h, n) からなる非線形ダイナミカルモデル
  4. Na+コンダクタンス(チャネル) と K+コンダクタンス(チャネル)を詳しく! 全て V の関数で表される Im = Cm dV

    dt + gNa (V − ENa ) + gK (V − EK ) + gl (V − El ) gNa = ¯ gNa m3h dm dt = αm (1 − m) − βm m dh dt = αh (1 − h) − βh h αm = 0.1(V + 25) exp( V + 25 10 ) − 1 βm = 4exp( V 18 ) αh = 0.07exp( V 20 ) βh = 1 exp( V + 30 10 ) + 1 gK = ¯ gK n4 dn dt = αn (1 − n) − βn n αn = 0.01(V + 10) exp( V + 10 10 ) − 1 βn = 0.125exp( V 80 ) Im = Cm dV dt + ¯ gNa m3h(V − ENa ) + ¯ gK n4(V − EK ) + ¯ gl (V − El ) Na+チャネルは3つの活性化ゲートm と不活性ゲートhによって開閉 K+チャネルは 4つの活性化ゲートn 増加関数 増加関数 増加関数 減少関数 減少関数 減少関数 ニューラルシステムにおけるカオス,合原一幸編著,東京電機大学出版局
  5. Im = Cm dV dt + gNa (V − ENa

    ) + gK (V − EK ) + gl (V − El ) 膜電位は急に立ち上がり,ピークに達して
 負の方向へ!その後,静止電圧よりも過分極する 電位のはじめの急激な増加&減少は
 ナトリウム透過性の増加&減少によるもの その後の過分極は カリウム透過性の変化によるもの Hodgkin - Huxleyモデルの振る舞いは!?!?!?!? 膜電位 静止電位 原 著 論 文 か ら の 抜 粋
  6. Hodgkin - Huxleyモデル まとめ と 今後 !!!!!! ◯Hodgkin-Huxleyモデルは,4変数(V, m, h,

    n)からなる非線形ダイナミカルシステム ◯今もなお,数多くの学術論文で取り上げられている素晴らしいモデル!! ◯構造的な解析は結構難しい!!そのためいろんな解決策も出ている ◯例えば,Bonhoeffer-van der Pol (BVP)モデルなど! 次回取り上げます! Im = Cm dV dt + ¯ gNa m3h(V − ENa ) + ¯ gK n4(V − EK ) + ¯ gl (V − El )
  7. 閾値 -60 mV 0 mV 50 mV 15 mV 膜電位

    活動電位 刺激電流インパルス 0 ms 4 ms 2 ms Hodgkin - Huxleyモデル 補足