Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

作り直せるコードは迅速に 作り直せないDBは慎重に - AI時代のプロダクトエンジニアが「判断...

Avatar for kinosuke01 kinosuke01
September 05, 2026

作り直せるコードは迅速に 作り直せないDBは慎重に - AI時代のプロダクトエンジニアが「判断の不可逆性」で開発速度を変える話

Product Engineering Conference 2026 での登壇資料です。

Avatar for kinosuke01

kinosuke01

September 05, 2026

More Decks by kinosuke01

Other Decks in Technology

Transcript

  1. ⾃⼰紹介 ロリポップ‧ムームードメイン事業部 ⻄⽥ 貴之 Takayuki Nishida 2020年 中途⼊社 • エンジニアリングリード

    • Webホスティング、ドメイン登録サービス、 ホームページ作成サービス、新規事業開発を担当 • 担当サービスを育てながら、⼈もAIも⼒を発揮 できる開発のしくみづくりに取り組んでいる • X : @kinosuke01 2
  2. 今⽇話すサービス ロリポップ! AIホームページ(旧:AIサイトエージェント) • Webサイト制作サービス • AIがヒアリング → 構成‧テーマ‧コンテンツを⼀括⽣成 →

    サイト公開 • ⽣成後も「トップのキャッチを変えて」など伝えれば、AIが編集を代⾏ • 2026年 リリース。現在サービスを育てているフェーズ。 3
  3. 1.判断の不可逆性 Amazon社 2015年度 株主への⼿紙(ジェフ‧ベゾス⽒) ⼀⽅通⾏のドア / Type 1 decision (=不可逆)

    重⼤で後戻りができない意思決定。熟考と協議を重ねて体系的に決めるべき。 ⼆⽅通⾏のドア / Type 2 decision (=可逆) 変更が可能な意思決定。個⼈や少⼈数で迅速に下されるべき。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1018724/000119312516530910/d168744dex991.htm 7
  4. 1.判断の不可逆性 サービス開発での判断も、可逆と不可逆の2つに仕分ける 可逆な判断 不可逆な判断 例 UIの⽂⾔、画⾯遷移、 アルゴリズム、実装⽅式 DBスキーマ、外部公開API、 課⾦の状態遷移、ID体系 間違えたら

    直せばいい 既存データの移⾏が必要 外部利⽤者の追従が必要 等 コスト やり直しコスト ≒ 実装コスト やり直しコスト >> 実装コスト AI時代の変化 実装コストが下がる = ⼤きく効率化 実装以外のコストが⽀配的 = 効率化が限定的 8
  5. 2.可逆な領域 集計分析を可能にする準備 Claude Code と データソースの接続 • 本番DBの分析⽤リードレプリカ + Metabase

    MCP サーバー • • ウェブサイトのデータがどこまでできたか Datadog MCP サーバー • どのページまでアクセスしたか 集計分析 • Claude Code に専⽤スキルを作成 (Skill Creator Pluginで作成) データへの接続さえ確⽴できれば、Claude Code で分析できる 12
  6. 2.可逆な領域 ファネル分析:ユーザーの躓きは「ヒアリング」 ※ グラフの⼤きさはイメージです 申込 ヒアリング開始 サイト⽣成 ★ ここで最も⼤きく落ちる 編集開始

    公開 ご契約 ヒアリングのページには多くの⽅がたどり着いているが、 ヒアリングフェーズを完了せずに抜けている⽅が多い。 13
  7. 3.不可逆な領域 まずは、YAGNI原則について You Aren't Gonna Need It = 必要になるまで作らない 将来必要になるかもしれないものを、先回りして作らない。

    • 「必要になるかも」の予測は、だいたい外れる。 • 使われないコードは、そのまま保守コストになる。ずっと。 • 要件は変わる。先に作ったものは、変わったときに邪魔になる。 → たしかに、それはそう。 19
  8. 3.不可逆な領域 変更のコストが⼤きいところは? 多数の依存が発⽣しうるエンティティ #例 User ├─ LoginService • Gravitating to

    rigidity: Patterns of schema evolution ‒ and its absence ‒ in the lives of tables での⾔及。 • 多数の依存が発⽣するエンティティは 変更するコストが⾼すぎて変更できない。 ├─ AccountService ├─ BillingService ├─ Analytics ├─ Admin └─ Reporting ... https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S030643791630120X 21
  9. 3.不可逆な領域 将来実装する可能性が⾼い機能か? 必須機能(POP)と差別化機能(POD)を⾒つける A社 B社 C社 D社 機能 α •

    • • • 必須機能(POP)候補 機能 β • • • • 必須機能(POP)候補 機能 γ • • • ✖ 必須機能(POP)に近い 機能 Δ ✖ • ✖ ✖ B社の差別化機能(POD)候補 ※ 本来はユーザーリサーチ等のデータも含めて総合的に判断 23
  10. 3.不可逆な領域 将来実装する可能性が⾼い機能か? 必須機能(POP)に近い機能 • 必須機能(POP)に変化していくものと考えられる。 • 企業は模倣し合うバイアスがあるため。 • Why Do

    Firms Imitate Each Other? → 模倣されやすい条件について⾔及。 • いずれ実装が必要になる可能性が⾼い。 • 実装時の変更コストが⾮対称に⼤きい場合に限り、 変更しやすい設計を最初から埋め込んでおくことが有効。 https://www.anderson.ucla.edu/faculty_pages/marvin.lieberman/docs/Why_Do_Firms_Imitate-AMR2 006.pdf 25
  11. 3.不可逆な領域 将来実装する可能性が⾼い機能か? 必須機能(POP)に近い機能 - AIホームページの例 • ドラフトファースト • 公開済みコンテンツを編集したら、その内容は⾮公開状態として保存され、明 ⽰的に公開操作するまで本番を上書きしない。

    • ⾃動保存機能 • ドラフトファーストを前提に、明⽰的に保存操作しなくても、 コンテンツ編集したら⾮公開状態として保存する。 • 履歴から復元 • ⾮公開状態として保存した過去の履歴からサイトを復元ができる。 26
  12. 3.不可逆な領域 将来実装する可能性が⾼い機能か? 必須機能(POP)に近い機能 - AIホームページの例 • ウェブサイトという中核のエンティティ。多数の依存が発⽣しうる。 • ドラフトファースト /

    ⾃動保存機能 / 履歴から復元 を実装する前提で データモデリングした。 • ドラフトファースト機能に関しては、実際に実装した。 27
  13. 3.不可逆な領域 将来実装する可能性が⾼い機能か? 差別化機能(POD)のデータモデル • 不確実性が⾼く、仮説検証で⾒出していく。 • 狙った指標を改善する変更は10〜20%程度しかない。 • A/Bテストの話。Online Experimentation:

    Benefits, Operational and Methodological Challenges, and Scaling Guide での⾔及。 • 先を⾒通すことが困難なので、YAGNI原則に従う。 https://hdsr.mitpress.mit.edu/pub/aj31wj81/release/1 29
  14. 3.不可逆な領域 将来実装する可能性が⾼い機能か? 種別 将来の実装可能性 備考 必須機能(POP) - ないと選ばれない 最初からデータモデリングも実装もする 必須機能(POP)に近い

    ⾼ 模倣バイアスで必須機能になりうる 実装しやすいように、 データモデリングしておく 差別化機能(POD) 低 不確実性が高い YAGNI原則に従う 30
  15. 4.判断の不可逆性をリリースフローに組み込む 可逆 / 不可逆の観点を、リリースフローに組み込む • • 可逆な領域: ◦ ⼈は介在せず、AIが⾃律的に迅速に意思決定。 ◦

    → Claude Code Action にレビューさせ、approve されれば⾃動マージ。 不可逆な領域: ◦ 熟考と協議を重ねて体系的に決める。 ◦ → ⼈間レビューを必須。 ※ 前提として、CIによる lint‧test のチェックは全PRで通している。 34
  16. 4.判断の不可逆性をリリースフローに組み込む リリースフローの事例の紹介 可逆なもの PR feature ▶ release PR ▶ develop

    AIがレビュー‧承認して オートマージ main 複数のfeatureを ⼈間が確認してマージ ▶ 本番環境 GitHub Actionsで 本番デプロイ 不可逆なもの(従来と同じ) feature ▶ ⼈間がレビューして マージ main ▶ 本番環境 GitHub Actionsで 本番デプロイ ※ 従来のリリースフローは維持したまま、拡張的な構成とした。 35
  17. 4.判断の不可逆性をリリースフローに組み込む 可逆のフロー (1) 1. developをbaseとしたPRが作られる。 2. 上記をトリガーとして、レビュー⽤のカスタムアクションを実⾏。 ◦ リスクパスが含まれている場合は、⼈間レビューをリクエスト。 ◦

    そうでない場合は、Claude Code Actions (CCA) がレビューを実施。 ▪ CCAを呼び出し時に、レビュー観点をコンテキストとして与える。 3. レビュー結果がOKであれば、CCA が approve。 4. approve をトリガーに、カスタムアクションがdevelopブランチへマージ。 37
  18. まとめ 1. 判断の不可逆性 • 可逆か不可逆か判断し、進め⽅を変える。 2. 可逆な領域 • AIとデータを接続して、⾼速に仮説検証。 3.

    不可逆な領域 • 先を⾒通したデータモデリングの考え⽅。 4. 判断の不可逆性をリリースフローに組み込む • 可逆な領域でAIレビュー/オートマージする事例。 ご清聴ありがとうございました!! 42