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Purposeを実現するプロダクト戦略‐安易な成長に逃げずアンチパターンへ挑む‐

kubotaku
November 29, 2023

 Purposeを実現するプロダクト戦略‐安易な成長に逃げずアンチパターンへ挑む‐

pmconf2023の登壇資料です。

kubotaku

November 29, 2023
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Transcript

  1. © 2023 estie Inc. 1 自己紹介 久保 拓也 株式会社estie VP

    of Products リクルートにてセールスマネージャー(GM)、SMBマー ケットの戦略構築、九州拠点長等を担当。 その後スタートアップで、社長室 兼 VP of Productsとし て同社事業とプロダクト全般の戦略立案と実行をリード。 2022年8月にestieへ参画し、同年11月よりVP of Productsを担う。
  2. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. Overview:会社概要 2

    会社名 株式会社estie(エスティ) 所在地 東京都港区西新橋1-1-1 日比谷フォートタワー 設立 2018年12月 資本金 1億円 代表取締役 平井 瑛 株主 経営陣 東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC) グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP) グローバルブレイン 日本政策投資銀行 技術顧問 渡辺 努(東京大学大学院経済学研究科教授)
  3. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. Our Challenge

    :商業用不動産マーケットの真価を拓く 3 Office オフィス Retail 商業施設・アウトレット等 Industrial 物流施設・データセンター等 Hotel ホテル Residential 投資用住宅 社会の価値創造の基盤である商業用不動産マーケットが事業ドメイン
  4. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. Issue and

    Product:産業課題とプロダクトラインナップ 4 Whole Product構想 商業用不動産領域の課題をWhole Productで解決するコンパウンドスタートアップ
  5. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. Issue and

    Product:産業課題とプロダクトラインナップ 5 商業用不動産領域の課題をWhole Productで解決するコンパウンドスタートアップ +4プロダクト
  6. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. ことばの定義 7

    その覚悟が世界を変える ・課題解決の大きさ・深さ・広さの面積が「世界を変える」という水準である ・意思決定や計画段階において「二律背反」や「苦しみ」といった葛藤がある ・その意思決定には、「その人ならでは」の想いや信念がある ・観念的な意思決定で終わるのではなく、実際的な行動を伴っている ・最終的には、その「葛藤」を超えた成果が生まれ、学びがある
  7. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 本セッションでお伝えしたいこと 8

    「Purposeを実現するプロダクト」は、 アンチパターンへの挑戦から生まれる 一見アンチパターンに見える決断を迫られた際に、 どのように向き合い、意思決定と行動を重ね、超えていったか その先でどんな学びを得たかについてのお話 ※本セッションはチーム全員で取り組んだものであり、代表して久保が共有させていただきます
  8. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 「Purposeを実現するプロダクト」とは? 10

    ミクロで見ると 企業が最も生産的になれる 立地選択が可能になります。 オフィス、物流施設、デー タセンターなどのアセット は問いません。 もう少しマクロに見ると 都市の未来をデータドリブ ンに導くことができます。 最も社会価値の大きい都市 の構造を行政とともに定義 しましょう。 世界規模で見ると 東京に世界中から投資を呼 び込むことができます。 New YorkやLondonのよう なクレーンが眠らない街と して進化を続けます。 estieにとってPurposeを実現した1つの姿は、 商業用不動産データプラットフォームを起点に日本のマクロ経済を押し上げること
  9. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 「Purposeを実現するプロダクト」とは? 11

    「Purposeの実現」という頂への到達は険しく シングルプロダクトでの達成は難しい 創業初期からマルチプロダクトへ挑戦
  10. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. estieのマルチプロダクト挑戦の歴史 12

    創業初期から顧客の課題解決に向け、マルチプロダクトに挑戦し続けた estie pro 2019年9月 2020年7月 ポートフォリオ管理 プロダクト 2021年7月 PM向けプロダクト 2022年7月 館銘板収集 プロダクト 2022年8月 ・仲介向けプロダクト ・オーナー向けプロダクト 2023年3月 2023年10月 2023年7月 新アセットプロダクト 2023年6月 売買事例プロダクト 2023年11月 新アセットプロダクト 2023年12月
  11. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. estieのマルチプロダクト挑戦の歴史 13

    頓挫したプロダクトやプロジェクトも数多く存在しながらも 創業初期から諦めることなく挑戦し続けている estie pro 2019年9月 2020年7月 ポートフォリオ管理 プロダクト 2021年7月 PM向けプロダクト 2022年7月 館銘板収集 プロダクト 2022年8月 ・仲介向けプロダクト ・オーナー向けプロダクト 2023年3月 2023年10月 2023年7月 新アセットプロダクト 2023年6月 売買事例プロダクト 2023年11月 新アセットプロダクト 2023年12月
  12. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 本日のお話のスコープ 14

    頓挫したプロダクトやプロジェクトも数多く存在しながらも 創業初期から諦めることなく複数プロダクトを作り続けてきている estie pro 2019年9月 2020年7月 ポートフォリオ管理 プロダクト 2021年7月 PM向けプロダクト 2022年7月 館銘板収集 プロダクト 2022年8月 ・仲介向けプロダクト ・オーナー向けプロダクト 2023年3月 2023年10月 2023年7月 新アセットプロダクト 2023年6月 売買事例プロダクト 2023年11月 新アセットプロダクト 2023年12月 Whole Product構想を掲げ、コンパウンドスタートアップとして加速した1年 その覚悟と意思決定や取り組んだことに関する共有
  13. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 「コンパウンドスタートアップ」という戦略を進めていく上での難しさ 16

    ✓ 初期段階でドメインモデルやデータモデルの理想形を構築する ✓ 初期段階で複数プロダクトが使うミドルウェアプラットフォームを作る ✓ リソースが少ない中で次々に新しいプロダクトを生み出す ✓ 事業の柱がない中でプロダクトや事業の不確実性を複数負う ✓ 組織の認知負荷が非常に大きく、組織設計が複雑になりやすい 創業初期からプラットフォーム基盤に投資し、 マルチプロダクトを展開するという極めて難易度の高い戦略
  14. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. この1年取り組んだアンチパターンな意思決定 17

    短期の事業成果ではなく「Purpose実現」に向けた意思決定を行い、 アンチパターンに挑み続けた 選択と集中をしない ドメインエキスパートの話を 無視する ロードマップを描かない 1スプリント2daysの 高速回転 プロダクトの パラシュート展開 その他複数
  15. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 意思決定のたびに抱く3つの葛藤 20

    葛藤② コントロール可能な範囲へ限定したくなる
  16. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 葛藤の背景:PMとしての役割や職務特性 22

    役割や職務特性とのギャップ PMとしての役割や職務特性からこれらの葛藤が生まれやすい コンパウンドスタートアップの 拡大志向 課題を絞る/優先順位を決める/ スコープを削るといったリーンな思考
  17. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 葛藤の背景:PMとしての役割や職務特性 23

    役割や職務特性とのギャップ PMとしての役割や職務特性から葛藤が生まれやすく、至極当然なこと コンパウンドスタートアップの 拡大志向 課題を絞る/優先順位を決める/ スコープを削るといったリーンな思考 この葛藤を超えた意思決定が Purposeの実現へとつながる
  18. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 具体的な取り組み内容:この1年取り組んだアンチパターンな意思決定 24

    以下についてご紹介 選択と集中をしない ドメインエキスパートの話を 無視する ロードマップを描かない 1スプリント2daysの 高速回転 プロダクトの パラシュート展開 その他複数
  19. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 25 選択と集中をしない

    ドメインエキスパートの話を 無視する ロードマップを描かない 1スプリント2daysの 高速回転 プロダクトの パラシュート展開 その他複数 具体的な取り組み内容:この1年取り組んだアンチパターンな意思決定 以下についてご紹介
  20. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 選択と集中をしない 27

    オポチュニティを逸することなく、チャンスがあればプロダクトを リソースを分割してでも新規に投入し続ける 23年1月 現在 プロダクト数 3個 社員数 60名 プロダクト数 社員数 8個 72名
  21. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 実際に起こった議論 28

    Whole Product構想 ? いずれ着手することは決まっているが 投資回収がいつになるかわからないプロダクトに対してどこまで投資すべきか
  22. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 選択と集中をしない 29

    オポチュニティを逸することなく、チャンスがあればプロダクトを リソースを分割してでも新規に投入し続ける 23年1月 現在 プロダクト数 3個 社員数 60名 プロダクト数 社員数 8個 72名
  23. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 選択と集中をしない 30

    オポチュニティを逸することなく、チャンスがあればプロダクトを リソースを分割してでも新規に投入し続ける 23年1月 現在 プロダクト数 3個 社員数 60名 プロダクト数 社員数 8個 72名 組織負荷が高くても可能な限り負債として受け入れる 来期一番解消しなければならないポイント
  24. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 31 選択と集中をしない

    ドメインエキスパートの話を 無視する ロードマップを描かない 1スプリント2daysの 高速回転 プロダクトの パラシュート展開 その他複数 具体的な取り組み内容:この1年取り組んだアンチパターンな意思決定 以下についてご紹介
  25. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 意思決定のたびに抱く3つの葛藤 32

    葛藤② コントロール可能な範囲へ限定したくなる
  26. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. プロダクトを統合したロードマップを描かない:立ち上げに集中 33

    各プロダクトの立ち上げを優先とし、 プロダクトのインテグレーション(統合)は劣後させる意思決定 当初ロードマップを描いたが廃止 各プロダクトの立ち上げを優先 プロダ クトB プロダ クトC プロダ クトD プロダ クトA
  27. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. プロダクトを統合したロードマップを描かない:立ち上げに集中 34

    各プロダクトの立ち上げを優先とし、 プロダクトのインテグレーション(統合)は劣後させる意思決定 当初ロードマップを描いたが廃止 各プロダクトの立ち上げを優先 プロダ クトB プロダ クトC プロダ クトD プロダ クトA 各事業部に任せるという意志決定であり コントロールできない 「プロダクト全体を管掌する」 という役割との自己矛盾
  28. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. プロダクトを統合したロードマップを描かない:コミュニケーションを起点に基盤を推進 37

    技術戦略やミドルウェア/データ基盤をはじめとしたプラットフォーム構築は 月一の連携MTGを起点に大きく進捗 事業部 A 事業部 B データ チーム 新規 事業 新規 事業 Whole Product ステコミ 各プロダクトチームで 横断議論する場を月に1回設置 インテグレーションは劣後させたが、 結果的に基盤開発は著しく進捗 データ基盤の移行/ 複数プロダクトでの活用 横断的な認可基盤の開発/ 認証・認可の移行 新規プロダクトの立ち上げ期間 ½にする開発基盤構築
  29. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. プロダクトを統合したロードマップを描かない:コミュニケーションを起点に基盤を推進 38

    技術戦略やミドルウェア/データ基盤をはじめとしたプラットフォーム構築は 月一の連携MTGを起点に大きく進捗 事業部 A 事業部 B データ チーム 新規 事業 新規 事業 Whole Product ステコミ 各プロダクトチームで 横断議論する場を月に1回設置 インテグレーションは劣後させたが、 結果的に基盤開発は著しく進捗 データ基盤の移行/ 複数プロダクトでの活用 横断的な認可基盤の開発/ 認証・認可の移行 新規プロダクトの開発を期間 ½にする開発基盤構築 データ基盤やミドルウェア基盤といった インテグレーションも大きく進捗
  30. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 39 選択と集中をしない

    ドメインエキスパートの話を 無視する ロードマップを描かない 1スプリント2daysの 高速回転 プロダクトの パラシュート展開 その他複数 具体的な取り組み内容:この1年取り組んだアンチパターンな意思決定 以下についてご紹介
  31. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. プロダクトのパラシュート展開:売買領域への進出 41

    これまでは賃貸領域を中心にプロダクト展開を行っていたところから 売買領域向けにパラシュート展開 賃貸領域 (既存プロダクト領域)
  32. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. プロダクトのパラシュート展開:売買領域への進出 42

    これまでは賃貸領域を中心にプロダクト展開を行っていたところから 売買領域向けにパラシュート展開 賃貸領域 (既存プロダクト領域) リターンは大きいが不確実性が非常に高い意思決定
  33. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. estieのプロダクト領域と攻略の仕方 43

    同じ商業不動産領域といっても領域が異なるとコンテキストが大きく変わる 領域ごとの攻略が必要なため可能な限り早めに展開することが必要と判断 賃貸領域 (既存プロダクト領域) 売買領域 ファイナンス領域 経営領域(ポートフォリオマネジメント)
  34. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. estieのプロダクト領域と攻略の仕方 44

    同じ商業不動産領域といっても領域が異なるとコンテキストが大きく変わる 領域ごとの攻略が必要なため可能な限り早めに展開することが必要と判断 賃貸領域 (既存プロダクト領域) 売買領域 ファイナンス領域 経営領域(ポートフォリオマネジメント) ドメインエキスパートからは 「本当にここからやる?」という問いかけも
  35. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. プロダクトのパラシュート展開:展開のプロセス 46

    既存のデータアセットを活用することでプロダクトの不確実性を 大幅に下げながら開発を実行&投入したプロダクトを起点に新たなプロダクトを創出 賃貸領域 (既存プロダクト領域) データアセット 既存プロダクトのデータ基盤を アセット化 データアセットを起点に プロダクトの垂直立ち上げ 新プロダクト
  36. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. プロダクトのパラシュート展開 47

    既存のデータアセットを活用することでプロダクトの不確実性を 大幅に下げながら開発を実行&投入したプロダクトを起点に新たなプロダクトを創出 賃貸領域 (既存プロダクト領域) データアセット 既存プロダクトのデータ基盤を アセット化 データアセットを起点に プロダクトの垂直立ち上げ 新プロダクト 事業領域を大きく拡大するきっかけに
  37. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. “Why are

    you here?” -お前はどうしたいの?‐ 49 葛藤するたびに思い出していた言葉
  38. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 立ち返る場所:estieのPurposeとMy Purpose

    50 迷った時や葛藤を抱いたときに必ず立ち返る2つのPurpose 「どの道を選ぶとPurposeに至る速度は最速になるか」を問い続けた My Purpose リクルートを超える Excellent companyを作る
  39. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 「Purposeを実現する」とはアンチパターンに挑むこと 51

    Purposeの実現は過去の延長線上には存在しない 過去を超えるアンチパターンに挑むことが必要
  40. © 2023 estie Inc. © 2023 estie Inc. 最後に 53

    「Purposeを実現するプロダクト」は、 アンチパターンへの挑戦から生まれる ✓ 迷った時には企業のPurposeとMy Purposeに立ち返る ✓ Readyになった時には遅い。本当にやるなら早すぎるタイミングで ✓ 意思決定は批判者が出るレベルだからこそ得られるリターンが大きい