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ソフトウェアエンジニアとAIエンジニアの役割分担についてのある事例

 ソフトウェアエンジニアとAIエンジニアの役割分担についてのある事例

yamaryo / 株式会社ナレッジワーク
※2025/12/23開催「Encraft #22 AIプロダクトを支えるアーキテクチャ設計 ー理論と実践」での登壇資料です。
https://knowledgework.connpass.com/event/372086/

セッション概要:
ナレッジワークの「AI商談記録」は、内製の音声認識AIを用いたプロダクトです。AIエンジニアとソフトウェアエンジニアが協働してこのシステムを開発・運用していますが、その分担のあり方は時期によって変わってきました。本セッションでは、これまでの分担の変遷と、現在の協働の形についてお話しします。

登壇者プロフィール:
2009年 東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻博士課程中退。2009年 チームラボ株式会社入社。Web開発・機械学習・アート・社内業務効率化など様々な開発業務を行う。2021年に株式会社Poeticsに参画し、2025年同社のM&Aにともない株式会社ナレッジワーク入社。両社ではAIプロダクトのバックエンド開発に従事。趣味は犬の散歩と田んぼ作業。
Zenn: https://zenn.dev/yamaryoxxxx

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Transcript

  1. © Knowledge Work Inc. 自己紹介 2009年 博士課程中退(音声認識・文字認識) 2009年〜 チームラボ株式会社で主にバックエンド開発 2021年〜

    株式会社Poeticsで本日紹介するプロダクトを開発 2025年7月〜 経営統合により株式会社ナレッジワークに入社        引き続き同プロダクト開発を行う 犬の散歩と田んぼ作業が好きです 2 2 山本 遼 ソフトウェアエンジニア@ナレッジワーク
  2. © Knowledge Work Inc. AI商談記録の主な機能 6 商談記録の様々な機能を網羅的に提供しています 商談内容の分析レポート自動作成 商談の要約に加え、商談後のネクストアクションの提示、商談へ のフィードバックなどをAIが自動作成します

    商談の自動文字起こし オンライン(Web会議・IP電話)・オフライン(対面訪問)のあらゆ る商談をAIにより自動で文字起こしできます CRM/SFAの自動入力 商談内容をセールスフォースに自動入力できます ナレッジワーク AI商談推進への連携 商談内容をナレッジワークAI商談推進のミーティングメモに 自動連携できます
  3. © Knowledge Work Inc. AI商談記録の歴史 7 株式会社ナレッジワーク 
 株式会社Poetics 


    商談解析AI「JamRoll」 経営統合 ナレッジワーク AI商談記録 システム統合 本発表はPoetics時代の取り組みも含みます
  4. © Knowledge Work Inc. AI商談記録のアーキテクチャ 9 アプリケーション ビジネスロジックを実装 構成要素 •

    DB • APIサーバ • フロントエンド • スマホアプリ • etc... バックエンドの技術スタック • golang • terraform
  5. © Knowledge Work Inc. AI商談記録のアーキテクチャ 10 学習 パイプライン DNNモデルの学習を行う •

    音声認識モデル • 話者識別モデル トランスクライバーチーム(※)が教師データ作成し 定期的にモデル重みを再学習 ※文字起こしと話者ラベル付けを行う専門チーム 技術スタック • python • AWS CDK
  6. © Knowledge Work Inc. • 入力:商談の録音音声 出力:文字起こし・要約など • StepFunctionsでバッチジョブを実行 ◦

    Lambda Function, Fargate Task で個別処理 • その他の構成要素 ◦ ジョブDB ◦ イベント送受信 ◦ メトリクス・アラート ◦ 管理画面 • 技術スタック ◦ python ◦ AWS CDK • オンデマンドのコンピュート処理が多い • AWSサーバレスインフラに強く依存 推論ワークフローのアーキテクチャ 12
  7. © Knowledge Work Inc. ナレッジワークにおける組織構造 17 AIエンジニアチーム 
 ソフトウェアエンジニアチーム 


    AI SW プロダクトの正しい動作に責任を持つ 設計やインシデント対応を 組織的に行う仕組みがある プロダクトの推論品質に責任を持つ 精度や速度の向上が チームの目標として設定される
  8. © Knowledge Work Inc. チームの仕組みが生む指向性の違い 18 システムの安定性向上・保守性向上への モチベーションと専門性が強い 推論の精度向上や速度向上への モチベーションと専門性が強い

    システムを改善するモチベーションと専門性に違いがある チームの取り組みがこの違いを生んでいる AIエンジニア 
 ソフトウェアエンジニア 
 AI SW
  9. © Knowledge Work Inc. AI商談記録の責任範囲の分担 21 アプリケーション 推論 ワークフロー 学習

    パイプライン ソフトウェアエンジニ アの責任範囲 AIエンジニアの 責任範囲 AI SW
  10. © Knowledge Work Inc. AI商談記録の責任範囲の分担 22 アプリケー ション 学習 パイプライン

    ソフトウェアエンジニ アの責任範囲 AIエンジニアの 責任範囲 AI SW ? 推論ワークフロー
  11. © Knowledge Work Inc. コンテナで境界を引いた 23 アプリケー ション 学習 パイプライン

    推論ワークフロー AIエンジニア:コンテナイメージを作る ソフトウェアエンジニア:システム全体を作る ソフトウェアエンジニ アの責任範囲 AIエンジニアの 責任範囲 AI SW
  12. © Knowledge Work Inc. コンテナで境界を引いた結果 24 課題
 よかった点 
 一般的で分業しやすい

    デプロイが楽 変更時に両チームが同時に動く必要あり 境界を越える変更を避けがちになる
  13. © Knowledge Work Inc. 新プロジェクトの要件 26 リアルタイム音声認識APIサービス • リアルタイムに音声認識するために、インフラの試行錯誤が必要になった ◦

    Lambda Function / Fargate Service ◦ 処理分割による部分的な並列化 コンテナで境界を引くと、インフラの試行錯誤がしにくいので分担を変える
  14. © Knowledge Work Inc. モジュールで境界を引いた 27 推論サービス ジョブキュー ワーカー アプリケー

    ション 学習 パイプライン AIエンジニア:モジュールを作る ソフトウェアエンジニア:システム全体を作る ソフトウェアエンジニ アの責任範囲 AIエンジニアの 責任範囲 AI SW
  15. © Knowledge Work Inc. モジュールで境界を引いた結果 28 課題
 よかった点 
 アーキテクチャ変更が

    ソフトウェアエンジニアだけで完結 構築時アーキテクチャの試行錯誤ができる 安定性・保守性のための改善がしやすい AIエンジニアからみてブラックボックス化 推論品質を改善したいのはAIエンジニア 触れるのはソフトウェアエンジニア 推論品質の改善が進みにくい
  16. © Knowledge Work Inc. 境界を明確にした合理性 • 専門性を活かした効率的な分担 • 初期開発では必然的な選択 出てきた課題

    • 境界を超える変更を避けがちになった • 改善したい人と、改善できる人がずれた • AIエンジニアは推論を改善したいのにインフラに触れない 2つの境界を振り返って 29
  17. © Knowledge Work Inc. 境界をぼかした 34 学習 パイプライン アプリケー ション

    推論ワークフロー AIエンジニア の責任範囲 ソフトウェアエンジニ アの責任範囲
  18. © Knowledge Work Inc. インフラ変更を含む推論速度の向上(AIエンジニア主導) • 話者識別のGPU処理化 • 音声認識の並列化 •

    処理時間 120分→10分(1時間音声) それを支える基盤整備(ソフトウェアエンジニア主導) • インフラ面のレビュー • ワークフローのリファクタリング • 負荷試験の計画 • 安定リリースのための基盤 この体制で実現したこと 35 モチベーションに沿った分担ができるようになった