エッジDLデバイスの選定において考慮すること中村 晃一 Idein株式会社ML@Loft 2020/1/23
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自己紹介• 中村晃一• Idein Inc. 創業者・代表取締役• https://nineties.github.io/• 東京大学情報理工学系理学部情報科学科卒• 最適化コンパイラ技術を研究• 2015年3月に後期博士課程を退学しIdeinを創業2
IdeinとエッジDL1. Actcast (https://actcast.io) というエッジコンピューティングでシステムを組む為のPaaSを提供している• 安価なデバイスでDLを実行する為のSDK• これまではRaspberry Pi• 今後は様々なデバイスに展開• 多数のデバイスの遠隔管理• マーケットプレイス2. アイシン精機と資本業務提携をしており、車載SWの開発に協力している
©2019, Idein Inc. All rights reserved. 4Raspberry PiでのDeep Learning推論実行https://youtu.be/MKTvxXjQMg8小売店舗で使われている属性解析アプリの例全ての解析をRaspberry Piのみで行い、textのみを送信・生画像を送信しないことでプライバシーに配慮・デバイス・通信・サーバーコストを著しく削減
©2019, Idein Inc. All rights reserved. 5Image Classification Object Detection Pose EstimationSemantic Segmentation Sound Recognition Head Pose Estimationhttps://youtu.be/6m6wdBeCFlMhttps://youtu.be/BmCItHYNTTAhttps://youtu.be/fXW-kPxC_7c
©2019, Idein Inc. All rights reserved.本日の話• エッジコンピューティングとは• エッジデバイスの選定において考慮すること• (一つの事例として) Ideinは何故Raspberry Piに取り組んでいるのか?6
クラウドコンピューティングアプリケーション・データはデータセンターに集約され処理されるIllustrations are designed by macrovector
エッジコンピューティング末端のデバイス上や、デバイスの近くに設置したサーバーで計算を行う。アプリケーション・データは複数の階層で分散して処理されるIllustrations are designed by macrovectorエッジ
エッジコンピューティングが注目される背景データセンターへの負荷集中超低遅延化の需要増加プライバシーへの関心の高まり
データセンターへの負荷集中Ericsson Mobility Report, November 2017IoTデバイスTesla Autopilot v8の画像処理例, Electrekの記事よりコネクテッドデバイスの増加 計算負荷・データ量の大きいアプリケーションの需要増加
超低遅延化への需要増加Toyota Research InstituteのTest Vehicle, engadgetの記事より自動車・ロボット・ドローンなど 第5世代移動通信
プライバシーへの関心の高まりEU一般データ保護規則(GDPR)
Illustrations are designed by macrovectorデータセンターへの負荷集中出来るだけエッジ側で処理をし、負荷を分散する超低遅延化への需要増加出来るだけエッジ側で処理をし、総通信距離を短くするプライバシーへの関心の高まり出来るだけエッジ側で処理をし、必要最小限の情報のみをクラウドに送信
特にDeep Learning推論を実行するデバイスの選定は非常に難しい1. モデル開発と組み込みに必要なスキルの乖離2. デバイスの選択肢が非常に多い3. 考慮しなければならない事が非常に多いエッジデバイスの選定はとても難しい14
モデル開発と組み込みに必要なスキルの乖離• DLモデルをそのままではエッジデバイスで動かせない事が多い• 価格やその他の事情で、十分な性能のハードは使えない• 計算機と演算の相性がある、使えない演算がある場合もある• Pythonが使えない等ソフトウェア側の問題がある場合もある• ハードウェアの特性や製品化までのプロセスを予めよく検討した上で、モデル開発を行う必要があるが、これらに必要なスキルが乖離しておりなかなか難しい15
選択肢が非常に多い16NVIDIA Jetsonシリーズ ARM Cortex-A系 ARM Cortex-M系Intel PCFPGA DL専用アクセラレータチップなどなど
考慮しなければならない事が非常に多い• 価格• 性能• サイズ• 消費電力• I/O• 通信• セキュリティ機能• リアルタイム性• 各種耐久性(熱、埃、水、振動、etc)• メーカーの供給保証や品質保証体制• 最終製品の製造、販売、保守• SW/HW/ユーザー/企業のエコシステム• リーガル的な事などなど17
考慮しなければならない事が非常に多い• 価格• 性能• サイズ• 消費電力• I/O• 通信• セキュリティ機能• リアルタイム性• 各種耐久性(熱、埃、水、振動、etc)• メーカーの供給保証や品質保証体制• 最終製品の製造、販売、保守• SW/HW/ユーザー/企業のエコシステム• リーガル的な事などなど18トレードオフだらけで、一つのデバイスが全てのニーズ満たす事はない無い
どうやって選定するのか?ビジネスモデル上の要請によって決まる。製品の種類• 車?ドローン?ロボット?AIカメラ?スマートスピーカー?ビジネスモデル• DLを搭載した製品を販売する• 組み込み向けのソフトウェアライブラリを販売する• 製品開発の受託を行う• 開発ツールやサービスを提供する• などなど19
例: ハードウェア製品を売るビジネスの場合• 完成品売り切りの場合• 必要なSWを搭載出来るギリギリの性能を持ち、原価の安いデバイスが選択される• 組み込みOSを使い、モデル圧縮技術なども活用して、とにかくリソースを節約する方向に力が働く• HWプラットフォームとして売る場合• 後でどの様なSWを動作させる事になるか分からないので、性能の高いデバイスが選択されがち• 様々なSWが動く様にリッチなOSを使い、AIについても既存のソフトウェアがそのまま使える様にしようと力が働く20ビジネスモデルによってテクノロジーの選択が全く変わってしまう
Ideinの場合: クラウドプラットフォーム事業を行なっている21https://actcast.io● エッジAIのマーケットプレイスがあり、AIを売りたい人と使いたい人を結びつける● 買ったアプリはエッジデバイスに遠隔配信してインストール、すぐにデバイス上で動作● 多数のデバイスの遠隔管理や、デバイスで取った情報と外部サービスのAPI連携などの機能を備える(Idein自身でデバイスは販売していない)
プラットフォームビジネスの特徴とIdeinの選択• 参加するプレイヤーが多い程サービス価値が向上する(ネットワーク外部性)• 先行者優位性が強く働く• リッチなOSが動作し、様々なSWが動作する事が必要。• 普及しており、安価で入手の容易なデバイスである方が良い。• 様々な目的に使えるように、HWエコシステムも大きな方が良い。これらの観点で、1st デバイスとしてRaspberry Piを選択した。AIを動かすには低スペックだが、そこさえ技術で解決すれば魅力的な選択肢一方、Idein自身で最終製品を売る訳ではないので、Raspiの品質保証面の問題の優先度は下がった。
IdeinActcastマーケットプレイスデバイス・アプリの管理¥ ¥AIベンダ個人の開発者デバイスメーカー ITサービスベンダ¥¥¥ ¥¥Actcast対応IoTデバイスサービスエンドユーザソリューションベンダー実世界情報運営遠隔インストールアプリ利用料 アプリアプリ利用料から手数料分を徴収登録(無料)購入アプリ利用料SDK提供(無料)利用料代金代金 利用料デバイス・アプリ・サービスを自由に組み合わせて、実世界情報を扱うシステムを手軽に構築出来るデバイス・アプリの遠隔運用、デバイスで取得した情報とWebの連携などの機能を提供機械学習モデルだけで直接マネタイズできる低コストでデバイスにAIを搭載しプラットフォーム化出来る分析・可視化・通知等安価なデバイスで深層学習を動かすアプリを簡単に作れる
Raspi以外にも取り組み中Pythonコード +Schema同じモデルとコードから、様々なハードで効率的に実行できるエッジデバイス用アプリを生成適材適所でデバイスを選択して使える様にすることを目指す● 高性能デバイス● 低性能デバイス● 高耐久デバイス…ActDKCLI, 最適化コンパイラ,AppFramework
まとめ• エッジデバイスの選定は、考えなければならない事が非常に多く難しい• ビジネスモデルによってテクノロジーの選択が変わるといった話をしました。何かご参考になればありがたいです。