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実践共同体論に基づく質問回答サイト理解の可能性

Db3d00564e01b3b4efb99edeb5e40f64?s=47 Tajima Itsuro
October 29, 2016

 実践共同体論に基づく質問回答サイト理解の可能性

The posibility of understanding Q&A sites via the theory of Communities of Practice
三田図書館・情報学会2016年度研究大会にて

Db3d00564e01b3b4efb99edeb5e40f64?s=128

Tajima Itsuro

October 29, 2016
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  1. 実践共同体論に基づく 質問回答サイト理解の可能性 質問回答サイト理解の可能性 田島 逸郎 慶應義塾大学大学院

  2. はじめに Introduction

  3. 質問回答サイトとは • 誰もが質問をでき、 それに対して誰もが 回答をできるサイト • 質問回答は、記録 • 質問回答は、記録 され検索可能な資

    源となる 質問回答サイト
  4. 質問回答サイトとは • Shahによる暫定的定義 –人が情報ニーズを自然言語による質問の形で 提示できる –他の人が誰かの情報ニーズに応答できる場所 –他の人が誰かの情報ニーズに応答できる場所 –以上のようなサービスを取り巻く参加に基づく 共同体

  5. 質問回答サイト研究のトレンド • 情報検索と情報探索行動の両方に関わる • 質問や回答の質 • 質問者、回答者の動機 自然言語処理に基づく質問回答の分析及び推 • 自然言語処理に基づく質問回答の分析及び推

    薦など • 行動の大域的な集計
  6. 質問回答サイト研究の問題点 質問回答サイト • 情報ニーズを自然言 語の形で提示 • 誰かの情報ニーズに 主な研究のトレンド • 質問や回答の質

    • 質問者、回答者の動 機 • 誰かの情報ニーズに 応答できる場所 • サービスを取り巻く参 加に基づく共同体 機 • 自然言語処理に基づ く質問回答の分析 • 行動の大域的な集 計
  7. 参加に基づく共同体の理解 • 質問回答サイトにおいて「参加に基づく共同体」 は実際にどう形作られていて、その中でどういった 活動が行われているのか? • Wengerの「実践共同体論」によって理解できる 可能性がある • Wengerの「実践共同体論」によって理解できる

    可能性がある –参加に注目した共同体概念 –様々な種類のオンラインコミュニティに適用され ている
  8. 本研究の目的 • 質問回答サイトに実践共同体論を適用した場合の 可能性、およびその限界を検討する 可能性、およびその限界を検討する • 実践共同体論が、質問回答サイトの共同体の成り 立ちや活動の何をどう捉えることにつながるのか?

  9. 本研究の構成 Wengerの 実践共同体論 Wengerの実践共同体論の 独特な概念を検討 Rosenbaumらによる 質問回答サイトへの適用 Rosenbaumらの研究の 意義と問題点 実践の理解へ

    実践共同体論を質問回答サイトに 適用した数少ない先行研究を検討 実践共同体論によると、 実践の分析が重要である
  10. Wengerの 実践共同体論 Rosenbaumらによる 質問回答サイトへの適用 Rosenbaumらの研究の 意義と問題点 実践の理解へ 実践共同体論の検討 Considering the

    theory of Communities of Practice 実践の理解へ
  11. 実践共同体論とは • Lave,Wengerが1993年に『状況に埋め込ま れた学習』において学習の社会的側面を明らか にするために導入した概念枠組の1つ • Wengerは1998年にCommunities of • Wengerは1998年にCommunities

    of Practiceにおいてさらに精緻化した • 学習の他に、組織や共同体などの様々な分野 に適用されている
  12. 実践共同体論とは • 様々な概念を提示し、そのつながりを見ていくこと で各概念を相互的に定義している • 「実践」と「アイデンティティ」の理論が中心 • 「実践共同体」概念を正確に理解するには「実 • 「実践共同体」概念を正確に理解するには「実

    践」概念を理解しないといけない • アイデンティティも実践の中で形成されるものとし ている
  13. 実践共同体論における実践概念 • 実践は「意味の交渉」である • 意味の交渉は「参加」と「物象化」の二重性からなる – 参加:ある共同体の中で何かを経験すること – 物象化:経験が何か具体的なものになること –

    物象化:経験が何か具体的なものになること – 記録だけでなく、声に出すことなども物象化 • 二重性は、「2つが相互に関係している」ことを意味す ることも「2つが同時に起こり切り離せない」ことを意味 することもある
  14. 実践共同体とは何か • このように定義された実践が共同体と関わるさいに 見いだされる特定の種類の共同体 共同体の様々な側面 ▪相互関与(Mutual 実践 =意味の交渉 =参加/物象 化

    ▪相互関与(Mutual Engagement) ▪共同の企て(Joint Enterprise) ▪共有された資源群 (Shared Repertoire)
  15. 相互関与 • ある共同体の中で何かに従事し、互いに意味の 交渉をする中にある • 実践共同体は単なる集団やネットワークではな い い • それぞれ異なる希望や問題を持ち、互いに助け

    合い、独自の位置やアイデンティティを見出す • 衝突や苦難も重要になる • つまり、複雑である
  16. 共同の企て • 相互関与の過程を集めた結果 • 相互関与の複雑性をそのまま反映する • 皆が同じことを信じているとは限らず、目的や規 範などは絶えず交渉される 範などは絶えず交渉される •

    外からの影響や、明文化されたガイドラインなども 実践の中で解釈される • つまり、文章などで共同体を定義することはでき ない
  17. 共有された資源群 • 意味の交渉のための資源を生み出す • 慣習、言葉、道具、方法、概念など • それらもまた実践の一部となる • 相互関与の複雑な歴史を反映して、あいまいさを •

    相互関与の複雑な歴史を反映して、あいまいさを 持つ • あいまいさのため、資源を使う際には意味の交渉が 行われ、誤解などもされながらその都度新たな意味 が作られる • つまり、ある資源の解釈は状況による
  18. まとめ:実践共同体論の特徴 • 参加と物象化が同時に起こり、相互に関わるのが 実践 • 実践共同体は以下のようなものである – 人や活動が固定された組織としてではなく、複雑 な実践が連なっていくものとして見る –

    人や活動が固定された組織としてではなく、複雑 な実践が連なっていくものとして見る – 明文化された目的などで定義することができない – 資源が生み出されるが、それも実践の中で解釈 される
  19. Wengerの 実践共同体論 Rosenbaumらによる 質問回答サイトへの適用 Rosenbaumらの研究の 意義と問題点 実践の理解へ Rosenbaumらによる質問回答サ イトへの実践共同体論の適用 Rosenbaums’

    arguments of Q&A sites as Communities of Practice 実践の理解へ
  20. Rosenbaum and Shachafの研究 • 3つの質問回答サイトについてGiddensの構造化 理論とWengerの実践共同体論を適用 • 理論的な検討を行った数少ない研究 • 実践共同体論をどう捉え

    • 実践共同体論をどう捉え • それをどう質問回答サイトに適用し • その結果が質問回答サイト研究でどう使われ • どのような課題があるか
  21. Rosenbaumらの主張 • 質問回答サイトは実践共同体である –相互関与 –共同の企て 共有された資源群 –共有された資源群 –アイデンティティ(Rosenbaumらが追加) • 以上の特徴を備えているため

  22. 相互関与 Wenger • 共同体の中で互いに 何かを行い、意味の 交渉をすること Rosenbaum&Sha chaf • 質問と回答がされてい

    ることがまさに相互関 与 交渉をすること • 参加者は異なった関 心を持ち、互いに助け 合う 与 • 質問者も回答者も完 全な知識を持っておら ず、助け合う
  23. 共同の企て Wenger • 相互関与の過程を集 めたもの • 一つの確固たる目的 Rosenbaum&Sha chaf •

    共同体内でのルールや ガイドラインなどの交渉 が存在する • 一つの確固たる目的 などを共有していると は限らない • 明文化された目的な どは資源として使われ る が存在する • 参加者が実際にこれら を実行している • サイトによって様々な方 法がある
  24. 共有された資源群 Wenger • 意味の交渉の中で生 成され、使われる • あいまいさを持ち、実 Rosenbaum&Sha chaf •

    各参加者の参加の履 歴や、プロフィールが 存在する • あいまいさを持ち、実 践の中で意味が作ら れていく 存在する • 質問回答の記録が存 在する
  25. アイデンティティ Wenger • 共同体の中における 意味の交渉で成立す る、個人の位置 Rosenbaum&Sha chaf • 個々人が質問回答を

    してきた経歴がこれに あたる る、個人の位置 あたる • このサイトを使ってこっ ちは使わないなどの選 択もアイデンティティを 高める
  26. まとめ • 質問回答サイトは、質問回答という実践のある 実践共同体である • 実践によって以下のような資源が生まれ、使われ る る –目的やガイドラインの交渉 –質問回答の履歴

    –参加者の評価やプロフィール
  27. Wengerの 実践共同体論 Rosenbaumらによる 質問回答サイトへの適用 Rosenbaumらの研究の 意義と問題点 実践の理解へ Rosenbaumらの研究の意義と課題 How the

    Rosenbaums’ argument succeeds and fails 実践の理解へ
  28. Rosenbaumらの研究の意義 • 質問回答サイトの研究領域を拡張した • Rosenbaumらの論文を引用している研究を サーベイ –質問回答サイトが共同体であることの証拠 –質問回答サイトが共同体であることの証拠 –社会的側面:行為者、合意形成 –質問回答以外の行動:評価、過去の貢献

    –複数の質問回答サイトの比較 –しかし、実践共同体としてさらに実践や共同 体のありようを深めた研究は少ない
  29. Rosenbaumらの研究の課題 • Rosenbaumらは、「意味の二重性」を参加と 物象化(資源)という異なるものの相互関係とし て捉えている • 人の参加と質問回答の記録の関係の社会的側 • 人の参加と質問回答の記録の関係の社会的側 面を見る上で,この視点は重要である

    参加 (質問回答) 物象化 (記録)
  30. Rosenbaumらの研究の課題 • Rosenbaumらは、「意味の二重性」を参加と 物象化(資源)の相互関係として捉えている 参加 物象化 • 意味の交渉の「参加と物象化が同時に起こる」と ころまで踏み込んでいない 参加

    物象化 参加 (質問回答) 物象化 (記録)
  31. Rosenbaumらの研究の課題 • 意味の交渉の「参加と物象化が同時に起こる」と ころまで踏み込んでいない 参加 物象化 • 質問回答サイトでは、参加(質問回答行為)と 物象化(記録された質問回答)が密接であるた め、この側面は重要

    • 実践を見ていく必要があるのではないか 物象化
  32. Wengerの 実践共同体論 Rosenbaumらによる 質問回答サイトへの適用 Rosenbaumらの研究の 意義と問題点 実践の理解へ 結論:質問回答サイトにおける 実践の研究の可能性 Conclusion:

    A perspective of practice in the Q&A sites 実践の理解へ
  33. 質問回答サイトにおける実際の実践 • 質問回答サイトにおける実践では,例えば – 知らない相手が回答できるように質問行為を組 み立てる – 質問回答の分からない部分を問いただす – 質問回答の分からない部分を問いただす

    – 規範の適用、過去の質問回答の使用 • などといった行為が複雑に織りなされ,「質問回答」 と言えるものができあがり,それら全てが記録される
  34. 実践共同体から実践の研究へ • 質問回答の記録は,質問回答の実践の複雑 さをそのまま反映している • 参加者と資源としての質問回答は分けられず, 参加の実際を理解する必要がある 参加の実際を理解する必要がある • それによって,質問回答サイトがどのような「共同

    体」で,どのように知識がやり取りされているかも わかるだろう • 実践共同体論はその側面を明らかにした • 実践の理解が,実践共同体論に基づく質問回 答サイト理解の可能性である.
  35. 実践共同体論に基づく 質問回答サイト理解の可能性 質問回答サイト理解の可能性 田島 逸郎 慶應義塾大学大学院