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Stack Overflowにおける「知識の総和の増加」への志向と達成

Tajima Itsuro
October 07, 2017

Stack Overflowにおける「知識の総和の増加」への志向と達成

Tajima Itsuro

October 07, 2017
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  1. 研究対象 • プログラマー向けの質問回答サイト Stack Overflow(SO)を研究対象とする • 質問と回答,編集やコメント,重複の指摘などが可能 • 有⽤な知識を協働で蓄積する意図のもとに設⽴,運営 •

    実際にプログラマーに有⽤な情報源となっている • Alexa rank 55(17/10/02), 1500万質問 • プログラマーの検索⾏動の調査の結果,63%がSOを 訪れることで検索を終えている • よって,本研究の⽬的に適した対象である Xia, Xin; et al. What do developers search for on the web?. Empirical Software Engineering. 2017, vol.22, no.6, p.1-37. https://stackoverflow.com/ https://www.alexa.com/siteinfo/stackoverflow.com http://data.stackexchange.com/
  2. 4/16:”So what is stackoverflow?” • AtwoodがSOを設⽴しようとしたきっかけ • アメリカでは,有名なプログラマーがブログで技術情 報などを発信していた •

    コメント欄において,技術的な質問が数多くなされ, ブロガーはその対応に追われていた • 専業の回答者としてのブロガーにはなりたくなかった • ブロガーになるには敷居が⾼かった • ブログにおいては他の情報源で情報を探しにくいため 質問がされ,回答者になるには敷居が⾼かった https://blog.codinghorror.com/introducing-stackoverflow-com/
  3. 4/16:”So what is stackoverflow?” • 技術情報の探しにくさと提供する敷居の⾼さの問題 • 「簡単に参加でき,その成果を探しやすくできるよう な形でオンラインに出せるような,何かを作ろう」 •

    それは以下のようなウェブサイトである • 解決策を⾒るのに課⾦が必要なものではなく • 世界のプログラミングに関する良い知識の総和を, 集合的に増やすような究極的な⽬的を持ち • より良いプログラミングがゴールである https://blog.codinghorror.com/introducing-stackoverflow-com/
  4. ⽅針(2)質問が重複した場合どうすれば よいか • ⼀⽅,安易に「重複」とすべきではないともしている • 同じ内容の質問でも別の表現ができる • 同じように⾒える問題でも解決の⽅法が違う場合が ある •

    →他の⼈が参加して知識を持ち寄れる契機となる • あくまでSOにおける「質問の重複」の定義はゆるやか であり,利⽤者同⼠の判断に任されている • プログラミングに特有の問題を適切に管理できるよう な⽅針となっている
  5. ⽅針(3)利⽤者による質問回答の管理 • 「質問回答やSOに関する議論」をできる「メタ」質問 回答サイトを設置 • 例えば,どういった質問や回答が望ましいかという議 論も,メタで⾏える • 「⽅針」の詳細は利⽤者に委ねられる •

    「編集」で,質問回答を他の⼈にもわかりやすくする • 質問回答は質問者と回答者が相互に理解していれば成 り⽴つが,それを越えて他の訪れた⼈にもわかりやす いように,説明や情報源などを追加して「改善」する
  6. ⽅針(4)「検索」への志向 • SOの「窓⼝」はGoogleなどのWeb検索である • 質問回答,及びその集まりを第三者にわかりやすくす ることが,Web検索結果の改善につながる • 「少なくとも他の1⼈が関⼼を持つような質問」 • 実践的な質問:実際の問題に関わる語を質問に盛り込む

    • わかりやすい⽂に編集することで,アクセスを容易に • 重複を過度に排除しない:様々な⽅⾯からの検索 • 訪問者にアクセスを容易にするとともに, • SOが信頼のおける⼈の集まる場であることをも⽰す • アクセスされるだろうということが良い⾏動を促す
  7. SOは⽬標を達成する⽅針を設定している • ⽬的:「プログラミングに関する良い知識の総和を,集 合的に増やす」ゴール:「良いプログラミング」 • 「総和を増やす」 • →検索されやすいような=わかりやすく質問を書く ような様々な⽅針を設定(1,2,4) •

    「集合的に増やす」 • →参加を容易にする仕組み,⾃治(2,3) • 「良いプログラミング」 • →実践的な問題の解決への志向(1) • SOが⽬標を達成する具体的な⽅針を明らかにした.
  8. 先⾏研究の調査 • 質問回答サイトは,図書館・情報学,計算機科学など 複数の分野で研究されている • Gazan:2010年までの研究を包括的にレビュー • Srbaら:2015年までの,計算機科学の中の⼈⼯知能や 機械学習によるアプローチに絞ってレビュー •

    本研究では,2011年以降の流れを含めてまとめた • 質問や回答など,内容に注⽬した研究 • 利⽤者の特性や⾏動,動機,過程に注⽬した研究 • サイト全体の統計や概念枠組の研究