Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

oku-slide-stat2-2

 oku-slide-stat2-2

数理統計学特論II
第2回 検定論
奥 牧人 (未病研究センター)
2022/06/22
2023/06/21
2024/06/19
2025/06/25

Avatar for Makito Oku

Makito Oku

March 29, 2022
Tweet

More Decks by Makito Oku

Other Decks in Education

Transcript

  1. 今回の位置付け 1. 前置きと準備 2. 確率と1次元の確率変数 3. 多次元の確率変数 4. 統計量と標本分布 5.

    統計的決定理論の枠組み 6. ⼗分統計量 7. 推定論 8. 検定論 9. 区間推定 10. 正規分布、2項分布に関する推測 その他の話題 11. 線形モデル 12. ノンパラメトリック法 13. 漸近理論 14. ベイズ法 確率と統計の基礎 良い点推定とは︖ 良い検定とは︖ 問題設定と準備 7章と8章に関する証明 回帰分析と分散分析を統⼀的に理解 常⽤される⼿法を改めて整理 ベイズ統計を簡単に紹介 ノンパラを簡単に紹介 3 / 39
  2. 帰無仮説と対立仮説 例、母集団の平均 が かどうかの検定 を帰無仮説、 を対立仮説と呼ぶ より一般に、母数を とし、母数空間を , として次のように書く

    上の例でいうと、 , 集合が 点のみから成るものを単純仮説、そうでないものを 複合仮説と呼ぶ 検定に関係ない未知母数を局外母数または撹乱母数と呼ぶ μ 0 H0 : μ = 0 vs. H1 : μ ≠ 0 H0 H1 θ Θ = Θ0 ∪ Θ1 Θ0 ∩ Θ1 = ∅ H 0 : θ ∈ Θ 0 vs. H 1 : θ ∈ Θ 1 Θ0 = {0} Θ1 = R ∖ {0} 1 8 / 39
  3. 片側検定と両側検定 片側検定 または 両側検定 H0 : θ ≤ θ0 vs.

    H1 : θ > θ0 H0 : θ ≥ θ0 vs. H1 : θ < θ0 H0 : θ = θ0 vs. H1 : θ ≠ θ0 9 / 39
  4. 第 種の過誤と第 種の過誤 決定理論における決定を とする 帰無仮説の受容を 、棄却を とおく 損失関数は、決定が正しければ 、間違っていれば

    とする (第 種の過誤) (第 種の過誤) 以降では第 種の過誤の確率が 以下という条件下で、第 種 の過誤の確率が最も小さい検定を良い検定とみなす 1 2 d ∈ {0, 1} d = 0 d = 1 0 1 d = 0 d = 1 H 0 : θ ∈ Θ 0 0 1 1 H 1 : θ ∈ Θ 1 1 2 0 1 α 2 10 / 39
  5. 検出力 検出力関数 (通常使う とは逆なので注意) 検定関数を明示する場合は のように書く リスク関数 有意水準が の検定 を検定のサイズと呼ぶ

    β β(θ) = E[δ(X)] = P (δ(X) = 1) βδ (θ) R(θ, δ) = { β(θ) if θ ∈ Θ0 1 − β(θ) if θ ∈ Θ1 α β(θ) ≤ α, ∀θ ∈ Θ0 maxθ∈Θ 0 β(θ) 14 / 39
  6. 問題設定 , がともに単純仮説とする 有意水準 の検定 が最強力検定であるとは、任意の有意水準 の検定 に対して以下が成り立つこと ( は複合でも良い)

    尤度比 ここで は確率質量関数または確率密度関数 H0 H1 H0 : θ = θ0 vs. H1 : θ = θ1 α δ ∗ α δ H0 βδ∗ (θ1 ) ≥ βδ (θ1 ) L = f(x, θ1 ) f(x, θ0 ) f(x, θ) 17 / 39
  7. ネイマン・ピアソンの補題との関係 一方、 を計算すると これを最小化する は、積分の中身を最大化するので となり、確かに尤度比に基づく検定となっている。 R1 + cR0 R1

    + cR0 = P (d = 0 ∣ θ = θ1 ) + cP (d = 1 ∣ θ = θ0 ) = ∫ (1 − δ(x))f(x, θ1 )dx + c ∫ δ(x)f(x, θ0 )dx = 1 − ∫ δ(x)(f(x, θ1 ) − cf(x, θ0 ))dx δ(x) δ(x) = { 1 if f(x, θ1 ) − cf(x, θ0 ) > 0 0 if f(x, θ1 ) − cf(x, θ0 ) < 0 22 / 39
  8. 一様最強力検定 一般の場合 一様最強力検定 (Uniformly Most Powerful test, UMP 検定) 有意水準

    の検定 が UMP 検定であるとは、任意の有意 水準 の検定 に対して以下が成り立つこと 常に存在するとは限らない H0 : θ ∈ Θ0 vs. H1 : θ ∈ Θ1 α δ ∗ α δ βδ∗ (θ) ≥ βδ (θ), ∀θ ∈ Θ1 24 / 39
  9. 例 母数が 次元の指数型分布族 ( は自然母数) 例、ポアソン分布、分散のみ未知の正規分布など 尤度比 これは のとき の単調増加関数

    1 ψ f(x, ψ) = h(x) exp (ψT (x) − c(ψ)) f(x, ψ1 ) f(x, ψ0 ) = exp ((ψ1 − ψ0 )T (x) − (c(ψ1 ) − c(ψ0 ))) ψ0 < ψ1 T (x) 26 / 39
  10. UMP 検定の十分条件 条件 が一次元 が に関して単調尤度比を持つ 片側検定 このとき任意の に対して ,

    が 存在し、次の形の検定関数が有意水準 の UMP 検定となる θ f(x, θ) T (x) H0 : θ ≤ θ0 vs. H1 : θ > θ0 α ∈ [0, 1] c ∈ (−∞, ∞) r ∈ [0, 1] α δ(x) = ⎧ ⎨ ⎩ 1 if T (x) > c r if T (x) = c 0 if T (x) < c 27 / 39
  11. 不偏検定 両側検定の場合、一様最強力検定 (UMP 検定) は存在しない。 不偏検定 一様最強力不偏検定 (Uniformly Most Powerful

    Unbiased test, UMPU 検定) を有意水準 の不偏検定とする。 任意の に関して以下が成り立つとき、 は UMPU 検定 β(θ) ≤ α, ∀θ ∈ Θ0 β(θ) ≥ α, ∀θ ∈ Θ1 δ, δ ∗ α δ δ ∗ βδ∗ (θ) ≥ βδ (θ), ∀θ ∈ Θ1 29 / 39
  12. 尤度比検定 UMP 検定や UMPU 検定が存在しない場合にも使える方法 尤度関数 尤度比 尤度比検定 fn (x,

    θ) = n ∏ i=1 f(xi , θ) L = max θ∈Θ 1 fn (x, θ) max θ∈Θ 0 fn (x, θ) L > c ⇒ reject 33 / 39
  13. 例 とし、 は未知の局外母数として、 以下の検定問題を考える のもとでの最尤推定量は のもとでの最尤推定量は , 連続値なので となるため は無視

    これらを代入して整理すると、尤度比は X1 , … , Xn i.i.d. ∼ N (μ, σ2 ) σ2 H0 : μ = 0 vs. H1 : μ ≠ 0 H0 ^ σ 2 0 = ∑ x 2 i /n H1 ^ μ1 = ¯ x ^ σ 2 1 = ∑(xi − ¯ x) 2 /n P ( ^ μ1 = 0) = 0 μ ≠ 0 L = ( ∑ n i=1 x 2 i ∑ n i=1 (xi − ¯ x)2 ) n/2 34 / 39
  14. 例、続き ここで を用いると (参考) 統計量 は の単調増加関数なので、この場合は両側 検定と尤度比 検定が等価になることが示された ∑

    x 2 i = ∑(xi − ¯ x) 2 + n¯ x 2 L 2/n = 1 + n¯ x 2 ∑ n i=1 (xi − ¯ x)2 = 1 + 1 n − 1 t 2 t t = √n(¯ x − μ) s L t 2 t t 2 > t α/2 (n − 1) 2 ⇒ reject 35 / 39
  15. まとめ 検定の「良さ」に関する用語と概念を説明しました。 1. 検定論の枠組み ! 検出力の意味を説明できる? 2. 最強力検定とネイマン・ピアソンの補題 ! ネイマン・ピアソンの補題の意味を説明できる?

    3. リスクセットの考え方とネイマン・ピアソンの補題 4. 単調尤度比と一様最強力検定 ! 一様最強力検定の意味を説明できる? 5. 不偏検定 ! 不偏検定の意味を説明できる? 6. 尤度比検定 ! 尤度比検定の意味を説明できる? 37 / 39