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量子クラウドシステムと運用

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February 15, 2026

 量子クラウドシステムと運用

「さくらインターネット×大阪大学 量子コンピューター見学会」( https://sakura-tokyo.connpass.com/event/379158/ )で量子クラウドシステムと運用を説明するために使用した資料です。

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February 15, 2026
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  1. 自己紹介 つかの さとゆき ◆量子コンピュータ・エンジニア(ソフトウェア) • 大阪大学量子情報・量子生命研究センター(QIQB) 特任研究員 • 量子コンピュータのシステムソフトウェアに関する研究・開発・運用 ◆バックグラウンド

    • 学生時代は数学科(物理とは無縁) • ソフトウェア開発会社に就職 • アプリケーション基盤、ネットワーク監視・制御システム、分散システムなど ◆量子コンピュータのオープンソース活動など • 量子コンピュータ・クラウド基盤gaqqie • 情報処理推進機構(IPA)の未踏ターゲット事業に採択(2021年度) • おそらく、最初の量子コンピュータ・クラウド基盤OSS • 「量子コンピュータの頭の中」(技術評論社) • ビジネス書でも専門書でもない、プログラマ向け入門書 • 計算したりプログラミングしたり手を動かす。つまづかないように配慮 2 2 @snuffkin 量子クラウドの中の人 書泉グランデ 2023年数学書ベスト4
  2. 阪大の超伝導量子コンピュータ 5 5 制御装置がマイクロ波を送受信 希釈冷凍機 (円筒状) 希釈冷凍機の中身 64量子ビットのチップ 提供:理化学研究所 •

    環境の影響を受けやすい →けれど、制御したり測定したい • 大きな計算は量子誤り訂正が必要 • 計算以外もスケールする必要あり 熱雑音を防ぐためチップ周辺は ほぼ絶対零度(10mK)
  3. 量子コンピュータのIT化 • 実験装置からITサービスへ • ユーザが欲しいのは実験装置ではなくITサービス • 2016年 IBMが量子コンピュータをクラウド公開 • 公開した頃の様子がIBMのブログで紹介されている

    https://research.ibm.com/blog/quantum-five-years • 当時は5量子ビット。現在は156量子ビットの実機が一般利用可能 • Qiskit(量子ブログラミング・ライブラリ)はなく、GUIから利用していた • クラウド化の効果 • クラウド化する以前は、実験の研究者しか 扱えなかった • 誰でもいつでもどこからでも、利用可能 • 理論の研究者だけでなく、一般の方も 6 6 2016年当時の画面 https://wired.jp/2016/05/09/ibm-letting-anyone-play- quantum-computer/
  4. クラウド化により参入者が増加(利用者だけでなくプロバイダも) • 2019年 AWSがAmazon Braketを開始 https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/amazon-braket-get-started-with-quantum-computing/ • 2020年 MicrosoftがAzure Quantumを開始

    https://cloudblogs.microsoft.com/quantum/2020/05/19/azure-quantum-preview-new-developer-training-learning-tools/ 7 7 中性原子 イオン トラップ 超伝導 光 クラウド公開されている実機(一部) ※SpinQはNMR方式の実機も公開している
  5. 日本の量子コンピュータ地図(2026年予定) 9 9 理研(埼玉県和光市) 超伝導,光,イオン 産総研(茨城県つくば市) 中性原子,超伝導,光 OQC(東京都江東区) 超伝導 東京大(神奈川県川崎市)

    超伝導 理研(兵庫県神戸市) 超伝導 大阪大(大阪府豊中市) 超伝導,イオン ロゴは開発した機関 共同研究の場合は先頭の機関のロゴを記載 導入機関(場所) 方式 凡例
  6. OQTOPUS • 量子コンピュータ・プラットフォームをOSSとして開発 • Open Quantum Toolchain for OPerators and

    USers (OQTOPUS) 11 リポジトリ https://github.com/oqtopus-team A Practical Open-Source Software Stack for a Cloud-Based Quantum Computing System https://arxiv.org/abs/2507.23165 developed by OQTOPUS Cloud Demo https://oqtopus-team.github.io/ 大阪大学、富士通、 セック、TIS
  7. なぜ開発したのか? • IBM, AWS, Azureなど商用の量子クラウドは増えたが、 システムソフトウェアは非公開 • QPUをクラウド公開するには参入障壁が高い • ハードウェアとアルゴリズムだけでは、

    実用レベルのコンピュータは作れない • ソフトウェアのないハードウェアだけでは、コンピュータとして動作しない • ミドルウェアを開発し、QPU(実験装置)をITシステムとして公開する必要がある • 大規模なコンピュータには、運用者向けのソフトウェアが必要になる • ハードウェアの研究者が、ミドルウェア開発にリソースを割くのは困難 • ハードウェアに依存しない部分のソフトウェアは、共通化したい • OSS化し、世界中で利用してもらい、成長していく → Linuxのイメージ 12
  8. 13 13 ユーザー プログラミング OQTOPUS Cloud OQTOPUS Frontend OQTOPUS Admin

    QURI Parts OQTOPUS OQTOPUS Engine 制御装置 量子チップ フロントエンド層 クラウド層 バックエンド層 ユーザー管理 ジョブ管理 スケジューリング トランスパイル マイクロ波信号 波形生成 計算処理 マイクロ波信号 送受信 Pulse Sequencer Tranqu Server Device Gateway OQTOPUS ソフトウェア QDash インターネット通信 ローカル通信 凡 例 運用 ユーザが量子プログラミング OSSにするのが一般的 OpenQASM3形式 →IBM,AWSなどが策定 ユーザやジョブを管理 量子チップ固有の命令に変換 量子回路の最適化, etc. マイクロ波の 波形生成 マイクロ波の 送受信, FPGA 超伝導量子回路で 計算を実行 まだ標準規格が無い 従来の技術が活躍 較正などの運用技術
  9. 理研、大阪大学などで運用されている OQTOPUSの実績 14 14 RIKEN(Mar. 2023) Fujitsu(Oct. 2023) UOsaka (Dec.

    2023) RIKEN and Fujitsu (Apr. 2025) 超伝導 UOsaka (Jul. 2025) 日本国内で開発され、クラウド利用可能な超伝導コンピュータは上記で全部 上記以外の実機についても、導入検討を進めている UOsaka (Dec. 2025) AIST (Jan. 2026) 超伝導 イオン トラップ (予定) (予定)
  10. OQTOPUSの機能 • 量子クラウドの主要な機能をOSSとして実装 15 (P)はコードがpublic、(N)は non-public Key features IBM Quantum

    Amazon Braket Azure Quantum Qibo qBraid OQTOPUS Server-side transpiler ✓ (P) ✓ (N) ✓ (N) ✓ (P) ✗ ✓ (P) Server-side execution ✓ (N) ✓ (N) ✓ (N) ✗ ✗ ✓ (P) Multi-programming ✗ ✗ ✗ ✗ ✗ ✓ (P) Error mitigation ✓ (P) ✓ (N) ✓ (N) ✓ (P) ✓ (N) ✓ (P) Estimation ✓ (P) ✓ (N) ✗ ✓ (P) ✗ ✓ (P) Composer ✓ (N) ✗ ✗ ✗ ✓ (N) ✓ (P)
  11. Pythonで量子プログラミング • 量子回路ライブラリはPythonが多いため、 学習コストが低い • 科学計算ライブラリ(NumPy,SciPy)が整備されている 量子プログラミング・ライブラリとして、 QunaSys社が開発しているQURI Partsをサポート OpenQASM

    3(のサブセット)をクラウドに 送信する(QURI Parts OQTOPUS) サーバのインタフェースがHTTPなので、 curl(CLI)からも量子回路を実行できる QURI Parts OQTOPUS 16 16 コードの実装例
  12. • サーバレス・アーキテクチャを採用 • 運用者がサーバ管理せずに済む • スケールしやすい設計 →ユーザアクセスの 負荷はクラウド層で受け止める • FastAPI

    on Lambda • とは言っても、ほとんどの機能はPCで 動作します(AWSに縛られない) OQTOPUS Cloud 17 17 URLの例 • インタフェース仕様は標準的な技術を利用 • URL設計はRESTful APIを採用 • インタフェース仕様はOpenAPIフォーマットで記述 • 量子回路のフォーマットはOpenQASM 3(のサブセット) • 実はクラウド層はOpenQASM 3かどうかは気にしていない
  13. トランスパイラ(Tranqu Server) • ユーザが実装した量子回路のゲートを 量子デバイスがサポートするゲートに変換 • 量子プログラムの量子ビット(virtual qubit)を量子デバイスの量子ビット (physical qubit)にマッピングする。量子ビット間の接続性を考慮

    ➢ 最適なマッピングを求めるのはNP困難問題 ➢ ノイズの少ない場所を使いたい • 短い量子回路に変換 バックエンド層の機能(トランスパイラ) 19 19 virtual qubit physical qubit 変換 hは未サポート rz,sx,rzに変換 変換
  14. トランスパイラを使うためのフレームワークTranqu バックエンド層の機能(トランスパイラ) 20 20 1. 入力フェーズ(ユーザ): ユーザは普段使い慣れた量子プログラ ミング環境で量子プログラムと量子 チップ情報を記述 2.

    形式変換フェーズ(Tranqu): ユーザが選択したトランスパイラが受 け入れ可能な形式に量子プログラムと 量子チップ情報の両方を自動変換 3. トランスパイルフェーズ(Tranqu): 変換された量子プログラムと量子チッ プ情報を元に、トランスパイラを実行 し量子プログラムを変換・最適化 4. 出力フェーズ(Tranqu): トランスパイルされた量子プログラム とともに、トランスパイル前後の回路 の大きさの変化といった重要な指標を ユーザーに提供 Tranquをサービス化できるようにしたものがTranqu Server →OQTOPUS EngineはTranqu Serverを使ってトランスパイル
  15. まとめ 26 • 「量子」コンピュータと言っても、量子力学で動作しているのは 量子チップの部分だけ • 量子コンピュータ開発は、CPUを量子チップに置き換えた上で、計 算機を再構築すること。既存の計算機に詳しい人は、量子コン ピュータ開発でも活躍できる可能性大 •

    計算機を再構築する機会は稀有だし、面白い ↓ • 量子コンピュータ開発に興味ある方は、ぜひお声がけください • 学生バイト、共同研究、、、 • 量子ソフトウェア勉強会 https://qsrh.jp/seminar/