Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

個人最適から全体最適へ 共有会・ギルド・AI-DLCで進めるカンリーの組織展開 v2

Sponsored · Your Podcast. Everywhere. Effortlessly. Share. Educate. Inspire. Entertain. You do you. We'll handle the rest.

個人最適から全体最適へ 共有会・ギルド・AI-DLCで進めるカンリーの組織展開 v2

セーフィー × カンリー AI Night #1:組織導入登壇時の資料です

Avatar for ふくだ(fukuda ryu)

ふくだ(fukuda ryu)

August 13, 2026

More Decks by ふくだ(fukuda ryu)

Other Decks in Technology

Transcript

  1. 個人最適から 全体最適へ Safie × カンリー AI Night #1:組織導入 v2 共有会・AIギルド・AI-DLCで進める

    カンリーの組織展開 福田龍 / 株式会社カンリー CTO室 Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 2026.06
  2. 自己紹介 本スライドは、AI Engineering Summit Tokyo 2026(2026.6.9)で登壇した資料のアップデート版です 株式会社カンリー CTO室 エンジニアリングオフィス エンジニア組織の

    組織開発・採用・AI推進 を専任で担当(プロダクト開発はしていません) エンジニア歴10年超、マネジメント経験あり Claude Code の気になる新機能はリリース即日で Zenn / Qiita に公開 福田 龍 ふくだ・りゅう / X: @ryu_f_web 具体的にやっていること:組織サーベイの設計・運用 / 採用フロー・選考基準の整備 / エンジニア評価制度 の言語化 / AIのコスト管理・利用状況モニタリング / AIニュースの社内外発信 / AI駆動開発による生産性 向上の推進 カンリーのエンジニア組織は 社員+業務委託で60名超、devチーム 7つ +横断チーム 2つ の規模感です。 Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 02
  3. 今日話すこと 時系列で、カンリーのエンジニア組織が AI とどう向き合ってきたかを話します。 ① 早期導入 ② ボトムアップ底上げ ③ トップダウン

    ④ 開発プロセスの再設計 ⑤ ボトムアップ増幅 ⑥ 9ヶ月で起きた変化 ⑦ 学んだこと ツールを入れた、しかし個人最適に留まった ハンズオン・勉強会・AI共有会の改革 評価基準の言語化・週3時間の確保 AI-DLC 導入の動き AIギルドの結成 サーベイ・AI活用調査が裏付け始めた成果 個別最適 → 全体最適 へ向けた仕組みの整理 まだ始めたばかりの取り組みもあり、道半ば。今日は、成功事例の披露ではなく 「苦戦した記録」 です。 Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 04
  4. 01 早期導入、しかし個人最適 CHAPTER 2025/2 Devin ① 早期導入 / 2025/4 Cursor

    / 2025/6 Claude Code ② 底上げ ③ トップダウン ④ AI-DLC ⑤ ギルド ⑥ 9ヶ月の変化 ⑦ 学んだこと 05
  5. コーディングエージェントを早期から導入 2025/2 Devin 自律的なエージェント体験のスタート 2025/4 Cursor 全社導入(VSCodeから移行)、エディタ内でAI活用を標準化 2025/6 Claude Code

    Bedrock 個人 → チーム → 組織 でスモールスタート、CLIベースのエージェント運用 「ツールが手元にある」状態は早期に作れた。しかし、活用は別問題だった。 Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 06
  6. ツールを入れたら起きたこと:個人最適化 個人 → チーム → 組織 二極化がはっきり起きた 使いこなしている一部メンバー 過半数のメンバー ・CLAUDE.md

    やスキルの整備 ・プラグイン化・独自フックの組み込み ・GitHub Actions に組み込んで自動化 ・ツールの内側まで踏み込む ・プロンプトを都度入力して使う ・ツールの設定や運用は触らない ・効率化のノウハウは個人で止まる 現場の声 人によって手順がバラバラ、組織としての統一手順が欲しい ※ AIを全く使わない層はほぼいなかった ── 「導入のハードル」自体は越えていた Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 07
  7. うまくいかなかった話①:工夫が横展開されない 個人 → チーム → 組織 個人で磨いた工夫が、隣の人にも伝わらない 一部メンバーが作り込んだ CLAUDE.md・スキル・Hooks は個人の中で止まる。過半数は「ChatGPT延長」のまま、ノウハウが標準化されない。

    チーム内では進んでも、他チーム・組織へは広がらない Claude Code 統一やモブプロはチーム内ではボトムアップで進む。しかし他チームへ伝わる仕組みがなかった。 現場の声 個人では触れていても、それをチームのナレッジとして共有・展開する時間が確保できない つまり、ツール導入だけでは、 個人・チームの最適は全体に広がらなかった Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 08
  8. 底上げ施策 と AI共有会の改革 個人 → チーム → 組織 全員が使えるレベルへ +

    共有会を 任意・雑多 → 必須・型あり へ ① 知識の底上げ Claude Code ハンズオン 2025/9 全エンジニアで実際に手を動かす ② AI共有会の改革(2025/11〜) BEFORE ── 任意・雑多 ・週1回 / 任意参加 ・個人が自由に話題持ち寄り ・来る人が固定・偏りがち Claude Code 勉強会 2026/1 運用ノウハウ共有・最新機能キャッチアップ 必須・型あり ・週1回 / 必須参加 ・固定アジェンダ ① AIニュース持ち寄り ② 各チームの取り組み発表 AFTER ── 全員が使えるレベルへ底上げ + 全チームの活用が見える定例 へ Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 10
  9. 効果と、それでも残った限界 個人 → チーム → 組織 効果:透明性が大きく上がった 他チームがやっていることが見える / 「あ、その課題うちもある」が会話に乗るようになった

    うまくいかなかった話②:聞いて終わり、になりがち 業務に組み込む動きが自然発生しない / 共有 → 自分の現場での試行 の ラストワンマイル が弱い 現場の声 期限のある開発タスクが優先で、チーム全体でAI活用に取り組む時間が取れない 現場の声 忙殺されているため、便利なコマンドやツールの存在を忘れ、いつものやり方に戻ってしまう 共有の場を作るだけでは、 行動変容には足りなかった Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 11
  10. 3-A. 評価基準の言語化・ハンドブック化(2026/1〜2) 個人 → チーム → 組織 「コードが書ける」だけが価値の時代は急速に終わった。でも「AIを使っていればOK」でもない。専門性 = T

    × M × S で言語化。 T 実装・実現力 を含む技術で 速く・正確に 価値をデリバリーする Technology AI M 品質マネジメント システム・工程の品質を担保する(人の管理ではなく) Management S 技術戦略 を理解し、事業課題を技術で解決する設計 Strategy Why 「AIを使っているか」ではなく「AIを含めてどう価値を出したか」を評価で問 える 社内公開した評価ハンドブック(実物) Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 13
  11. 評価を変えないと、二方向に組織が傷む 個人 → チーム → 組織 今まで通りでいたい人 成長意欲が高い人 → →

    行動変容が起きない 変える理由がない。評価されるのは従来通りのアウトプットなのだか ら。 評価されずに退職へ で頑張っても報われない。別の場所に行く。 AI 評価を変えないことは、変わらない人を守って、変わりたい人を失う 選択 Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 14
  12. 3-B. 週3時間を制度として確保(QuickWinTime) QuickWinTime 個人 → チーム → 組織 :生産性向上活動に充てる時間 ──

    週 3時間 / チーム 背景:サーベイ・ヒアリングで全体最適を阻むものを調査 → 「生産性向上活動に時間が割けていない」が最大要因。 使い道:各チームで AI活用・運用保守活動・改善活動 に充てる。 『7つの習慣』からの2つの引用 ・緊急ではないが重要(第II領域) に時間を使う = 木こりのジレンマで言う『斧を研ぐ時間』 ・大きな石から先に入れる = 3時間まとまって押さえる。余裕ができたらでは delivery に流れる なぜトップダウンで時間を切り出したか:「時間ができたらやる」では永遠にやれない。制度として確保すれば現場が「必ずやる」状況になる。 Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 15
  13. QuickWinTime 実例:週3時間で何が生まれたか 個人 → チーム → 組織 「斧を研ぐ時間」として実際に使われた 4つの型 キャッチアップ

    スキル開発 エージェント実験 仕組みの作り込み 新モデル試用(Fable)/ DDD勉強会 / AIフェローとの壁打ち 問い合わせ自動化「AIエージェントつくろう会」/ ペアプロ形式での 試行 CS AI-DLC 問い合わせ調査スキル化 / 日本語ルールプラグインを社内Marketplaceへ 公開 リリースPR → リリースノート自動生成 / 観測基盤のスキル化 生まれたものは、AI共有会・AIギルド経由で他チームへ横展開 される Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 16
  14. 04 開発プロセスの再設計 CHAPTER AI-DLC 導入の動き(2025/11〜) ① 早期導入 ② 底上げ ③

    トップダウン ④ AI-DLC ⑤ ギルド ⑥ 9ヶ月の変化 ⑦ 学んだこと 17
  15. 動機:個々の作業は速くなった、しかし 個人 → チーム → 組織 で個人のコーディングは確実に速くなった AI 実装の手数は減った。日々の生産性は確かに上がった。 しかし、人間がボトルネックの構造は変わっていない

    要件定義 → 設計 → 実装 → レビュー → リリース 各工程は速くなった/ワークフローの形は 人間中心 のまま 現場の声 指摘に対し「AIがこう言ったから」で思考が止まっているケースがあり、対応に苦慮している 開発ワークフローそのものを見直す = AI-Driven Development Lifecycle(AI-DLC) Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 18
  16. AI-DLC導入の3ステップ 1 〜 2025/11 社内勉強会の開始 の考え方を組織に共有。「なぜスクラム だけでは不十分か」を言語化。 AI-DLC 個人 →

    チーム → 組織 2 2026/2 先遣隊をAWSワークショップへ 実際にAI-DLCを体験。社内に持ち帰れる人を 作る。 3 2026/4 PdM × エンジニア合同WS(2日間) 開発ワークフローを実際に組み替える。 を巻き込むのが鍵 ── 要件定義・優先度づけの段階からAI前提に組み直す 半年悩んだ末の判断:守破まで先行チームで作り込みは無理。「守」= 全員で体験 /「破・離」= 各 チームの現場へ PdM 2026/4 PdM× Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. エンジニア合同ワークショップ当日 19
  17. AI-DLCで実際に変わったこと(4月→6月の2ヶ月) 開発フェーズの取り組み深度の変化(チームごとの自己申告ベース) 要件定義〜詳細設計へのAI活用が、多くのチームで 「試した段階」→「一部で日常活用」 へ前進 コードレビュー自動化は 「プロセスに組み込まれた」 段階に到達するチームが複数 上流(要件・設計)と下流(運用保守)の 両端

    から試行が進む 横断の動き AIフェロー が定例に参画 ── 設計/DDD・大きすぎるPR問題を壁打ち Cursor → Claude Code 一本化(2026/6)── 観測基盤の構築が現実的に 「AI活用度 × アウトプット量」 を BigQuery で対比する基盤を整備中 Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 個人 → チーム → 組織 走らせて見えてきた仮説 AI-DLCの効果は サイクルタイム単体では捉えき れない。上流(Mob Elaboration)だけ加速して も全体は短縮しない。下流ハーネス・ガードレー ル整備とセットで「品質 + 速度」が動く。 20
  18. 05 ボトムアップを増幅 CHAPTER AI ギルドの結成 ① 早期導入 ② 底上げ ③

    トップダウン ④ AI-DLC ⑤ ギルド ⑥ 9ヶ月の変化 ⑦ 学んだこと 21
  19. AIギルド:各devチームから1名選抜の横断チーム 個人 → チーム → 組織 各チーム(dev×7 + 横断×2) dev1

    dev2 dev3 dev4 dev5 dev6 dev7 SRE CTO 室 各チーム 1名選抜 AI ギルド 横断チーム(ハブ) 役割 他チームの事例を 深く 展開する AI活用の議論を旗振りする 共有会の話を 自チームで動かす ( ) 横断 選抜される1名 ※ 結成したばかりで、効果はこれからの段階 dev BU 各チームに「動かす人」を置き、ラストワンマイルを埋めにいく = ボトムアップの増幅 Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 22
  20. 9ヶ月で、何が起きたか 個人 → チーム → 組織 社内サーベイとAI活用調査が、装置の効果 を裏付け始めた。 活用の集団標準化(2025/10 →

    2026/04) Claude Code メイン利用 MCP 日常利用 Skills 日常利用 サブエージェント 日常利用 組織サーベイ 実態スコア(5段階) AI 58% 98% 49% 88% 37% 76% 30% 68% 3.64 2025/10 3.59 2026/01 年1月に一旦沈み、4月に反発 • 30項目中 29項目で改善 • 満足と実態のギャップ 0.62 → 0.48(縮小) 過去最高 3.78 2026/04 2026 装置を入れて最初は沈んだ。しかし入れ続けた結果が、 2026年4月に表れ始めた 出典:カンリー エンジニア部 サーベイ(n=46/45/47, 5段階)/ AI活用調査(n=43/43/41) Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 24
  21. 困りごとの『質』が変わった 個人 → チーム → 組織 サーベイ自由記述の論点が、9ヶ月で前進した。 Before ── 2026

    年1月末 「個人のキャッチアップが追いつかない」 After ── 2026 年4月末 「個人差をどう埋め、どう計測するか」 自由記述 「最も進んでいる人の充実度に、みんなが合わせられるようになりたい」(2026年4月) 個人の課題 → 組織の課題 へ、 論点そのものが前進した Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 25
  22. AI推進は、生産性だけでなく『文化』を引き上げた 個人 → チーム → 組織 推進と連動したサーベイ項目の改善(2025/10 → 2026/04) 新技術への挑戦機会

    8-1 ※ 全30項目で改善幅トップ ギャップ -0.49 → -0.17 9-1 技術的チャレンジが評価される文化 実態 3.91 → 4.13 10-3 貢献意欲 ※ +0.31 実態 3.80 → 4.11 4-2 部内 他チーム連携 ※ AI-DLC・共有会の効果 実態 3.29 → 3.64 AI 推進は「早く実装できる」だけでなく、 挑戦・評価・連携の文化 を押し上げた AI 出典:カンリー エンジニア部 サーベイ(n=46/47, 5段階) Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 26
  23. ここから先、AIならではの宿題 個人 → チーム → 組織 推進が 量的に進んだ ことで、新たに見えてきた3つの課題。 AI

    01 個人プロンプト資産の共通化 ・ ・サブエージェントの整備度合 いに個人差。AI推進が生んだ新しい個人差。 Skills Hooks 02 03 AI AI 活用の成果指標が未定義 は98%まで進んだが、効果を測 る組織的な指標がまだ無い。 Claude Code 生成コードの品質保証ループ 推進の量的拡大が、レビュー設計の負荷と して表れ始めた。 AI 量的な普及が進んだからこそ見えた、 次に解くべき課題 Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 27
  24. 段階ごとのボトルネックに、対応する打ち手を当てる 個人 → チーム → 組織 個別最適 → 全体最適 ──

    どの段階で何が詰まっているか 個人最適 チーム最適 個人が使いこなす → 打ち手 ツール導入 チーム内で標準化 ↑ ボトムアップ 打ち手 QuickWinTime 組織最適 部署全体で情報循環 ↑ トップダウンが要る → 打ち手 ハンズオン・勉強会・AI共有会・AIギル ド・評価ハンドブック・AI-DLC 鍵は「順番」より、どこがボトルネックかの見極め ボトムアップだけ/トップダウンだけでは、どの段階も進まない Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 30
  25. 全体最適のための、3つの要点 個人 → チーム → 組織 01 現場の声に耳を傾け、ボトルネックを特定する 決まった順番をなぞるのではなく、今どこが詰まっているかを見て、そこに合った打ち手を当てる 02

    個人→チームはボトムアップ、チーム→組織はトップダウン ボトムアップだけでは組織全体は動かない。フォアキャスト × バックキャスト も組み合わせて両輪を回す 03 最後にものを言うのは「仕組みを動かし続けること」 銀の弾丸はない。刻一刻と変わる状況に合わせて、ハマる仕組みを考え、動かし続ける Copyright © Canly, Inc. All rights reserved. 31
  26. THANK YOU ご清聴ありがとうございました 福田龍 / 株式会社カンリー CTO室 X: @ryu_f_web ・Claude

    Code や組織づくりの知見を Zenn / Qiita / note / 登壇 で発信 ・組織でのAI推進について、クロストークでもお話しできれば嬉しいです