メガバンクにおけるこれまでの開発方法と課題
三井住友銀行では、従来から綿密な要件定義に基づき慎重に進めるカッチカチの「ウォーターフォール開発」が主流でした。
しかし、最近では銀行グループとして提供するプロダクトの幅が広がり、状況に応じた柔軟な開発手法が求められるようになっています。たとえば、インターネットバンキングのように慎重な開発が必須のものもあれば、金融関連情報サイトのように一定の失敗が許容されるものもあります。これまでは後者であっても一律でウォーターフォール開発を適用していました。その結果、リリースまでに長い期間がかかり、ユーザーニーズの変化に対応しきれないことがしばしば発生していました。実際に、ニーズに合わないプロダクトをリリースし、それに気づくまで半年から1年が経過しているケースもありました。
メガバンクにおけるアジャイル導入の動き
こうした課題を解消するため、銀行でも一部のプロダクトにアジャイルを導入する動きが始まっています。
私が所属するSMBCグループの株式会社プラリタウンでは、法人のお客さまのDX・デジタル化支援を行っています。現在、その支援をさらに加速させるために新規プロダクトの開発を進めており、その過程でアジャイルをゼロから導入しました。このセッションでは、その経験から得た知見を共有します。
「スプリント毎に動くモノをリリースする」は大事、だけど難しい
従来の手法では、長期間の開発後に初めてユーザーの反応を確認するプロセスでした。今はアジャイルを導入したことにより、開発中からユーザーのフィードバックを細かく得られるようになり、ユーザーに真に求められるプロダクトを開発できるようになりました。しかし、最初からスムーズに進められたわけではありません。
具体的には、以下の課題に直面しました:
・プロダクトに必要な機能を細かく分け、スプリントごとに最小単位で作るという考え方が浸透していなかった。
・各機能の開発規模が見積もれず、短いスプリント期間内で動くモノを作る計画づくりができなかった。
これらの課題を克服し、「スプリントごとに動くモノをリリースする」体制を構築する上で重要だったポイントは次の2つです:
1. ユーザー視点でプロダクトバックログアイテムをスライスする方法を理解した。
2. 機能の実現方法について、開発者のアイデアを積極的に取り入れた。
これにより、プロダクトバックログを作成して作るべき機能を適切に分割できるようになりました。また、プロダクトオーナーである私一人で考えるのではなく、チーム内のエンジニアと協力することで、より現実的かつ実現可能なスプリント計画を策定できるようになりました。
このセッションでは、上記ポイントを深掘りし、具体的な手法や得られた気づき、学びをお伝えします。