Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
CNCF公式プロジェクトRookのメンテナになった話 〜これまでとこれから〜
Search
Satoru Takeuchi
PRO
December 19, 2020
Technology
1
2.9k
CNCF公式プロジェクトRookのメンテナになった話 〜これまでとこれから〜
Open Developers Conference 2020 Onlineの発表スライドです
Satoru Takeuchi
PRO
December 19, 2020
Tweet
Share
More Decks by Satoru Takeuchi
See All by Satoru Takeuchi
絶対殺すSIGKILLシグナルと絶対死なないプロセス
sat
PRO
3
73
シェルのセッション
sat
PRO
2
28
RubyでKubernetesプログラミング
sat
PRO
4
180
プロセスの生成 exec編
sat
PRO
1
38
プロセスの生成 fork&exec編
sat
PRO
0
33
プロセスの生成 コピーオンライトを使ったfork編
sat
PRO
0
32
プロセスの生成 fork編
sat
PRO
0
36
静的ライブラリと 共有ライブラリの違いを実験で確認
sat
PRO
1
56
ハイテク休憩
sat
PRO
2
210
Other Decks in Technology
See All in Technology
自動テストの世界に、この5年間で起きたこと
autifyhq
10
8.5k
組織貢献をするフリーランスエンジニアという生き方
n_takehata
1
1.3k
「海外登壇」という 選択肢を与えるために 〜Gophers EX
logica0419
0
700
N=1から解き明かすAWS ソリューションアーキテクトの魅力
kiiwami
0
130
なぜ私は自分が使わないサービスを作るのか? / Why would I create a service that I would not use?
aiandrox
0
730
TAMとre:Capセキュリティ編 〜拡張脅威検出デモを添えて〜
fujiihda
2
240
AndroidXR 開発ツールごとの できることできないこと
donabe3
0
130
速くて安いWebサイトを作る
nishiharatsubasa
10
12k
エンジニアが加速させるプロダクトディスカバリー 〜最速で価値ある機能を見つける方法〜 / product discovery accelerated by engineers
rince
4
320
Oracle Base Database Service 技術詳細
oracle4engineer
PRO
6
57k
ユーザーストーリーマッピングから始めるアジャイルチームと並走するQA / Starting QA with User Story Mapping
katawara
0
200
偶然 × 行動で人生の可能性を広げよう / Serendipity × Action: Discover Your Possibilities
ar_tama
1
1.1k
Featured
See All Featured
Producing Creativity
orderedlist
PRO
344
39k
Six Lessons from altMBA
skipperchong
27
3.6k
The Pragmatic Product Professional
lauravandoore
32
6.4k
Large-scale JavaScript Application Architecture
addyosmani
511
110k
How To Stay Up To Date on Web Technology
chriscoyier
790
250k
Scaling GitHub
holman
459
140k
RailsConf & Balkan Ruby 2019: The Past, Present, and Future of Rails at GitHub
eileencodes
133
33k
Embracing the Ebb and Flow
colly
84
4.6k
RailsConf 2023
tenderlove
29
1k
Documentation Writing (for coders)
carmenintech
67
4.6k
Building Better People: How to give real-time feedback that sticks.
wjessup
367
19k
4 Signs Your Business is Dying
shpigford
182
22k
Transcript
CNCF公式プロジェクトRookの メンテナになった話 ~ これまでとこれから ~ Open Developers Conference 2020 Online
Dec 19th, 2020 sat@Cybozu 1
自己紹介 ▌2018年サイボウズ入社 ▌国内向け次期インフラ基盤の開発者 ⚫ストレージチーム所属 ▌Rook(後述)のメンテナ ⚫ コミット権限がある開発者
今日知ってもらいたいこと ▌私がRookメンテナになるまでの流れとこれから ⚫なぜ開発に参加したか、どう貢献してきたか、など ▌上記から得られたOSS開発のノウハウ ⚫どういう場合に参加すべきか ⚫どこまで深入りすべきか ⚫会社と個人でどう違うのか 3
目次 1. Rookとは 2. なぜRookを採用したのか 3. なぜRookの開発に参加したのか 4. どのようにメンテナになったのか 5.
まとめ 4
目次 1. Rookとは 2. なぜRookを採用したのか 3. なぜRookの開発に参加したのか 4. どのようにメンテナになったのか 5.
まとめ 5
Rookとは ▌Kubernetes上で動くストレージオーケストレーション ▌Cephなどの様々なストレージソフトウェアをサポート ⚫サイボウズもCephを使っている ▌Cloud Native Computing Foundation(CNCF)公式プロジェクト ▌採用例 ⚫20社以上がすでに業務利用中
⚫Rookベースの商用製品もある 6
目次 1. Rookとは 2. なぜRookを採用したのか 3. なぜRookの開発に参加したのか 4. どのようにメンテナになったのか 5.
まとめ 7
前提 ▌ストレージソフトウェア超重要 ▌理由 ⚫お客様データは何より重要 ⚫データ破壊、消失障害による影響 ⚫お客様もサイボウズも会社が傾く、最悪潰れる ⚫社会的信用も失う ⚫トラブル発生時には可及的速やかな対処が必要
Rookの採用経緯 1. 既存インフラの課題をCephが解決できる ⚫しかしCeph単体では使い方が難しい… 2. RookでCephを管理しよう! ⚫Cephは長年使われてきた実績がある ⚫Rookも将来有望 ⚫CNCF公式プロジェクト、商用製品もある
他の手段をとらなかった理由 ▌非OSSな商用ストレージ製品 ⚫必要な機能の実装、バグ修正をコントロールできない ⚫ベンダが「やらない」といったらそれで終わり ⚫やるとしてもいつやるかはベンダ次第 ▌完全自作のCeph管理ツール ⚫必要な工数が非常に多くなる ⚫当時Cephの知見が無かったのでなおさら ⚫ストレージソフトウェアで初モノは避けたい
目次 1. Rookとは 2. なぜRookを採用したのか 3. なぜRookの開発に参加したのか 4. どのようにメンテナになったのか 5.
まとめ 11
Rookの使い方の基本方針 ▌Rookベースの商用製品ではなくupstream版を使う ▌機能追加、バグ修正が必要になったら? ⚫upstreamを修正後、リリース版を使う ▌緊急修正が必要になったら? ⚫サイボウズ独自版を一時的に使う ⚫修正マージされたら即upstream版に乗り換え ⚫最悪ローカル修正を使い続けることも許容(現状はそうなっていない) 12
Rookベースの商用製品を使わなかった理由 ▌結局機能追加、修正提供の保証がない ⚫Q: RookはOSSだから直せるんでは? ⚫A: ベンダがサポートするのはベンダが提供する バージョンのみ ⚫自前で緊急修正を適用しての運用は普通契約違反 ⚫ 自分でupstream開発してベンダに取り込んでもらう手も
▌自前運用を可能にする技術者が社内にいた
upstream開発に参加する利点 ▌Upstreamからforkした独自版の管理はメンテが辛い ⚫Upstreamのバージョンアップへの追従 ⚫必要な修正のバックポート ▌upstreamが盛り上がると機能、品質強化に繋がる ⚫ユーザや開発者が増える ⚫Issue発行/PR投稿が増える ▌Rook/Cephの知見増加が見込める ⚫使うだけより開発するほうが圧倒的に知見は溜まる
開発へのコミット方針 ▌最初からメンテナになるつもりで参加 ⚫機能不足もバグ修正も自分でPRを送って解決 ▌期待されるメリット ⚫緊急時に他のメンテナと密連携できる ⚫自分の詳しい分野であれば自分でマージもできる ⚫もちろん濫用はしない ⚫プロジェクト全体の方向性がわかりやすくなる
会社向けTIPS: 開発にどれだけ深入りすべきか ▌状況による ⚫トラブル発生時の即時対応が必要ない ⚫メンテナになる意義は薄れる ⚫機能はありものでいい、バグ修正は急がない ⚫開発に参加する意義は薄れる ▌サイボウズも使っている全OSSにメンテナを 出すつもりはない
個人向けTIPS: 開発にどれだけ深入りすべきか ▌ソフトへの愛があればオッケー! ⚫あとは無理のない範囲でできることをやる ⚫愛用しているソフトへの参加がお勧め ▌バッドエンドになりがちなもの ⚫使ってもいない有名なソフトウェアを選ぶ ⚫愛着はないしデカすぎるしで嫌になる
目次 1. Rookとは 2. なぜRookを採用したのか 3. なぜRookの開発に参加したのか 4. どのようにメンテナになったのか 5.
まとめ 18
メンテナになるまでの流れ 1. 検証中に困ったところを片っ端から修正 ⚫ 私一人ではなく他のメンバもたくさん貢献しています 2. 自分が直接困っていないところにも貢献 ⚫ユーザサポート、他のPRのレビュー 3. リソースが足りていないところに貢献
⚫テスト追加 ⚫ドキュメント追加 4.メンテナになりたいと宣言 19
具体的な貢献実績 ▌通算コミット数世界8位 ▌開発に参加し始めたv1.2からでは世界4位 ⚫会社別では世界2位 20
メンテナ就任時の評価ポイント ▌特定分野についての貢献が大きかった ⚫データの分散配置ロジック改善 ⚫テスト強化 ▌継続的なレビュー、ユーザサポート 21
評価ポイントから感じたこと ▌コミュニティ全体への貢献度が重要 ⚫コミット数や技術力が全てではない ▌信頼第一 ⚫自分の意見のゴリ押しではなく議論で解決 ⚫失礼な振る舞いはもってのほか
これまでの活動で得られたもの ▌Rookコミュニティの信頼 ▌Rook/Cephについての大量の知見 ▌自分達が実装した機能の品質強化 ⚫使ってくれる人が多くいた ⚫バグ報告をいくつももらった(全部修正済)
メンテナになってからの活動 ▌以前と変わらないこと ⚫自社システムに必要な機能追加、バグ修正 ▌変わること ⚫テスト強化。他のメンテナ達に自分がやると宣言済 ⚫より一層のユーザサポート ⚫レビュー&マージ ⚫得意分野についてはメンションが飛んでくる 24
会社/個人向けTIPS: お勧めの第一歩 ▌自分が実際に困っていることの解決 ⚫Issue発行 ⚫PR投稿 ▌簡単な既存issueを片付ける ▌ 勇気を出して一歩足を踏み出すと後は楽!
会社/個人向けTIPS: 貢献は徐々に増やす ▌最初から大きな貢献をしようと肩肘貼らない ▌わたしのコミット数も徐々に増えてきた 26 バージョン コミット数 V1.2 2 V1.3
10 V1.4 37 V1.5 22
会社/個人向けTIPS: 貢献は徐々に増やす ▌最初から大きな貢献をしようと肩肘貼らない ▌わたしのコミット数も徐々に増えてきた 27 バージョン コミット数 V1.2 2 V1.3
10 V1.4 37 V1.5 22 軽微な修正のみ 機能追加、バグ修正、CI改善 機能追加、バグ修正、CI改善、ドキュメント改善 なんでも
会社向けTIPS: 開発の意義を理解する ▌私の場合 ⚫会社の方針としてメンテナになるつもりで開発開始 ⚫特殊な勤務形態が提供された ⚫Upstream Rookへの貢献が評価対象になる ▌不幸な例 ⚫「なんでウチに関係ないことしてるの?」 ⚫「メンテナ仕事は成果として評価しない」
目次 1. Rookとは 2. なぜRookを採用したのか 3. なぜRookの開発に参加したのか 4. どのようにメンテナになったのか 5.
まとめ 29
サイボウズのこれまでとこれから 1. Rookは極めて大事なソフトウェアと判断した 2. Rook開発に深くコミットすると決めた 3. プロジェクト全体へ継続的に貢献した 4. 実績が認められてメンテナ輩出した 5.
今後もRookプロジェクト全体に貢献する 30
OSS開発TIPS: 会社向け ▌開発への関わり度合い ⚫会社にとっての重要性によって決めるとよい ▌開発意義とOSS開発の特殊性への理解が必要 31
OSS開発TIPS: 個人向け ▌参加有無、度合い ⚫ソフトウェアへの愛の度合いによって決める ▌燃え尽きない範囲で興味のあるところから 32
OSS開発TIPS: 会社/個人向け ▌小さなことからコツコツと ▌「信頼第一」を念頭に 33
34 Thank you! Any question?