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どこまでAIに任せるか 〜確率論と決定論の境界決定〜

どこまでAIに任せるか 〜確率論と決定論の境界決定〜

3-SHAKE「AIを紡ぐ者たち #2 ~本当にラクになった?生成AIで削った業務・増えた業務~」にて登壇しました。
https://3-shake.connpass.com/event/399003/

生成AIで業務は「削れた」のではなく、別の場所に「移った」だけ、という実感から出発する話です。
生成AIは確率論、業務システムが要求するのは決定論。
この境界をどう設計するかを、道交法判定・設計図面の構造化・フィジカルAI×MPCの使い分けといった実案件(Gemini / Vertex AI)を通して共有します。
「AIを信じすぎないことが、AIを最も活かす」

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Shu Kobuchi

July 23, 2026

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Transcript

  1. 自己紹介 小渕 周 (Shu Kobuchi) こぶシュー X: @shu_kob 2023年12月 株式会社スリーシェイク入社

    • Sreake 事業部 アプリケーション開発支援チーム エンジニア • 生成 AI アプリケーション開発等 (Gemini, Google Cloud) • 2025年1月より マネージャーに就任 2
  2. 今日のテーマへの、私の回答 テーマ:本当にラクになった? 削った業務・増えた業務 生成AIは業務を 「削らない」 。「移す」 。 ラクになったように見えて、しんどさは “別の場所” へ移動しただけ

    従来の業務プロセス 業務のしんどさ 移す 別の場所へ 決定論 ・ 検証 ・ 設計 s p l 「どこへ移すか」を決める = 境界線の設計 = 今日の本題 i t
  3. なぜAIは ”振り回して ” くるのか LLM は次のトークンの確率分布を選んでいるだけ  LLM の本質: next-token

    prediction = 確率モデル • 同じ入力でも出力が揺れる • もっともらしく嘘をつく (ハルシネーション ) ”違和感 ” ”細かい間違い ” の根本原因はここ 5
  4. Gemini 3 Flash が落ちる 3 パターン パターン 何が起きるか 例 階層無視

    原則→例外→例外の例外を平坦 化 歩道通行の例外規定を見落とす 数値捏造 条文にない反則金額を補完 存在しない『3,000円』を回答 参照欠落 『政令で定める者』を解決できない 70歳以上の歩道通行許可を無視 7
  5. 救世主は 2008 年度の卒論 決定論的パース + コサイン類似度で殴る 1. データ取得 : e-Gov

    法令API から法令XMLを取 得 2. 解析: XML を AST にコンパイル (決定論的パー サ) 3. 特定: TF-IDF + コサイン類似度で関連条文を特 定 4. 構造化 : 「を除く」「政令で定める者」も抽出 8
  6. ハイブリッド構成 Layer 1 (決定論) で根拠を作り、 Layer 2 (確率論) で言わせる Layer

    1: Deterministic Engine Legal Compiler (XML→AST) + VSM Engine (TF-IDF cos) → 条文 AST + 反則金 + 委任規定の解決済み情報 Layer 2: Probabilistic Engine Gemini に『この条文だけ見て答えろ』と指示 推論の自由を物理的に奪うのがコツ 9
  7. Before / After Flash 単体 (Before) ハイブリッド (After) • 例外規定を無視

    • 条文を正確に引用 • 架空の反則金額を生成 • 反則金テーブルに準拠 • 委任規定を解決できず • 委任規定を Layer 1 で解決済み 詳細はブログにも https://shu-kob.hateblo.jp/entry/2026/04/17/091806 10
  8. レガシーな ”設計図面 ” のデジタル化 課題: AI 丸投げによる限界 • • •

    古い Excel/PPT 図面の構造化プロジェクト 再現性ゼロ。同じ図面で結果が異なる バグの原因特定や追跡が困難 解決策 : 3層決定論パイプライン • • • 座標ベースの幾何学的な解析手法を採用 形状/座標抽出 → 連結成分から親子関係構築 構造化データ (CSV/JSON) への確実な変換 高い精度と再現性を実証 再現率 0.956 / 適合率 0.959 / 型一致 0.995 11
  9. フィジカル AI は “決定論の安全網 ” で制御する 学習は主役でいい。ただし “最終権限 ” は決定論に残す

    学習・確率が効く(主役になれる) 決定論が譲れない( MPC / CBF) • 知覚・状態推定 • 制約充足・安全マージンの証明 • 接触の多い器用なマニピュレーション • リアルタイム保証 • 未知物体・状況への汎化 • 認証可能・再現可能な挙動 • 意図解釈・対話 VLA・拡散方策 (Diffusion Policy 等) が制御ループの中で動く モデル予測制御 (MPC)・制御バリア関数 (CBF) 境界=安全網: 学習が主役でも、決定論が “最終権限(拒否権) ” を持つ 手段:危険な出力を拒否・射影する Runtime Assurance / Simplex アーキテクチャ
  10. 設計原則 : ゾーンを分ける ゾーン 任せる仕事 例 確率論 (生成AI) 0→1のクリエイティブ /

    自然言語 の解釈 / ラフ案 構成案、画像、要約、対話 決定論 (システム) 再現性 / 数値 / 安全 / 監査可能 性 法令判定、図面構造化、物理制御、課金 13
  11. 余談: このスライド、 CLI で作りました STEP 01: 構造定義 (決定論 ) 骨子

    JSON で構造を固定 STEP 02: 素材生成 (確率論 ) • Vertex AI Gemini で挿絵プロンプトを生成 • Imagen で挿絵生成 STEP 03: 反映 (決定論 ) Google Slides API で構造を batchUpdate で書き込み Conclusion 生成プロセス自体が ”境界線” の実例 14
  12. で、業務は「どこへ」移ったか 削った(AIに移せた) • 法令の一次あたり・条文の下調べ • 古い図面の目視トレース • ドラフト・要約・言い換え 増えた(人・システムへ) •

    境界線の設計判断 一番増えた (どこを渡さないか) • 決定論エンジンの実装・保守 (ルールベース) • 検証・監査の仕組み (再現率・根拠の固定) • コスト管理 (人件費 → AI課金に化ける) 移動先を “安全側 ” に置けたときだけ、初めて “ラク” に近づく 15
  13. まとめ AI を信じすぎないことが、 AI を最も活かす    生成AI は確率論

    決定論を被せる 境界線の設計 これは「仕様」であり、不確実性が本 質であることを理解する必要があり ます。 失敗が許されないクリティカルな領 域には、従来の決定論的な制御シス テムを組み合わせます。 どこまでを AIに任せ、どこをシステム で固めるか。その設計こそがエンジ ニアの真価です。 AI と既存技術の最適なハイブリッド構造を目指す 16