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20200123_修論構想_小林

 20200123_修論構想_小林

Takafumi Kobayashi

January 23, 2020
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  1. 研究背景 今後30年以内に70~80%の確率で最大クラスM9の巨大地震が南海トラフで発生すると予測されてい る. (地震調査研究推進本部 2013) 『南海トラフの巨大地震による津波高・浸水域等(第二次報告)及び被害想定(第一次報告)について』 • 全国で約23万人,静岡県では約9万4千人が津波によって死亡する試算(冬・深夜,早期避難率 低) •

    早期避難率迅速化と避難ビル有効活用によって死者数は5万2千人まで減少する試算(全国) (中央防災会議 2012) 『南海トラフ巨大地震について 最終報告』 • 「津波対策の目標は『命を守る』,住民一人ひとりが主体的に迅速に適切に避難」 • 「即座に安全な場所への避難がなされるよう地域毎にあらゆる手段を講じる」 (中央防災会議 2013) 2 →巨大津波被災リスク軽減のための取り組みが求められる
  2. 従来の研究 -シミュレーションモデル- • Lu et al.(2015)はマルチエージェントシミュレーションを用いて火災時の避難者行動を分析.建物 内での避難では建物の構造と避難時の行動が避難の効率を決定する事を明示した. • 今村ら(2001)は,北海道奥尻島青苗地区において,1993年の北海道南西沖地震時の住民の避難 行動を再現した.避難者が標高のより高い方向へ向かうように設定しシミュレーションを実施.全

    ての住民が車で避難した場合避難率が低下する事を示した. • 山田・岸本(2016)は宮城県仙台市,名取市,岩沼市を対象に東日本大震災の避難行動データを 用いて,徒歩と車による避難行動モデルを作成.高い精度での避難圏域の割り当てが可能であるこ とを示した. • 木村ら(2015)はGPSロガーを利用し,実際の避難訓練時の住民の移動データを取得,それらを 用いて住民の避難行動をシミュレーション上で再現した. • 川合・海津(2019)はUnity上で避難行動をシミュレーションし,津波の被害者が集中する場所を 明らかにした. 4
  3. 従来の研究の課題 -シミュレーションモデル- 5 • 複数の避難者が異なるタイミングで避難を開始した場合に発生しうる混雑の検討を行っ た研究は少ない. • 混雑が発生する避難パターンの検討を行う. • 津波避難タワー入口,階段などでの混雑を考慮する必要がある.

    • 事例:2019年に和歌山県で行われた津波避難訓練では避難先の高台までの階段で渋滞が発生 (『朝日新聞デジタル』2019年3月12日 https://www.asahi.com/articles/ASM3C3334M3CPXLB002.html) • 多くの研究においてAgentの経路選択が「最短経路探索」である. • 訪問者など土地の知識に乏しい人を考慮する必要があるのではないだろうか. • 避難先の避難所の収容可能数を超えていた場合他の避難所を目指す必要があるが,その際に 最短経路探索に近い動作を現実の人間が出来ない可能性.
  4. 研究の意義 7 • 学術的意義: • 避難者が異なるタイミングで避難を開始した場合に発生しうる現象を把握できるように なる. • マルチエージェントシミュレーションを用いた「最短経路探索」に頼らない避難者行動 分析が可能になる.

    • 社会的意義: • 避難者がどのような意志決定をとった場合に被災リスクを最も低下させる事が出来るの かを把握できるようになる. • 津波被災リスクが高いエリアを示すことで津波避難タワー等の新規設置等の行政判断の 支援に繋がる.
  5. 章構成 I. はじめに 1. 研究背景 2. 先行研究 3. 研究目的 4.

    研究対象地域 5. 想定する災害 II. 研究方法 1. シミュレーションモデルの構築 1. 地理情報の3次元化 2. Agentの意思決定方法 III. 分析結果 1. 津波遭難者の分布 2. 津波遭難の要因分析 3. 地形・道路形状などが避難行動に与える影 響の分析 IV. 結果・考察 1. 津波避難時に発生するリスクの検証 2. リスク軽減の取り組みへの提言など 8
  6. 研究対象地域 静岡県駿河区沿岸地域東側 • 人口:約2万人 • 世帯:約8千500世帯 • 最大で12mが地震発生後最短3分で到達し,浸水 域のほとんどのエリアが15分以内に浸水する. (静岡県第4次被害想定)

    • 東日本大震災では平均避難開始時間が22分(国土 交通省 2013)であり,対象地域において同様の 避難行動を取った場合,多くの人が逃げ遅れる可 能性がある. → 迅速な避難行動が求められる地域 10 研究対象地域 (国土数値情報・地理院地図より作成)
  7. 研究方法 ―シミュレーション― • 昼(12:00)と夜(20:00)についてシミュレーションを実施. • 昼間人口,夜間人口の情報を基にAgentに属性を割り当てる. • 1,000程度*のAgentを発生させ後述のフローチャートに従って避難施設へ移動させる. • 狭い場所での人の渋滞の考慮.Lu

    et al.(2015)などを応用可能か. • 避難所の入り口や通路・階段での渋滞が発生するか否かを検討. • Agentの経路選択や意志決定をパラメータにより設定 • パラメータはAgentの属性(住民であるか,年齢等)によって変動させる. • 津波のリスク認知を数値化しパラメータとして設定.←避難開始時間 • 避難施設に到達前に津波に遭難したAgentの遭難位置や避難経路を分析する. 13 *先行研究ではアルゴリズムの改良によって10,000程度までAgentを発生させる事に成功している **(国土交通省 2013)の調査結果を参考に設定 パラメータ名 内容 最大移動速度 1.0m/s(健常者),0.4m/s(高齢者)** 避難開始時間 5~45m** 避難経路認知度 1~3(ルート選択に影響を与える.要検討) (移動手段) 徒歩,自転車,自動車
  8. 使用データ データ名 内容 形式 提供元 道路データ Shape 国土地理院,基盤地図情報, Open Street

    Map等 DEM(5m) 地形情報 xml 基盤地図情報 建物縁データ 建物情報 Shape 基盤地図情報 避難施設データ 避難ビル・タワーの情報(収容可 能人数等) Shpae 国土数値情報 静岡市防災情報マップ 平成27年国勢調査 「人口等基本集計に関する事項」(5次メッ シュ) 性別,年齢,高齢単身の一般世帯 Shape e-Stat 2014年 経済センサス-基礎調査(4次メッシュ) 従業者数 Shape e-Stat 昼間人口(5次メッシュ) Shape 国勢調査と経済センサスより推計 津波データ 既存のデータまたは作成する 避難方法(個人) 避難経路データ Shape 復興支援調査アーカイブ 国土交通省都市局 17
  9. 参考文献 今村文彦・鈴木 介・谷口将彦 2001.津波避難数値シミュレーション法の開発と北海道奥尻青苗地区への適用.自然災害科学 20:183-195. 川合康央・海津ゆりえ 2019.ゲームエンジンを用いた津波ハザードマップ.エンタテインメントコンピューティングシンポジウム論文集 2019:258- 288 木村圭祐・小林健一郎

    2015.マルチエージェントシミュレーションによる西宮広域避難訓練の再現と考察.土木学会論文集b1 71:1375-1380. 国土交通省 2013.『津波避難を想定した避難路、避難施設の配置及び避難誘導について(第3版)』 佐藤翔輔・今村文彦・相澤和宏・横山健太・佐藤勝治・岩崎雅宏・皆川満洋・戸川直希 2017.宮城県石巻市における2016年11月22日福島県沖の地震 津波による避難行動実態.土木学会論文集B2(海岸工学) 73:I_1603-I_1608. 地震調査研究推進本部 2013.『南海トラフの地震活動の長期評価(第二版)』 中央防災会議 防災対策推進検討会議 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ 2012.『南海トラフの巨大地震による津波高・浸水域等(第 二次報告)及び 被害想定(第一次報告)について』 中央防災会議 防災対策推進検討会議 南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ 2013.『南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)』 新家杏奈・佐藤翔輔・今村文彦 2019.東日本大震災の津波避難行動へ影響を与えた要因に関する分析―宮城県気仙沼市の事例検討―.地域安全学会論 文 集 3 4 : 1 - 1 0 . 山田崇史・岸本達也 2016.避難施設を核とした災害に強いまちづくりの研究―津波避難者の避難先選択行動モデル化と避難施設 の最適配置計画―.住総研研究論文集 43:161-172. Lu Tan, Mingyuan Hu and Hui Lin. 2015. Agent-based simulation of building evacuation: Combining human behavior with predictable spatial accessibility in a fire emergency. Information Sciences 295: 53-66. 21