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その仕事、AIに渡せますか?― プロジェクトマネジメントAI委譲計画

その仕事、AIに渡せますか?― プロジェクトマネジメントAI委譲計画

生成AI・AIエージェントの進化を受け、「プロジェクトマネジメントという仕事そのものを、AIに置き換えられないか」を検討しています。進捗管理・品質担保・コスト管理・関係者調整といったPM業務を一つひとつ洗い出し、実際にAIへの移管を試みた記録です。 結果として、驚くほどあっさり手放せた業務がある一方で、やってみて初めて「ここだけは人間の判断が必要だ」と痛感した業務も見えてきました。 うまくいった場面・いかなかった場面それぞれで、PMとして何を考え、どう判断を下したのかを具体的にお話しします。 この試行錯誤を通じて見えてきた「AI時代にPMに残る仕事」「PMだからこそ担うべき役割」について、明日からの実務に持ち帰れるTipsを共有します。

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Transcript

  1. その仕事、AIに渡せますか? ― プロジェクトマネジメント" AI委譲計画 " ― 会 社 名 パーソルキャリア株式会社

    所 属 部署 名 カスタマーP&M事業本部 氏 名 望月 慎太郎 2026 年8月7日 ※本資料は2026 年8月時点の情報です
  2. 202 3年3月 、パ ーソ ルキ ャリ アに 入社 。 d

    o da サ イ ト 開 発 領 域 で I T コ ン サ ル タ ン ト とし て従 事。 PROFILE 望月 慎太郎 パーソルキャリア株式 会社 カスタマーP&M事業本部 主 な担 当業 務は サー ビス マネ ジメ ント 、 セ キ ュ リ テ ィ 、 SR E 、 A I ( 開 発 支 援 ) ITコ ン サル タ ン ト ITア ー キテ ク ト プ ロ ジェ ク ト マ ネ ジャ ー エ ン ジニ ア リ ン グ マネ ジ ャ ー © PERSOL CAREER CO., LTD. 2
  3. 社 名 パー ソル キャ リア 株式会 社 本 社

    東京 都港 区 創 業 19 89年6月 金 1, 12 7百万 円 資 本 事業内容 人 材 紹介 サ ー ビ ス 、求 人 メ デ ィ アの 運 営 、 転 職 ・就 職 支 援 、 採用 ・ 経 営 支 援、 副 業 ・兼 業 ・ フ リ ーラ ン ス 支 援 サー ビ ス の 提 供 従業員数 6,721名 (有期社員含む グループ会社出向中の 者は除く 2026年3月1日時点) © PERSOL CAREER CO., LTD. 3
  4. (前提)世の中のPMはAIに完全に代替されるか?価値向上か? 事実PMを廃止した会社は、すでにある 2026年にPMを廃止し、FDE(Forward Deployed Engineer )を設置。顧客との要件定義から仮説検証・プロトタイプ開発までを 一人で担う。「要件整理・資料作成だけのPMは不要」※1 逆向きの事実一方で、PMの単価は上がっている 2022年以降、AIに代替されにくい仕事は単価が2割上昇、自 動化が進む下流工程は5割下落。プロジェクトマネージャーは上

    昇、HTMLコーダーは大きく下落。※2 • PMは廃止論一択なの? • PMの価値は今後上がるの?下がるの? PM廃止論への、アンチテーゼとして逆説的に「PM業務のAI委譲」を考えてみた ※1 生成AI時代のPdMは何を担う? / 株式会社リチェルカ 幸田氏 / Product Management Summit 2026・2026年4月28日 ※2 日本経済新聞「エンジニア賃金、二極化」2026年7 月20日(レバテック調べ)/AI駆動開発カンファレンス 2026夏 基調講演にて引用 © PERSOL CAREER CO., LTD. 6
  5. 仕分けの結果:AI委譲率40% 結論から。4割はAI委譲できるが、6割は残ってしまう・・・。 AI委譲できた AI委譲には工夫が要る AI委譲できなかった 進捗管理 チケット起票・進捗集計・ブロッカー検知 障害の自動起票連携の設計 ゴール定義・優先度の最終判断 品質担保

    一次レビュー・脆弱性一次調査 レビュー観点の設計 ・テスト網羅性 認証/暗号/破壊的操作の最終確認 コスト管理 モデル使い分け・環境別最適化 ROI測定指標の設計 予算確定・契約・投資可否 関係者調整 議事録・要約・資料ドラフト 会議ファシリ補助 合意形成・組織裁定・人材育成 © PERSOL CAREER CO., LTD. 9
  6. エピ ソードA|進捗管理 集計・起票は、あっさりAI委譲できた AIスクラムマスター構想 — 4つの工程をAIへ移し、管理工数▲50%。設計思想は、たった一文。「人間は"対話"に集中する」。 これまで(人) AI化後 チケット管理 起票・ステータス更新を手作業で

    AIが自動起票・自動更新 進捗分析 定例前に集計し、資料を作成 AIが常時集計し、レポートを生成 ブロッカー検知 停滞に気づくのは定例の場 停滞チケットを検知して通知 会議ファシリ PMが進行し、議事録も書く AIがアジェンダ・議事録を補助 ※ うち障害起票の自動連携(SharePoint起票 → Backlog自動生成)は、すでに本番稼働中 残した 人間に残すのは、ゴール設定 仮説とDoD(完了の定義)、そして現状・目的・条件の設定。実行はAIに任せられても、「何を目指し、どこまでやれば完了か」を定義するのは 人の仕事である。 © PERSOL CAREER CO., LTD. 10
  7. エピ ソードA|進捗管理 開発は、本当に10倍になった — KPI設計から始めた効果測定 生産性を語るには、まず「何をどう測るか」。オブザーバビリティ/可視化の基盤を作る前に、KPI設計から始めた。 測定設計 — 人が作り込んだ •

    従来のスクラムチームを比較対象に、期間は3.5ヶ月 • Findy Team+でFour Keysを平均・中央値で算出 • タスクの難易度・依存関係を揃え、仕様変更の影響も記 録 • 数字だけでなく、メンバーの負荷感もヒアリング(定量+定 性) 実証された数値 • 従来4人月の機能開発が 1週間〜1人月で完了(≒10倍) • 直近の月次では 0.75人月の体制で4件リリース • 変更障害率・変更復旧時間は、ともに0を維持 • リリース起因の重大な品質問題なし 残した • 10倍達成の最大要因は このスクラムは2人以下の体制で実施していたこと。 つまり利害調整やチーム内の意思決定が必要最低限で済むという点。 © PERSOL CAREER CO., LTD. 11
  8. エピ ソードB|品質担保 コードレビューのAI委譲— 実装はプロンプト1行 単体テストでは拾えない指摘 PR作成 → CI起動 → コンテナ内で

    AIレビュー実 行 ↓ ① コード品質 ② セキュリティ ③ パフォーマンス nullチェック漏れ — NumberFormatExceptionを引き起こす箇 所を特定 「削除→保存」順序のAtomicity問題 — 保存失敗時にtaskIdを 見失うリスクを、設計レベルで指摘 ↓ PRにインラインコメントで指摘を返す コストは月5万円未満 。会社で使う分には、十分に元が取れる 実装は「レビューを実施してください」のプロンプト1行+allowedToolsでツールを絞るだけ。 サーバ上のAI実行は、ローカルと違って途中で止められないため、 コンテナ実行/IAMは読み取りのみ/ホワイトリスト+フォワードプロキシ/ログトレーシング — 多層防御で乗り越えた。 • レビュー工数は減るが、1つあたりのレビューの責任の重さは変わらないので、 レビュー責任がPMに凝縮されていく © PERSOL CAREER CO., LTD. 12
  9. エピ ソードB|品質担保 脆弱性対応のAI委譲— 調査は任せる。判定は疑ってかかる 影響有無の判定 日次バッチ → 依存関係スキャン → レポートをAIが読解

    → リリース情報の取得 → 調査結果をIssue出力 リリースノート確認 実際の判定アウトプット(commons-lang3) 「3.17.0 → 3.18.0で脆弱性対応版がリリース(CVE-2025-48924)。当リポジトリでは該当メソッドを直接使っておらず、現時点で影響なし。急ぎの対応は不要だが、バージョンアップは根本 解消として検討を推奨」— ここまで自動でまとまる。 残した 設計上の3つの工夫 — 苦労したのは「任せ方」 ① ツール接続は公式を使わず自作 — 必要最小限だけ渡し、トークン消費と意図しないツール実行を抑える ② 全開発者のローカルには配らない — ワークフロー内でその都度生成し、コスト増を防ぐ ③ シークレットはAIに渡さず、接続側で管理する © PERSOL CAREER CO., LTD. 13
  10. エピ ソードC|コス ト管理 コスト管理:モデルの使い分けで、桁が変わる 商用環境でAPIを使うプロジェクトなら、ここが最大の関心事のはず。同じ開発でも、使い方ひとつで請求の桁が変わる。 CI/レビュー用途 — 高性能モデル ローカル開発 —

    全員が高性能モデル 実行回数が限られるCIなら、高性能モデルでも十分に元が取れる 常時使う開発端末で全員が高性能モデルを使うと、桁が跳ね上がる → コスト重視モデルへ切り替え 月5万円未満 ① 用途別に選ぶ CIは高性能、日常開 発はコスト重視と、用途でモデルを分ける 月100万円規模 → ② 可視化する ワークフローごとに「どこ でいくら掛かるか」を見えるようにする → ③ ルール化して任せる 使い分けをルールに落とせば 、以後の運用はAIとルールに任せられる • 従来とあまり変わらず、AI移譲が難しい領域。 © PERSOL CAREER CO., LTD. 14
  11. エピ ソードD|関係者調整 関係者調整:資料づくりはAI委譲できたが、“人”はやはり残った AI移譲できた 残った① 議事録・要約・資料ドラフトは、実運用でAIに移行済み。会議のファシリテーションもAIが補助する。ドキュメント作業は、もうPMの仕事ではない。 コミュニケーション不良の検知 早朝の切り戻し対応を見ていて気づいた。「コミュニケーションがたどたどしい」「ロールバックに、実はみんな慣れていない」— 議事 録には残らないこの"空気"を察して、リハーサルと振り返りの実施を促した。AIは議事録を書けても、たどたどしさには気づけない。

    残った② 配下メンバーのモチベーションコントロール 1on1で打ち明けられた不調に、技術課題の見つけ方と目標設定を一緒に立て直した。育成も同じである。 特に昨今の不安定な状況から、メンバーのモチベーションもだいぶ不安定になっていることが多い。 これまで以上に一層、チームメンバーのケアを目敏く実施していく必要がある。 • 最もAI移譲が難しい領域。 © PERSOL CAREER CO., LTD. 15
  12. 気づき① AIが10倍生産すれば、PMが判断すべきことも10倍になる 集計・生成は消えた。だが10倍のアウトプットは、10倍のリリース判断・投資判断を連れてくる。手放すほど、判断だけが濃 縮されていく。 → 結論① PMの仕事は「判断・対話・責任」に凝縮する 気づき② 人的因子や利害に左右される環境・チームでは、PM業務はAI委譲できない 残った②

    品質もコストも仕分けはできた。だが利害の調整と人の機微が絡む領域だけは、どう工夫しても手放せなかった。AI委譲を阻 残した むのは技術ではなく、組織である。 → 結論② AI委譲できるかは、「組織スコープの切り方」で決まる © PERSOL CAREER CO., LTD. 17
  13. 結論① PMの仕事は「判断・対話・責任」に凝縮する AI委譲できたのは、定型・集計・生成。AI委譲できなかった6割の正体は、この3つだった。 判断 :投資可否・リリース可否・ゴール の裁定 判断 残った② 対話 :合意形成・空気の察知・立て直

    残した し 責任:品質と請求の最終ガード 対話 責任 生産が10倍になれば 人的 因子による調整タスクも 質 量ともに10倍になる。 より 重く胃の痛くなる 判断がこれ からのPMには 山のように待 っている。 © PERSOL CAREER CO., LTD. 18
  14. 結論② AI委譲できるかは、「組織スコープの切り方」で決まる 事業会社の根深い利害調整制約を断ち切る 利害調整が残る限り、人をベースとしたPMは必要職種であり続ける。 したがって今回結論づけたのは「PMをAI委譲する」ことではなく、「AI委譲できる形に組織スコープを切る」ことである。 完全にAIへ代替できる条件は、3つ: ① 利害が入り込まない 人の思惑・部門間の駆け引きが介在しないス 残った②

    残したコープであること ② 7人を超えない ③ 権限を一枚で配れる ステークホルダーが、スパン・オブ・コントロールの 限界(7人)を超えないこと 「ビザ1枚」を全員に分け与えられる=単一の 権限セットで完結する範囲であること この3条件を満たすようにスコープを割れば、利害調整そのものが発生せず、PM業務は完全に代替できる。そして、割り切れなかった余りにだけ、兼業PMが立つ。 PMをAI委譲するのではなく、PMが要らない単位まで、組織を割る。 © PERSOL CAREER CO., LTD. 19
  15. 結論② 完全AI委譲・PM兼業・PM現役 — 分かれ目は、組織スコープ 3条件(利害・人数・権限)を判定軸に置くと、PMの行き先は3つに整理できる。 利害調整 完全AI委譲 PM兼業 ステークホルダー 権限

    PMの姿 入り込まない 7人以下 一枚で配れる AIに完全代替できる 限定的に残る 7人前後 概ね一元化できる 判断・対話・責任のみを、他ロ ールと兼務で担う 部門間の駆け引きが濃 い 7人超 複数の権限系統にまた がる 専業PMが必要であり続ける 残った② 残した PM現役 ※7人基準は各社の状況によって変わる おおよそ4~9まで変動するはず・・・ © PERSOL CAREER CO., LTD. 20
  16. 参考:他社事例 管理対象は、すでに「人」から「AIエージェント群」へ GitHub ※1 GitHub ※1 1回のマイグレーションで124サブエージェント、同時最大 20エージ ェント (日次モデル費用ピーク

    約$4.8K) 複数のcoding agentを併用する層は23.5 PR/人・月 (単一 エージェント 8.7/未利用 1.8) 残った② Cognition ※2 残した 自社コードのDevinコミット比率が 13% → 89% (2025/12 → 2026/5) 富士通 ※3 要件定義/設計/製造/テスト/環境配備の各エージェントを 中 央オーケストレーターが統括 人間のチームではなく、エージェントの群れを編成して開発する — それが、すでに日常になりつつある。 ※1 GitHub / Kyle Daigle氏・William Zhang氏 / AI駆動開発カンファレンス 2026夏・2026年7月31日 ※2 Cognition AI Japan / 正井拓己氏・シバタアキラ氏 / 同・2026年7月 30日 ※3 富士通株式会社 / 岡元大輔氏 / 同・2026年7月31日 © PERSOL CAREER CO., LTD. 21
  17. パーソルキャリアのオウンドメディアご紹介 パーソルキャリアのエンジニアブログです。“み んなの「はたらく」をテックでつくる”をコンセ プトに、技術、組織、学びなど、さまざまな情 報を発信しています。 「techtekt(テックテクト)」 「TECH Street(テックストリート)」 パーソルキャリアのデザイン組織のブランドサ イトです。「デザインの力で、はたらくを変え、

    社会を変えていく。」をステートメントとし、 デザインの価値を広める活動をしています。 各社の現場で活躍しているITエンジニア やテクノロジー人材から、ITテクノロ ジーに関するさまざまなテーマの事例 や知見が学べる勉強会コミュニティで す。 「NUTION(ニューション)」 © PERSOL CAREER CO., LTD. 22